睡眠休養感と健康の関係と睡眠の質を上げる3つの方法

更新日

セルフケア・対処不眠症睡眠時無呼吸眠れない・眠りが浅いいびきが大きい意欲の低下脳・神経

睡眠休養感

朝目覚めたときに感じる「睡眠休養感」が、健康にとって重要であることが2022年に国立精神・神経医療研究センターなどのグループが発表した研究でわかってきました。

特に高齢者では「寝床(ねどこ)にいる時間」が長く、睡眠休養感の低い人は死亡リスクが高くなることも判明しました。睡眠の質を上げるための3つの快眠スイッチを紹介します。

睡眠休養感とは

睡眠休養感とは、睡眠の質を測る指標で、睡眠によって朝起きた時にどれだけ体が休まったと感じたかを評価したものです。研究では、健康には「睡眠休養感」と「床上時間」が関連していることが示されました。
「床上時間」とは、寝床で過ごす時間のことで、実際に寝ている「睡眠時間」に加えて、寝床に入ってから寝付くまでの時間や睡眠中の自覚のない覚醒を含めた時間をいいます。

この研究では、「働き盛り世代(40〜64歳)」と「高齢世代(65歳以上)」に分けて、睡眠休養感と睡眠時間、床上時間を調べました。調査では、睡眠休養感を5段階で自己評価しました。また、脳波計を用いて睡眠中の脳の状態を観察し、睡眠時間と床上時間を区別して測定しました。その結果、働き盛り世代と高齢世代では、睡眠と死亡リスクの関係に明らかな違いがあることがわかりました。

働き盛り世代

働き盛り世代の睡眠時間と死亡リスクの関連性

働き盛り世代では、睡眠時間が短く、睡眠休養感が低いほど死亡リスクが高くなることがわかりました。ところが、床上時間と死亡リスクの関連はみられませんでした。

高齢者

高齢者の床上時間と死亡リスクの関連性

高齢世代では、睡眠時間と死亡リスクの関連はみられませんでしたが、床上時間が長いほど死亡リスクが高くなることがわかりました。特に、睡眠休養感がなくて床上時間が8時間以上の人は、睡眠休養感があって床上時間が7時間ほどの人と比べて、死亡リスクが約1.5倍を超えていました。

年齢別の実際に眠れる時間グラフ

一般的に必要な睡眠時間は加齢とともに短くなっていき、60歳では1日6時間ほどの睡眠時間で十分だとされています。しかし、若い頃と同じ睡眠時間を確保しようとして寝付けないのに無理に寝床に留まってしまう人もいます。このような場合、寝付けないことがストレスになって睡眠の質が下がってしまうことがあります。

睡眠休養感の低下による影響

睡眠休養感の低下が健康に悪影響を与える理由はいくつか考えられます。1つは睡眠で休養がえられた感覚が低いと、日中に疲労感が残って活動量が低下することです。日中の活動量が低下すると、夜の寝付きが悪くなる悪循環に陥ったり、フレイル(加齢によって起こる心身の虚弱)の状態につながりやすくなり、さらに睡眠の必要量が低下しやすくなります。

睡眠の質を上げる「3つの快眠スイッチ」

3つの快眠スイッチ

副交感神経スイッチ

副交感神経が優位な状態になると、血圧や脈拍数が下がり、呼吸が穏やかになって眠りに入りやすくなります。心身共に落ち着いた時間を過ごすことが大切です。リラックスできる時間を設けるとよいでしょう。

眠りに入りやすくするための就寝前のリラックス方法

寝る前に…

  • ぬるめの湯で入浴
  • ゆったりした音楽を聴く
  • 読書
  • アロマをたく

【注意】

  • 寝る直前に熱いお湯につかると、自律神経のうち体を緊張させる交感神経が優位になり、夜の寝付きが悪くなるので避ける。同様の理由で、寝る直前の激しい運動も避ける。
  • ブルーライトは交感神経を優位にするので、寝る前にはスマートフォンやタブレットを見るのを避ける。

体内時計スイッチ

体内時計スイッチ

朝に目が覚めて夜に眠くなるというリズムを調整するのは「体内時計」です。体内時計は光によって調節されています。体内時計を乱さないためには、朝起きたらまずは日光を浴びて“体内時計のスイッチ”を入れることが大切です。朝起きたらすぐにカーテンを開けたり、朝の散歩を習慣にしたりするとよいでしょう。

朝起きたらすぐにカーテンを開ける

起床時刻が乱れると体内時計も乱れます。休日の朝に長めに眠りたいときは、平日に起きる時刻とのずれを2時間以内に留めるようにしましょう。それでも眠気が残っていれば、昼寝で補うのがお勧めです。ただし、30分以内を目安にしましょう。

眠れないことへの焦りスイッチはOFF!

不眠に悩んでいる人は「眠らないといけない」という焦りから、よけいに眠れなくなってしまうことがあります。“眠れないことへの焦りスイッチ”を入れない、積極的にOFFにすることが重要ですが、これには床上時間を短くすることが有効です。

  • 眠くなるまで寝床に入らない
  • 10分ほどしても眠れなかったらいったん寝床から出る
  • 夜中に目が覚めてすぐに寝付けなかったらいったん寝床から出る

などのようにして、床上時間が長くなり過ぎないようにしましょう。また、寝床で読書や食事などをしないことや日中の昼寝をやめたり短くすることも効果的です。ほかにも、日中にウォーキングやストレッチ、水泳などの適度な運動をする習慣を取り入れると、程よく体が疲れて夜の寝付きがよくなったり、夜中に目が覚めることを減らすことにつながります。

睡眠に関するご質問

『Q&A 睡眠』はこちら

詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2022年7月 号に掲載されています。

きょうの健康テキスト
テキストのご案内
※品切れの際はご容赦ください。
購入をご希望の方は書店かNHK出版お客様注文センター
0570-000-321 まで
くわしくはこちら

この記事は以下の番組から作成しています

  • きょうの健康 放送
    “睡眠休養感”アップで健康長寿「3つの快眠スイッチ」