心アミロイドーシスとは
心アミロイドーシスとは、アミロイドという異常なたんぱく質が心臓の筋肉の中にたまることで、心臓の働きが悪くなる病気です。進行すると、心不全や不整脈などを引き起こして、命に関わることがあります。
アミロイドとは

アミロイドは、たんぱく質に異常が生じてできたもので、臓器にたまるとさまざまな症状を引き起こす原因になります。30種類以上のアミロイドが確認されており、心臓のほかにも脳や腎臓にたまるものがあるなど、種類によってたまる臓器や引き起こす病気が異なります。
心臓にたまるアミロイド

心臓にたまるアミロイドは主に2種類あり、そのうちの1つは加齢とともに増えるという特徴があります。このたんぱく質は、4つの構造がくっついていて血液中に存在していますが、加齢とともにこれらの構造がばらばらになることがあります。そして、ばらばらになった構造が糸くず状になり、それらが集まってアミロイドがつくられます。
手指のしびれとの関係

心アミロイドーシスを引き起こすアミロイドは、心臓だけではなく、手指の腱(けん)や神経にもたまりやすいことがわかっています。手指の腱にアミロイドがたまると、神経が圧迫されて、しびれや痛みが起こる手根管症候群の原因になります。

また、背中の脊柱管の周りのじん帯にアミロイドがたまると、脊柱管狭窄症(さく)症が起こり、腰や足にしびれや痛みが生じることがあります。
手根管症候群と脊柱管狭窄症の両方が起こることもあれば、片方だけの場合もあります。
手根管症候群や脊柱管狭窄症が起こったとしても、アミロイドーシスが原因だとは限りません。しかし、手根管症候群などで手術を受けた79人の手の組織を調べたところ、27人(約34%)の人の腱にアミロイドがたまり、そのうちの3人に心アミロイドーシスが起こっていたというデータがあります。
*Sugiura K,et al.Circ Rep.2021
アミロイドによる手根管症候群の特徴

手根管症候群は一般的に女性に多く、片側の手指にしびれが起こることが特徴ですが、アミロイドによる手根管症候群は高齢の男性に多く、両側の手指にしびれが起こるのが特徴です。
また、手根管症候群や脊柱管狭窄症は、心アミロイドーシスを発症する5~6年前からみられることがわかっています。
心アミロイドーシスの検査

2020年にピロリン酸シンチグラフィという、体への負担が少ない、新しい検査が行えるようになりました。この検査では、まず放射線を放つ特殊な薬液を注射してから、カメラで心臓を撮影します。この検査では、アミロイドが沈着していることが視覚的に確認できることが特徴です。この検査が行われるようになって、心不全のなかに心アミロイドーシスが、まれならず含まれることが明らかになりました。
心アミロイドーシスの治療
現在のところ、心臓にたまったアミロイドを取り除くことはできないため、心不全などの症状を和らげる治療や、新たにアミロイドがたまるのを抑える治療を行います。

2019年3月に心アミロイドーシスに対して健康保険が適用されたタファミジスという薬を使うと、アミロイドが心臓にたまるのが抑えられ、症状の進行を遅らせることが期待できます。ただし、この薬を使用するためにはさまざまな条件があるので、専門医に相談してください。