自粛生活の長期化により、身体機能や認知機能が低下した状態「フレイル」が悪化し、要介護や寝たきりのリスクが高まっています。いま気をつけたいこととは?専門医からのメッセージです。
自粛生活がさまざまな「衰え」を加速させる
新型コロナによる自粛生活の長期化で生活不活発になり、最終的には要介護や寝たきりになっているリスクが高くなるという最新の研究が出ています。

「フレイル」とは、健康と要介護・寝たきりの間にある状態のことです。

大きく3つの要素があり、ひとつは筋肉の質や量などが低下する身体的な衰え。次に認知機能が低下したり、うつ状態になったりする認知・心理的な衰え。そして人とのつながりが減って、閉じこもったりする社会的な衰えです。
3つの要素の衰えとその影響
私たちが行った調査で、フレイルの要素3つ全てにおいてコロナ感染以前と比較して機能が低下していることがわかってきました。

まず身体機能では筋肉の衰えです。特におなかや背中に代表される体幹部分における筋肉の減少が認められました。46人を調べたところ、大半を占める40人の方々にその筋肉量の減少が認められました。平均で約1.6kgでした。

また、ふくらはぎも半数以上24人の方々が細くなるという、脚の筋肉の衰えが確認されました。筋肉量の低下は、歩きにくくなったり転倒しやすくなるだけでなく、免疫力の低下や血糖値の管理が難しくなるなど、さまざまな悪影響を及ぼします。
続いて会話量の減少などによる認知機能の低下についてです。
「タタタタタ」や「カカカカカ」など同じ言葉を連続して速く1秒間にどのくらい言えるかという、いわゆる滑舌のチェックをしてみたところ約半分の方々が低下していることがわかりました。
これは自粛生活により、会話量の減少によってお口の機能が低下したことを示しており、認知機能の低下や精神状態の悪化が危惧されます。
3つめは社会的な衰えです。

外出頻度や、一日一回以上誰かと食事をしていますか、という質問で調べたところ、46人中半数以上の24人の方々に「人とのつながり」が減少していることがわかりました。
フレイル悪化を防ぐために いまできること
新型コロナでなかなか外出できない状況でも身体活動や、人とのつながりを維持し続けることはとても大切です。いくつかの具体的なアイデアをご紹介します。
身体機能を維持「ご近所の魅力再発見」

散歩をしながら、公園に咲く花など、途中で見つけたうれしい風景をスマホで写真に撮り、送りあってはいかがでしょうか?
ウォーキングによる健康の維持だけではなく、人とのつながりにもなります。写真が撮れない方でもウォーキングなどは是非とも積極的に行ってください。
パタカラ体操
認知機能や、お口の健康を維持するのにおすすめのが「パタカラ体操」です。
唇や舌の動きに意識をおきながら、「パ」「タ」「カ」「ラ」「パタカラ」「パタカラ」と何度も連続して発音してみましょう。

さまざまなタイプの口の動きを繰り返すことで、口やのどの衰えを防ぐことができます。
手紙などで人とのつながりを維持する
最後に地域社会とのつながりについてです。
今はオンラインによる「つながり」が注目されていますが、苦手な方もいらっしゃるかもしれません。そういった方は、手紙など昔ながらの方法を試してみてはいかがでしょうか。

趣味やサークル仲間、遠く離れた親戚に、手紙で近況を伝える。
手書きの絵や、写真、折り紙を添えるとより気持ちが伝わります。電話で近況を報告するのも有効です。
感染拡大をおさえるため、人との接触は減らさなければなりませんが、大切にしてきた人とのつながりはぜひとも維持してください。
【医師からのメッセージ】
フレイルの悪化を防ぐことは健康長寿につながります。これをきっかけに健康にプラスになる新しい習慣をぜひとも身につけましょう。