2017年9月9日(土)最先端の現場

ICO・仮想通貨で資金調達がブーム?

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野口
「まだまだ認知度は上がっていないんですけれども、社会や経済に、これから大きな影響を及ぼすかもしれない現場を追ってみました。番組ではこれを『最先端の現場』と名付けました。今日(9日)取り上げるのは『ICO=Initial coin offering』です。企業の新たな資金調達の手段なんですけれども、仮想通貨で資金調達というのがICOの最も大きな特徴です。」

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八木
「今年(2017年)に入ってICOの額は急速に増え、多いときには1か月で6億ドル、日本円で600億円あまりに相当する額が集まっているんです。株式の売買などに比べて、短期間で世界中から資金調達ができるという、このICO、日本でも広がり始めています。」

●仮想通貨で資金調達 “ICO”とは?

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八木
「こちら、仮想通貨イーサリアムで資金調達をしようと、先週開設されたICOのサイトです。すでに目標の76%、日本円にして3億円余りが集まっています。」

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このICOを実施しているベンチャー企業です。ネット上に信頼できる記事を載せる新たなサービスを始めるため、ICOで資金を調達しています。

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ICOの仕組みです。企業は事業計画を公表。「トークン」と呼ばれる株式のようなものを発行します。投資家は仮想通貨でこのトークンを購入します。これによって企業は、事業に必要な資金を獲得できます。トークンは市場で売買ができるため、価格が変動し値上がりする可能性もあります。このトークンを求めて、わずか1週間で日本円にして3億円余りの仮想通貨が集まったのです。

ALIS 代表 安昌浩さん
「世界中を対象にできる分、金額も大きくなる。スピード感も速く調達できるというところがあるので、そこが非常に魅力的だなというふうには思います。」

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今、このICOに注目する企業が増えています。ICOに関するアドバイスを行うこちらの企業。この1週間で70社ほどから問い合わせが来ています。

「建設業ですとか接客業、官公庁の方との議論等も中にはあったりして、かなり皆さまから注目いただいているな、というところはあって。」

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この日は、スマートフォン使って学習指導を行っている企業の経営者が、新たな資金調達に使えないか、相談に訪れました。

Manabo 社長 三橋克仁さん
「(ICOは)革命的だなという感じですね。もしかしたら早すぎる可能性はあると思いつつ、遅れをとるわけにはいかない。」

AnyPay 事業推進部 山田悠太郎さん
「しっかりとしたサービスをつくっていく。しっかりユーザーにベネフィット(利益)を返していけるようなICOをつくっていくところが、われわれのやるべきことだと思っていますし、その分岐点に、これからなっていくんじゃないかなと思っています。」

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八木
「スタジオには取材した経済部の中野記者に加わってもらいます。では、改めて模型を使ってICOの仕組みを説明していきます。まず、資金を調達したい企業は『トークン』と呼ばれるものを発行します。株式みたいなものとイメージしてください。これを投資家が仮想通貨で買います。ここでは仮に、仮想通貨のひとつ『イーサリアム』を例に説明していきます。今、この会社はトークン1つあたり、5イーサで売り出して、事業を進めるのに必要な資金を調達しました。投資家は、手に入れたトークンで、その企業のサービスを利用できるなどの特典を受けることもあります。VTRにもありましたが、ICO人気の理由は、実はこの先にあるんです。

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このトークンを売買する市場があるんです。株式市場のようなものと考えてください。市場ですので、もちろん価格が変動していきます。例えば、この事業への評価が高まれば、5イーサで買ったトークンでも“10イーサで買いたい”という人が出てきます。そうすると、トークンの価格は10イーサになりますし、“いやいや20イーサ出すよ”という人がいれば、20イーサになるんです。5イーサで買ったトークンを20イーサで売ったとすると、15イーサの利益になります。この値上がり益を期待して、“早く買いたい”という人が増えて、投資が広がっているということなんです。原田さん、何か気になるところはありますか?」

マーケティングアナリスト 原田曜平さん
「小さい企業とか、まだ知名度のない企業が資金を迅速に集めるには、いい制度な気もしますけど、一方で、ちょっとルールとか不安はあるかなという印象もあります。」

野口
「さて中野さん、株式市場と似ているという話がありましたが、リスクはあるんでしょうか?」

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中野陽介記者(経済部 金融担当)
「株式に似た面があることは確かなんですけれども、違うところもあります。そこにリスクが潜んでいるんです。というのも、トークンには経営をチェックする仕組みがないんです。財務状況を開示する義務もなければ、『証券取引等監視委員会』のようにインサイダー取引などの不正を監視する機関も存在しないんです。海外などでは、ICOで資金を集めたあとに企業が消えてしまったとか、いつまでたっても事業を行わないといった事例も相次いでいます。

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そこで中国では今週、政府がICOを全面的に禁止するという、大変強い措置を取りました。ただ、金融機関から資金を調達できないような規模の小さい会社がアイデアを事業に結びつける手段として、ICOは大変意義があるとも言えます。日本はイノベーションが起きづらいとか、お金が回らないとか、そういうことが指摘されますけれども、であればICOは、アイデアを大きなビジネスとして花開かせる起爆剤になる可能性も秘めていると言えます。」

野口
「原田さん、そういう意味では、少しポジティブに捉えられないこともないですね?」

マーケティングアナリスト 原田曜平さん
「日本だけだと、非常に日本人って保守的ですから“まだ怪しいな、この会社”といって、なかなか資金を出してくれる人がいなくても、世界から調達できるのは魅力ですよね。これから市場はグローバルですからね。」

野口
「IPOとか株式上場などは時間も手間もかかるし、クラウドファンディングとは似てるは似てますけど、仮想通貨を使っているところは、また少し違いますね。中野さん、今後、ICOはどうなっていきそうですか?」

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中野記者
「専門家の間でも、ICOに対する見方は2つあります。元日銀のフィンテックセンター長で京都大学大学院教授の岩下直行さんは“現状はあきらかにバブルだ”と。なので、適切な規制やルールが必要だ、という見方をされています。

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一方で、ICOに詳しい弁護士の増島雅和さんは、“これまで投資対象になりにくかった事業にもチャンスが広がるので、これはうまく育てていくべき”だと指摘されています。規制をなるべく行わずに、先駆的なICOが日本で多く行われるようにしてイノベーションを花開かせる。そういうふうにしていこうと考えるのか、それとも投資家の保護が第一だというふうに考えて、規制をある程度していくのか。その分岐点に立っていると思います。」

野口
「規制をし過ぎてもだめだし、緩め過ぎてもだめだし、ただ、新しい資金調達方法としては注目していきたいですね。」

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