手軽な「医療ダイエット」に注意
ぜい肉の悩みを抱えている人の受ける「美容医療」は、「痩身(そうしん)治療」、「やせる治療」、あるいは「医療ダイエット」などといわれています。こうした「医療ダイエット」の一つとして、「GLP-1受容体作動薬」という2型糖尿病の薬の不適切な使い方が広まって問題となっており、日本糖尿病学会などは注意を呼び掛けています。
日本では、この薬はやせるための薬としては承認されていません。2型糖尿病の薬で、インスリンの分泌を促して血糖値を下げる薬ですので、不適切に使用した場合、命にかかわる重大な合併症をおこすこともあります。また未承認薬で健康被害が出た場合、救済する制度を利用することもできません。「手軽な治療」と思って手を出すと大変なことになる恐れがあるので、注意が必要です。
ぜい肉をとる
気になる「ぜい肉」。美容医療でとる部位は、主に次のような場所になります。
「お腹」、「太もも」、「二の腕」、「顔」です。

病的な状態の改善ということではなく、あくまでも見た目の治療という場合には、保険診療ではなく自由診療の美容医療で対処することになります。
ただし、治療に対して大きな期待を持ってはいけません。肥満の治療とは違います。
肥満で「体重を落としたい人」には向きません。一度に大量の脂肪を取ることは、生命の危険を伴います。この治療によってぜい肉をすべてなくそうとするのは過度な期待です。
摂取エネルギーを控えた食事と適度な運動でダイエットに励んでそれでも落としきれない残ったぜい肉をとるのにこれらの治療は効果を発揮します。
ぜい肉をとる治療法

主な治療法は手術による治療法、注射による治療法、機械を使った治療法の3つです。
手術による治療法は「脂肪吸引」です。小さな穴を開け、そこにカニューレと呼ばれる管を入れて脂肪を吸い出します。


3つの治療法の中では一番効果が実感できる治療法です。ただし、手術ですから体への負担も一番大きい治療法です。死亡事故などのトラブルも報告されています。
注射による治療法は「脂肪溶解療法」と呼ばれ、脂肪を分解する成分の入った薬液を針で皮下に直接注入します。手術と比べれば体への負担がずっと少ない治療法です。空いた時間に通院でできるという手軽さがメリットです。ただし、効果が実感しにくい治療です。1〜2か月で4〜5回と、継続的な治療が必要で費用がかかります。
機械による治療には「脂肪冷却」や「キャビテーション」があります。脂肪冷却はぜい肉(脂肪)をとりたい部位に機械を巻いて冷やします。キャビテーションは、超音波を使用して脂肪細胞にピンポイントで熱を与えて、ぜい肉をとろうという治療です。
体への負担が少ないというメリットがありますが、よい変化が実感できない場合もあります。こちらも継続的な治療が必要なので時間と費用がかかります。
トラブル避ける!?病院選び
トラブルの原因は、不適切な手術材料や手術方法の判断ミスなど医療者側によるもの。また患者側の問題もあります。術前説明の理解不足や術後の不適切なケアなどです。さらに、思っていた仕上がりと違うというトラブルも多いようです。宣伝やクリニックで見せられる術前術後の写真などに惑わされず、過度な期待はしないことも必要かもしれません。
また、調べた医療機関にどんな医師が所属しているのか、どんな専門性があるのかを確かめてください。しっかりとした診療経験が積まれているか、経歴を確認しましょう。
わからない場合は、日本美容外科学会(JSAPS)ホームページに正会員のリストと専門医のリストが掲載されていますので、そちらを参考に決めるのもよいかもしれません。

まずは治療を直接担当する医師を選び、その医師が勤務している医療機関を調べて値段などを確認し、最終的には対面でのカウンセリングで治療を受けるか判断するというのが、トラブルをできるだけ避ける病院選びかもしれません。
トラブルになったら
まずは治療を受けたクリニック、担当医に相談。そのクリニックで治療が困難な場合は、治療内容を記載した「診療情報提供書」を作成してもらった上で別の医療機関を受診しましょう。しかし自費診療となり、高額な治療費が発生するリスクがあります。

また、トラブルに関する相談窓口もあります。医療に関する苦情、相談は全国の「医療安全支援センター」へ。医療安全支援センター総合支援事業HPでお近くの相談窓口の連絡先が調べられます。
契約に関するトラブルやその他困った時の相談は「消費者ホットライン 188」へ連絡してください。