首が痛い!原因を探るセルフチェック
日常生活の中で、下記に当てはまるものがないか、確認してみましょう。

①スマホやパソコンでの作業時間が多い
こちらに該当する人は、同じ姿勢を長く続けていることが多く、首がこって痛みが出ることがあります。
さらに「ストレートネック」になっている可能性があります。

本来、首の骨は、左の写真のように前方へカーブしています。このカーブによって、頭の重さなどの負担を緩和しているのですが、首の周囲の筋肉の緊張のバランスが崩れてカーブがなくなり、真っ直ぐになってしまったのが「ストレートネック」(右の写真)です。
「ストレートネック」自体は病気ではありませんが、カーブがないと衝撃を吸収しにくく、首に負荷がかかりやすいので、
首の筋肉がこったり、関節に障害が起きたりしやすくなります。
②首が下がってきた
こちらに該当すると、「首下がり症候群」という病気の可能性があります。ご高齢の方に最近増えている病気で、首が下がってきて、顔を上げにくい状態です。

どちらの写真も同じ患者さんですが、左の写真は寝ているときに撮影したX線です。その写真を立てて見ると、首が正しい位置にあり、首のカーブは、ほぼ正常になっています。
一方、右の写真は立った状態でX線を撮ったものです。患者さんは前を向いているつもりですが、首がかなり曲がって、頭が下がっていることがわかります。
首下がり症候群は、首の筋肉の筋力低下によって起こります。筋力が低下するのは、加齢が1つの要因と考えられていますが、他にも神経難病のパーキンソン病や、うつ病などが関係していることもあります。
③首を後ろに反らすと痛い 首から腕へ痛み
脳から手足への命令は、脊髄という神経の太い幹から枝分かれした「神経根」を通って伝わります。
首を後ろに反らすと痛いのは「神経根」が圧迫されているためかもしれません。

加齢変化により、神経の通り道が狭くなることで発症しますが、この症状を起こす首の病気には、代表的なものが2つあります。
1つは「けい椎症」です。

けい椎症は、加齢などにより、骨が変形してトゲのようになって、そのトゲが神経根を圧迫することによって起こります。
もう1つは、「けい椎椎間板ヘルニア」です。

けい椎椎間板ヘルニアは、椎間板の中身が飛び出して、神経根を圧迫することによって起こります。
「けい椎症」や「けい椎椎間板ヘルニア」では、神経根ではなく、神経の太い幹にあたる脊髄が圧迫される場合もあります。脊髄は、体のさまざまな部分を動かす脳からの信号を送る電線のような役割をしています。
その先には、手足を動かしたり、排尿や排便を司る神経もあるので、そこが圧迫されると、
④ボタンの掛け外しがうまくできない。
⑤足がもつれ歩きにくい。
⑥1日に10回以上トイレに行く(または夜間に3回以上)
などの症状が現れることがあるので、注意が必要です。
【神経が圧迫されていないかを確認する方法】
腕を伸ばしてパーの状態から「グー(握る)」→「パー(開く)」という動きをなるべく早く繰り返すというもので、10秒間で、どれだけできるかを見ます。
10秒間に20回以上できれば問題ありません。
10回できない場合には、神経が圧迫されている可能性があるので、病院で詳しい検査を受けましょう。
心配なときは詳しく検査

問診では、「どんな症状か?」「いつ頃から症状が出てきたか」などを聞きます。さらに、腱(けん)を叩いて神経の反応を見たりします。
診察を行うと、おおよそ脊髄あるいは神経根のどこが悪いか推測できます。そして、最終的にX線やMRIなどの画像検査を行い、骨に異常があるか、脊髄などの神経が圧迫されていないか調べます。診察所見と画像所見でおおよそ見当がつきますが、疑わしいところがいくつかある場合には、神経ブロック注射という、痛みを緩和するための注射を行う場合があります。
もし、ある神経根にブロック注射をして、痛みが緩和されれば、そこが圧迫されていることが原因だとわかります。
症状が軽い場合は保存療法

けい椎症や、けい椎椎間板ヘルニアでも症状が軽い場合は、保存療法で経過を見ます。
「けい椎カラー」と呼ばれる首を固定する装具をつけて、首の動きを制限し、首を安定させて負担を軽減します。
また、「温熱療法」といって、首や肩の周辺を温め血行を促進したり非ステロイド系の消炎鎮痛薬などの「内服薬」で痛みを和らげます。それでも効果が見られない場合や、痛みが非常に強い場合には、「神経ブロック注射」などを行い、痛みを緩和させます。
首の痛みは、このような保存療法だけでも、自然に治癒する場合があります。
【けい椎症の例】
炎症が起きている神経根は、すごく腫れていますが、保存療法をすることで炎症が治まり、腫れが取れると、神経の圧迫も弱くなり、症状が改善してきます。
【けい椎椎間板ヘルニアの例】
椎間板の中身が飛び出して神経を圧迫することで発症しますが、神経を圧迫しているヘルニアの部分を、免疫細胞が異物とみなして攻撃します。
それによってヘルニアが消失すると、結果的に痛みが取れ、完治することもあります。
手術を考えるとき

手術を考えるのは、先ほどご紹介した保存療法やストレッチなどを行っても改善が見られない場合です。
見極めとしては、「手の細かい動きができない」「歩行障害」「頻尿などの排泄障害」などの症状があったり、「痛みやしびれのために日常生活に支障が出ている」場合に検討します。
代表的な手術法
椎弓形成術
「椎弓形成術」といって、最も多く行われている手術です。「けい椎症」や「けい椎椎間板ヘルニア」などで、脊髄が広範囲にわたって圧迫されている場合に行います。


手術前は、けい椎症のために骨にできたトゲが脊髄を圧迫しています。そこで、扉を開くように首の骨の後ろ側の部分を開き、脊髄の通り道を広げます。

開いた部分は、人工骨や金属などで固定します。こうすると脊髄の周りに余裕ができ、圧迫がなくなります。
このとき、骨のトゲ自体は取り除きません。骨のトゲは、通常、首の前側にできていて後ろからでは取り除けないためです。
それでも、脊髄の通り道が広がって余裕ができると圧迫がなくなるので、骨のトゲはそのままでも症状が改善します。
前方除圧固定術

もう1つは、「前方除圧固定術」というもので、脊髄などの圧迫部分が狭い範囲に留まっている場合に行います。
この手術は首ののど側から手術を行います。


脊髄を圧迫している骨のトゲや椎間板そのものを直接取り除きます。
切除して出来た空間には、人工骨やチタン製のインプラントなどを埋め込みます。骨と人工骨が結合するのに半年ほどかかります。
この前方除圧固定術では、後ろの筋肉組織の損傷を防ぐことができますが、人工骨を入れると、その部分の関節が動かなくなるので、長期的に見ると、治療を行なった上下の骨や椎間板に負荷がかかり、傷んでくる可能性があります。
そこで、登場したのが、「人工椎間板」という新しいインプラントを使う手術です。
人口椎間板を使った手術


この人工椎間板は、関節のように動くようにできています。
取り除いた椎間板の代わりに、このように自然に動く「人工椎間板」を入れることで、特定の部分に負担が集中するのを防ぐことができます。
厚労省の認定を受けた、全国18施設で手術が開始されましたが、現在では、受けられる施設は、少しずつ増えています。
首に負担のかかる姿勢


携帯電話やスマートフォン、本を読むときなどは注意が必要です。首が下向きになり、首に負担がかかります。スマホの画面を長時間見続けるときには、首が著しく曲がった姿勢にならないようにできるだけ、スマホを目線の高さまで上げて持つようにしましょう。

いすに浅く腰掛けて背もたれに寄りかかる姿勢も首に大きな負担をかけてしまいます。このような姿勢は避けるように心がけましょう。
首の痛みを予防する筋トレとストレッチ
首の筋肉は、胸側は「大胸筋」、背中側は「僧帽筋」につながっています。首の筋肉だけでなく、首の周りの筋肉もストレッチすると効果的です。
首周りのストレッチ

(1)腰に両手をあて、背すじを伸ばし、胸を張ります。

(2)両ひじを少しずつ、後ろに回し、左右の肩甲骨をできるだけ寄せるようする。
(3)その状態で、5秒間キープしたら、力を抜いて元の姿勢に戻る。
【回数】
10回1セットとして、1日に2~3セット行う。
肩甲骨周りのストレッチ

(1)足を肩幅程度に開き、リラックスする。両ひじを曲げたまま、肩の高さくらいまで上げる。

(2)肩甲骨を中央に引き寄せるように、両ひじをグーっと後ろに引いていく。
10回ほど行うと、肩甲骨周りをほぐすことができます。
首の筋トレ
首下がり症候群の予防になります。

【首の上側の筋肉の鍛え方】
(1)あおむけになり、体の力を抜く。
(2)あごをゆっくり上げ、息を吐きながら頭頂部を床に3秒間押し付ける。
(3)息を吸いながら元の姿勢に戻る。

【首の下側の筋肉の鍛え方】
(1)あおむけになり、体の力を抜く。
(2)あごを引き、そのまま後頭部全体を床に3秒間押し付ける。
(3)力を抜きながら,もとの姿勢に戻る。
【回数】
10回1セットとして、1日に2~3セット行う。
※無理をせず、自分のペースで行いましょう。
※首や背中に痛みを感じたら中止してください。