2018年1月6日(土)

徹底討論!大企業にイノベーションは起こせるのか?

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野口
「今夜は新春スペシャルでお伝えします。そのテーマは“イノベーション”です。これまでにない考え方を取り入れて、新たな製品やサービスを生み出し、社会に大きな変化を起こす、これがイノベーションです。iPhoneを開発したアップルですとか、最近ではウーバーなど、海外企業の目覚しい成長は、まさにこのイノベーションが原動力と言えます。一方で、日本の大企業の多くも業績は好調ですけれども、イノベーションがなかなか起きないと言われています。その要因の1つとも言われるのが、こちらの数字です。」

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八木
「民間企業が保有する現金・預金の推移です。年々増え続けていまして、今年度は2017年9月の時点で259兆円と過去最高を更新しています。つまり、企業が稼いだお金は手元に積み上がるばかりで、イノベーションに向かっていないとも指摘されています。」

野口
「大企業のどこに問題があって、どうすればイノベーションが起きるのか。改めて討論するゲストの方々をご紹介します。」

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八木
「まずは、経済3団体の1つ、経済同友会代表幹事で、三菱ケミカルホールディングス会長の小林喜光(こばやし・よしみつ)さんです。」

長年、研究開発部門を歩んできた小林さん。“技術に強い経営者”としてM&Aやリストラをすすめ、営業利益を3倍に伸ばしました。“イノベーションを起こすには、企業は大学など研究機関との連携が欠かせない”が持論です。

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八木
「続いては、ロボット開発を手がけるベンチャー企業『GROOVE X(グルーブエックス)』のCEO、林要(はやし・かなめ)さんです。」

家庭用ロボットの開発を進めている林さん。以前はトヨタやソフトバンクで働き、Pepper(ペッパー)の開発も担当しました。大企業とベンチャーの両方を知る林さんは、“大企業がイノベーションを起こし続けることは難しい”と言います。

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八木
「この若さで二足のわらじです。ソニーに勤めながら、ベンチャー企業『ハピキラFACTORY』社長でもある正能茉優(しょうのう・まゆ)さんです。」

正能さんは、大学時代から若い女性の視点で地方の特産品をプロデュースする会社を経営。ソニーでは新製品の企画開発を担当しています。“大企業は、閉鎖的な超ムラ社会。新しいことは簡単には実現しない”と考えています。

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八木
「そして、アメリカ・シリコンバレーから中継での参加です。ベンチャー投資会社『WiL(ウィル)』を運営する伊佐山元(いさやま・げん)さんです。」

シリコンバレーで最も有名な日本人の1人と言われる伊佐山さん。8,000人以上の起業家に会い、投資をしてきました。“日本の大企業は、ベンチャー企業をうまく活用すればイノベーションを加速できるはずだ”と言います。

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八木
「そして番組のレギュラーゲスト、作家の真山仁(まやま・じん)さんです。」

●大企業発イノベーション なぜ停滞 問題点は?

野口
「皆さん、よろしくお願いします。まず最初に、日本の大企業発のイノベーションが停滞しているのはなぜか、という問題点を書いていただきました。それではまず小林さんからお願いします。」

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八木
「“幸せの代償として、ハングリーさが失われた”ということですね。」

経済同友会 代表幹事・三菱ケミカルHD会長 小林喜光さん
「基本的に何かを創造して、イメージを現実にするにはハングリーさに尽きる。何かクリエイトするというのは相当のエネルギーがいるわけだから怒りがなければだめなんだけれども、幸せすぎて“このぐらいでいいや”と。これは大企業に限らなくて、日本人全体のメンタリティーが非常に危機にあるような気がします。」

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八木
「正能さんは、“大企業はハイパームラ社会”と挙げていただきましたが、問題視されているのはどういう点なんでしょうか?」

ソニー社員 兼 ハピキラFACTORY社長 正能茉優さん
「言語化されていない文化だったりとか、社内での“こういうことは言っていいよね?言っちゃいけないよね?”ということを日々感じているんですけれども、そんな中で新しいことをするっていうのは、和を乱す行為というふうに、まずは捉えられがち。やっぱり、そこの新しいことに対してネガティブな文化というのが大企業にはあるなと日々感じています。」

野口
「それがイノベーションを阻害しているんじゃないかということですね。」

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八木
「続いて、林さんです。“そもそも大企業は構造的にリスクをとるための組織ではない”ということですね。」

ロボットベンチャー『GROOVE X』CEO 林要さん
「そもそも私どもが大企業の昔のイノベーションを懐かしがっているのは、“若いころってよかったよね”と言っているんですよね。でも、そのときはスタートアップだったんですよ。スタートアップに毛が生えた程度の企業で、ごまんとあった企業の中でたまたま成功したところが大企業として今、生き残っている。その大企業になった後というのは、実はイノベーションを生み出し続ける会社なんて世界中にほとんどないわけです。じゃあ彼らはどうやって新しい事業を手に入れているかというと、M&Aをしているんです。スタートアップが大きなリスクを背負ってイノベーションを起こして、それを買う。そのキャッシュがあるのが大企業であって、そうやってイノベーションを起こせばいいんじゃないかと考えています。」

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八木
「伊佐山さんに挙げていただいたのは、“もっと中高年に光を!”ということですね。これはどういうことでしょうか?」

ベンチャーキャピタル『WiL』CEO 伊佐山元さん
「もしかしたらポピュラーな視点じゃないかもしれないんですけれども、今、どうしても日本でイノベーションの議論をすると、過度にシリコンバレーであるとか外部、外への期待とか、あとはイノベーションというとどうしても技術みたいなものが念頭に置かれるので、“若い人に頑張ってもらおう”という論調が多いと思うんですけれども、でも日本の今の実態を考えると、圧倒的に人口として多いし頑張らないといけないのは、もしかしたら第2次ベビーブーマーを含め40代、50代ぐらいの中年の人なんじゃないかなというのが私の考え方です。つまり、アメリカとかヨーロッパを参考にするのもいいんですけれども、そういったところと日本とはそもそも人口の構造的な違いがあるわけですから、日本の場合は、40~50代が“若い人に頑張ってもらおうよ”というスタンスではなくて、“自分たちが主役になるんだ”、“自分たちが光を浴びるんだ”というような発想で動かないと、おそらく日本からイノベーションを生むような環境はできないんじゃないかなと考えています。」

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八木
「続いて、真山さんも見ていきます。“経営トップがリスクをとらない!”ということですね。」

作家 真山仁さん
「こう言ってしまうと身もふたもないんですが、環境としてあまりにも失うものが多すぎて、失うんだったら守りたいという気持ちがすごく強い。イノベーションという言葉は、みんなうっとりするんですけど行動はしない。言動と行動のギャップがどんどん広がっている中で、毎年いろんな特集をやってもイノベーションは出てくるんですけど、結果としてイノベーションが成功したということはあまり聞かない。これが多分いちばん問題なんだと思います。」

●大企業発イノベーション 経営者のマインドは?

野口
「リスクという話は林さんのところでもありましたが、まず最初は“なぜイノベーションは起こらないのか?”ということで考えると、経営判断として特に経営トップがリスクをとっていないんじゃないかということですが、これはもう小林さんに聞くしかないんですけど、どういうふうにお考えになっていますか?」

経済同友会 代表幹事・三菱ケミカルHD会長 小林喜光さん
「これ一般論なのか、個別に考えると、リスクをとって極めて激しく戦っている経営者も日本にはたくさんおられるんでね、何とも言い難いんですけど、僕自身のことを言えば、とるべきリスクって何もしないことが一番のリスクであって、こんな時代には次から次へ新しいことを展開していかなきゃ勝てるはずない。相当の経営者はそれは分かっていると思います。結果としてリスクをとるかとらないかというのは、データで示さないとなかなか分からないんじゃないかと。そもそもユニコーン企業(未上場ながら企業価値が10億ドル以上と推測される会社)だとか、そういういわゆるベンチャー、スタートアップというのは日本では明快に少ないんですよね。だから逆に言えば、別に大企業に限らず新しい事業が起こらない、そっちのほうが問題なんですよ。大企業だってたいへんにリスクをとって、それがネット系の企業体なのか、今までのような素材・材料、あるいはインフラ系なのか、あるいはサービス系、流通系、銀行系なのかによって、相当業種によって違うので、なかなか一般論では僕はどう答えていいか分かりませんね。」

野口
「それはそうです。小林さんがおっしゃるように、頭にはある経営者が多いというのはそうなんでしょう。ただ、例えば林さん。林さんはトヨタですとかソフトバンクとか大企業にいらっしゃったわけですけど、小林さんがおっしゃるように頭では分かっている経営者は多いと思うんですけど、実際に行動に移してない、もしくは移せないというふうなところが問題でしょうか?」

ロボットベンチャー『GROOVE X』CEO 林要さん
「問題と言えば問題なんですけど、そもそも日本で新しい事業が起きないのかというと、過去には起きてたわけですよね。安定すると起きなくなるわけです。なぜ安定すると起きなくなるのかというところを、ちゃんと考えたほうがいいんじゃないかと思うんです。結局、新しいことをやってイノベーションを起こすって何かと言ったら、学習することです。新しい環境を学習することによって、そこに新しい商流を作ってアマゾンができる。彼らは何をやっているのかというと、環境のボラティリティー(変動の大きさ)がすごく大きいところ、環境の振れ幅が非常に大きいところに身を置いた人だけが学習ができるんです。その学習をし続ければ、実はおのずと新しいイノベーションが起きるというのは戦後の日本が証明してるんです。戦後の日本が落ち着いたあとは安定しちゃったので、学習する機会を失ってしまっている。だから、どんなにリスクをとっていても学習してなければ、世界のボラティリティーの大きい会社で生きるか死ぬかやってるところに対してイノベーションを起こしやすい環境なのかということ。」

野口
「学習というのは、次の何かを求めようという気概みたいなものですか?」

ロボットベンチャー『GROOVE X』CEO 林要さん
「気概だけじゃないです。結局、インターネットと何が結びつくと何が起きるのかというまったく新しいことをそれぞれ学んでおくことによって、何かがつながるわけです。大体イノベーションの瞬間ってロジカルになんかつながらないんです。」

作家 真山仁さん
「経験ですよね。経験しないと身につかないですよね。」

ロボットベンチャー『GROOVE X』CEO 林要さん
「そうなんです。」

●大企業発イノベーション なぜ停滞 問題点は?

野口
「ただ一方で、大企業は成功体験があって、そのルーティンをやっていればいいと思っている人が多いんじゃないかということなんでしょう。正能さんはどう考えられますか?」

ソニー社員 兼 ハピキラFACTORY社長 正能茉優さん
「成功体験というのが、すごい“WHAT”になってしまっているなと思っていて、私が勤めているソニーだったら、例えば“電化製品を作れば?”とか“金融系のサービスを始めれば?”というふうな過去の成功体験があって、それの改善版とか改良版をどんどん出していくわけです。でも、今、林さんがおっしゃっていた学習って、“こういうふうに新しいことをやれば、今まで自分たちの会社が専門としてこなかった分野だけれども違う分野でこういうふうに稼げるんだ”とか、“こういうふうに新しい事業を作っていくと会社を支えうる事業になるんだ”っていう成功体験を“HOW”のほうでしていないので、だからそれがなかなか横展開できないんだなというのを見てて思います。」

野口
「小林さん、例えばバブルのころに各企業で事業の多角化っていうのがあって、それもイノベーションを狙ったんでしょう、その結果、借金ばかりたまっちゃって、多角化はだめだと。いつの間にか“選択と集中”というのが美辞麗句のように使われてきた中で、新しいものにチャレンジすることをしなくなっている?」

経済同友会 代表幹事・三菱ケミカルHD会長 小林喜光さん
「僕はまったくそうは思わないんだよね。研究開発費だってGDPの3%は企業が使っているんです。世界で、言ってみれば韓国、イスラエル、日本ぐらい。だから、お金は使っているんです。リスクにもかけているわけです。あるいは、公的な部分でちょうど1%でトータル4%ですから、そのデータに関する限りは十分投資しているんです。だから、むしろ何かをクリエイトするというのは、先ほどのユニコーン企業だとかイスラエルのスタートアップとかシリコンバレーとか、そういうところっていうのは、きわめて異人種というか、いろいろな人間、多様な人が集まって、大変な競争社会を作っている。最初に申し上げたように、日本はなんとなく幸せな雰囲気、これが20年ほぼ続いちゃっているんです。いわゆるデフレマインドというか、何かクリエイトしてリスクにかける以前ですな。本気で戦う気があるのかないのか、ここが少なすぎる。国全体がそうだったんです。ここにきてだいぶ活性化し始めてきている。そこに期待しようじゃないですか。」

野口
「海外から伊佐山さんがちょっとひと言あるということですが、どんなふうに今、議論を聞かれていますか?」

ベンチャーキャピタル『WiL』CEO 伊佐山元さん
「今、私がシリコンバレーでやっている事業は、まさに今の小林さんの指摘である日本企業が研究開発費を潤沢に使っているじゃないかというポイントに注目したところがあります。つまりお金は使っていると。ただ、林さんが指摘するように、人間はどうしても安定してしまって、特に日本のようにいわゆる多様化が少ない社会ですね。周りを見ても日本人ばかり、どこの都市に行っても似たようなサービスが提供されていて、安心・安全が確保されているような社会で、どうしても事業をしてしまうと、多分どんな人間がいても“なにくそ!”というかたちで頑張る動機はなかなか出にくいんじゃないかというのが私の問題意識です。つまり日本の企業は技術もあるし、人もいるし、お金もあるにもかかわらずイノベーションが起きていないのは、おそらく俗に言う多様性が今、社会に欠けている。それは社会が安定しすぎているというのも1つあると思うんですけれども、そこはやっぱり要因としては大きいんじゃないか。私が今いるアメリカは順風満帆かと言われてみると、ご存知のように政治的にも経済的にもいろんな課題を抱えていて、一見、よく見えていても不安定な要素がいっぱいあると思うんです。不安定な要素があればあるほど、我々のように新しいことを考える人にとっては、新しいことを考えるきっかけにはなるので、やっぱり日本というのは、いろんな方がご指摘したように安定していて非常に居心地が良くて、それがゆえに“頑張ってやろう、社会を変えてやろう”というような力が今、働きにくくなっているというのが非常に大きな課題であり、問題じゃないかなというふうに個人的には感じています。」

八木
「真山さんはどうお考えですか?」

作家 真山仁さん
「そもそも日本は企業の新陳代謝がないんです。大手はずっとそのままいるし、ベンチャーとしては注目されるけど、ベンチャーが大きな会社にならない。そうすると、はっきり言って、“別に変わらなくていいんじゃないの?”と経営者は思っているかもしれないんです。もう1つ、お金は動いているんですけど、ちょっと視点を変えて、国の補助金の話をするとわかりやすい。国は、例えば経産省が企業を支援しようと、成長産業を作ろうとお金を入れているんですけど、お金しか入れない。大切なのは、お金を入れて何になりたいんだと。進化なのか脱皮なのか分からないけど、何になりたいかをプレゼンする相手ではなくて、とりあえずこの業界でちょっと頑張れるかもしれないからお金入れましょうと。だから多分、すべてお金を入れれば解決するという成長モードの状態。目的意識みたいなこと、そのために何が足りないのか、というところまでちゃんと言葉を持たないとイノベーションを語る資格はないと思います。」

●大企業発イノベーション “超ムラ社会”に問題あり?

野口
「先ほど出していただいたボードの中で、もう1つ気になったのが正能さんの“大企業はハイパームラ社会”。さっき伊佐山さんは“中高年に光を”と言われて、逆に言うと、大企業の中高年はだめなんじゃないかというふうに聞こえると、この中で大企業の中高年って僕ぐらいだなと思って聞いていたんですけど(笑)正能さん、実際、ハイパームラ社会の悪いところはどういうところですか?」

ソニー社員 兼 ハピキラFACTORY社長 正能茉優さん
「私は今日、あくまでいち社員としての実体験をお話できればなと思っているんですけれども、やっぱり社長とか役員とか、いわゆる経営陣が“新しいことやりなよ”、“君、おもしろいね。こういうことチャレンジしなよ”と言ってくれたとしても、自分の毎日の活動を見ているのは直属の上司じゃないですか。でも、その上司たちは上の世代の、いわゆる一義的な正解とか成功というのを知っているので、“こういうふうにしなきゃ上にあがれない”とか“この数字を達成しないといけない”というところに追われているんです。なので、いくら経営陣が“いいよ”と言ってくれていても、中間管理職の自分の上司にあたる人たちが私みたいな働き方だったりとか、イノベーションを起こすような行動していることをプラスに捉えるのは、すごい難しいなと思っています。」

野口
「つまり、大企業の雇用体系というか一括採用・終身雇用、そこも含めてという感じですか?」

ソニー社員 兼 ハピキラFACTORY社長 正能茉優さん
「あとは、人事制度が変わったらおもしろいなと思っていて、新しいことをやっている若者を評価する制度があったりすると、上もきっと評価しやすいんだろうなっていうふうに思います。」

野口
「小林さん、この話よく出るんですけど、例えば終身雇用制度、あとは人材が流動化しない。今、人手不足になっているところで、それが背中を押すんじゃないか。もっと極論すれば、海外から見れば、日本は解雇法制がきつすぎる、人が動かないと。日本的な高度経済成長を支えてきた日本的な雇用形態を見直すべきだという議論はどうですか?」

経済同友会 代表幹事・三菱ケミカルHD会長 小林喜光さん
「まさに政権の2018年の最大のテーマというのは働き方改革だと。それと雇用の流動性。そこにようやく手をつけるようになりつつあるので、そこが非常にポイントだと思います。生産性アップのためにも労働の流動性なり、もうちょっとプロフェッショナルに対して自由に時間制限なく、あるいは解雇についても金銭でできるような、これがなかったら勝負できないです。グローバルにはみんなそうなんだから。」

野口
「経営者としては、辞めてもらいやすくするというのは歓迎ですか?」

経済同友会 代表幹事・三菱ケミカルHD会長 小林喜光さん
「そういう意味ではなくて、みんながミスマッチで社内失業者を抱えるよりは、働いている人が自分に合ったところに流動的に他の会社に行けるようにするっていうこと。例えばM&Aありますよね、するとオーバーラップする、一部いらなくなる。ところが日本の場合は抱え込むしかないわけですよ。だからM&Aひとつにとっても、ケミカル(化学産業)のグローバルの状況を、大企業の中で言えば明確なんだけど、デュポンとダウという100年、200年続いた大企業が平気でアクティビストに言われて一緒になるんです。それでまた3つなり6つに分けるわけです。アグリ系とかコモディティ系とかファンクショナルな部分とか、そのぐらいダイナミックにM&Aができるというのが労働法制を含めて社会構造が非常にフレキシブルなんです。日本の場合はムラ社会以前の話。相変わらず何百年も続いているメンタリティーを背負っていることが問題なんです。」

野口
「そこは正能さんと意見が一致していると思うんですけど、ちょっとさっきから気になっている中高年をどうするのか。大企業の中高年はだめだという話がありましたけれども、シリコンバレーの伊佐山さんの意見は、まさに“中高年に光を”ということでしたが、伊佐山さんが力を入れてらっしゃる活動を簡単にまとめてみました。」

●“もっと中高年に光を!” 伊佐山さんの取り組み

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シリコンバレーにある伊佐山さんの会社です。中をのぞくと…。

「スズキ株式会社から来ている39歳です。」

「大和証券グループ本社から来ている36歳です。」

「ANA(全日空)から来ている49歳です。」

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彼らは伊佐山さんの呼びかけで、日本の大企業から出向してきた30代、40代の中間管理職。ベンチャー企業を訪ね歩き、連携先を探す日々を送っています。

全日空から出向 山本正人さん
「ここに来ると、みんな明るくてチャレンジング。いろいろな会社と組んで出来る、そこが非常に楽しい。」

●大企業発イノベーション もっと中高年に光を!

八木
「伊佐山さん、“中高年に光を”ということなんですけれども、今、ご紹介した伊佐山さんの取り組みは、どういったことを目指してらっしゃるのでしょうか?」

ベンチャーキャピタル『WiL』CEO 伊佐山元さん
「今、ご指摘があったように、日本の一見30~40代、もしくは50代を含めて中高年というのは、いわゆる管理職。物事を管理してイノベーションとは程遠い、要は“邪魔する人材だ”みたいなイメージが定着しちゃっていると思っていて、それは大きな間違いだというふうに思っています。つまり、少なくともシリコンバレーを見てみると、シリコンバレーというのはよくイノベーションが起きていて、ものすごいベンチャーの資金が投下されているというふうに言われていますけども、実際に投下されている先の人間のプロファイルを見てみると、半分ぐらいのお金は40代以上、つまり日本で言う中間管理職、もしくは中高年が大企業を脱藩して始めたベンチャーです。皆さん、大企業に勤めていて、20年ぐらい技を磨いて、志の合う同士を見つけていけるわけです。そういう人たちが“このまま会社に残って社長になろうか、もしくは仲間と一緒に会社を辞めてベンチャーを起こそうか”、そのバリエーションがものすごく実際は多いわけです。なので、要はベンチャーというと若い人がお祭りやってるみたいなイメージが強いんですけど、私が見ているベンチャーの実態というのは、どちらかというと40代50代の人たちが、それなりの技と問題意識を持って事業を始めるというパターンが多いんです。私の場合、なんでそれが日本でできないんだろうかというのが問題意識で、ひと言でいうと、おそらく日本というのは中間管理職、つまり40~50代になると人を管理するのが仕事であって、かつ会社の経営上のKPI、いわゆる短期的な目標をちゃんとヒットさせるためにおとなしく言われたことをちゃんときちっとやってください、ということが仕事として与えられちゃっているので、それがしかも評価の仕組みに入ってしまった以上は、リスクをとりたくても当然とれないわけです。なので、私がまさに今、VTRにあったような活動をしているのは“いやいや、30代40代50代の人、待ってください。そんな人を管理しているだけじゃ人生おもしろくないですよね”、“シリコンバレーに来て、自分たちと同年代、もしくは年上の人たちがいろいろなアイデアとか世の中の刺激を受けてやんちゃやってる姿見てください”と。見たときに人間というのは必ず刺激を受けて行動は変わると思っているんです。実際に変わってきている人を見てきているので。なので、先ほどのコメントにもつながるんですけど、日本の社会にいると、どうしても多様性とか、世界にはいろんな人がいて、いろんな刺激があって、いろんな不安定があって、それを解決するためには日本人が活躍できる場所は本当はもっとあるはずなのに、それを知るような環境であるとか仕組みが今、日本には欠けてるんじゃないかというのが、私の非常に強い問題意識なので、あえて“イノベーションの取り組みは日本でもできますよね?”みたいなこともよく言われるんですけれども、やはりシリコンバレーに人をつれてきて、ここである意味ショックを与えることが、私にとっては非常に不可欠な1つの活動になっています。」

野口
「林さん、“ショック”という話が今ありましたけど、伊佐山さんはまさにあのシリコンバレーに置いている会社は出島みたいなものだとおっしゃっているわけです。聞いていると、大企業の中にいて内側を向いていると、やっぱりぬるま湯というか刺激がないと外に出て行く。まさに林さんは出ていかれたわけですけど、どういうふうに聞かれました?」

ロボットベンチャー『GROOVE X』CEO 林要さん
「いい取り組みだと思うんですけれども、本当にそれでイノベーションが起きるのかというと、多分もう一歩いると思うんです。なぜかというと、イノベーションって新しいすてきな何かをやるっていうレベルのものじゃないと思うんです。命がけの逆張りだと思うんです。先ほど、伊佐山さんから“脱藩する”というお話がありましたけど、“脱藩する”というのは命がけの逆張りをやりきろうっていうことなんです。これはボラティリティーとしてはすごいんです。安定している大企業を辞めると、この辞めた瞬間にものすごく学習します。そのあとでその看板がなくなって何が起きるのかを知ったあとで、またすごい学習するんです。そのプロセスを世界中の人たちがやってイノベーションを起こしているのに、日本ではまだ安定した生活のもとで、さらにイノベーションも起こしたいと。それってすてきな新しい何かのレベルにとどまっちゃうんんじゃないでしょうか、というところなんですよね。」

野口
「小林さん、大企業にいる中間管理職をどう活用するか。荒波に出していくにはどうしたらいいか?」

経済同友会 代表幹事・三菱ケミカルHD会長 小林喜光さん
「安定と格差というか、例えば大企業の社長、日本では1億ももらってないですよね。ところがアメリカだとケミカルだと50億、100億なんです。もう全然違う。そりゃ勝負しますよね。だけど日本というのは、そんな差はつけられないでしょ。社員と社長、あるいはできる人とできない人。そこの兼ね合いなんですよね。だから、どっちを幸せに思うか。サンノゼに住むのに1,000万ないとなかなか普通の生活ができない。日本はまあ300万~400万あれば、とりあえず生きていける。この違いをどっちとるか、という部分もあるんです。だけど、戦う人は海外行けばいいんじゃないですか。外務省に入っても商社に入っても海外転勤をノーという若い人が多いと以前、聞いたことがあるんですが、もう少し外に出ていかなきゃ。そうしたら外が分かります、日本も分かる。」

野口
「伊佐山さん、どんなふうに聞きましたか?」

ベンチャーキャピタル『WiL』CEO 伊佐山元さん
「例えば理想主義を貫けば、まさに林さんのおっしゃるとおり、私がやっている事業を外人の友人とかに話すと、“なんでおまえ、そんな中途半端なことしてるんだ”と大体そういうふうに怒られるんです。同じアジアでも中国人とか韓国人の友人に話すと“絶対に中国とかではうまくいかない”と言われていて、なぜかというと、まさにそのポイントで、“中途半端に大企業に所属したまま、背水の陣で新しいことを起こす、本気出して仕事なんてできるかよ”と。要するにアメリカのベンチャーがこれだけ競争環境の中で、非常におもしろいものを生み出せるのは、まさに大企業を辞めて、背水の陣で、しかも家族の生活も背負ってやる。ある意味、本当に自分の人生をかける状況に追い込んでいるからできるわけです。当然、それは理想形だとは思っています。ただ、私も含めて日本で生まれ育った人間が、いきなりそのモードにスイッチが切り替えられるか現実論で考えると、私は無理だという結論なんです。つまり、日本というのは、戦後右肩上がりの経済の中で国を強くするために教育制度もできて、会社の仕組み、人事制度も含めてできてるはずなので、それをいきなり変えられれば別ですけれども、当然、いきなり変えることはできない。そうなると現実的なステップとしては、外人から見るとすごく中途半端なんですけれども、大企業のリソース、お金も技術もある、まだ多少余裕があるうちに会社のお金なり技術を使ってちょっと外に出て、まさにシリコンバレーでやんちゃすると。まさに今、小林さんからご指摘があったように、自力でシリコンバレーに来てやろうとすると、ものすごくお金がかかるわけです。だけど、日本の給与体系がまだ変わってない中で、いきなり自分の貯金でこちらに来て会社をつくってやるのは、多分無理なので、そうすると、現実的には、やはりある程度強い会社に所属している間に外に出て、いい体験をして頑張ると。それがちゃんと会社にフィードバックがあればいいかもしれないし、もしかしたら中には何人かは辞めちゃうかもしれないので、それは必ずしも大企業にとって良くないかもしれないんですけれども、日本全体にとっては、おそらく新陳代謝が進んで、私はすごくいいことになると思っています。多分、日本の場合は、いきなり欧米型にポーンと優秀な人が外に出てっていうモデルには変わらないと思っていて、やっぱり何らかのハイブリッド案が必要なんではないかなと考えています。」

作家 真山仁さん
「なにも日本人全員がイノベーションしなくていいと思います。会社員で合っている人が、いきなり“あなた、イノベーションしなさい”と言われるのは大きな迷惑。ポイントは、イノベーションしたい人が頑張れる環境をちゃんと選択として持っているかどうかのほうが大事なんです。」

野口
「まさにお金だけじゃなくて、ということですね。だから、やれるかもしれない、やりたいという中高年をどう活用するかというのは、1つ解決策になるのかなっていうふうには思いました。」

八木
「いくつか問題点も見えてきましたし、解決策などもぽろぽろと出てきましたけれども、その解決策について、さらに深く議論していきます。まずは、経営トップが今どう思っているのか、声を聞いてきました。」

●イノベーションには何が必要? 経営トップは…

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パナソニック 長榮周作会長
「イノベーションを起こそうと思うと、自社だけでは無理。スタートアップ、他社と提携しながらやっていかなければならない。外部の人間と内部の人間の化学反応を起こして、さらにイノベーティブにしていく。」

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伊藤忠商事 岡藤正広社長
「社内外の異分子を集めて、ぶつかり合いが出来るような仕組み、態勢をとっていきたい。」

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資生堂 魚谷雅彦社長
「山あり谷あり、失敗を乗り越えて、新しいものが出来上がっていくのが世の常。そういう社風、評価の制度、失敗も大いに評価、許容する。全社をあげて、風土と人づくりをすることがイノベーションにつながっていく。」

●大企業発イノベーション 自前主義はもう限界?

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野口
「日本企業発イノベーションということですが、こちらは過去のイノベーショントップ10というのがありまして、マンガ・アニメを除けば、ほとんどがいわゆるハードですね。これが80年代ぐらいまでで途絶えて、今、何もないんじゃないかということですが、いくつか話も出てきましたが、自前でやれるかどうかということで見てみます。

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日本の企業、複数回答で『外部との連携は?』と聞きましたけど、圧倒的に“自社単独で”。他のところとの連携になると微々たるもんですね。ここは自社での開発にこだわるから難しくなっているんじゃないかという指摘もあると思うんですが、林さん、簡単にでいいんですが、大企業は自社開発ではイノベーションは難しいですか?」

ロボットベンチャー『GROOVE X』CEO 林要さん
「大企業のメリットってボリュームなんです。ボリュームを維持するっていうのは、間違いが起きないようにする、オペレーションがしっかりしなきゃいけない。それに対してイノベーションって、まったく逆なんです。逆張りをどれだけやるのか。そういう意味でいくと、比較的苦手な人たちを使って、所詮、自社でどんなに大きくても数万人しかいない人たちの中でイノベーションを起こそうというよりも、マーケットにいる数百万人が命がけでイノベーションを起こそうとして芽が出たもの、それをM&Aしてちゃんと育てられるかどうかというほうが、よほど大事だし、役割分担ができていると思うんです。」

●大企業発イノベーション どう進める ベンチャー連携

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野口
「そこで考えられるのが大企業とベンチャーとの連携ということですが、ベンチャー企業の中でイノベーションの芽が出てきたときに、大企業側は何らかの連携をしていくと。その場合、場合によってはM&A、買収することがアメリカではものすごいスピードで行われているわけですけど、正能さんはベンチャー企業の経営者でもありますが、日本ではこれがいまひとつ進んでいないような気がしますけど、どうですか?」

ソニー社員 兼 ハピキラFACTORY社長 正能茉優さん
「そもそも何か一緒にやろうと思っても、まず現場の人で外の人と何かをやったことがあるという人が大企業側にいないので、例えば、口座を開設していいのかも分からないとか、現場レベルでどういうふうに行動したら一緒に手を組めるのかというステップを誰も分かっていないんです。なので、大企業と自分の会社とが一緒にやるときって、どういうふうに上申していくかっていう内部資料を一緒に作ったりだとか、そういう社内の調整、イノベーションと言うと、みんなどうしてもかっこいいこと、新しいことと思いがちなんですけど、大企業において外部の企業とイノベーションするのって基本的に調整なんです。99%は調整。その調整のための資料だったりとか考え方というのを、どういうふうにまとめていくかっていうことを含めて、現場レベルできちんとやることができれば、大企業でも外部とのイノベーションを起こせるんじゃないかなと思います。」

野口
「何かしようと大企業の人が来ても、話をしてみると、その人があまりものを決められない立場の人だったりということなんですかね?」

ソニー社員 兼 ハピキラFACTORY社長 正能茉優さん
「そうですね。なので、ベンチャー側の目線で相手の企業の役員の方とか社長の方とか、決断できる人、決定権のある人にどういうふうにたどり着くかということを含めて、こちらが設計しないとなかなか実現はできないです。」

野口
「小林さん、これは私の一般論なんですけど、大企業がなんらかベンチャーのイノベーションを見つけたときに、上から目線でいっちゃだめでしょうと。」

経済同友会 代表幹事・三菱ケミカルHD会長 小林喜光さん
「そんなことはないでしょうね。僕の経験からすると、一番効率のいいのはM&Aなんです。これはもうかなり確率高くできる。その次が、自分自身のR&D(研究開発)ですね。そのR&Dもいまやもう、まさにオープンイノベーション(従来の自前主義に代わり、組織外の知識や技術を積極的に取り込むこと)というか、僕はもう昔から『シェアードビジネス』と言っているんです。もともとトータルなビジネスを設計して、強いところはクローズして弱いところはオープン、それで早く全体を設計するという時間軸でないとやっていけない時代です。」

野口
「大企業の大部分にそのスピード感がない?」

経済同友会 代表幹事・三菱ケミカルHD会長 小林喜光さん
「スピード感は、プロジェクトリーダーによるでしょう。いわゆるプロジェクトを推進する人がイノベーティブであればサッといくでしょうし、変なのがトップになればまったく動かないでしょう。極めて個人的問題だと思います。特に言いたいのは、オープンイノベーションであれば、やっぱり知のセンターである大学をもっと活用しないと。それと中小のベンチャー、大学、大企業、このトータルな連関です。」

野口
「真山さん、そういう環境が日本にどれだけあるか、ということなんですけど?」

作家 真山仁さん
「さっきの発明でもそうですけど、ほとんど製造業ですよね。製造業って自分のところの仕様は自分のところの仕様なんです。特許という自分たちの武器を持っていて、特許に合わないものはいらないんです、あきらかに欧米で頑張っている企業は、ある部分は特許をフリーにしよう、世界中から知恵を貸してくださいと、例えばスペースXとかはそうやってやっている。問題は、なぜみんな全部特許を抱えて、ここから変更することを怖がるのかというところが変わらない限りは、なかなか外からとるのはしんどい。」

野口
「ものづくり立国ゆえのDNAなんでしょうね。」

作家 真山仁さん
「“ものづくり立国”と言うわりには、ものづくりのイロハが分かっていない。」

野口
「伊佐山さん、何かありますか?」

ベンチャーキャピタル『WiL』CEO 伊佐山元さん
「M&Aがうまくいく社会というのは、やはり才能が大企業の外に分散してるということが前提条件としてあると思うんですけど、日本の場合は、いまだに優秀な人は大企業にどうしても就職してしまうので、そういう意味では、M&Aは欧米型のようにはやるということは、すごく難しいと思うんです。じゃあ、どうすればいいかということなんですけど、私が考えているのは、やっぱり先ほどの会社イノベーションというときに、会社全体のイノベーションではなくて、私の中でいつも5%と決めているんですけど、5%の研究開発の予算なり、5%の人員、手を挙げたい人が自由にできるような環境を作ってあげて、もしかしたらそういう人たちを外に出すとか、シリコンバレーのまさに競争してる人たちと競わせるみたいな、そういったことを奨励することによって、やはり大企業のリソースをうまく使うことが日本型のイノベーションのあり方であって、日本に、じゃあシリコンバレーのように、ものすごくおもしろい会社がいっぱい転がっているかと言われると、私はそこは甚だ疑問なので、そこは多分、日本オリジナルのモデルにしないと、なかなか日本のイノベーション、まさにオープンイノベーションというのは進まないのではないかなというふうには思っています。」

●大企業発イノベーション いま何をすべきか

野口
「皆さんの話を聞いていると、間違いなく1億総イノベーションじゃないわけで、ちゃんと自分のやっている仕事もあるし、5%もあるし、中高年もあるし、やる気がある人をどうやって使っていくかというふうなことをやっていかなきゃいけないとは思うんです。」

八木
「最後に、ここまでの議論を踏まえて、イノベーションを起こすために今、何をすべきかというのを皆さんに書いていただきます。」

野口
「伊佐山さんのやってらっしゃる“出島”という、シリコンバレーに出ることで人が外側で刺激を受けていって、それが多分5%なんだろうけれども、会社に戻って新たなイノベーションの種になる。やっぱりハードをつくっている会社というのは、技術の流出にはすごく気を遣うし、それを突き詰めていくと、日本ではソフトはもうだめだったらハードでやるしかないと思ったり。」

作家 真山仁さん
「自前主義と言いますけど、現実すでに大手企業でもどんどんソフトの開発を外部に出したりとか、例えば、車の心臓部分みたいなところを外部のまったく関係のない企業の開発とかを使ってるわけです。その結果、最終的に製品を出している企業が自分たちで修理ができなくなったりしている。だから、“自前主義”という言葉に踊っているだけなんです。もうとっくに自前は終わっている。」

野口
「大事にしなきゃいけないところが必ずあるはずだと。では、小林さんからお願いします。」

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経済同友会 代表幹事・三菱ケミカルHD会長 小林喜光さん
「最後は心の問題なんです。克つんだと、己に克つという意味もあるし、困難を克服するという意味もあるし、世界で克ち抜く。そういう意識をまず持って、もっとみんなが共有しないと。世界はみんなオオカミの群れですから、自分だけ羊で美しいといっても戦いにならない。一番下の“FIRE&FURY”はトランプ大統領の本で、こういう人ばっかりと思って戦うしかないと。やっぱりハングリーにならないと勝てません。」

八木
「続いて正能さん、見ていきましょうか。」

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ソニー社員 兼 ハピキラFACTORY社長 正能茉優さん
「やっぱり社内で変な人だったりとか、新しいことをやってみようと周りと違う考え方を持っている人を、きちんと囲い込んで、“そこにいる人たちは、和を乱すことが当たり前だよね。むしろそれこそが仕事だよね”と思われるような組織だったりとか、人材をきちんと守っていく。その上で、やり続けることによって、きちんと何かしらの結果とか成果に結びつかない限りは、大きなイノベーションなんて起こりっこないので、まずは人をきちんと大事にして、その人たちが小さなことでもいいから結果を出すというような環境をつくることが大事かなと思います。」

野口
「いけすの中は暴れてよし、ということですね。」

ソニー社員 兼 ハピキラFACTORY社長 正能茉優さん
「でも、たまにエサはほしいなと思いますけどね。」

八木
「続いて、伊佐山さんに書いていただいたものを見てみましょう。」

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ベンチャーキャピタル『WiL』CEO 伊佐山元さん
「私は一文字で“変”と入れたんですけど、思えば変化をしないと生き残れない時代になっているんじゃないかと。まさにその変化するきっかけは、世の中に対しての怒りだったり、もしくは、よくアメリカで『FOMO(Fear of Missing Out=見逃すことの恐怖、取り残される恐怖)』と言いますけど、“今やらないと、もったいないんじゃないか”という思いだったりとか、あとは『YOLO(You Only Live Once=人生は一度きり)』という言葉があるんですけど、“人生一回きり”だと。そういう思いで変化に対して当たり前にしていくことが大事というのが1つ。もう1つは、“世の中なんか変だよね”っていう、もっと問題意識を高めていかないと、“なんか変だよね”っていうことがイノベーションにつながるんじゃないかということ。先ほども“あの人ちょっと変だよね”というコメントがありましたけど、自分も変人になって変わった人をどんどん推していくような社会、そういう雰囲気を作っていかないといけないんじゃないかなというふうには思っています。」

八木
「続いて、真山さんも見ていきましょう。」

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作家 真山仁さん
「日本でイノベーションが盛んだった高度経済成長時代って、みんなチームワークで頑張ったって思ってますけど、それは違います。1人の変わった人がいて、その人が新しいことをやるときに“じゃあ、彼を担いでみようか”って言って変わってきたんです。日本の文化って、そもそもみんなで一緒っていう文化じゃない。だから、違う人がいて、違う人が好きにやっていける環境を作ってあげようと。それを応援する人もいるし、毎日変わらないことをする、それでちゃんと仕事ができる人もいていいっていう、そういう差をつけていかなければいけない。ある意味で原点回帰だと思います。」

野口
「最後に林さん、お願いします。」

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ロボットベンチャー『GROOVE X』CEO 林要さん
「私は会社に向けてと個人に向けて、2つあります。会社に向けては出戻り制度を作るといいんじゃないかと思っています。なぜかというと、そもそも大企業はイノベーションを生み出すための組織ではない。イノベーションは、まずはスタートアップがメインで、大企業はそれを育てましょうと。そのときに、先ほど小林さんがおっしゃられた“プロジェクトリーダーにすごく寄ってしまっている”、本当はこれじゃいけないんじゃないかと思うんです。ちゃんと経験者がいて、その人がM&Aした会社を大きくしていく。成熟企業が成熟企業をM&Aするときは、うまくいくからいいんです。だけど、10人とか20人とか30人のボロボロのスタートアップだけど輝ける何かを持っている。まったく文化が違うやつを買うと、大体たたきにたたいておかしくなっちゃうんです。なぜならボロボロですから。でも光り輝く何かはあるんです。そういったものを大事にできる人をちゃんと大企業内に持っておかないといけない。そのためには自分たちでまず出戻り制度をつくって、外に出す。」

野口
「外で経験させて、ちゃんと帰ってこれるようにする。」

ロボットベンチャー『GROOVE X』CEO 林要さん
「帰ってこない人がほとんどですけどね(笑)」

野口
「下に書かれているのは、ボラティリティーを意識せよ、ということですね。」

ロボットベンチャー『GROOVE X』CEO 林要さん
「そうですね。個人は安定を求めると学習機会を失うということをちゃんと認識しておいたほうがいいということです。」

野口
「今夜は5人のゲストの方々にお出でいただいて、イノベーションについて考えていきました。日本経済が非常に好調な2018年を迎えています。今日(6日)この議論をしたのは、限られた時間というのがあるんじゃないかと。今、この景気がいいときに、どこまでやらなきゃいけないかを考えていきたいと思って開きました。」

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