【急性骨髄性白血病の治療】抗がん剤、造血幹細胞移植、そのリスクを解説

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急性骨髄性白血病の治療

急性骨髄性白血病の治療理念と治療方法

急性骨髄性白血病の治療はきびしいものですが、寛解が数年間以上続けば再発のリスクが低くなり、一定の割合で治る病気になりました。治療理念は「Total Cell Kill」と言われるものです。これは体の中にある白血病細胞をゼロになるまで、徹底的にたたいて根絶して、白血病を治すものです。
急性骨髄性白血病の治療には、抗がん剤治療と造血幹細胞移植があります。

急性骨髄性白血病の抗がん剤治療

急性骨髄性白血病の抗がん剤治療のイラスト図

抗がん剤治療では、まず抗がん剤を7日間投与する「寛解導入療法」を行い、骨髄の白血病細胞を顕微鏡で認められないレベルまで減らして、正常な血液細胞が一定以上回復した状態(血液学的寛解)を目指します。この時、骨髄の中にある白血病細胞の数は10億個以下になります。これは体全体の血液細胞の5%以下に相当します。

次に、約1か月に1度のペースで、3~4回抗がん剤治療を行う「地固め療法」を行い、遺伝子検査でも白血病細胞が検出できないレベルにまで減らします(分子生物学的寛解)。この時、体の中の白血病細胞は100万個以下に下がります。この状態を維持すれば、正常な血液細胞が回復し、症状も治まってきます。

再発の可能性

これまでの研究では、地固め療法を行い、寛解状態が5年間続くと、急性骨髄性白血病の再発のリスクは非常に低くなるといわれています。ただし、再発した場合や、再発の可能性が高いと予想される場合は、造血幹細胞移植が検討されます。

急性骨髄性白血病の移植治療

急性骨髄性白血病の移植治療の説明イラスト

急性骨髄性白血病の移植治療は、全ての血液細胞の元となる造血幹細胞をドナーの方からもらってくる、造血幹細胞移植と呼ばれる治療法です。
ドナーの造血幹細胞を採取する場所には、「骨髄」、体内に流れている「末しょう血」、赤ちゃんのへその緒と胎盤に含まれる「さい帯血」の3つがあります。

骨髄移植と末しょう血幹細胞移植は、移植が決まってからドナーの方の骨髄液または血液を採取します。さい帯血は、赤ちゃんが生まれた時に採取したものを冷凍し、ストックしておいたものを使います。

造血幹細胞移植のドナーを探す方法

造血幹細胞移植のドナーを探す流れ

造血幹細胞の移植は、HLAという白血球の血液型が一致することが条件です。HLAが一致するドナーを探す流れは、血縁者、骨髄バンク、さい帯血バンクの順です。HLAが一致する確率は兄弟の場合、4人に1人です。一致する血縁者がいない場合は、骨髄バンクに登録します。骨髄バンクに登録することで、骨髄や末しょう血のドナーを探すことができます。

非血縁者でHLAが一致する確率は数百分の1から数万分の1と言われていますが、ドナーの数は年々増加しており、年間1,300件以上、骨髄バンクを介した移植が行われています。骨髄バンクでもドナーが見つからない場合は、さい帯血バンクに登録してドナーを探します。最近では、さい帯血バンクまでいくと、移植を希望する患者さんのほとんどにドナーが見つかります。

造血幹細胞移植の流れ

急性骨髄性白血病の造血幹細胞移植の説明イラスト

造血幹細胞移植を行う際、まず大量の抗がん剤と全身の放射線照射(前処置)を行い、体の中にある白血病細胞と正常の血液細胞をゼロになるまでたたきます。そのうえで、ドナーの方から採取した造血幹細胞を点滴で移植します。すると2〜3週間で移植した造血幹細胞が骨髄で正常の血液を作るようになります。正常な白血球が増え、一定の数に達した状態を生着(せいちゃく)と言います。

造血幹細胞移植は、このように悪い白血病細胞も良い血液細胞も根絶やしにして空っぽにしてから、ドナーの細胞を移植して生着させて、正常な状態にする治療法です。移植の際は、前処置として大量の抗がん剤と放射線を使うため、55歳ぐらいまでの体力のある患者さんが対象になります。

造血幹細胞移植のリスクとは

急性骨髄性白血病の造血幹細胞移植のリスク

移植する際、前処置として大量の抗がん剤と全身の放射線照射を行うので、白血数がゼロになってしまいます。そのために、免疫力が低下して感染症にかかりやすくなります。感染症にかからないように無菌室に入りますが、完全に防ぐことはできず、感染症を併発してしまうことがあります。感染症にかかってしまった場合は、診断を的確に行い、必要な抗菌薬を使用して対処していきます。

GVHD(免疫反応)の解説イラスト

感染症の他に、生着後に起こるGVHDと呼ばれる免疫反応も、重大な合併症です。GVHDは、ドナーのリンパ球が患者さんの組織(皮膚や肝臓、腸など)を異物とみなし、攻撃することで起こります。患者とドナーのHLAを合わせて移植しても起こる場合があります。GVHDが起きると皮疹ができたり、黄疸が起きたり、あるいはひどい下痢になったりするなど様々な症状が生じます。

ただし、この免疫反応は悪いことばかりではありません。体の中に残った白血病細胞も同時に攻撃し、やっつけてくれるからです。これをGVL効果と呼びます。この反応は非常にメリットがあるものです。なお、GVHDの予防、治療には、免疫抑制剤やステロイド薬を使います。

高齢者の急性骨髄性白血病の治療

高齢者の急性骨髄性白血病の治療

急性骨髄性白血病の治療には、抗がん剤、造血幹細胞移植の2つがありますが、どちらも治療による負担は大きくなります。そのため、予備力の少ない高齢者は治療が困難になることがあります。ただし、現在ではさまざまな工夫を行い、治療の選択肢は広がっています。

寛解導入療法

高齢者の寛解導入療法では、使用する抗がん剤の量を減らしたり、種類を変更して治療を行います。寛解に至らない場合でも、症状が緩和されて、QOL(生活の質)をよくすることができます。

ミニ移植

ミニ移植とは、前処置に使用する抗がん剤や放射線療法の量を減らすことにより、体の負担を減らして移植を行う方法です。前処置を軽くすることになるので、白血病の細胞を全滅させることができなくなりますが、移植した造血幹細胞からできたリンパ球が白血病細胞を攻撃するGVL効果を期待することができます。この効果に期待して治癒を目指していきます。
ミニ移植は肺や心臓などの大きな病気がなければ、70歳ぐらいまで受けることが可能になっています。

急性骨髄性白血病の新薬による治療

急性骨髄性白血病は、ここ数年間で研究が非常に進歩し、急性骨髄性白血病の遺伝子異常がほぼ解明されたと言われています。そのため、新たな薬が多数開発されていて、いくつか有望なものが出てきています。新薬によって今後の白血病の治療成績がよくなっていくと期待されています。