災害時、安全に避難するために必要なバランス力を鍛えるトレーニング方法

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災害時のケガの危険

地震や水害など、災害はいつ襲ってくるかわかりません。
避難する際には、道に木や看板が倒れている、道がぬかるんでいたり水がたまっていたりして歩きにくい、高台まで坂道を上って長距離移動しなくてはならないなど、さまざまな障害を乗り越えなければならないことも想定されます。とっさに正しい姿勢をとれないと、転倒したり、膝や腰に負担がかかってケガをしたりする危険が出てきます。

災害時に起こりえるケガする危険がある状況

その際に大切なのが、止まっている時にも、活発に動いている時にも身体を安定させる“バランス力”です。
よく「バランス感覚」などと言いますが、バランス力は漠然とした「感覚」ではなく、関節の可動域・柔軟性・各部位の筋力・それらを支配する認知機能などが密接に関係しています。

まずはバランス力をチェック

※痛みを感じたら中止してください。

  1. 椅子の後ろに立って背もたれに両手を伸ばします。
  2. 「いーち、にー、さん」と声を出しながら片脚を軸に左右に荷重移動します。
  3. 「さん」のところで静止して姿勢を維持してみてください。
  4. 余裕のある方は両手を広げてやってみてください。(転倒に注意)
バランス力をチェックする方法

両肩を結んだ線が地面と水平になっていればOKです。
片方の肩が下がってしまう人は、支えになっている脚側の腕をまっすぐ上にあげてみましょう。

片方の肩が下がってしまう人は、支えになっている脚側の腕をまっすぐあげる

この時バランスをとるために働いているのが腰の横側の筋肉、中臀筋(ちゅうでんきん)です。
筋肉の場所と動きを意識しながら上記のチェックを行うことで、エクササイズとしての効果も期待できます。

中臀筋の場所

腹横筋のトレーニング

※痛みを感じたら中止してください。

バランスをとるために重要な筋肉はほかにもあります。そのひとつが腹横筋です。三層に重なっている腹筋の中で、一番深いところにあります。
この筋肉が衰えると身体がブレやすくなります。

腹横筋の場所

仰向けになって腹横筋を鍛えましょう。

  1. 仰向けになったら、おなかを膨らますように息を吸います。
  2. そして、おなかをへこますように息を吐きます。
  3. 最後の一息で、腹横筋にぐっと力を入れましょう。

仰向けで腹横筋のトレーニング
腹横筋の場所を意識して深呼吸

朝起きた時などに深呼吸に加えてやってみるといいでしょう。回数を行うことよりも、腹横筋の場所を意識することが大切です。
立っているときも座っているときも、意識して、そこに軽い緊張を持つようにすると、背中の筋肉と協力して腹横筋が働くようになり、姿勢がよくなって、腰痛予防にもなるといわれています。

動いているときもバランス力

歩いている時にはさまざまな方向から力が加わります。特に坂や段差では身体に負担がかかりやすくなるので、バランス力が重要になります。

脚を上げて歩いたり走ったりして身体を移動させたり、外からかかる力を制御したりする際に重要な筋肉が、股関節の運動にかかわる腸腰筋です。
腸腰筋は背骨と脚、上半身と下半身をつなぐ筋肉です。

腸腰筋の場所

腸腰筋のトレーニング

※痛みを感じたら中止してください。

かけ声に合わせてももを上げることで腸腰筋を鍛えます。

  1. 転倒防止のため身体の横に置いた椅子の背もたれに手を添え、「1、2、3」の掛け声に合わせてももを上げます。
  2. 3で上がったほうのももを引き上げたまま静止してみましょう
  3. 余裕のある人は椅子から手を放してやってみましょう。(転倒に注意)

腸腰筋のトレーニング
腸腰筋のトレーニング 姿勢に注意

このとき姿勢に注意です。腰が丸まったり、脚を上げようとして反り返ったりしないように注意しましょう。

下半身の筋肉も重要

動いているときバランスを保つには、下半身の筋肉も重要な役割を果たします。大臀筋(だいでんきん)はお尻の外側の筋肉で、足を後ろに伸ばして蹴りだす動きに関わります。
大腿四頭筋は太ももの前側、ハムストリングスは太ももの後ろ側の筋肉です。大腿四頭筋、ハムストリングスは膝の曲げ伸ばしにも重要な役割を果たすと同時に、股関節の曲げ伸ばしにもかかわっています。

大腿四頭筋、大臀筋、ハムストリングスの場所

下半身の筋肉を鍛えるスクワット

※痛みを感じたら中止してください。

下半身の筋肉を鍛えるのがスクワットです。椅子を使って行います。

  1. 椅子に座った状態で膝とつま先は同じ方向に向けます。
  2. ももの付け根に手を当てます。
    椅子を使って下半身の筋肉を鍛える
    ももの付け根に手を当てる
  3. 骨盤を立てて身体を前傾させていき、足元で身体を支えているという感覚が出たら、のれんをくぐるような感覚で立ち上がりましょう。
    下半身を鍛えるスクワット
  4. 座るときは顔を前に向け、股関節を曲げるようにしてお尻を引いていきます。
  5. 座面にお尻が着く直前、紙3枚分くらいの隙間を開けてストップ、数秒その姿勢を保ってからゆっくり着座します。

ハムストリングスのトレーニング

※痛みを感じたら中止してください。

太ももの裏側、ハムストリングスを鍛える運動です。

  1. 仰向けに寝て、身体全体がまっすぐになるようにももを引き上げます。
  2. 大臀筋と一緒にももの裏側のハムストリングスが緊張しているのを意識しましょう。
  3. その姿勢のまま5~10秒キープします。

ハムストリングスのトレーニング
大臀筋と一緒にハムストリングスが緊張しているのを意識する

筋力トレーニングでは、回数よりも正しい動きの意識が大切です。効果が出るまでには時間がかかるので、続けることが大事になります。焦らずじっくり続けましょう。

運動後のストレッチも忘れずに

※痛みを感じたら中止してください。

筋肉を鍛えた後にはストレッチも忘れずに行いましょう。
太ももの前の筋肉、大腿四頭筋はうつ伏せに寝て足首をお尻に引き付けて伸ばします。手が届かない人は、足首にタオルなどをかけて引き寄せるとよいでしょう。

運動後のストレッチ

太ももの後ろ側ハムストリングスも伸ばしましょう。
伸ばす側の脚を前に踏み出します。そのままお尻を引くように前傾します。手を前に伸ばすとより効果的です。このとき、前に出した脚の膝はまっすぐに、つまさきは、できれば足の甲側に起こしてみましょう。ただし、痛みなどが生じる場合は中止してください。

ハムストリングスをのばす

日常生活の中の動きを見直す

忙しくて、ついつい運動を後回しにしてしまいがちな人は、日常生活の中にある運動を見直してみるのもよいでしょう。
たとえば床に座るときは、座布団などでお尻を高くし、骨盤を立てて前傾させ、視線を前に向けることを意識してみます。骨盤が立って座りやすいだけでなく、腹横筋と、背中の筋肉が協力して働くので、この姿勢を意識することが静かなトレーニングになります。

日常生活での動きを見直してバランス力を鍛える

自分の身体のいろいろな部分を、日頃からほんの少し意識して動かすことが大切です。
時々、自分の日常の動作を振り返って思い浮かべてみましょう。「一日腕を上げていないな」「あの動作をしたときに少し腰が痛かったな」などと気がつけば、自分に足りない運動がわかってきます。

災害時に自らの身を守るときに必要な「バランス力」ですが、普段の生活でも重要です。日頃からほんの少し意識して、小さな変化からトライしてみてください。

詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2020年10月 号に掲載されています。

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