地震や水害など、災害はいつ襲ってくるかわかりません。
もちろん、命を守ることが何より大切ですが、無事に避難できたとしても、不慣れな避難生活の中で生活リズムが崩れ不活動状態になると、健康状態が悪化してしまうことがあります。
避難生活で起こる健康への影響

過去の災害では「歩行困難」や「腰痛」が多くみられました。高血圧や糖尿病などの「生活習慣病の悪化」「心肺機能の低下」「エコノミークラス症候群(肺血栓塞栓症)」のリスクも高まります。心の問題では、「PTSD(心的外傷後ストレス障害)」や「うつ」。また「睡眠障害」「認知機能の低下」も被災地で多く起こっています。
これらの問題の一番大きな原因は不活動状態(動かない状態)になりやすいことです。運動不足によって、「夜、眠れない」「生理機能が低下する」「同じ姿勢を続けるために腰や膝が痛む」などのことが起こり、さらに動きたくなくなる悪循環につながってしまいます。
そのため、少しでも体を動かすことが大切です。
座りっぱなしは猫背をまねく

避難所では長時間床に座りっぱなしの生活を強いられがちです。すると本来S字カーブを描く背骨が曲がったままになってしまいます。
猫背の状態が続き、骨格がゆがんだり、筋肉が固まったりすると、体が動かしにくくなったり、腰や膝の痛みを強く感じやすくなります。また、前かがみの姿勢が続くと、息苦しく感じることもあり、さらに体を動かさない悪循環に陥ります。その結果、歩行が困難になってしまう例も少なくありません。
簡単にできる猫背チェック法
※痛みを感じたら中止してください。
チェック法①
- 足を肩幅に開き、両腕を前に伸ばします。
- いったん親指が内側になるよう回したあと、親指が外側になるよう逆側に回します。
- そのまま両腕を降ろして体の後ろへ持っていき、両腕の幅を狭めます。

両手が腰の後ろに隠れなかったら要注意です。
チェック法②
- 足を肩幅に開き、両腕のひじから小指までを胸の前でくっつけます。
- そのまま両腕が離れないようにしながら、腕を上にあげます。
- このとき上半身が反り返らないように気をつけてください。

ひじが鼻の高さまで上がらなかったら要注意です。
どこでもできる猫背対策運動
上記のチェックで猫背の可能性がある人は、次に紹介する猫背対策の運動にチャレンジしましょう。
※痛みを感じたら中止してください。
猫背対策運動①肩の動きを大きくする運動
- 足を軽く開き、両腕を左右に伸ばします。ひじを軽く曲げて、親指を立てます。
- 親指を無理のない範囲で肩口につけ、両ひじを開きます。
- 両ひじを前から後ろに大きく回します。肩甲骨が大きく動くのを意識してください。
- 反対回しは肩関節への負荷を避けるため、小さく回します。
- 前から後ろ、後ろから前、と繰り返し回します。
猫背対策運動②上半身の筋肉を動かす運動
- 足を肩幅に開き、両方の手のひらを頭の後ろに当てます。
- ひじを開き、上を向きます。息を吸いながら、胸をそらしていきます。
- 次に、両ひじを閉じて、背中を丸めます。おへそを見ながら、息を吐いていきます。
- この2つの動作を繰り返します。1つの動作に5秒から10秒かけて2~3回行います。
この運動で、体の前側の筋肉のストレッチと、背中側の筋トレ効果が期待できます。
特に、前かがみの姿勢が続いたときにおこなうのがオススメです。
エコノミークラス症候群(肺血栓塞栓症)を予防するストレッチ
エコノミークラス症候群は、脚などにできた血栓が肺に飛んで肺の血管が詰まってしまう病気です。血栓予防には水分補給や日中の活動量を上げることが大切です。さらに、血行が停滞して血栓ができやすい、ふくらはぎのストレッチをおこないます。
※すでに血栓ができている可能性がある人は運動せず医療機関を受診してください。
※不安定になってしまう人はイスや壁などの支えに手を添えてください。
- まず足を肩幅に広げ、つま先とかかとがまっすぐ前を向くように意識します。
片足を後ろに引き、後ろの足のかかとに体重をかけ、ふくらはぎの筋肉(腓腹筋)をよく伸ばします。
- 次に、腓腹筋の内側にある筋肉、ヒラメ筋を伸ばします。
後ろの足を少し前に戻し、後ろのひざを曲げながら体重をかけます。
- 1回のストレッチにつき10~20秒おこないます。朝昼晩、あまり動いていないなと思ったときにおこなってください。
災害に備えるためにふだんから運動を
「持久力」を鍛えるウォーキング、「筋力」を鍛えるスクワット、「柔軟性」を鍛えるストレッチなどもしておきましょう。さらにこれら「持久力」「筋力」「柔軟性」を兼ね備え、体をバランスよく思った通りに動かせることが大事です。日常的な動作でもそのことに気をつけ、自分に足りないものがあれば、それを補う運動を重点的に行いましょう。
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災害の備えには、「自分で自分の身を守る」という考え方が必要です。いざという時に自分の身を守る体力や身体を持つことが望ましいのです。例えば地震が起こったときには、沿岸部では、高くて頑丈な建物や高台に逃げる、など具体的な避難を想定した体力づくりが必要です。