心房細動は脳梗塞のリスク

心房細動は不整脈の1つで心房が異常に細かくふるえます。そのため心房内の血液がよどんで血栓ができやすくなります。血栓は心臓から脳まで飛んで行くことがあり、その場合、脳の血管が塞がって脳梗塞を起こしてしまいます。
バルーンを使ったアブレーション

心房細動にはカテーテルアブレーションという治療法があります。細長い医療器具を脚や首の血管から挿入して心臓まで到達させ、先端から高周波の電流を流すことで、心房細動の原因になる心筋の異常な電気信号を断ち切ってしまう方法です。
最近、カテーテルアブレーションに新しい手法が登場しました。バルーン(風船)の形をした医療機器を使います。「冷凍バルーン」「ホットバルーン」「内視鏡バルーン」の3種類があります。

「冷凍バルーン」(上)が現在最も多く行われています。肺静脈が左心房に入ってくる場所をバルーンで塞いだあと、バルーンを冷却して異常のある心筋を冷凍凝固させます。

「ホットバルーン」(上)はバルーンを熱することで心筋を壊死させます。

「内視鏡バルーン」(上)は内視鏡で観察しながらレーザーを照射して心筋を壊死させます。

肺静脈が左心房に入るところは心房細動が最も起こりやすい場所です。従来のカテーテルアブレーションでは、この場所を1点ずつ治療する必要がありました。しかしバルーンを使えば一気に治療できるため、時間が短縮できカテーテルの操作もしやすくなりました。この場所以外に心房細動の原因がある場合は、バルーンによる治療が適さないため、従来のアブレーションを行います。
心臓の3Dマッピング

従来のカテーテルアブレーションを行う際に、心臓を3D(三次元)で描き出す新しい技術も使われています。カテーテルが心筋に当たる位置や強さが画面に表示されるため、より正確に安全に治療できます。カテーテルアブレーションに必要なX線も、3Dマッピングを使えばかなり軽減できます。
なお、カテーテルアブレーションは心房細動の根治が期待できる治療法です。ただし、治療がすすめられるのは心房細動の持続が7日以内と短い場合です。心房細動が慢性化し長く持続するようになった場合は、根治の可能性が低くなります。
左心耳を閉鎖するデバイスも
心房細動では、抗凝固薬という薬を服用することがあります。心房で血栓ができにくくなる薬で脳梗塞を予防するために使います。しかしこの薬を服用しにくい人もいます。その場合に選択できる新しい治療法が出てきました。


左心房には左心耳と呼ばれる場所があります。心房細動でできる血栓の大多数はここにできます。そこで、同じくカテーテルを使って特殊な装置を送り込み、左心耳を閉鎖するように留め置きます。その結果、左心耳に血流が入らないため、血栓を予防します。