【患者体験談】脈絡膜新生血管で失明の危機 つらい症状と治療の選択

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近視目がおかしい

脈絡膜新生血管になったとき -私のチョイス-

「近視」とは、眼球が後ろに伸びること

Aさん(男性・58歳)は、近視のために長年、眼鏡が手放せない生活を続けてきました。

「中学2年生、14歳頃から近視でした。両目の視力は裸眼で0.1なかったくらいです。」

近くのものははっきり見えても、遠くのものが見えにくくなるのが「近視」です。通常、眼球に入ってきた光は網膜で焦点が合い、ものを正確に見ることができます。
しかし、一般的な近視の場合、眼球が後ろに伸びて、焦点が合う位置がずれるため、遠くのものがぼやけて見えるのです。

見え方にさまざまな問題が…

そんなAさんは、去年の秋、突然見え方に異変を感じました。
「家で電気をつけていても『部屋が暗い』と感じるんです。」

試しに、目を片方ずつ塞いでみると、右目だけで見た時には、視界に問題はありませんでしたが、左目だけで見ると…。
「薄い黒い霧がずっとかかっている感じ。本当に見えづらくなって、暗く感じました。」

さらに、別の症状も現れました。
「いろんなものがゆがんで見えました。鉄道の高架は一直線のはずなのに、波打って見える。電車が走っていると、(上下に動く)ジェットコースターのように見えました。」

物がゆがんで見えるせいで距離感がうまくつかめず、人から渡された書類をうまく受け取れないこともありました。また、階段が波打って見えるために足を踏み外しそうになりました。日常生活にも支障が現れてきたのです。

病的近視とは

これはただごとではないと感じたAさんは、かかりつけの眼科から紹介された大学病院へ行きました。そして検査の結果、さまざまな症状の原因が「近視」にあることが判明したのです。

近視が進行し、眼球がさらに伸びたことによって網膜や視神経が後ろに引っ張られて眼底部分に異常が起き、それがさまざまな症状につながっていたのです。
失明にもつながりかねない合併症が起きやすい「病的近視」という状態でした。

Aさんの場合、網膜の中心にある黄斑(おうはん)という、ものを見るのに最も重要な部分に影響が出ていました。
網膜の奥にある脈絡膜から、新しい血管が入り込んできて、この黄斑を押し上げていたのです。「脈絡膜新生血管」という病気です。

網膜は、断面で見ると通常、黄斑の部分がへこんでいますが、「脈絡膜新生血管」の場合、網膜の下に新生血管のかたまりが入り込んで黄斑を押し上げているため、盛り上がって見えます。
このような黄斑の変形のため、視野が暗くなったり、ものがゆがんで見えたりするのです。

脈絡膜新生血管の治療 目に直接 薬を注射

そこでAさんが受けた治療は、「抗VEGF薬」という薬を目に直接注射することでした。
新しい血管ができるのを促すVEGFという物質の働きを阻害することによって、新生血管の発生を妨げたり、できた血管をなくしたりする薬です。
それによって、盛り上がった黄斑が元に戻るのです。

「注射の瞬間は麻酔であっという間に終わっちゃう。気がついたら終わっていました」

この注射を受けた結果、Aさんの視野の暗さや、ゆがみ具合が随分回復してきたといいます。

「暗い部分は少し明るくなってきました。ゆがんでいる部分はゆがみの幅が狭く、小さくなってきました。」

Aさんは経過をみながら、今後も抗VEGF薬による治療を続けていくことになります。

「近視は病気じゃないと思っていました。でも、こういう病気になった以上は、しっかり向き合っていきます。早めの対処が大事だと改めて思いました。」

この記事は以下の番組から作成しています

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