~VRで生きづらさを解消~

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VR(バーチャルリアリティー)のプラットフォームが充実し、スマートフォンからでもアクセスできるようになる中、この技術を使って、現実社会での生きづらさを解消しようという人が増えはじめています。クラウドファンディングを活用し、積極的にバーチャル空間に乗り出した人たちをご紹介します。

ITで障害のない体を手に入れたい

さきゅば・のえさんは、トゥレット症候群という難病をネット上で紹介する

今年10月にデビューするVチューバー、さきゅば のえさんは、トゥレット症候群という難病をネット上で紹介するユニークなキャラクターです。

のえさんの素顔は、15年間、このトゥレット症候群に苦しんできた大学生。発達障害のひとつであるトゥレット症候群は、突然、けいれんしたように体が動く「運動性チック」や、声を出してしまう「音声チック」があり、複数のチック症が1年以上続きます。

その影響で、のえさんは、いじめにあったり、電車内で胸ぐらをつかまれるなどの体験をし、将来への希望を持てなかったと言います。

そんな中、のえさんは思い切ってクラウドファンディングにこんな投稿をのせました。

私は、この病気に今まで15年間苦しめられてきました。症状がひどい時には、コミュニケーションがうまく取れない時もありました。はじめは薬で治るかもしれないとのことで、5年間くらいは薬を変えながら投薬治療を行ってきましたが、効果がなかったり、副作用が強かったりするので、去年治療を断念しました。

でも、私だって、 他の人と普通に仲良くお話ししたり、笑ったりして、普通の人と同じ生活をしたいです。そこで、私はVtuberに目をつけました。Vtuberを操作する技術を駆使して、トゥレット症候群の症状を見た目だけでも(例えば、首を振る動作(症状)を検知したら、その動作をモデルが行わないようにするように制御する)抑えることができれば、自分の体をうまく動かせるようにすることができるかもしれない考えました。

そして、それを開発し、VTuberとして活動する事で、自分のような障害を抱えた人でも、コミュニケーションが取れる社会を作っていきたいです。

クラウドファンディングには目標額を大きく上回る177万円が集まりました。そして、のえさんのもとに、嬉しい知らせが届きます。ネットで、のえさんの計画を知った中国のネットユーザーが、のえさんの「音声チック」をバーチャル空間で消せるプログラムを作ってくれると言うのです。

のえさんは、こうしたプログラムに支えられ、障害のないキャラクターが完成していく過程を公開することで、同じような悩みと向き合っている人たちに、希望を持って欲しいと考えています。そして、このバーチャル空間で"さきゅば のえ"としてたくさんの友達を作り、近い将来、仕事もしていきたいと夢見ています。

夫婦の夢をVR空間でかなえたい

夫婦の夢をVR空間でかなえたい

ふうふマートさんは、去年、20代のご夫婦がはじめたVチューバー。ご主人が「めおとおつ」、奥様は「めおとつま」と名乗る2人組のVチューバーです。夫婦で活動するVチューバーはとても珍しいのですが、この活動をきっかけに、お二人は、バーチャル空間で結婚式を挙げたいと思うようになりました。

実は、お二人は数年前に結婚した際、奥様の病気の影響で、予定していた結婚式をあきらめていました。しかし、バーチャル空間なら、病気の影響を受けず、式が実現できるのではないか、と考えたのです。

VR結婚式プロジェクト

(クラウドファンディングのサイトより抜粋)
わたしの体に生じた難治性の病気のせいで結婚式を挙げる事ができませんでした。高校生の時にとある病原体に感染し、脳や肺、肝臓、眼などに症状が出ることが多いのですが、わたしの場合は目に影響が大きく出ています。片眼の視野欠損、物が歪んで見える(変視症)、小視症、片眼の視界が暗くなるといった後遺症が今も残っており、回復の見込みはありません。また、再燃するたびに症状が悪化し見えない範囲が広がっていきます。

そんな中、結婚記念日に(ネット上で)「結婚記念日です」と何となくツイートしたら、なんとたくさんの方に「いいね」をして頂き、お祝いのお言葉まで頂きました!こんなにたくさんの方にお祝いして貰うのは2人揃って初めてで、(夫の)めおとおつさんは「すごいね!嬉しいね!」とものすごく感激していました。

わたしは満面の笑みで喜ぶおつさんを見てとても嬉しく、そして同時にとても申し訳なく思いました。おつさんがたくさんの方から「おめでとう」と言われるはずだった機会をわたしが奪ってしまったからです。

そしてわたしは考えました。Vtuberになった今なら、VRの世界で結婚式を挙げられるんじゃないか。おつさんがたくさんの方から「おめでとう」と言われる機会を作れるんじゃないかと。

お二人の計画は、バーチャル空間に作った結婚式場に自宅から新郎新婦として入場し、結婚式を挙げるというもの。これなら奥様の体への負担も少なく、式が実現できると考えたのです。この計画が発表されると、ネット上でたくさんの人から支援の申し出がありました。ある人はブーケをデザインし、また、ある人は、アバターとして司会進行を担当、あっという間にサポーターは40人近くになっていきました。誰一人として現実世界では出会ったことのない人たちです。そして、お二人が式を挙げる結婚式場も、ネット上でつながった人が作ってくれる事に。それは、海外のリゾートさながら、青い海を見渡す丘に真っ白いチャペルが建ち、披露宴会場にはウエディングケーキから豪華な食事までが用意されました。

3か月間の準備を経て、今年8月、お二人はバーチャル空間で結婚式を挙げました。会場には、お二人の計画を支えてきた大勢の人がアバターの姿で参列。その様子はライブ配信され、お二人はたくさんの祝福を受けました。

あきらめていた結婚式をバーチャル空間で実現したお二人は、いま"もうひとつの夫婦の夢"をかなえようと動き始めています。それは、なんとバーチャル空間で新婚旅行に行くこと。この空間なら自宅にいながらにして、ハワイでもニューヨークでも、さらには、月面にだって行くことができるのです。"仮想現実"のバーチャル空間が、生きづらさを抱える人たちや、それを支えようという人たちの力で、現実にとって代わる魅力を持ち始めています。