詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2020年3月 号に掲載されています。

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鼻を打ったり、かみすぎたりした時に出る鼻血。そのほとんどは鼻の入り口近くのキーゼルバッハ部位からの出血です。
私たちの鼻の中は粘膜で覆われていて、たくさんの血管が集中しています。特に鼻の穴から少し奥に入ったところ、指でも届くところにキーゼルバッハ部位と呼ばれる静脈が集まった部分があります。鼻血はほとんどの場合ここから出血します。
キーゼルバッハ部位から出血する鼻血は、ほとんどの場合、大きな心配はありません。
具体的な原因として、鼻をぶつける、鼻をいじるといった行動によって出血することがありますが、それ以外にもアレルギー性鼻炎や蓄のう症、慢性副鼻腔炎といった鼻の病気があげられます。このような病気にかかっていると鼻の粘膜が弱っており、鼻をいじったり、鼻をかむ回数が増えて、鼻血が出やすくなるということがあります。
このような場合はキーゼルバッハ部位の出血がほとんどで、危険は少ないといえます。
まれに鼻腔内の奥に通っている動脈から出血している場合もあります。この場合は出血量も多くなかなか止まらないので、すぐに医療機関へ向かう必要があります。
そのほかにも注意が必要な鼻血があり、原因には、高血圧、動脈硬化、肝臓や腎臓の疾患、血液の疾患、腫瘍などがあります。また服用している薬が原因になることもあります。さらに、オスラー病という病気が原因になることもあります。特に大人では、鼻を打ったり傷つけたりしたわけでもないのに鼻血を繰り返すようなら、何らかの病気が潜んでいるかもしれませんので、注意が必要です。
高血圧や動脈硬化によって血管がもろくなると、動脈から出血することがあります。こうした鼻血は特にきっかけがなく、突然出てきて止まらなくなることがあります。ドクドクとかなりの量が出て、血液がのどに下りて誤えんや窒息につながる場合もあり、注意が必要です。
肝臓には、もともと「血液を固まらせる成分」をつくる働きがありますが、肝硬変などでその働きが衰えてしまうことがあり、その場合は、鼻血が出やすくなったり、止まりにくくなったりします。腎臓の病気や、血友病・白血病といった血液疾患の場合も同じようなことが起こります。
心筋梗塞や脳梗塞などの治療に使われる血栓予防のための抗凝固薬が原因で、鼻血が止まりにくくなるケースも最近増えています。
鼻の腫瘍の多くは鼻の外からは見えませんので、鼻から出血を繰り返すという人で、鼻を診断した際に腫瘍が見つかるというケースもあります。
「オスラー病」は、遺伝性の病気で、血管がもろくなり体のあちこちから出血する病気です。鼻血だけではなく、肺や脳などからも出血しますが、鼻血で気づかれることが多くなっています。
「上を向いて、首の後ろをトントンたたく」「冷やせば止まる」というのは間違いで、残念ながら鼻血は止まりません。鼻血の止め方については誤った理解をされていることがしばしばあります。
ティッシュを詰めた場合、そのティッシュをつたって血が出てきてしまい、止血になりません。鼻の粘膜を傷つけてしまうこともあり、出血箇所を増やしてしまう可能性があります。また、抜いた際にかさぶたをはがしてしまうこともあり、あまり効果的とはいえません。
上を向くのは厳禁。鼻血がのどに流れて飲み込んでしまうからです。血液は毒ではありませんが、胃の中で酸化されると吐気をもよおします。その血液がのどに詰まって窒息してしまうこともあるのです。
首をトントンたたく、といった対処法が言われることがありますが、これはあまり意味がありません。また、冷やすと良いと言われることもありますが、止血には効果がありません。
では、突然鼻血が出てきた時、どうすればよいのでしょう?
突然の出血には、まず落ち着くことが大切です。横にならずに、いすなどに座ると良いでしょう。そして、少しうつむいて出血している側の鼻を押さえます。押さえる場所は、小鼻の上です。5分間、手を離さずにじっと押さえ続けましょう。ダメなら2回続けます。ほとんどの鼻血はこれで止まります。
次のような場合は、危険な鼻血の可能性があります。たかが鼻血と侮らず、大量に出る場合や止まらない場合は迷わず医療機関を受診しましょう。
なお医療機関では、まず止血剤を染み込ませたガーゼや、血液を吸収することで膨らむスポンジのようなものを詰めるなどして処置します。それでも止まらない場合は、止血用のバルーンカテーテルを入れて破れている血管を圧迫します。このように、医療機関の処置も、まず鼻の出血部位を押さえることになります。突然の鼻血は、慌てずに鼻を抑えることが大切です。
詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2020年3月 号に掲載されています。