【患者体験談】滑舌が悪い原因「口腔機能低下症」の症状と検査

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口腔機能低下症と診断されたとき -私のチョイス-

滑舌が悪くなってきた

Aさん(85歳・女性)は、音楽大学で声楽を学んだ後、声楽家として活躍しました。ところが最近、気がかりなことがありました。滑舌が悪くなってきたのです。ある日、歯の治療で歯科医院をたずねると、医師から検査をすすめられました。その結果、Aさんは、「口腔機能低下症」と診断されたのです。

「口腔機能低下症」とは?

口腔機能とは、食べ物をかみ砕いたり、のみ込んだり、会話をしたりする機能のこと。「口腔機能低下症」とは、そういった機能が低下し、口の健康が損なわれた状態です。これまで、口の状態は、健康な状態と、摂食えん下障害・そしゃく機能不全などの障害が起きた状態の2つに分けられていましたが、最近その中間に、口腔機能低下症が位置づけられるようになってきました。

口腔機能低下症は、老化とともに口の筋力や機能が少しずつ低下していくことによって発症します。また、歯が抜けたまま放置し、硬いものを避けて柔らかいものばかりを食べ続けていると、口腔機能は低下してしまいます。口腔機能低下症は、60代で6割、70代で8割、80代以上はほとんどの人に発症しているといわれます。40~50代でも、半数近くは何らかの口腔機能が低下しているという調査結果もあります。

口の老化度を測るには?

口腔機能低下症の検査は、歯科で行います。かむ力や、かみ砕いてのみ込む能力、舌の力、口の中の水分量、舌の汚れなど、7つの検査を行います。そのうち、3つ以上の項目で機能の低下がみられると、口腔機能低下症と診断されます。
検査の結果、Aさんの場合は、舌や唇の動きが低下していることがわかりました。滑舌が悪くなっていたのはそのためだったのです。

舌と唇の若返りトレーニング

Aさんは、舌と唇の動きを改善するトレーニングを2つチョイスしました。
1つは、吹き戻し笛を使った、唇と頬の力を鍛えるトレーニングです。吹き戻し笛をできるだけ力強く一気に吹くのがポイントで、1日10回ほど行います。もう1つは舌の筋肉を鍛え、動きをよくするトレーニングです。小さなスプーンのような形をしたものを口の中に入れ、丸く膨らんだ部分を舌の中心部を使って上あごに強く押し付けます。朝晩2回、10回ずつを目安に行います。

2か月自宅でトレーニングを続けた後、再び検査をしてみると、舌と唇の動きが改善し、滑舌がよくなっていました。口腔機能が低下しないようにトレーニングは現在も続けています。

口の老化によって起こる口腔機能低下症は、早期に見つけてトレーニングすれば改善できる病気です。早期発見するには、歯科検診を受けることです。口の老化は徐々に進行するため、自分では気づきにくいので、家族や友達が気づいたら教えてあげることが必要です。

この記事は以下の番組から作成しています

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