乾せんってどんな病気?
乾せんは免疫の病気です。表皮の新陳代謝の周期が短くなって表皮が厚く(赤く)なります。そして、皮膚の角質がポロポロと剥がれ落ちます。また患者さんの半数ぐらいはかゆみを訴えます。

乾せんの種類① 尋常性乾せん
最も多いのは「尋常性乾せん」。乾せん全体のおよそ80%を占めています。一般的に乾せんというと、この尋常性乾せんのことを指します。尋常性とは普通という意味です。このように比較的境界がはっきりした発疹が現れます。発疹の形は少し違いますが、両方とも乾せんの典型的な症状です。

乾せんの種類② 乾せん性関節炎
「乾せん性関節炎」は、乾せん全体の15%ぐらいと言われています。
皮膚症状に加えて、関節やアキレス腱(けん)などの痛みや腫れ、変形といった関節症状が出るタイプです。関節リウマチと間違われやすいのですが、違う病気です。関節が変形してしまわないように積極的な治療が必要です。

原因は免疫バランス
乾せんの発症原因は、まだ全てが明らかになってはいませんが、乾せんになりやすい遺伝的な要因を持った人にさまざまな環境的要因、例えば、ストレスや生活習慣の乱れ、飲酒や喫煙、感染症などが複雑に関与して免疫バランスの異常が起こり、乾せんの発症につながると考えられています。
正常であれば、皮膚の一番外側にある表皮は、28日~45日程度のサイクルで新しい表皮に生まれ変わっています。しかし、乾せんの場合は、免疫バランスに異常が起きて正常のおよそ10倍のスピードで新しい表皮を作り出して増殖します。


これは、皮膚を作り出すように命令をする免疫細胞がなんらかの原因で異常に活性化するためです。活性化した免疫細胞は、たんぱく質「サイトカイン」と呼ばれるものを作り、表皮の増殖や炎症を起こします。
さらに、発疹のような目に見える炎症だけでなく、体内部の炎症も進行して、血管の障害や、動脈硬化を促進し、心筋梗塞などのリスクが増加します。つまり、皮膚疾患から、全身性の疾患にまでつながってしまう可能性があるのです。
症状に合わせた治療方法

ぬり薬の治療は、ステロイドや、活性型ビタミンD3軟こうなどを患部に塗るというものです。これによって活性化した免疫細胞を落ち着かせたり、表皮細胞のターンオーバー異常を整えたりします。
のみ薬は、過剰に活性化した免疫細胞を抑制したり、調節したりする薬で、免疫の正常化を図ります。
※2022年9月に、新しいメカニズムののみ薬(TYK2阻害薬デュークラバシチニブ)が承認されました。
その他には、光線療法というものがあります。ナローバンドUVBなどがあり、これらの紫外線には、過剰な免疫反応を抑制する作用があります。また、制御性T細胞という免疫を調節する司令塔の細胞を増やすことで、活性化した免疫細胞を落ち着かせる作用もあります。
さらに近年、毎年のように開発が進んでいるのが、生物学的製剤です。これは皮下注射や点滴などの方法で投与します。
炎症に関わるサイトカインをピンポイントで抑制して症状を改善するというものです。高額治療にはなりますが、症状を抑える効果が非常に高く、これまで治療が難しかった乾せんの特効薬として注目されています。

現在は10剤もの薬が使えるようになり、皮膚によく効くものや、関節によく効くもの、即効性があるものなど、さまざまな特性があります。患者さんの症状や、基礎疾患、重症度によって使い分けることが可能です。選択肢が多くなり、もし治療効果がうまく出なくても他の製剤に変更できる利点があります。
現在、このような治療法を用いて、症状がほぼ気にならない状態(寛解)にまで治すことが可能になっています。約9割の症状は抑えることが可能になりました。まだ誤解されている方が多いのですが、乾せんは決してうつりません。乾せんは慢性の病気ですが、早くから良い状態にコントロールをすることが重要です。
お困りの方はぜひ、皮膚科医にご相談ください。