高齢者の30%に耳鳴りがある!その原因・検査について解説

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耳鳴りは脳が本来ない音を作り出している

耳鳴りは脳が本来ない音を作り出している

耳鳴りは周囲に音がないにもかかわらず、「キーン」という金属音や「ブー」という不快な音が聞こえる症状です。日本人全体の10~15%に耳鳴りがあり、特に65歳以上に限ると約30%に耳鳴りがあると考えられています。外部から音を伝える仕組みに何らかの異常が起こり、これまで聞こえていた音が聞こえにくくなるのが難聴です。外部からの音が不足すると、脳は音の不足を感じて興奮します。そして、音を補おうとして本来ない音を作り出してしまいます。それが「耳鳴り」なのです。実際に耳鳴りのある人の9割に難聴、多くの場合は加齢性難聴を伴っています。

多くの耳鳴りの原因「加齢性難聴」

多くの耳鳴りの原因 加齢性難聴

外部から入ってきた音は、内耳にある蝸牛(かぎゅう)という渦巻き状の管に伝わります。蝸牛の内側には音の振動を捉える有毛細胞(ゆうもう)細胞があり、有毛細胞が音の振動を電気信号に変換して脳へ送っています。この有毛細胞が加齢に伴って壊れて減ってしまうのが「加齢性難聴」です。騒音にさらされる生活を送っていたり、糖尿病などの生活習慣病になることでより進行します。

一般に加齢性難聴は徐々に進行していくため、自覚しにくく、聴力が低下しても日常生活に大きな支障を来さないため、軽視しがちです。加齢性難聴から耳鳴り・めまいにつながることもあります。また、中耳炎・メニエール病突発性難聴などの病気が原因となって耳鳴りが起きることもあります。

耳鳴りを客観的に評価するTHI(耳鳴りの日常生活に与える苦痛度)

耳鳴りを客観的に評価するTHI(耳鳴りの日常生活に与える苦痛度)

耳鳴りは脳が本来ない音を作り出して聞こえるものです。患者本人しか、わかりません。耳鳴りを診断するには、「問診」「耳の診察」「聴力検査」、そして「画像検査」などを行います。問診では、耳鳴りによって生じている心理的な負担を「THI(耳鳴りの日常生活に与える苦痛度に関する質問票)」を使って調べます。THIには「耳鳴のせいで集中するのが難しい」「耳鳴のせいで話が聞き取りにくい」など25項目の質問があります。それぞれの質問に対して「よくある(4点)」「たまにある(2点)」「ない(0点)」で回答します。合計点数が高ければ高いほど心理的負担が大きいと判定され、56点以上は重症になります。

また、耳の内部を観察して鼓膜に炎症や損傷がないか、中耳炎などの耳の病気を発症していないかどうかを調べます。さらに脳の血管の異常、とくに動脈瘤が蝸牛の近くにあると血流の音が耳鳴りとして現れることがあります。それを拍動性耳鳴りといい、MRIやCTなどの画像検査で確認することができます。

耳鳴り特有の検査「ピッチマッチ検査」「ラウドネスバランス検査」

耳鳴り特有の検査「ピッチマッチ検査」「ラウドネスバランス検査」

ピッチマッチ検査は耳鳴りの音の高さを調べる検査です。低い周波数から高い周波数までの音を聞いていき、患者の耳鳴りに近い音の高さを調べます。加齢性難聴では一般に高い音から、メニエール病では低い音の耳鳴りが起こりやすいと言われています。一方、ラウドネスバランス検査はピッチマッチ検査で判明した耳鳴りの音の高さの音量を少しずつ大きくしていき、耳鳴りの音の大きさを特定します。特定された音の大きさは補聴器の調整など治療に役立てることができます。

詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2020年3月 号に掲載されています。

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