【食道がん】術後の肺炎が激減!最先端のロボット手術と縦隔鏡手術とは?

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食道がん のどがおかしい やせてきた 胃・腸・食道

食道がんの治療の中心は手術

食道がんは早期に見つかれば内視鏡で治療を行うことができます。しかし、早期にはほとんど症状がないため、ある程度進行した段階で発見される人がおよそ8割を占めます。「進行がん」と聞くとショックを受けてしまいますが、今は治療法が進歩し、進行した食道がんであっても完治できるケースが増えています。

ステージ別 食道がんの治療

食道がんは0期~Ⅳ期の5つのステージに分類されます。
ステージⅠでは、まず手術でがんを取り除きます。手術で取った細胞を顕微鏡で調べて、リンパ節転移が明らかになった場合には、術後に抗がん剤を追加することもあります。
ステージⅡとⅢについては、「術前化学療法」といって、まず最初に抗がん剤でがんをある程度小さくしてから、手術でがんを摘出する方法が現在主流になっています。術前化学療法には、CTやPETでもわからないような小さな転移も手術前に治療しておく目的もあります。
つまり、食道がんの多くを占めるステージⅠ~Ⅲで、手術が第1選択となっているのです。

CT検査とPET検査についてはこちら
食道がんの内視鏡治療や化学放射線療法とは?

食道がんの手術とは?

現在、食道がんの手術法には、4つの方法があります。

  • 開胸手術
  • 胸くう鏡と腹くう鏡手術
  • 縦隔鏡(じゅうかくきょう)手術
  • ロボット支援下手術

いずれの術式を選択しても、切除する範囲は同じです。

食道の真ん中あたりにがんができたときの切除範囲

日本人の場合、食道の真ん中辺りにがんができるケースが約90%と報告されています。この場合、のどの部分の数センチだけ食道を残して、そこから下の食道すべてと胃の一部を切除します。食道の周りにはリンパ節が豊富に存在していて、転移しやすいことがその理由です。確実にがんを取り除き、再発を予防するため、これだけ広範囲を切除する必要があるのです。

胃を使って食道を再建する

食道を切除した後は、多くの場合、胃をつり上げてのどのところに残した食道とつなぎ合わせます。胃がんの治療で胃を切除した場合など、胃を使えない場合は大腸や小腸の一部を使って、食道を再建することもあります。
胃を使って食道を再建した場合は、手術前のように胃にたくさんの食べ物をためておくことができないため、食事指導を受けながら自分に合った食べ方を身につけていく必要があります。

大手術中の大手術!食道がんの手術が難しいワケ

開胸手術

開胸手術 切開する部位

4つの術式の中で最も歴史が古く、現在も食道がん手術全体の4割を占めるのが開胸手術です。
開胸手術では、右胸の横にメスを入れ、ろっ骨を切って右肺をしぼませて、食道にアプローチします。さらに、胃の一部を切除したり、胃とのどの食道をつなぐために、おなかとのども切開します。このように同時に3か所も切開する手術は他になく、非常に大がかりな手術になります。食道がんの手術が「大手術中の大手術」と呼ばれるゆえんです。

開胸手術は傷が大きいため、患者の体の負担が大きく、回復に時間がかかります。また、術後に肺炎や声のかすれ、縫合不全など、何らかの合併症が40%ほどの確率で起こると報告されています。

食道がん手術の主な合併症

胸くう鏡と腹くう鏡手術

胸くう鏡と腹くう鏡手術の切開部位

胸くう鏡と腹くう鏡を使った手術は、開胸手術に比べて傷が小さく、ろっ骨を切らずに済みます。そのため、術後の痛みは比較的軽くなり、回復も早まります。
一方、胸くう鏡手術でも片方の肺をしぼませなくてはならないので、術後の肺炎の発生はあまり減っていないことが最近の研究で明らかになってきました

※ Yoshida N, Seto Y, et al., “Can Minimally Invasive Esophagectomy Replace Open Esophagectomy for Esophageal Cancer? Latest Analysis of 24,233 Esophagectomies From the Japanese National Clinical Database” Annals of Surgery Volume 272, Number 1, July 2020

術後の肺炎を減らしたい!新しい縦隔鏡手術とは?

縦隔鏡手術の切開部位

縦隔鏡手術は2018年に保険適用になった新しい術式です。「縦隔」とは、肺と肺の間にある空間のことで、縦隔鏡手術ではのどとおなかを小さく切開し、そこから手術器具を入れて上と下からトンネルを掘るように食道とリンパ節を切除します。このように、縦隔鏡手術ではこれまで必須だった片方の肺をしぼませる必要がないため、肺への負担を大きく減らすことができます。一方で、狭い空間での操作になるため、非常に高度な技術が要求されます。

最先端のロボット手術

最先端のロボット手術

写真:東京大学医学部附属病院 瀬戸泰之教授

同じ2018年、食道がんに対するロボット支援下手術(以下、ロボット手術)が保険適用になりました。
ロボット手術では、コンソールと呼ばれる操縦席に座った医師が、患者から離れた場所からロボットを操作します。ロボットのアームには医師の手の動きが伝わり、手術を行うことができます。

人間の手と手術ロボットの「手」の比較

写真:東京大学医学部附属病院 瀬戸泰之教授

ロボットの手は非常に小さくて人間の関節よりもよく動く上に、手ぶれ防止機能なども搭載されています。そのため、ロボットを使って縦隔鏡手術を行うことで、非常に狭い空間でもより正確に、より安全に手術を行うことが期待できます。実際、ロボットを使った縦隔鏡手術では、術後の重い肺炎の発生が、従来の手術に比べて大幅に減ったという報告もあります。

ただし、縦隔鏡を使ったロボット手術は、現在のところ限られた医療機関のみで実施されています。保険適用になったことで、今後実施する医療機関が増えていくと予想されます。

ロボット手術について詳しくはこちら

詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2021年1月号に詳しく掲載されています。

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