変形性股関節症の運動療法
(指導:北里大学病院 理学療法士 南里 佑太さん)
股関節の周りには多くの筋肉や腱があり、関節を動かし守る役割を担っています。そのため筋力が弱ると、股関節への負担が増えて痛みの原因になります。
また、変形性股関節症が進行すると、股関節の周囲の筋肉が緊張したり硬くなったりして、股関節の可動域が狭くなります。その結果、負担が一部に集中して痛みもひどくなってくるのです。
そこで、痛みの軽減や病気の進行予防に役立つ運動療法をご紹介します。いずれも自宅で気軽にできる運動なので、毎日楽しく続けましょう。
※転倒には十分注意して下さい。
※痛みが翌日まで残ったり、ひどくなったりするようなら、やめて下さい。
※治療を受けている場合は、医師に相談してから始めて下さい。
《 初期の運動療法 》
初期は、股関節の軟骨がまだ十分残っているので、これ以上軟骨がすり減らないように、股関節を支えている股関節の周りの筋肉を鍛えることを目的とします。
①片足立ち
軸足側のお尻の筋肉(中でん筋・大でん筋)と上げている足の太ももの筋肉(腸腰筋)を鍛える運動です。
トレーニングの内容は下記で確認できます。

●目は開けたまま片足で立つ
●壁に手を添えたり、いすにつかまったりしてもよい
●バランスを崩したら無理をせず足を着く
×左右それぞれ1分間
【ポイント】
体がまっすぐになっていることを意識する。
②足振り運動
股関節の周りの筋肉をやわらかくし、関節の動きをスムーズにする運動です。
トレーニングの内容は下記で確認できます。
※必ず壁に手を添えるか、いすにつかまった状態で行って下さい。

●足を前後に振る
×左右それぞれ10回
【ポイント】
痛くない範囲でなるべく大きく振る。

●足を左右に振る
×左右それぞれ10回
【ポイント】
痛くない範囲でなるべく大きく振る。

●足を前後にひねりながら動かす
×左右それぞれ10回
【ポイント】
足の裏が内側に向くように股関節をひねる
③お尻のストレッチ
緊張して硬くなっているお尻の筋肉をストレッチで伸ばす運動です。
トレーニングの内容は下記で確認できます。

●いすに座り、片側の足のかかとを反対の足の膝の上に置く
●腰を伸ばしたまま体を前に倒す
×左右それぞれ20秒間 2回ずつ
【ポイント】
お尻の後ろから横にかけて筋肉が伸びていることを確認しながら行う。
《 進行期の運動療法 》
進行期は、股関節に痛みが現れて周囲の筋肉に過剰な緊張が加わるため、股関節の可動域が狭くなります。そこで、狭くなった股関節の可動域を広くするこを目的とします。
①ジグリング
股関節を刺激し、関節の動きを滑らかにすることが目的の運動です。
トレーニングの内容は下記で確認できます。

●いすに座った状態で足のかかとを上げ下げする(楽なスピードでよい)
●余裕があったら足を左右に動かす運動を入れてもよい
×左右それぞれ1分間から始める
慣れてきたら時間をのばします。
②腰上げ運動
お尻の筋肉(大でん筋)のトレーニングです。
トレーニングの内容は下記で確認できます。

●仰向けに寝て、膝の角度が90度になるようにする
●4数えながら腰を上げ、4数えながら腰を下ろす
×10回
【ポイント】
膝から胸にかけて一直線になるように腰を上げる。
③足上げ運動
太ももの前側の筋肉(腸腰筋・大腿四頭筋)、股関節横の筋肉(中でん筋)のトレーニングです。
トレーニングの内容は下記で確認できます。

●仰向けに寝て片方の足を伸ばし、反対側の足は膝を90度ぐらいに曲げる
●伸ばした足を曲げたほうの足の高さと同じくらいまで2秒で上げて、2秒で下ろす
×左右それぞれ10回

●横向きに寝て、下側の足の膝を90度程度に曲げておく
●上側の足は伸ばし、2秒で上げ2秒で下ろす
【ポイント】
・平行から少し上に上げて戻す。
・足は、前や後ろに傾かないようにまっすぐ上に上げる。
④キャット&ドッグ
股関節と腰を柔らかくする運動です。
トレーニングの内容は下記で確認できます。


●床に手と膝をつく
●背中を丸めたり反らしたりを繰り返す
×10回
【ポイント】
・背中を丸めるときは、おへそをのぞき込む。
・背中を反らすときは、目線をしっかり上げる。