難聴が高める「認知症」のリスク
近年の研究で「難聴」が「認知症」のリスクを高めることがわかってきました。そのリスクは、軽度の難聴でおよそ2倍、中等度で3倍、重度難聴ではおよそ5倍になると言われています。

音の情報処理には脳の側頭葉や前頭葉など、さまざまな部位を使用しますが、難聴により「音の情報自体が入ってこない」ことで、脳の活動そのものが低下し、認知機能に影響を与えると考えられています。

上記は「難聴」の人の脳画像です。青色の部分は、聴覚が正常な人より活動が低下しています。
また、難聴による「コミュニケーション機会の減少」も、認知機能の低下につながると考えられています。難聴になると会話が消極的になり、社会活動の範囲も縮小し、活発な脳の活動を促すコミュニケーションの機会が減ってしまいます。

さらに、難聴がもたらすコミュニケーション機会の減少が「認知症」のリスクを高めるだけでなく、「うつ」や「フレイル」につながることも懸念されています。
鉄則その1 生活習慣の改善で難聴予防
認知症やうつ、フレイルにつながりかねない「難聴」を予防するには、生活習慣の改善が大切です。難聴の要因のひとつは「血液循環の悪化」で、その悪化は生活習慣によってもおきるからです。喫煙する人は1.3倍、糖尿病の人は1.5倍、難聴になりやすいと言われています。

生活習慣を改善、血液循環をよくするためにおすすめの方法は、週1~2回の散歩です。身体がポカポカするくらいを目安に無理のない範囲で行いましょう。

鉄則その2 補聴器は積極的に
すでに難聴がある場合、認知症のリスクを減らすためにも意識してほしいのは「補聴器の積極的な使用」です。

加齢にともなう難聴の場合、その多くが補聴器を使うことで改善し、認知症などのリスクを下げることに役立ちます。しかし、日本の補聴器使用率は諸外国に比べ低いのが現状です。
イキイキとした生活を送るためには、聞こえることはとても重要です。少しでも聞こえに不安があれば、医師に相談の上、補聴器の使用を前向きに検討してください。
また、難聴によるコミュニケーション機会の減少を防ぐために、周囲の方々も難聴の方の気持ちを理解し、お互いに笑顔で会話できる環境づくりを心がけましょう。