潰瘍性大腸炎の原因と初期症状(血便・便に白い粘液が混じるなど)

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潰瘍性大腸炎 大腸がん 腹痛 下痢がある 便秘が続く 胃・腸・食道

治療の難しい指定難病「潰瘍性大腸炎」が急増

潰瘍性大腸炎の患者数を示したグラフ

潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に炎症が起こり、潰瘍ができる病気です。現在のところ、完全に治すことは難しいとされており、国の指定難病の1つです。2016年のデータでは、患者数は17万人いるといわれています。

グラフでも示していますが、潰瘍性大腸炎の患者数は40年で10倍になっており、最近10年間だけで2倍に急増しています。

潰瘍性大腸炎が急増している原因

潰瘍性大腸炎を発症する人が急増したはっきりとした原因はわかっていません。
ただ、潰瘍性大腸炎の認知度が上がってきたこと、内視鏡をはじめとする診断機器の開発が進んだことが疾患の発見に影響しています。また、食文化の欧米化によって、日本人の腸内細菌の変化が起こり、潰瘍性大腸炎の発症数が増加したとも考えられています。

免疫の働きの異常によって大腸の粘膜に炎症が起きる

食べ物と一緒に細菌やウイルスが大腸に入り込む仕組みを解説したイラスト

大腸には、食べ物と一緒に細菌やウイルスなどの異物も入り込んできます。それらを排除するため、免疫細胞が大腸の壁のすぐ内側に密集しています。その数は実に、体中の免疫細胞の約7割にもなるといわれています。

免疫の働きの異常によって大腸の粘膜に炎症が起きる

ところが何らかの原因で、本来は体を守る免疫細胞の働きに異常が起こって過剰に反応するようになると、粘膜組織が傷つき、腸の壁が崩れてしまうことがあります。こうなると、さまざまな物質が大腸の粘膜を刺激し、炎症が続くようになります。これが潰瘍性大腸炎です。

免疫の異常が起こる原因

免疫の異常が起こる3つの原因

免疫細胞の異常が起きてしまう原因は人によって異なると考えられますが、食生活や生活習慣の乱れ、ストレス、腸内細菌のバランスの乱れが挙げられます。

潰瘍性大腸炎の初期症状

潰瘍性大腸炎の初期症状

潰瘍性大腸炎を発症すると、はじめに粘液の混じった便と血便が出ることが多くあります。その後、便の回数がどんどん増えていき、最終的にはおなかに痛みが出てきます。

粘液便と血便

炎症を起こして粘液が分泌されている大腸

腸の粘膜に炎症が起こると、腸液がたくさん分泌されます。また炎症が起こるとともに、粘膜に白血球が集まり、腸液と白血球が合わさって白い粘液となり、粘液の混じった粘液便が排泄されるようになります。

潰瘍性大腸炎が進行したときの画像

症状が進行して炎症が広がると、粘膜から出血し、血便が出るようになります。

排便回数

潰瘍性大腸炎を発症すると粘液便や血便だけでなく、排便の回数自体が増加します。一般的には1日5回以上で下痢の便が続くような場合は、検査を受けることが勧められます。

炎症が続くと、大腸がんを発症する危険が高くなる

潰瘍性大腸炎による炎症が長く続くと、潰瘍性大腸炎関連の大腸がんができることがわかっています。特に潰瘍性大腸炎を発症してから10年ぐらい経つと、がんの発生率が5%~10%になるといわれています。そのため、潰瘍性大腸炎が発症した場合は、定期的に内視鏡検査を受けることが大切です。

潰瘍性大腸炎の検査

潰瘍性大腸炎の3つの検査方法

潰瘍性大腸炎の検査は主に3つです。

  • 血液検査:炎症の程度を調べる検査
  • 便検査:便のカルプロテクチン(腸の中の炎症の程度)の値を調べる検査
  • 大腸内視鏡検査:カメラのついた内視鏡を肛門から挿入して、大腸の炎症範囲や程度を診断する検査

大腸内視鏡検査で炎症の広がりがわかる

大腸内視鏡検査のイメージ

大腸内視鏡検査を行うことで潰瘍性大腸炎の炎症の広がり具合を知ることができます。潰瘍性大腸炎の患者さんは、炎症の広がりから見て、次の3つのタイプにわかれます。

潰瘍性大腸炎の3つのタイプ

  • 左:直腸だけに炎症が限局しているタイプ
  • 真ん中:大腸の左側だけに炎症が認められるタイプ
  • 右:大腸全体に炎症が認められるタイプ

潰瘍性大腸炎のタイプはこの3つに分かれ、炎症が直腸だけに限られているタイプの発症率が22%、大腸の左側だけに炎症が起こっているタイプの発症率が27%、大腸全体に炎症が広がっているタイプの発症率が38%となっています。
炎症が大腸全体に広がっている人は、重症になりやすいといわれています。

内視鏡検査で潰瘍性大腸炎の炎症状態を把握できる

潰瘍性大腸炎が活動期と寛解期を繰り返すことを説明したイラスト

内視鏡検査で炎症の状態を把握することもできます。粘膜がただれていて、一部に小さな潰瘍のある、血管が全く見えない状態が左側の画像の「活動期」になります。粘液便や血便、下痢、発熱などの症状が現れます。
一方、粘膜がきれいで血管も透けて見える右側の画像の状態が「寛解期」です。寛解期の時は、症状が現れません。

潰瘍性大腸炎は、大腸に炎症が起こり症状が現れる活動期と、大腸の炎症が治まり症状が現れなくなる寛解期を繰り返します。寛解期をずっと続けている人であっても、急に活動期に入ることがあります。これを「再燃」と呼びます。炎症が長期に及ぶと大腸がんを発症する危険性が高くなりますので、再燃を抑えて、寛解期をできるだけ長く維持することが重要になります。

進行に合わせた潰瘍性大腸炎の薬物治療

進行に合わせた潰瘍性大腸炎の薬物治療

潰瘍性大腸炎の治療の基本は薬による治療です。大腸内視鏡検査で病変の広がりや活動期・寛解期などを確認して、重症度に応じて使用する薬が選択されます。

軽症の治療

軽症の場合には5-アミノサリチル酸製剤で粘膜の炎症を抑えます。5-アミノサリチル酸製剤は大腸がんを抑制する効果があり、副作用も少なく、長期間に使用することができます。寛解期の治療にも用いられます。

中等症の治療

中等症の場合には5-アミノサリチル酸製剤に加えて、ステロイド薬を使用します。ステロイド薬は炎症を抑える作用が強い一方、長期間使用すると血糖値・血圧の上昇、骨粗しょう症、顔のむくみなどの副作用が現れる場合があります。

また、高齢者で長期に使用している場合は、感染症にかかりやすくなるといったことも出てきます。ステロイド薬を減らしている間に症状が悪化した場合は、免疫調節薬を使用することがあります。

重症の治療

ステロイド薬で症状が改善せずに重症になった場合は抗TNF-α抗体製剤、カルシニューリン阻害薬などを併用します。抗TNF-α抗体製剤は炎症を引き起こす物質(サイトカインなど)を、カルシニューリン阻害薬は炎症に関わっている細胞(免疫細胞のひとつ T細胞など)の機能を抑えます。

薬物治療以外の潰瘍性大腸炎の治療

日本で開発された白血球除去療法

日本で開発された白血球除去療法のイメージ

薬物療法以外の治療法として、日本で開発された白血球除去療法があります。これは潰瘍性大腸炎の患者さんから血液を抜き、フィルターに通して、炎症を引き起こしている活性化した白血球だけを取り除き、元に戻すという方法です。一般的に1回1時間程度かかり、合計で10回を目安に行われます。患者さんの状態によって1週間に行う回数を決めていきます。
白血球除去療法を受けた人の40%~50%が寛解に入るといわれています。

手術

薬物療法を行っても症状が改善されない場合や、潰瘍性大腸炎から大腸がんを発症した場合は、手術で大腸をすべて摘出します。炎症のある部分やがんのある部分だけを切除しても、残した部分に炎症が起き、がんが発症しやすいことがわかってきたため、大腸の全摘出を行うのが標準的な治療となっています。

詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2019年9月号に詳しく掲載されています。

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