【患者体験談】下腹部のナゾの膨らみ 原因は腸が飛び出す鼠径(そけい)ヘルニア

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鼠径(そけい)ヘルニアになったとき -私のチョイス-

長年“育てた”鼠径ヘルニア

下腹部が膨らんでいる

Aさん(男性・59歳)の下腹部に膨らみができたのは18歳のときでした。痛みがなかったため、気にせず生活していましたが、20代になって別の病気で医療機関を受診した際に医師に相談したところ、「鼠径ヘルニア」と診断されました。鼠径ヘルニアは、足の付け根にある鼠径部の筋膜がゆるみ、腸が「鼠径管」と呼ばれる管に飛び出してしまう病気で、「脱腸」とも呼ばれます。

Aさんは、そのとき医師から「痛みがなく押して戻るのであれば、すぐに手術しなくても大丈夫」と言われました。そのため安心しきってしまい、長年鼠径ヘルニアをそのまま放っておいたといいます。

しかし、40代後半になると筋膜の緩みは大きくなり、腸が鼠径管を通って陰嚢(のう)にまで落ち込むほどになっていました。それでもAさんは、腸が出る度に毎回戻せていたため、医療機関にも行かずにいました。

54歳の悲劇

ベッドに横になっている様子

そうした中、54歳のある日、妻と外出中に突然腸が大量に飛び出しました。Aさんは急いでトイレに駆け込み、飛び出た腸を戻そうとしましたが、何をしても戻らず10分が経過。Aさんは、妻の気分を損ねては申し訳ないと腸を戻すのをあきらめ、外出を続けることにしたのです。4時間後に帰宅すると、ベッドに横になって腸を戻そうとしますが、戻りません。そこでAさんは、救急車を呼んだのです。

緊急手術へ

病院に運ばれたAさん。医師が、鼠径ヘルニアの状態を確認すると、嵌頓(かんとん)と呼ばれる、大量に飛び出た腸が戻らない状態になっていました。この状態が長時間続けば、腸の血流が止まったままになり、腐ってしまう可能性があります。そうなれば命の危険もあるため、緊急手術をすることになりました。

手術の方法は、腹腔(くう)鏡手術。へその辺りに3か所穴を開け、そこにカメラや鉗子(かんし)と呼ばれる棒状の道具を差し込んで行います。鼠径管に飛び出した腸を引き戻し、筋膜がゆるんだ部分をメッシュで塞いで手術は終了。2日後、Aさんは退院しました。

その後は鼠径ヘルニアになることはなくなったというAさん。もっと早く手術すればよかったと後悔しています。
「20代の頃に手術しておけばよかった。それが一番体に負担がかからないし周りにも迷惑をかけない。ヘルニアを長い時間育ててしまうと、つまらない時間を余計に使っているかも知れない。」

この記事は以下の番組から作成しています

  • チョイス 放送
    腸が飛び出す!? 鼠径(そけい)ヘルニア