2017年12月16日(土)特集 フロントライン

誰でもお金を集められる? 資金調達 驚きの手法

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●アピール次第? 資金調達が変わる

野口
「今夜の『特集フロントライン』は、企業にとって命綱とも言える資金調達、つまり、お金の集め方の新しい形についてです。」

八木
「一般的とされているのが、銀行からの融資、それに株式の発行や公開です。この方法では、例えば金融機関や証券取引所の厳しい審査が必要で、一定の時間もかかります。」

野口
「実績のないベンチャー企業や個人にとってはハードルがすごく高いわけですが、そんな従来の資金調達方法とはまったく違う方法について、お伝えします。以前、番組ではネットで資金を集める『クラウドファンディング』というのもお伝えしましたが、それとはまた違います。まずは個人です。資金と引き替えるのは“自らの時間”です。」

●資金調達 新たな手法 自分の“時間”を商品に

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八木
「この富永さんですが、1時間分の時間を購入したら、絵を1枚描いてくれるということなんです。」

野口
「それはそれで投資ですよね。このタイムバンクはサービスが始まって3か月で、すでに70人以上が登録しているということです。幸田さんはVTRをどうご覧になりましたか?」

作家 幸田真音さん
「デジタル化社会になったからこそできたことで、若い人たちはいろいろ選択肢があっていいなと思います。初めて起業する人とかスタートアップと言われるような、これからというベンチャーの人たちが一番必要なときに、お金の調達を支援してくれるエンジェルのような人が日本にはあまりいないので、それを出すべき金融機関では“担保がないとできない”“実績がないとできない”とかがありますから、今の規制社会に対するアンチテーゼだと。むしろ反省してもらいたいなという思いはあります。」

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八木
「続いての新しい資金調達方法は、ICO=initial coin offeringと呼ばれるものです。こちらは、主にベンチャー企業が活用しています。その仕組みです。先ほどのタイムバンクでは事業を行いたい人が投資家に提供するのは“時間”でしたが、ICOではその代わりに“トークン”と呼ばれる権利証のようなものを発行します。株式に似ているものと考えてください。つまり、その企業の業績がうまくいけば価値が上がるという仕組みなんです。ただ、株式と違って、配当や議決権はありません。」

野口
「そして、集める資金なんですが、現金ではなくて、実は仮想通貨で調達します。仮想通貨で調達しますので、資金を集める先は世界中、ということで、今、急速に広がっています。」

●世界で急拡大“ICO” その背景は?

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八木
「スタジオには経済部・金融担当の中野記者にも加わってもらいます。短期間で数億円を集められるICOのインパクトは大きそうですね?」

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経済部 金融担当 中野陽介記者
「まず、こちらのグラフをご覧いただきたいんですけれども、ICOによる資金調達の額は世界中で急速に増えています。2017年9月には、ひと月で8億ドル、日本円で900億円を超えて、ベンチャーにとっては資金調達手段の本命とすら言えるようになってきています。なぜ、こんなに伸びているのかというと、ベンチャー企業側にとっては、事業計画書をネット上で公開するだけで始められる手軽さがあります。それに、新しい枠組みということで話題性もあります。一方で資金を出す側なんですが、ビットコインに代表される仮想通貨の値上がりが、このところ急激に進んでいますので、これが大きな要因になっています。“値上がりするんじゃないか”という期待によって、投資が投資を呼んで、世界的にはバブルが起きているという指摘も出ているほどです。今後、仮想通貨の価格が落ち着いてきたときに、事業の将来性が評価されてお金が集まる、ICO本来の役割が果たせるかどうかということが問われるようになってくると思います。」

野口
「幸田さん、だんだん難しくなってきましたけど、ICOをどんなふうにご覧になりますか?」

作家 幸田真音さん
「本当にルールも規制もなければ、簡単で速くていいんですけれども、調達する側はいいんですが、お金を投じる側、投資をするほうは、まさに“玉石混交”。ぐちゃぐちゃでやりたい放題と言ったらあれですが、自己責任ですから、是非気をつけないといけないですね。」

野口
「そのICOなんですが、資金調達のハードルが低い分、いろんな監視システムが不十分なんです。海外で起きている、とあるトラブルを取材しました。」

●急拡大する“ICO” トラブルを防ぐには

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野口
「規制が追いついていないということなんでしょうけれども、中野さん、不正防止への取り組みは、日本ではどうなんですか?」

中野記者
「株式とは違い、ICO全般を直接規制する法律はありません。金融庁が“価格急落”ですとか、“詐欺のリスクがある”といった注意喚起はしているんですけれども、逆に言えば、その程度です。投資家保護の仕組みは、ほとんどないのが現状でして、応援したいと思う事業があったり、“こういうサービスがあったらいいな”というものを見つけても、まずは中身をしっかりと確認することが必要だと思います。ましてや事業の中身も十分に見ないままで、値上がりの期待だけで投資をする、大金を投じることは、これはもう相当なリスクがあると考えたほうがよいと思います。」

●“ICO”が健全に育っていくためには…

野口
「幸田さん、とはいえ“リスクがあるからやめましょう”では、この特集は成立しないんですけれども、日本経済にどうやってプラスにしたらいいですか?」

作家 幸田真音さん
「お金がうまく回るようになる1つのツールであればいいので、このマーケットを大事にするためには、みんながそれぞれルールを守りましょうという意識が必要。だから、正しく理解し、正しく警戒することが必要だと思います。」

野口
「ある意味、自己責任はそこには伴うということなんでしょうけど、中野さん、健全に育っていくための課題はどんなところにあるのでしょうか?」

中野記者
「ICOをいかに事業中心の枠組みにしていけるかということがポイントだと思います。経営者も資金を集めることだけを目的にするのではなくて、新しい事業を成功させることこそに目標を置くべきですし、投資家側も値上がりの期待だけではなくて、応援したい事業だから投資するんだという姿になっていけば、健全性は増していくと思います。こうしたICOという新たな指標が出てきたことで、ベンチャー企業にとっては、今まで以上に直接、投資家に呼びかける機会を得られるようになったわけですので、その分、相手に対して事業の魅力をアピールするプレゼン力がますます問われるようになってくるのではないかと思っています。」

野口
「そこは意外とデジタルではないのかもしれませんね。」

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