子宮頸(けい)がんとは
子宮のがんには、「子宮頸がん」と「子宮体がん」の2つがあります。どちらも名称に子宮が付いており、似ている感じがしますが、全くの別物です。

子宮頸がん(癌)は、子宮の入り口(子宮頸部)にできるがんです。病気にかかっている人が最も多いのは40歳代ですが、20歳代後半から増えてくるため、若い人も注意が必要です。

子宮頸がんの原因は、「ヒトパピローマウイルス(HPV)」というウイルスで、主に性交渉によって、男女を問わず感染します。性交渉の経験のある女性は、生涯で約80%が感染していると推計されています。若い世代に増えている背景には、性交渉の若年化があると考えられています。

HPVは、皮膚にいぼをつくるウイルスで、100種類ほどあります。このうち、十数種類の「ハイリスク型」と呼ばれるものが、子宮頸がんを引き起こします。ただほとんどは、体に備わっている免疫の働きで、自然に排除されます。しかし、約10%は排除されずに残り、そのうちのごく一部が細胞を変化させます。これを「異形成(いけいせい)」といいます。そして、異形成のごく一部が、数年から十数年かけて、子宮頸がんに進展します。
異形成があると診断された場合は、約4~6か月ごとに通院して、がん化していないかどうか、経過観察するのが一般的です。
大切!経過観察は長期間にわたることもあるが、途中で中断してしまうと、早期がんを見逃すことにつながる。通院を続けることが大切。
子宮頸がんの症状

- 初期
症状ほとんどなし - 進行した場合に現れる自覚症状
生理(月経)のとき以外の出血、性行為による出血、茶褐色・黒褐色のおりものが増えるなどおりものの異常、足腰の痛み、血の混じった尿 など。
子宮頸がんワクチン

原因となるHPVの感染そのものを予防するためのワクチンもあります。
- 対象
9歳以上の女性 - 定期接種の対象年齢
小学6年生~高校1年生相当 - 費用
自治体によって異なる。小学6年生~高校1年生相当の女性は原則的に無料で受けられる。定期接種の対象外の年齢の場合は自己負担。 - 副作用
発熱、接種部位の痛みや腫れ など。ごくわずかな方に、接種後、多様な症状が現れると報告されていますが、因果関係は明らかではありません。
日本では子宮頸がんで亡くなる人は、年間約3千人に上ります。HPVの感染を予防するワクチンの有効性とリスクをよく理解したうえで受けましょう。
子宮頸がんの治療

早期がんは、手術や放射線治療を単独で行う治療が中心です。少し進行したがんは、手術後に抗がん剤治療や放射線治療を加えるなど、がんの進行度によって3つの治療法を組み合わせていきます。年齢やほかの病気、妊娠の希望なども考慮し、担当医や家族とも十分相談したうえで、納得できる治療法を選択してください。
子宮を残す温存手術
早期のがんで妊娠の希望がある場合は、子宮を残す温存手術を検討します。

【レーザー蒸散(じょうさん)術】
・異形成が対象
・頸部の病変をレーザーで焼く方法
・外来や日帰りでの治療が可能

【円錐(えんすい)切除術】
・レーザーや超音波メスを用いて、子宮頸部の一部を円錐状に切り取る
・妊娠・出産は可能だが、流産・早産のリスクがわずかに高くなるといわれている

【広汎(こうはん)子宮頸部摘出術】
・子宮頸部をやや広い範囲で切除し、残った子宮体部と腟(ちつ)を縫い合わせる
・比較的早期のがんで、妊娠の希望がある場合などに行われている。ただし、流産・早産のリスクが高くなり、分べんは帝王切開になることがある
・実施している施設は限られているため、担当医と十分相談することが必要
子宮を切除する全摘手術
がんの進行度や組織のタイプなどを考慮して、手術の方法を選択します。手術後は、再発のリスクに応じて、抗がん剤治療と放射線治療を組み合わせて行います。

【単純子宮全摘手術】
・子宮頸部の周りの組織は残し、子宮だけを摘出する手術

【広汎子宮全摘手術】
・子宮と、骨盤内のリンパ節を摘出する。卵管や卵巣は残すこともある
・手術後に排尿障害やリンパ浮腫(脚のむくみ)などが起こることもあるが、完全に摘出できれば完治が期待でき、転移の有無なども詳しく検査できる
・高度な手術なので、地域のがん診療連携拠点病院やがん専門病院での治療が勧められる
放射線治療 抗がん剤治療
手術が難しい場合でも、治療法を組み合わせることで、治療が可能です。
【放射線+抗がん剤 併用】
・放射線治療を行いながら「シスプラチン」という抗がん剤を使う
・放射線治療を単独で行う場合よりも、生存率が高くなると報告されている
【抗がん剤 単独】
・主に遠隔転移のある場合や再発した場合に行われる
・シスプラチン、または腎臓への負担の少ない「カルボプラチン」に、「パクリタキセル」などを併用する
・分子標的薬「ベバシズマブ」を併用すると、より治療の効果が高くなることがわかっている
【主な副作用】
・抗がん剤:吐き気、おう吐、脱毛、しびれ、関節痛、骨髄抑制
・分子標的薬:出血、高血圧、たんぱく尿、血栓症