【あの人の健康法】声優・森川智之 ぜんそくと向き合う自己管理方法とは?

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セルフケア・対処 ぜんそく 呼吸器

トム・クルーズやキアヌ・リーブスなどハリウッドスターたちの吹き替えやアニメキャラクターの声を数多く担当してきた森川智之さん。順風満帆にみえる声優活動の影には絶望を味わった病との遭遇がありました。ぜんそくです。

声優の森川智之さん

突然の発症

ぜんそくを発症したのは40歳の時。大物スターの吹き替えやアニメキャラクターの主役など、休む暇もないほど働き、充実した日々を送っていた頃でした。

森川:最初はせきから始まりました。市販のかぜ薬を服用して『1週間くらいで治るだろう』と思っていたんです。だけど全然治らない。むしろひどくなるばかり。そしてある晩、枕元で『小鳥の鳴き声がする』と思ったら、実は「ひゅーひゅー」という「ぜん鳴」といわれる自身の呼吸音でした。その後、容体はますますひどくなり、自分のせきで体が飛び上がるような夜もありました。一晩中治まらずに翌朝になって病院に行くと、医師から告げられた病名は、“かぜ”ではなく“ぜんそく”でした。

40歳の頃にぜんそくの診断をうけた森川智之さん

ぜんそくは恐ろしい病気

実は森川さんは小さい頃、小児ぜんそくを患っていたと言います。

森川:ただ、自分は物心ついた時にはすでに治っていて、弟が重症でした。2段ベッドで一緒に寝ていたので、弟のぜん鳴が聞こえると親に報告に行き、救急車で病院に連れて行くということが何回もありました。だから“ぜんそく”は本人だけでなく家族もともに闘う恐ろしい病気というイメージがありました。

絶望の淵へ

40歳でぜんそくを発症した森川さん。仕事の関係者には秘密にしていました。

森川:自分の売り物は「声」なわけです。そののどにとって、ぜんそくは致命的と思えました。だって愛をささやく言葉の合間に「ひゅーひゅー」とぜん鳴が聞こえたら、またアクションシーンで息を切らせてセリフを言う時にせき込んでしまったら興ざめですよね。ぜんそくになったことを公表したら、今まで積み上げてきたものが崩れてしまうんじゃないか、と怖かったんです。

森川さんは、周囲に伏せたまま仕事を続けますが、長くは続きませんでした。

森川:あるとき、先輩方と収録中にせきが止まらなくなってしまい収録はストップ。また別の日に、という事態に。恐れていたことが現実になり、『もう声優の仕事を続けるのは難しいのかな』と絶望感を感じました。

森川智之さん

ぜんそくと向き合う

思い悩んでいた森川さんの救いとなったのは、普段から接していた声優仲間たちでした。

森川:声優さんって年代の幅が広いんです。10代から80代まで。だから控室でも和気あいあいと『どこそこが痛い』とか病気の話で盛り上がるんですね。その中で、ベテランの声優さんが『ぜんそくを持っててさ』と言うので、つい『実は僕もぜんそくになっちゃって…』と話したんです。そうしたら楽になりました。コミュニケーションをとって話すことで解決することもあるんだと思いましたね。

治療と副作用

森川:だから医師とも仕事のスケジュールを相談しながら治療を進めています。服用しているのは吸入ステロイド薬と気道を広げるのみ薬です。実は毎日服用するべき吸入薬には「声が枯れる」という副作用があり、仕事が立て込んでいる最中には服用していません。医師と相談しながら治療スケジュールを管理しています。その代わり病院には頻繁に通っています。一般の人がのどに異変を感じるよりも前、少しでも違和感があると医師に相談しています。今ではのどの、どの場所にどのくらいの炎症が起きかかっているのかを把握することができるようになりつつあります(笑い)

徹底した自己管理

ぜんそくと向き合うことの大切さを学んだ森川さんは、治療とともに徹底した自己管理にも取り組んでいます。

スタジオ写真

森川:ぜんそくの発作が出るのは夜、就寝する時が多いんです。乾燥が大敵ですから加湿器はもちろん、寝るときの対策はいろいろと考えています。

そこで、森川さんの就寝グッズを見せてもらいました。

就寝グッズ

フード付きのトレーナーとマスク、そしてタオルです。

森川:首を冷やさないように夏でもフードをかぶります。さらにタオルも首に巻きます。首には太い血管があるので、冷やさないようにするためです。これにマスクをつけて寝るわけです。ちょっとした不審者ですね(笑い)

森川さんの寝るときの対策

ぜんそくと向き合うにはコミュニケーションが大切だと語る森川さん。
メッセージに選んだ言葉は「夢言実行(むげんじっこう)」。

夢言実行と書かれた色紙を持つ森川智之さん

森川:特に病気を抱えながら自分のやりたいこと、夢を実現させるためには、周りの人や医師とコミュニケーションをとって突き進む、そんな心構えが大切だと思います。

この記事は以下の番組から作成しています

  • きょうの健康 放送
    あの人の健康法 「ぜんそくと向き合いながら」