2018年3月3日(土)

東日本大震災から7年 “自立”を模索する福島経済

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野口
「東日本大震災からまもなく7年。今日(3日)は、福島県最大のまち、いわき市からお伝えします。いわき市は原発事故による避難者を数多く受け入れる一方で、福島県の復興の拠点として、その役割を担ってきました。」

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八木
「今日は『夜明け市場(いちば)』からお伝えします。“食を通して、いわきを元気にしたい”と、震災から半年後に、地元の若い起業家たちが始めた飲食店街です。今では、飲食業や新たな事業を始めたいという人たちが続々と集まる、チャレンジや交流の場になっています。」

野口
「この場所と同じように、福島の経済を活性化させようという動きが県内各地で始まっています。今夜は、その最前線を追って、さらに、その先について考えていきたいと思います。」

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2017年、4つの町と村で、一部を除いて避難指示が解除され、新たな段階を迎えた福島県。しかし、地元経済を支えてきた公共事業は、1年前と比べて3割以上減少。主要産業の農業も、生産額は震災前から10%余り落ち込んだままです。

南相馬市の農家
「買ってもらえない状況。それがなくならない限りは、なかなか福島県の農産物が県外に出ていくのは大変だ。」

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どうすれば経済を活性化できるのか。いま、福島では新たなビジネスが次々に動き始めています。“おいしさ”に徹底的にこだわったという「パックごはん」。

食品会社 社長
「本来、福島のお米というのは、おいしいお米。風評被害を払しょくできるようにやっていきたい。」

福島にこそチャンスがあると、県外の企業も相次いで進出。雇用にもつながっています。復興から自立へ、福島経済の最前線に迫ります。

●東日本大震災から7年 動き出す福島の経済

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野口
「『夜明け市場』の中にあるシェアオフィスに移動してきました。ここは、“いわき市で起業したい”という人たちのために作られた場所です。」

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八木
「ゲストをご紹介します。まずは、この『夜明け市場』を運営する企画会社の社長・鈴木賢治さんです。こちらは、開業1年の時の写真ということで、鈴木さんがいらっしゃいます。“明けない夜はない”という思いで、この市場の名前を決めたということなんですが、当初は地元の方たち中心だったと聞いています。7年経って状況はいかがですか?」

47PLANNING 社長 鈴木賢治さん
「いまだに地元の人たちにも頑張ってやってもらっていますが、県外からもUターン・Iターンが増えていまして、少しずつ挑戦する場所として手ごたえを感じています。」

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八木
「こちらは、きのう(2日)の『夜明け市場』のお店の様子なんですが、にぎわっていますね。たくさんお客さんがいらっしゃっていますけれども、県外からのお客さんも増えているということなんですね?」

47PLANNING 社長 鈴木賢治さん
「少しずつですが、土日は特に県外からのお客さんに来ていただいています。」

八木
「もう1人ご紹介します。番組レギュラーゲストで、作家の真山仁さんです。」

野口
「真山さんは震災に関する著書もありますけれども、今回、この番組にあわせて取材を?」

作家 真山仁さん
「そんな大げさなものではないですけど、朝、いわき市から南相馬市まで車でいろいろなところを行ってました。2年半ぶりにこのエリアにお邪魔したんですけど、どうしても変化を探してしまうんです。そういう意味では、正直に申し上げると、まだまだかなと思っていることがたくさんあるんですが、逆に言うと、これから本腰を入れられる。宮城県や岩手県とは違うチャンスはあるなというようなことも思いました。」

野口
「7年とは、どういうタイミングだと思いますか?」

作家 真山仁さん
「本当は、普通の生活が軌道に乗らなきゃいけない時ではある。ただ、いろいろな事情によって、特にこの県は難しかったと思います。他の7年とは違うけれども、逆に言うと、他の成功例・失敗例を見てきているという意味で、もしかすると、ここの県だけではない、日本全体を見るヒントがたくさん隠れている気もします。」

●福島経済 震災7年の課題は

野口
「その福島ですが、景気回復に向けた動きが少し停滞しているんです。」

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八木
「こちらは企業の生産活動を示す福島県の『鉱工業生産指数』の推移なんですが、震災前を100とした指数で、2017年は84.4と3年連続で減少。日銀の福島支店は、県内の景気について、“回復に向けた動きは足踏み状態だ”と、先月(2月)、判断を引き下げています。」

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野口
「公共事業ですとか、いわゆる国からの巨額の財政支援は大幅に減って、“作られた需要”はピークを過ぎています。この状況をどう打ち破っていくのか。まずは、こちらからです。2016年から2017年にかけ、原発事故による避難指示が解除された地域(オレンジ色から黄色になっている部分)です。復興から取り残された、もしくは、まだ手付かずの地域だと思われているかもしれませんが、いま、こうした地域で最先端を行く取り組みが始まっています。」

●福島沿岸部に最先端ビジネスを!

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野口
「ここからは、福島放送局で復興の取材にあたっている樽野(たるの)記者にも加わってもらいます。VTRに出てきた、最先端の技術を持った企業を集積しようという国の構想ですが、どれぐらいの規模のものなんですか?」

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樽野章記者(NHK福島)
「この構想は『福島イノベーション・コースト構想』と名付けられています。福島の沿岸部『浜通り』の復興についてなんですけれども、それぞれの市やまちに、ロボットなどの最先端の研究や開発を行う施設をつくって、そうした技術を持った企業を集めるとともに、その技術を活用して原発の廃炉作業にも生かしていこうというものなんです。この方針のもとで、国も手厚い補助制度を設けています。去年、避難指示が解除された地域で中小企業が進出した場合に、その費用のうち最大で4分の3を支給するというものなんです。先ほどVTRで紹介したバッテリーを再生する会社も、この制度を活用しています。こうした効果もあって、去年1年間に福島県に新設・増設した工場は75件と、前年よりも60%も増えて、それによって生み出された雇用は1,800人とみられています。」

八木
「真山さんは、こうした動きをどうご覧になっていますか?」

作家 真山仁さん
「是非どんどんやってほしいんですが、被災地で国家プロジェクトが先端技術のものを、ものすごく大がかりでやるのは初めてではないんです。1995年の阪神・淡路大震災のときも、神戸のポートアイランドあたりで医療関係の大きなプロジェクトがあって、今回の東日本大震災のときも仙台で同じようなことが起きているんですけど、プロジェクトが大きすぎて現実がついていかないことがよくあるんです。ポイントは、言い方が悪いかもしれないんですが、花火に近い。“こういうことをやるぞ”と打ち上げて、問題はこれを継続するだけの市場や人ができるのかということを考えるところまでのプランは、まだわりと不確定なんです。だから、このまま置いておくのはしんどいですね。」

野口
「そのあたり、樽野さん、課題はどんなところだと思っていますか?」

樽野記者
「取材をしていて感じるのは、全国的にはまだまだ知名度が低いところが課題だと思います。国や県もシンポジウムを開くなどして知名度を高めようとしていますが、十分とは言えません。構想が本格化するのはこれからですが、例えば、ドローンの実験を自由にできるとか、進出する企業にとって具体的にどういうメリットがあるのかということを広く発信していくことが、これから大事になってくると思います。」

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野口
「続いては、福島の主要産業である農業の現状を見ていきます。その3割を占めるのが“コメ”です。」

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八木
「福島は全国有数のコメどころでしたが、コメの収穫量は、原発事故前と比べると2割以上減っています。さらに価格も、全国平均に比べ低いままですが、その大きな要因は“風評”です。福島県で生産されるすべてのコメは、世界で最も厳しいとされる安全検査を受け、この3年間、基準値を超える放射性物質は検出されていないにもかかわらず、です。」

野口
「このコメにも“全量検査済”というシールが貼ってあります。いまなお続く“風評”を打ち破ろうと、挑戦を始めているのが生産農家と企業です。“コメ復活”に向けた一筋の光明も見えてきています。」

●福島の主要産業 農業の現状は

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八木
「真山さん、南相馬の農家の皆さんたちの思いをどう受け止められましたか?」

作家 真山仁さん
「農家の方の仕事は、おいしいものを作ることですよね。“安全ですよ”ということを農家の方が言うことではない。それは周りが言わないといけないことで、そういう意味では叱られるかもしれませんけど、“全量検査済”みたいなことはやめてもいいと思います。そこによって“事故があったんだ”と思ってしまう。だから、普通が一番いいことなんです。でも、福島にはまだ普通が普通になっていない。そこは、みんながもっと強気で応援するべきだと思います。」

野口
「樽野さん、荒廃地とか見ていると、本当にあそこはそのままになってしまうのだろうかと思ってしまうわけですけれども、その風評は相当深刻な悩みですよね?」

樽野記者
「コメ以外にも、福島は全国有数の桃の産地なんです。ただ、桃についても、本当においしいんですけれども、今も価格は全国の市場価格よりも2割も低い状態が続いています。“おいしい桃を生産しているのに、何でなんだろう”という声もよく聞きますし、風評被害を恐れて、本格的に営農再開できないという方もいらっしゃいます。原発周辺の12の市町村で、およそ1,000人の農家の方に尋ねた調査では、“営農再開できない”とか“未定”だと答えた人は6割にも上っています。そう考えると、まずは意欲ある人をしっかり支援していくことが重要になってくると思います。」

●震災から7年 福島産の食材はいま

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八木
「鈴木さん、樽野さんから桃の話もありましたけども、コメ、そして桃などに加えて野菜も福島ではたくさん採れるんですよね?」

47PLANNING 社長 鈴木賢治さん
「いわき市は1年通して温暖な気候なので、野菜の生産が盛んで、特にトマトとかの栽培が盛んです。」

八木
「本当に立派なトマトですね。福島県産の野菜ということなんですけれども、運営されている『夜明け市場』でも福島県の野菜を使っているのでしょうか?」

47PLANNING 社長 鈴木賢治さん
「すべてではないんですけれども、ほとんどの店で福島県産の食材を使わせていただいています。」

野口
「おいしそうですよね。真山さん、どうですか?」

作家 真山仁さん
「いいですね。あとでいただきたいです。」

野口
「福島県産の農水産物について、今週、こんなニュースがありました。」

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八木
「福島県沖で水揚げされた高級魚“ヒラメ”が、原発事故後、初めて海外に輸出されました。輸出先はタイということなんですが、原発事故の前は福島は全国3位の水揚げがあって、高値で取引されていました。」

野口
「真山さん、これはいよいよ日本酒のお供ですよ(笑)」

作家 真山仁さん
「ヒラメ大好きなんですよ。一匹持って帰りたいです。」

野口
「ここからは、いかに地域に人を呼び込むか、復興・自立に欠かせない話についてです。まず最初にご覧いただくのは、いま非常にユニークなかたちで進んでいる福島に起業家を呼び込むビジネスです。」

●起業家呼び込む秘策 “福活ファンド”

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野口
「真山さん、“福活ファンド”について、どんなふうにご覧になりましたか?」

作家 真山仁さん
「リスクが分かっていても投資するのがファンドだと思うんです。そういう意味では、失敗した人はリスクが分かっている人たちだから、これは全国に広がってほしい試みですね。」

野口
「地域に人を呼び込もうという仕掛け、もう1つご覧いただきます。それは、このいわき市で始まっています。求心力となるのは、スポーツです。」

●復興から自立へ 福島に人を呼び込め

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野口
「VTRに出てきた安田さんも大倉さんも非常に熱い方なんですけど、鈴木さんも『いわきFCパーク』の運営に関わっているんですね?」

47PLANNING 社長 鈴木賢治さん
「実はご縁をいただきまして、『いわきFCパーク』の商業部分を弊社で運営させていただいております。」

野口
「スポーツを核にした集客というか人集めは、どうですか?」

47PLANNING 社長 鈴木賢治さん
「いわき市にとっては、大きなチャンスだと思っています。まさに復興から成長のステージに行く、いい機会を(いわきFCパークを運営する)ドームさんからいただいていると思っています。」

●復興から自立へ 今後の課題は

八木
「着実に動き出していると感じられたんですが、樽野さん、福島で取材をしていて、復興から自立へ、さらに一歩進むために必要なことは何だと感じていますか?」

樽野記者
「これまで見てきたように、福島県では、これまでにはなかった企業の取り組みが生まれています。これを大きなうねりとするために、私はこれまで以上に地元企業の奮起に期待したいと思います。取材してきた企業と連携すれば、大きなビジネスチャンスが生まれるはずだと思います。福島で取材していると、福島の人や企業が、ちょっと控えめだなという印象を受けることもあるんですけれども、アピールすべきときはアピールをして、チャンスを広げていってほしいなと思います。福島にはその力が十分にあると思います。」

●東日本大震災から7年 動き出す福島の経済

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野口
「それでは最後に、ゲストのお2人に、これからの復興に向けて、どんなことが必要なのか書いていただきました。まず、鈴木さんは『自ら動く!』、どんな思いがありますか?」

47PLANNING 社長 鈴木賢治さん
「いい状況や新しい福島をつくっていくには、誰かがやってくれるのではなくて、やっぱり自分事として自ら動く。その強い意思が必要なんじゃないかなと思っています。」

野口
「7年という期間、鈴木さんはどんなふうに感じていますか?」

47PLANNING 社長 鈴木賢治さん
「それぞれにとって7年の捉え方、感じ方は違うと思うんですが、私は“もう7年たってしまったんだ”という思いが、すごく強くて、これからの5年10年は、どういうふうになっていくかわからないんですけれども、その成果は10年後の人たちが評価をしてくれるのではないかなと思います。」

野口
「真山さんは、『誰が“主役”なのか、そこで生活している人だ!』とありますが?」

作家 真山仁さん
「少し鈴木さんと近いんですけど、大事なポイントは、復興は大体、部外者の方が一生懸命にやる。東京やいろんなところから来る人、刺激を与えるということでは、非常に大きいんです。ある意味、地域の殻を破る。ところが、“やってもらっている感”がどうしても出る。さらに、お手伝いをする側も、“やっぱり自分たちが主役ではないよね。火付け役だから、地元の人に頑張ってもらわなきゃ”というふうに思っている。そういう意味では、地元の人が“自分たちのまちを良くするんだ”と、自分たちで覚悟して、外部の人たちと連携できるかどうか。他の地域を見ていても、これが最大の問題で、過疎化している地域で地方創生するためにも、これがいちばん重要なポイントだと思います。」

野口
「被災してるしてないに関わらず、地方で過疎している地域でも相当ヒントになると?」

作家 真山仁さん
「“助けて”と言ったらだめです。自分たちで切り開くときに“足りないから手伝って”と言わないとだめですね。」

野口
「震災からまもなく7年。いまなお7万人を超える人が避難生活を余儀なくされています。私たちは被災地に目を向け、耳を傾け、そして、力を貸すのではなくて、ともに力を合わせるということが大事なんだなと、改めて感じました。」

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