日本人は塩分をとりすぎている
塩分のとりすぎは高血圧の発症に大きく影響します。世界保健機関(WHO)が推奨する1日当たりの食塩の摂取量は5.0gとされています。しかし、日本人は平均で約2倍となる10.1gもの食塩をとっています。以前に比べれば日本人の食塩摂取量は減ってはいるものの、まだまだとりすぎているのが現状です。
(日本人の平均摂取量平成30年 国民健康・栄養調査より)
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準2020」では、持病のない健康な成人男性の場合、1日7.5g未満、持病のない健康な成人女性の場合は1日6.5g未満を目標としています。また、高血圧の人の場合は、日本高血圧学会による「高血圧治療ガイドライン2019」に示されている1日6g未満を目標にしてください。
食塩の摂取量と血圧の関係
食塩の摂取量と加齢による血圧の変化を調査した研究です。
1日に7gの食塩を30年間とり続けた場合と、14gの食塩をとり続けた場合の、加齢による血圧の変化を調べています。14gをとり続けた場合、7gをとり続けた場合で65歳になったときの血圧に50歳で達してしまいます。
このように、多量の塩分をとり続けていると、血圧は確実に高くなります。逆に言えば、減塩を長く続けると、それだけ血圧の上昇を抑えることができるのです。

また、減塩は脳卒中や心臓病などの死亡リスクを低下させる効果や、降圧薬の効きをよくするといったさまざまな効果が期待されます。ただし、極端な減塩は危険ですので無理のない減塩を心がけましょう。
塩分が高血圧を招くワケ


塩分をとりすぎると血圧が高くなるのはなぜでしょうか?
塩をとりすぎると、私たちはのどが渇いてしまうので、水をたくさん飲みます。すると、血液の量が増えるため血圧が上がります。その状態のままでは危険なため、腎臓の働きによって水と塩分を尿として体外に排出し、バランスを保っています。ところが、腎臓が処理できないほどに塩分をとりすぎてしまうと、血圧の高い状態が続いてしまうのです。
高血圧を予防するには、食塩の摂取量を適切な量に抑えることが大切です。
難しい減塩を実現するには

塩分を減らすには、普段の食事を薄味にすればよいのですが、長年慣れ親しんだ味付けを変えるのは、なかなか容易なことではありません。そのため、減塩生活に挫折してしまった経験のある人も多いのではないでしょうか。
そこでおすすめしたいのが、加工食品や調味料などの塩分をチェックする方法です。
いまの食生活では、1日の食塩摂取量のうち、加工食品や調味料などに含まれる「見えない塩分」が約7割と、非常に大きな割合を占めています。そこで、どんな食品にどれくらい塩分が含まれているかを知り、なるべく塩分量の少ない食品を選ぶ行動を積み重ねることで減塩につなげるのです。
ほかにも、最近は塩分控えめでおいしい商品も増えているので、薄味に慣れることはもちろん、こういった減塩食品を上手に取り入れて、挫折しない減塩を実践してください。
減塩チェックシート

ふだんの食事で自分が塩分をとりすぎているかどうかは、上の塩分チェックシートで知ることができます。
点数の評価「8点以下 塩分をあまりとっていない」「9点〜13点 平均的」「14点〜19点 多め」「20点以上 かなり多め」。3点だった項目は2点へ、2点だった項目は1点へと、少しずつ食事の習慣を変えていくとよいでしょう。
おいしく簡単に減塩するには?

減塩食品をうまく活用することで、簡単に減塩することができます。最近では、さまざまな種類の減塩食品が増えています。手軽なものから始めてみるのもおすすめです。
また、日本高血圧学会は減塩食品をより多くの人に知ってもらうため、JSH減塩食品リストを作成しています。この減塩食品リストには通常品より20%以上減塩していること、そして味の検査など、さまざまな基準をクリアした物が掲載されています。2019年4月現在で201品の食品が認定されています。
減塩食品を使ったレシピ
監修:仙台白百合女子大学 管理栄養士 佐々木裕子(ささき・ゆうこ)
きんぴらごぼう
(1人分 エネルギー量135kcal/食塩相当量1.1g ※通常のきんぴらの塩分量:2.0g 約50%塩分カット)

材料(2人分)
-
- ごぼう
- 2/3本(100g)
- [A]にんじん
- 1/5本(20g)
- [A]減塩かまぼこ
- 20g
- ごま油
- 大さじ1(12g)
- だし(かつお・昆布)
- 90ml
- [A]砂糖
- 小さじ2(6g)
- [A]みりん
- 小さじ2弱(10g)
- 減塩しょうゆ
- 大さじ1強(20g)
- 酢
- 小さじ1(5g)
- ごま・七味とうがらし
- 適宜
作り方
- ごぼうは皮のついたまま洗い、斜め薄切りにしてからせん切りにし、水にさらして水けをきる。
- にんじんは斜め薄切りにしてからせん切りにする。減塩かまぼこは食べやすい大きさに切る。
- フライパンにごま油を中火で熱してごぼうを炒め、だしを加え、5分間蒸し煮にする。
- [A]を加え、さらに3分間蒸し煮にする。
- 減塩しょうゆを加えて2分間蒸し煮にしてから酢を加えて混ぜる。
- ふたを取って汁けをとばし、器に盛る。
【減塩ポイント】
- しょうゆやかまぼこを減塩食品に置き換えることで、簡単に減塩することができます。
- だしやお酢を使うことで味をはっきりとさせ、味の薄さを感じにくくなります。
- ごまや七味とうがらしで風味をつけると、味の薄さを感じにくくなります。
肉じゃが
(1人分 エネルギー量274kcal/食塩相当量1.7g ※通常の肉じゃがの塩分量:2.7g 約40%塩分カット)

材料(2人分)
-
- 豚もも肉(脂身付き)
- 80g
- じゃがいも
- 2コ(200g)
- たまねぎ
- 1/3コ(80g)
- にんじん
- 1/3本(40g)
- 糸こんにゃく
- 60g
- サラダ油
- 小さじ2(8g)
- [A]砂糖
- 大さじ1強(10g)
- [A]みりん
- 大さじ1(18g)
- [A]酒
- 大さじ1(15g)
- [A]だし(かつお・昆布)
- カップ1(200ml)
- 減塩しょうゆ
- 大さじ2(36g)
作り方
- 豚肉は一口大に切る。じゃがいもは四つ割りにし、水にさらして水けを切る。たまねぎはくし形に切る。にんじんは乱切りにする。糸こんにゃくは下ゆでし、食べやすい大きさに切る。
- 鍋にサラダ油を中火で熱し、豚肉を炒め、じゃがいも、にんじん、たまねぎ、糸こんにゃくの順に加えて、炒める。
- [A]を加えて、中火で10分間煮る。
- 材料に火が通ったら、最後に減塩しょうゆを加える。
【減塩ポイント】
- しょうゆを減塩しょうゆに置き換えています。
- だしをしっかりとって煮ると、味の薄さを感じにくくなります。
- 材料は大きめに切ることで表面積が小さくなるので、調味料を少なくすることができます。
- 冷めるときに味が染みこむので、一度冷ましてから食べる前に温めなおすのもおすすめです。
地域の取り組み「下呂・減塩・元気大作戦!」
減塩は1人で続けようと思っても、なかなか大変なものです。
そのため、よく買い物をするスーパーに減塩食品があったり、レストランに減塩のメニューがあったりといった"環境づくり"がとても大切です。このような環境づくりに地域ぐるみで取り組んでいる事例を紹介します。
岐阜県下呂市は全国的に見ても塩分摂取量が多い地域とされてきました。高血圧の患者数も年々増加し、深刻な課題でした。そこで市は本格的に減塩の取り組みをはじめました。「下呂・減塩・元気大作戦」です。


集団検診の際に減塩食品を紹介・配布することで減塩を積極的にPR。地域の郷土料理のレシピを作成するなどの取り組みも進めています。
1人ではなかなか難しくても周囲と協力しながらおいしく、楽しく減塩することで続けやすくなります。家族や友人、地域の人たちと一緒に減塩に取り組んでいきましょう。