フランス生まれの認知症ケア技術“ユマニチュード”
介護の中でも特に負担が大きい認知症。認知症というと「物忘れ」というイメージがありますが、「ものを盗まれたと妄想してしまう」「迷子になって家に帰れなくなる」など、さまざまな症状が出てきて心身共に疲弊してしまいます。また介護する側は相手を思い介護していますが、相手も認知機能が落ちているため、うまく伝わらないことも多いのです。そんな状況を少しでも改善するために生まれたのが、フランス語で「人間らしさを取り戻す」という意味の“ユマニチュード”です。
「見る」「話す」「触れる」「立つ」の4つの柱!
認知症ケアで大切なことは、「相手を大切に思っている」というメッセージを相手が理解できるように届けること。そのためにユマニチュードでは「見る」「話す」「触れる」「立つ」の4つの柱を行うことで、介護する人の優しさを受け取ってもらえるようになります。

「見る」
ポイントは、目線の高さを合わせることです。
目線の高さを合わせることで、対等な存在であることを伝えます。また近くから急に顔を出すと驚かせてしまうので、相手に自分の存在を認識させることから始めます。先にノックなど音を立て、先に注意を引き、相手の正面から視野に入ります。重要なことは驚かせないようにすることです。
認知症の人の視野は、私たちが想像しているよりも狭いので注意が必要です。寝ている人には体を起こしてあげるなど、同じく目線を合わせてあげることが大切です。立って話しかけると見下ろすようになるため、決してやってはいけません。

「話す」
話すときは目を合わせたまま、ゆっくり話しかけます。
そして相手の好きなことや興味を引きそうなことを前向きな言葉で話し、話題がない時は介護する人が行っている行為「手を洗いますね」「立ちましょうね」などを口に出したくさん話しかけましょう。コミュニケーションが途絶えてしまうと「自分は存在していない」と感じさせてしまう可能性があるので、普段話している量の3倍くらいを目安に話しかけるようにします。話す際に注意することは、一方的に話さないこと!相手が理解できずパニックになってしまう恐れがあります。
話しかけてすぐに返答がなくても3秒待ってみることがポイントです!

「触れる」
着替えや歩行介助など介護で触れる時、無自覚で相手をつかんでしまうことがあります。つかむ行為は相手の自由を奪っていることを意味し、相手にとってネガティブに受け取るメッセージになってしまいます。そこで相手に触れる時は、「下から支える」「広い面積で触れる」「つかまない」「ゆっくりと手を動かす」ということに注意します。そして触れる場所も重要な要素です。できるだけ背中、肩、ふくらはぎといった鈍感な部分から触れ始め、次第に手や顔など敏感な場所に進むようにしましょう。

「立つ」
認知症ケアで負担が大きくなる原因の一つが寝たきりの状態になることです。
連続ではなくてよいので、1日合計20分間立つことで寝たきり予防につながります。また立つことで骨祖しょう症を予防する効果も。立つことで本人の自信にもつながり、その人らしい生活を続けていく原動力にもなります。立つことが難しい場合は、体を起こすだけでもよい刺激になります。
