1.認知症とは
認知症とは?さまざまな原因2.予防
認知症のリスクを高める生活習慣病3.もしかして認知症?と思ったら
早期発見のための初期症状チェック 認知症が疑われた場合の対処法4.リハビリ方法
認知症の進行を遅らせるリハビリ 家事でもリハビリは可能認知症とは?さまざまな原因
認知症とは、脳がダメージを受けて記憶力や判断力が低下し、日常生活に支障が出る状態をいいます。一度発症してしまうと元の状態に戻すのは多くの場合困難で、治療は進行を抑えることが主な目的となります。最近になって、認知症予防に効果的な方法が明らかになりつつあるので、予防を意識することが大切です。
認知症は、さまざまな脳の病気が原因で起こります。原因の約7割を占めるアルツハイマー病は、脳にアミロイドβたんぱくという物質がたまり、神経細胞が傷害されて脳が萎縮していく病気です。次に多いのが、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害を原因とする脳血管性認知症で、約2割を占めます。最近注目されているのがレビー小体型認知症で、脳の中にレビー小体と呼ばれる特徴的な構造物が出現し、それによって神経細胞が減少します。そのほか、50歳代などの若い人に起こりやすい前頭側頭型認知症と呼ばれるものもあります。
「アルツハイマー病」についてはこちら「血管性認知症」についてはこちら「レビー小体型認知症」についてはこちら「前頭側頭型認知症」についてはこちら認知症のリスクを高める生活習慣病

近年、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病が、認知症のリスクを高めることが明らかになってきました。生活習慣病が適切に治療されない状態が続くとアルツハイマー病を発症しやすくなりますので注意が必要です。特に、糖尿病の場合はリスクが2倍になります。また、生活習慣病は動脈硬化を加速させて脳梗塞や脳出血を引き起こす危険性があり、そのため脳血管性認知症の原因になります。
一方で、生活習慣病の予防や適切な管理は認知症の予防につながるため、食生活の改善や適度な運動、禁煙など、日々の生活を見直すことが大切です。すでに生活習慣病がある場合は、その病気に対する薬の内服など適切な治療を受けましょう。
早期発見のための初期症状チェック
認知症は、早い段階で発見できれば、進行を遅らせることができ、良好な状態を保つことが可能です。早期発見のために、まず初期症状チェックを行ってみましょう。


【認知症初期症状チェック】
- 同じことを何回も話す・尋ねる
- 物の置き忘れが増え、よく捜し物をする
- 以前はできた料理や買い物に手間取る
- お金の管理ができない
- ニュースなど周りの出来事に関心がない
- 意欲がなく、趣味・活動をやめた
- 怒りっぽくなった・疑い深くなった
「同じことを何回も話す・尋ねる」「物の置き忘れが増え、よく捜し物をする」に当てはまる場合は、記憶障害が疑われます。
「以前はできた料理や買い物に手間取る」「お金の管理ができない」場合は、物事を順序立てて考えたり実行したりすることができない実行機能障害が疑われます。
「ニュースなど周りの出来事に関心がない」「意欲がなく、趣味・活動をやめた」といった意欲低下は、認知症の初期にみられる特徴的な症状です。
「怒りっぽくなった・疑い深くなった」場合は、認知症の症状によって物事がうまくいかない心理的な要因が影響していると考えられます。たとえば記憶障害によって、財布などの置き場所がわからなくなると不安感が増し、疑い深くなります。
自分で初期症状チェックを行うほか、家族などにもチェックしてもらいましょう。当てはまる項目が複数ある場合は、医師に相談しましょう。
認知症が疑われた場合の対処法
認知症が疑われた場合は、認知症を専門に診る物忘れ外来を受診するのがよいでしょう。神経内科、精神科、老年科などに認知症の専門医がいる医療機関もあります。また、最近ではかかりつけ医が認知症の初期対応をするケースも増えています。認知症が疑われる本人が、慣れない新しい医療機関の受診を嫌がる場合は、まずかかりつけ医に相談し、必要に応じて専門の医療機関を紹介してもらうとよいでしょう。
どこで診てもらえばよいかわからない場合は、各市区町村にある地域包括支援センターに相談すれば、適切な医療機関を紹介してもらえます。認知症に関する詳しい情報を知りたい場合は、各都道府県にある「認知症の人と家族の会」で相談することもできます。
認知症の進行を遅らせるリハビリ

認知症の治療としては、薬物療法だけでなく、脳の活性化に役立つリハビリも大切です。
リハビリには、回想法や芸術療法といった方法があります。認知症の方は、古い記憶は残りやすいという特徴があります。たとえば、回想法では昔の写真やおもちゃなどを用いて、家族や旧知のグループで昔の思い出を語ります。
芸術療法には、絵を描く、工作をする、懐かしい歌を歌う、楽器を演奏するといった方法があります。このような活動は体で覚えているので、以前から慣れ親しんでいるものであれば自然にできることが多いのです。できるだけ本人が親しみやすいテーマを選ぶことがポイントです。
家事でもリハビリは可能

料理や掃除、洗濯などの家事をうまく工夫すれば、自宅にいながらでもリハビリを行うことができます。高度な記憶力や複雑な判断力がないと家事はスムーズに行えません。しかし、家族と一緒に行うと、家事を分担できることがあります。家事を分担することができれば、達成感や自信を得られるので、日常生活に張り合いができます。
家事を一緒に行うときのポイントは、以下の4つです。
- 1つ1つシンプルにお願いする
- うまくいっていることを伝える
- さりげなく手伝う(失敗を防ぐ)
- 感謝の気持ちを伝える
たとえば、カレーライスを作る場合、「じゃがいもとにんじんを包丁で切ってね」というように、「切る」という1つの作業をお願いします。切り終えたら「上手だね!」などとうまくいっていることを伝えましょう。作業が止まり戸惑っている場合は、「次はにんじんを切るんだよね」などと、次の手順を先回りして伝え、さりげなく手伝います。
1つの作業をやり終えたら、感謝の気持ちを言葉で伝えましょう。自分が必要とされていると感じることで家事に対する意欲がわき、次の行動につなげることができます。こうして自分の居場所や役割を生活の中で感じてもらうことが大切です。