がんの種類・進行別の10年生存率から見る、がんとの向き合い方

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がん10年生存率 大規模データ

今までにもがん専門施設のデータを用いた10年生存率はありましたが、今回は「院内がん登録」という国が指定するがん診療病院240施設の約24万件のデータを用いて解析した、10年生存率の中でも最大規模のデータです。

縦軸は、がんの種類です。
前立腺がん、女性の乳がん、子宮内膜がん、子宮頸(けい)がん、結腸がん、大腸がん胃がんぼうこうがん、直腸がん、非小細胞肺がん、食道がん、肝細胞がん、肝内胆管がん、小細胞肺がん、すい臓がんと、計15種類のがんごとにまとめられています。

横軸は、がんのステージです。
ステージとはがんの進行度を示すもので、それぞれの“がん”ごとに基準がありますが、大きく、ステージ1から4の4段階に分けられます。

生存率の数字は、相対生存率で示しており、がん以外の原因で亡くなった要因を取り除くように調整されています。

がんの種類・進行別 10年相対生存率

特に注目ポイント

がん全体での生存率が、今回の調査では10年生存率が59.4%となりました。つまり、がんが見つかった人のおよそ6割が10年後も生きていたということがわかります。
また、このデータは2008年にがんと見つかった方のものです。現在、治療技術は進歩していると考えられるので、もう少し改善していることが期待されます。

10年生存率のミカタ

ステージ1でもがんの種類によって違うのはなぜ?

  • がんの進行する速さの違い
    例えば前立腺がんは、男性がかかるがんとして最も多いがんですが、比較的ゆっくりと進行する病気です。
    その一方で、小細胞肺がんは、増殖速度が速く、転移しやすいため、生存率が低い傾向にあります。
  • がんの進行度や治療の難しさ
    例えば、すい臓がんのようにステージ1であっても生存率が低いのは、早期であっても診断時にすでに切除できない場合もあるため、生存率が低くなっています。また、すい臓がんはがんが発生しても症状が出にくいため、早期の発見が簡単ではありません。
    そのためがんが見つかった時には比較的病期が進んだ方が多いのが現状です。

ステージが進行すると生存率がガクッと下がるのはなぜ?

  • ステージが進むと再発・転移のリスクが高くなります。
  • ステージ4は、遠隔転移がある状態を示し、一般には手術が難しくなるため、生存率が低くなります。

がんの早期発見が大切

国では科学的な根拠があるがん検診、つまりは国民のがんによる死亡を減らすことができるとされる5つのがん検診を推奨しています(乳がん・子宮頸がん・大腸がん・胃がん・肺がん)。
これら5つのがん検診を皆さんが受診することで、日本全体でのがんの死亡率を減らしていくことができると言われています。

国が推奨する5つのがん検診

記事『国が推奨する5つのがん検診の対象年齢や検査方法』

若い世代は消化器系のがんに注意

2018年、2019年にがんと診断された方について年齢別にがんの診断時のステージ分布を調査した結果、胃がん・大腸がん・食道がんなどの消化器系のがんで、がん全体に占める対象数は限られているものの、若い世代で比較的進行した状態で発見されている方が多いことが分かりました。

下記は、胃がんと診断された方のデータです。

年齢別に見た胃がんステージの分布

発見された年代とステージを見ると、20代ではステージ4で発見された人が45.3%、30代では29.7%、40代でも22.9%となっています。
いずれも患者数自体は全体の中で多くはないのですが、若い世代ほど進行した状態で見つかる割合が高くなっています。

若い世代でなぜがんが進行した方が多いのかは、今は明確な原因というのはわかっていません。今後調べていくべき課題です。
若い方でもがんと診断されるという方がいるということを皆さんに知って頂きたいと思います。また、がんの予防を含めて生活習慣を見直していくことも重要です。

がん10年生存率からより良く生きるためのヒントを探る

今回の調査結果から、がん全体の10年生存率は約60%という高い数字であったことがわかります。つまり、がんを患っても、長い間、生きられる可能性が高くなっているということです。

がんと診断されたからといって、絶望して自暴自棄になったりするのではなく、自分らしく充実した人生を歩めるよう意識を持って欲しいと思います。
また、医療関係者だけでなく、社会全体で患者さんや、家族を支えることも必要だと思います。
今は、がん治療も入院だけでなく、外来での化学療法等も増えていますので、中には、仕事や育児を続けながら治療をされている方もいます。そういった人が周りにいたら、仕事面や生活面で配慮をするなどサポートすることが大事だと思います。

今後の展望

こうした統計情報は、継続して公表していくことが重要です。
生存率は、1~2年で大きな変化があるものではないですが、継続することでどのような傾向や変化があるのかを捉えることが重要となります。
また、生存されている方の中にも、再発された方や合併症や後遺症で悩んでいる方もいるかもしれません。そういったデータも加え、よりがん治療と患者さんに役立てる研究にしていきたいと思います。

この記事は以下の番組から作成しています

  • きょうの健康 放送
    ここが聞きたい!最新ニュース 「がん10年生存率 大規模データ」