増えている帯状ほう疹 予防に有効なワクチン、後遺症「神経障害性とう痛」

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帯状疱疹(たいじょうほうしん) 発疹が出た 全身が痛い かゆみがある 皮膚

増えている帯状ほう疹

帯状ほう疹の写真

帯状ほう疹は、チクチクした痛みに続き、体の右側または左側のどちらか一方に、赤く小さな水ぶくれを伴う発疹が帯状に現れる病気です。発疹は体の至るところに現れますが、最も多いのは胸から脇腹にかけてです。

記事『早めに対処 帯状疱疹(ほうしん)の症状チェック・治療のポイント』

帯状ほう疹の発症率

出典:MB Derma, 297:21-29,外山望ら(一部改変)

2009年から2019年まで、宮崎県で調査された帯状ほう疹の発症率を示したデータを見てみると、2012年から年々増加しているのが分かります。特に、2014年を境に発症率がさらに上昇してきています。その理由として、2014年10月に水ぼうそうワクチンの定期接種が始まったことが関係しているといわれています。

帯状ほう疹と水ぼうそうの関係

実は、帯状ほう疹と水ぼうそうは同じウイルスによって起こります。水ぼうそうは、5歳までに85%の人がかかり、多くの場合1週間程度で治りますが、水ぼうそうのウイルスはなくなりません。その後、体の中に数十年以上潜み、加齢や疲労、ストレスや病気などで免疫の働きが低下すると、ウイルスは神経に沿って体の表面に現れ、帯状ほう疹を発症します。

帯状ほう疹を予防するためには、水ぼうそうのウイルスにある程度触れて「ブースター効果」を得たほうがよいことがわかっています。ブースター効果とは、体内で一度つくられた免疫が病原体(ウイルス・細菌など)に触れることで活性化することをいいます。

ところが、水ぼうそうワクチンの定期接種化により、水ぼうそうを発症する子どもは減少しています。それに伴い、ブースター効果を得る機会が減りました。近年、帯状ほう疹は特に子育て世代の20~40歳代の人の発症率が高くなっていますが、こうした理由によるものと考えられています。
とはいっても、水ぼうそうワクチンの定期接種は必要です。

子どもの頃に発症する水ぼうそうは、まれに重症化しますし、大人になって水ぼうそうを発症すると、脳炎、肺炎や肝炎などを併発することもあります。また、妊娠中に発症すると、胎児に影響が出る可能性があり、生まれた子どもに白内障や脳の萎縮などの合併症が現れることもあるからです。

高齢化も増加の要因

帯状ほう疹は、50歳以上の人が患者全体の7割を占めています。高齢者に多い病気なので、高齢化が進むと発症率も上昇します。また、糖尿病などの生活習慣病のある人や、関節リウマチなどで免疫の働きを抑える薬を使っている患者さん、がんをわずらった患者さんは、免疫が低下しているため、帯状ほう疹を発症する可能性が高くなります。

ウイルスと神経

感覚神経の根元、神経節
ウイルスは神経節から神経に沿って現れる

水ぼうそうウイルスは、脊髄から枝分かれしている感覚神経の根元、『神経節』というところに潜んでいます。発症経路を拡大して見てみますと(上図参照)、ウイルスは『神経節』から神経に沿って現れ、発疹や痛みといった症状が出てしまうのです。

早期発見・早期治療が大切

帯状ほう疹は、発疹が出てから3日以内に治療を開始することが重要です。早く治療を始めれば、発疹の痕も少なくなりますし、合併症も起こりにくくなります。ただし、発症しても気づかない人が少なくありません。最近は検査キットを使うことで、以前なら帯状ほう疹と見分けがつきにくかった症状も、簡単に診断できるようになりました。チクチクした痛みや発疹の症状があったら、すぐに皮膚科を受診しましょう。

帯状ほう疹の治療の中心は、ウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬です。それに加えて、痛みを抑える鎮痛薬を内服し、炎症を和らげる軟膏を塗ることで治療していきます。従来の抗ウイルス薬は腎臓で代謝されるため、機能に影響を与えることがありましたが、2017年に腎臓に負担のかからないタイプの抗ウイルス薬が登場し、腎臓に不安を抱える高齢者でも安心して服用できるようになりました。

顔に発症したら注意

顔に発症したら注意

帯状ほう疹は、発症した場所によって注意が必要です。特に、注意が必要なのが顔面神経まひになる場合です。ラムゼイ・ハント症候群と呼ばれる症状です。これは三叉神経のⅢ枝、もしくは頸部の神経節からの再発によっておこります。また、三叉神経Ⅰ枝から再発すると、目の近くに発症し、視力が低下することもありますし、まれに脳にまでウイルスが到達し、脳炎という重篤な合併症を起こすこともあります。

予防にはワクチンが有効

帯状ほう疹ワクチン 2種類それぞれの特徴

帯状ほう疹は、50歳以上であればワクチン接種によって予防することができます。帯状ほう疹予防ワクチンには2種類あります。生ワクチンは2016年に登場したもので、毒性を弱めたウイルスを体内に注入して、免疫の働きを高めるものです。発症を50%ほどに抑えられ、たとえ発症しても軽症ですみます。
なお、免疫抑制薬、抗リウマチ薬、抗がん剤などの薬を使っている人は、このワクチンの接種を受けられません。

不活化ワクチンは、2020年に登場したものです。ウイルスをバラバラにして無毒化し、感染する能力を失わせたもので、免疫抑制薬、抗リウマチ薬、抗がん剤などの薬を使っている人でも接種を受けることができます。70歳以上でも90%以上の予防効果があります。ただし、接種を受けた部位の腫れや痛みは8割ほど、疲労感や発熱などの副反応が6割くらいの人に起こります。

これらのワクチンの接種費用は全額自己負担ですが、自治体によっては補助金を出しているところもあります。皮膚科のある病院やクリニックで受けることができますが、受けられるどうかを事前に確認してください。

長引く激痛 後遺症「神経障害性とう痛」

帯状ほう疹のほとんどは、早めに治療すれば完治しますが、場合によっては夜も眠れないほどの激痛が後遺症として残ることがあります。それが神経障害性とう痛です。これは、ウイルスによって炎症が繰り返されることで神経自体が傷ついて変性し、神経が異常に興奮することで起こる痛みです。神経が変性しているため、炎症がおさまり帯状ほう疹が治った後でも強い痛みが残ります。

神経障害性とう痛の患者さんの多くが、「アロディニア」と呼ばれる独特の痛みの発作を訴えます。アロディニアは、日本語では「異痛症」と呼ばれますが、触ったり、こすれたり、風が当たったりというような軽い刺激でも痛みを感じてしまう状態のことをいいます。

神経障害性とう痛が残りやすいのは、60歳以上の人、帯状ほう疹の初期のピリピリした痛みが強く出た人や、発疹が重症だった人です。50歳以上の約2割に痛みが残るという報告もあるので注意が必要です。また、神経障害性とう痛は長く痛みを残す場合もあります。患者さんによっては、6か月以上、場合によっては5~10年痛みの残る人もいます。

帯状ほう疹の治療

痛みの段階や種類によって使い分ける鎮痛薬

帯状ほう疹の痛みの治療で使用される薬はいくつかありますが、痛み止めは痛みの段階や種類によって使い分けられています。

まず、初期のピリピリした痛みには、炎症を抑える抗炎症薬が使われます。そして、神経障害性とう痛の痛みには、神経に作用する抗てんかん薬や抗うつ薬などが使われます。痛み止めの薬は、痛みの症状にもよりますが、腎臓の機能に影響が出るほか、眠気や便秘などの副作用が強く出るものが多くあります。

そのため、その人に合わせて注意しながら効果があるものを選択していく必要があります。ただし、合う薬を見つけるのは容易ではなく、内服量の調整にも時間がかかります。

痛みを長引かせない ペインクリニックや麻酔科での治療

皮膚科で抗炎症薬、抗てんかん薬、抗うつ薬などを使っても痛みが治まらないこともあります。
その場合は、ペインクリニックや麻酔科で、痛むところの神経やその付近を局所麻酔する神経ブロック注射や、脳や脊髄、末梢神経に作用する麻薬性鎮痛薬であるオピオイド鎮痛薬による治療が行われます。

まず、帯状ほう疹の発症からそれほど時間がたっていない場合は、痛みを和らげる可能性が高い神経ブロック注射を行います。局所麻酔薬を注射すると、最初は局所麻酔薬の作用時間である数時間で効果が切れてしまいますが、局所麻酔薬で神経の過敏性を抑えることによって、痛みが緩和されていきます。

そのほかに、医療用麻薬系の鎮痛薬を使用することもあります。痛みはできるだけ初期段階で緩和することが重要です。早い段階で緩和しないと、痛みの記憶が残り、痛みに敏感になって慢性痛という頑固な痛みになってしまいます。早めに痛みの専門医を受診して、治療を始めてください。

詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2021年11月号に詳しく掲載されています。

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