進歩した肝臓がんの治療 主な治療法や選択肢が増えた分子標的薬

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肝がん・肝臓がん肝臓

肝臓がんの主な治療法

肝臓がんの主な治療法

肝臓がんの主な治療法には「切除手術」、「焼しゃく療法」、「肝動脈塞栓(そくせん)療法」、「分子標的薬」、「肝臓移植」の5つがあります。

焼しゃく療法は、皮膚の上から特殊な針をがんやその周りの組織まで刺し、ラジオ波やマイクロ波などを流してがんを焼き、え死させる治療法です。肝動脈塞栓療法は、カテーテルという細い管を脚の付け根の血管から挿入して、がんに栄養を運ぶ肝動脈まで送り込み、塞栓物質を注入して肝動脈を詰まらせる治療法です。がんの大きさや数、場所、肝機能の程度などから治療法が選択されます。

転移がなく、がんが3個以下の場合

がんが3個以下の場合(転移なし)

がんが転移しておらず、3個以下の場合、切除手術で根治を望めることが多く、これが第1選択となります。がんの直径が3cm以下と小さく、肝臓内の主要な血管や胆管から離れている場合は、焼しゃく療法も選択肢に入ります。

がんの直径が3cmを超える場合は、がんをすべて焼ききれない可能性が高くなるため焼しゃく療法は行わず、切除手術と肝動脈塞栓療法が選択肢となります。がんが3個以下の場合でも、高齢で心臓や肺などに重い病気がある場合は、体にかかる負担を考慮して、焼しゃく療法や肝動脈塞栓療法が検討されます。

転移がなく、がんが4個以上ある場合

がんが4個以上の場合(転移なし)

がんが転移しておらず、4個以下の場合、治療範囲が広くなることが多いため、切除手術や焼しゃく療法は行いません。肝機能が中程度に保たれている場合は、肝動脈塞栓療法を第1選択となり、がんの根治を目指します。肝動脈塞栓療法で十分な効果が現れない場合は、分子標的薬による治療が行われます。分子標的薬は、根治が難しい場合に治療の中心となります。

転移がある場合や肝機能が大きく低下している場合

がんが肝臓以外の臓器に転移している場合は、分子標的薬による治療が行われます。肝機能が大きく低下している場合、薬による治療は肝臓の負担になるため、肝臓移植が選択肢として検討されます。肝臓移植は、65歳以下の場合に適応となります。

選択肢が増えた 分子標的薬

選択肢が増えた 分子標的薬

分子標的薬は、がん細胞だけを狙って攻撃するように設計されている薬です。そのため、従来の抗がん剤と比べ、効果が高く、正常な細胞へのダメージが少ないために重い副作用が少ないのが特徴です。

肝臓がんに対する 分子標的薬

肝臓がんに対する分子標的薬は近年進歩が著しく、現在、ソラフェニブ、レゴラフェ二ブ、レンバチニブ、ラムシルマブの4種類に増えました。種類が増えると、1つの薬で効果がみられなかった場合も、薬を変更して治療を続けられる可能性が高くなります。

現在は4次治療まで行えるようになり、がんの増殖を長期間抑え続けることも可能になりました。最初に行われる1次治療には、最も効果が現れる確率が高いレンバチニブとソラフェニブのどちらかが使われることが多くなっています。2次治療からは、医師が効果や副作用をみて使う薬を判断します。

分子標的薬の副作用と対処法

分子標的薬の副作用と対処法

レンバチニブの主な副作用は、血圧上昇、腎臓の障害によるたんぱく尿、甲状腺機能の低下です。ソラフェニブやレゴラフェ二ブには、手足症候群や下痢などの副作用があります。手足症候群は、手のひらや足の裏が赤く腫れ、水ぶくれやひび割れができたり、皮がむけたりします。ラムシルマブでは、血圧上昇、むくみ、たんぱく尿などが現れることがあります。

高血圧、たんぱく尿、甲状腺の病気などがもともとある場合は、レンバチニブを使用すると悪化するおそれがあるため、1次治療にソラフェ二ブが使われることがあります。副作用で血圧上昇がみられた場合は、降圧薬でしっかりと血圧をコントロールします。たんぱく尿や甲状腺機能の異常は、症状を自覚しづらいため、検査で定期的に調べることが重要です。手足症候群が現れた場合は、保湿クリームで皮膚を保護したり、やわらかい靴を履くなど、手足の痛みを軽減するための対策をとります。

特にレンバチニブ、ソラフェニブ、レゴラフェ二ブについては、副作用が起こる場合のほうが、がんに対して効果があることが多いと考えられています。副作用にうまく対処しながら、分子標的薬による治療を長く継続していくことが大切です。医師と相談したうえで、計画的に薬の使用を休むなどの対処を行う場合もあります。

※2020年11月、分子標的薬カボザンチニブも承認されました。さらに2022年12月、トレメリムマブも承認されました。
※2020年9月、免疫チェックポイント阻害薬アテゾリズマブと、分子標的薬のベバシズマブを併用する治療が承認され、保険で受けられるようになりました。

詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2019年11月 号に掲載されています。

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