2017年12月9日(土)未来人のコトバ

ウェンティ・ジャパン社長 佐藤裕之さん 「故郷で錦を飾ろう」

photo

部分はクリックで用語解説表示

風車の下で待っていたのは、佐藤裕之(さとう・ひろゆき)さん、56歳。秋田県に大型の風車を次々と立てている、ベンチャー企業の経営者です。佐藤さんは、風力発電所の建設によって地元に雇用が生み出せないか模索してきました。大手メーカーがつくる大型風車。実は、1万点以上の部品が使われています。佐藤さんは、部品の生産の一部を地元の企業が担うことが可能だと考え、奔走しています。

ウェンティ・ジャパン社長 佐藤裕之さん
「秋田が元気になって、雇用が生まれて、豊かな方向に向かう起爆剤としての風力発電に対する期待は非常に大きい。」

風力発電で“メードイン秋田”の実現を目指す佐藤さん。支えとなっているのは、どんなコトバなのでしょうか。

photo

八木
「今日(9日)の『未来人のコトバ』は、秋田県で風力発電事業を手がける、佐藤裕之さんです。秋田県の沿岸部は、全国でも有数の風に恵まれた地域で風力発電に適しているとされています。発電に使われる大型の風車、実は自動車にも匹敵するほど部品が多いと言われています。佐藤さんは、その部品生産などに地元企業が関わることで、地域経済の発展を目指しています。そんな佐藤さんが大切にしているコトバは“故郷で錦を飾ろう”です。」

●故郷で錦を飾ろう

photo

日本海を臨む秋田市沿岸部。今、ここで国内最大級の風力発電所の建設が進められています。総事業費200億円。3年後には、22基の風車が建てられ、一般家庭4万世帯分の電力を賄えるようになると言います。この巨大プロジェクトを牽引する佐藤さん。5年前に計画をスタートさせました。

八木
「“故郷で錦を飾ろう”という言葉ですが、通常は“故郷へ錦を飾る”と使われますよね?」

ウェンティ・ジャパン社長 佐藤裕之さん
「日本の価値観で明治維新以来ずっと、地方の人間は一生懸命勉強して東京へ出て、偉くなったら故郷へ戻って、自分のノウハウと財産を地元に落とすことが、ひとつの美しい生き方というふうに言われてきたと思う。もう少し生まれ育った故郷で頑張って、地域を元気にするような若い人が増えれば、この国のあり方が変わるような気がして、そこにこだわって仕事をしています。」

photo

秋田市生まれの佐藤さん。設備工事の会社を営む家に育ちました。東京の大学を卒業したあと、国内外の投資家向けに企業情報を説明する仕事をしていた佐藤さん。バブル崩壊後の1996年、家業を継ぐために秋田に戻ってきましたが、地元経済は以前とは比べものにならないほど衰退していました。

photo

佐藤さんは、家業のかたわらNPOに所属し、スポーツ振興や映画のロケの誘致など、地域の活性化に力を入れました。さらに、地域に雇用を生み出す事業はないかと考えていたときに、秋田は風力発電に向いていると聞き、起業を思い立ちました。

ウェンティ・ジャパン社長 佐藤裕之さん
「秋田は風がいい。他のエリアはそんなに風がよくないので、風がいいのは野菜がおいしいのと同じで地域資源。ハタハタ、比内地鶏、きりたんぽ、しょっつる、風。それと同じなんです。秋田が元気になって雇用が生まれて、みんながそこそこ豊かな方向へ向かえる起爆剤としての風力発電に対する期待は大きいものを感じます。」

しかし、壁がありました。大型風車は1基およそ6億円。発電で収入を得るまで5年以上かかることが多く、資金を調達することは容易ではありませんでした。そこで佐藤さんが頼ったのは、長年の地域活動で築いてきた地元の人たちとのつながりでした。

photo

風力発電は必ず地域経済の活性化につながるという佐藤さんの訴えに、地元銀行のトップが賛同。2012年、風力発電事業を行う会社を設立しました。佐藤さんは早速、地元に雇用を生み出すための取り組みを始めます。風車のほとんどは国内や海外の大手メーカーがつくっていて、部品の数は1万点以上に上ります。佐藤さんは、県内の企業がつくれる部品がないか、自ら調査を行いました。

photo

その中で注目したのが、創業46年の金属加工メーカーです。大型の金属加工が可能なこの会社であれば、風車の土台の一部をつくることができるはずだと考えました。佐藤さんは、地元企業の部品を使うことを条件に複数の大手メーカーと交渉。その結果、アメリカのGE=ゼネラル・エレクトリックと合意に至ったのです。この金属加工メーカーは、1基あたり400万円の部品の受注を取り付けました。すでに5基分の部品を納入。今後、16基分をつくる予定です。

photo

三栄機械 社長 齊藤民一さん
「私どもは小さな会社だけど、いろんな分野のいろんなものをやってきた経緯があるので、ぜひそういうものがあったらトライしてみたい。やっぱり楽しい所には人が集まります。」

ウェンティ・ジャパン社長 佐藤裕之さん
「あと、おいしい酒があるところ。(笑)」

photo

風力発電を地域の産業に育てたいと奮闘してきた佐藤さん。秋田では、子どもたちが風車に親しみを持つようなイベントが、たびたび開かれるようになっています。

ウェンティ・ジャパン社長 佐藤裕之さん
「秋田で風車の事業に関わりたいという子どもたちは増えています。やっぱり男の子が多い。男の子は機械いじりも好きだし、かっこいいものに憧れる。自分はかっこいいものに憧れて、日本の産業・生活を支えるエネルギーの分野に関わっている。子どもたちにとってプライドのある仕事づくりの一翼も担えているのかなと思います。これからですけどね。」

photo

八木
「佐藤さんの“故郷で錦を飾ろう”というコトバですが、原田さんはどうお聞きになりました?」

マーケティングアナリスト 原田曜平さん
「地方で若い子たちにインタビューしていると、マイルドヤンキー論じゃないんですけど、今どきの子ってあまり東京に憧れないで、地元の親や友達と仲良くしているのが大好きなんです。それでも、まだ東京に人口流入しているというのは、やっぱり雇用がないというのが一番大きいんです。こういう自分たちの強みを生かした産業を生み出そうとする人が、もっと日本全国、地方で出てくるといいなと思いました。」

八木
「野口さんはいかがですか?」

野口
「やっぱり人脈って大事なんだなと。それを積み重ねてきたからこそ今があるし、多分そこを結びつけたのは、秋田のおいしい酒だったんだろうなと思いました。」

八木
「佐藤さんは、部品の製造のほかにも、秋田県内で風車のメンテナンスが行えるようにしたいと話していて、すでにGEは秋田にサービス拠点を開設することを発表しています。」

Page Top