2017年7月8日(土)特集 フロントライン

ここまで来た!VR最前線

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野口
「今夜は“VR=バーチャルリアリティー”について『特集フロントライン』でお伝えします。
スタジオには、いわゆる『ヘッドセット』と言われる、各メーカーが出している端末を持ってきました。
夏野さんは、VRとどれぐらいフレンドリーに親しんでいますか?」

慶應義塾大学・特別招聘教授 夏野剛さん
「私の周りには、こういうグッズがたくさんあるので、自宅にもあります。
ゲームをやったり、エンターテインメントの世界では普通になってきています。
人から見られると恥ずかしいんですけど、本人としては臨場感が全然違うので、本当にエンタメの歴史を塗り替えています。」

野口
「そのエンタメの歴史を塗り替えたあとの世界を今日(8日)、見ていきたいを思います。
ゲームやエンターテインメントの分野が一般的だったんですけれども、例えば効率化を図るためですとか、仕事の生産性を上げるために、新しい分野で、このVRを使おうという動きが進んでいます。」

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八木
「こちらは、2025年にVRがどんなものに使われているかを示したものです。
ゲームといったエンターテインメント系が半分を占めますが、市場拡大の原動力となるのが、ヘルスケア、それに設計・製造などの工学技術、不動産、小売り、といった分野での急速な普及なんです。」

野口
「実際、どんなところでVRが使われているのか、取材しました。」

●ここまできた! VR活用最前線

八木
「スタジオには、経済部の野上記者にも加わってもらいます。
野上さん、ゲーム以外のVR、どんな分野が期待されているのでしょうか?」

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野上大輔記者(経済部 情報通信担当)
「ものづくりの現場で期待が高まっていると感じます。
効率化やコストダウンにつながるのではないか、と考えられているからです。
また、製造現場では人手不足も普及を後押ししています。

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例えば、広島県福山市の造船会社では、VRを船体の塗装訓練に活用しています。
1隻のタンカーの塗装にかかる費用は、およそ7,000万円で、手作業で無駄な厚塗りや、やり直しが必要なケースもあり、コストがかかっていました。
そこで、VRを使って訓練を重ね、使う塗料を減らそうとしています。
繰り返し訓練を行うことができるので、熟練の技を若手に伝承するなど、職人の世界でも活用できる可能性があります。
また、自動車メーカーの中には、車両の設計にVRを導入して、試作品を作るコストを削減しようという取り組みもあります。」

野口
「夏野さん、塗装などを見ていると、案外アナログな世界の話をVRでできてしまうのか、と思いますけれども?」

慶應義塾大学・特別招聘教授 夏野剛さん
「経験値が重要な仕事ってあるんですね。
例えば左官屋とか、あるいは医者の世界でも外科医とか、経験を積まないと、なかなかメインになれない、うまくならない。
こういう世界は、VRで擬似体験ができるので、VRは結構使えると思います。」

野口
「ゲームだけでなく、いろんな分野で期待できますか?」

慶應義塾大学・特別招聘教授 夏野剛さん
「これから技術が進めば、かなりのフィールドで使われることになると思います。」

野口
「“次世代”とも言えるVR技術。
仮想の映像を実際に見えているものに重ね合わせたりして、使い道をさらに広げようという研究も始まっています。」

●触感×VR 究極のリアリティー

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八木
「私が体験した“触った感覚”を作り出す装置。
開発した会社の香田さんに協力をいただきまして、夏野さんに体験してもらっています。
モニターに映っているのが、今、夏野さんに見えている映像、そして体験している感触、触り心地ということなんですが、夏野さん、いかがですか?」

慶應義塾大学・特別招聘教授 夏野剛さん
「本当に石壁を触っている感覚です。」

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八木
「そして、こちらはどうでしょう?」

慶應義塾大学・特別招聘教授 夏野剛さん
「これ何ですかね?」

八木
「さっきと感覚は変わりましたか?」

慶應義塾大学・特別招聘教授 夏野剛さん
「全然違いますね。」

八木
「こちらは砂壁のような素材を触っていただいている感覚です。」

慶應義塾大学・特別招聘教授 夏野剛さん
「反発もあって、本当に触っている感じです。」

八木
「このシステムでさまざまな素材を触った感じが再現できるということなんです。」

野口
「野上さん、VRとほかの感覚と組み合わせる研究は、ほかでもあるんですか?」

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野上記者
「今、紹介した触覚以外にも、例えば“嗅覚”。
においを発する機能が組み込まれたVR端末は、すでに開発されています。
食べ物などの映像を見ながら、そのにおいまで感じることができ、嗅覚を通じて、より深く仮想の世界に入り込むことができるというわけです。
また、電気の刺激を与えることで“味覚”、味を錯覚させる技術の研究も行われていて、例えば、糖分の入っていないクッキーを、見た目も甘そうに、そして味覚も錯覚させることで甘く感じるようにして、糖尿病の患者が糖質制限しながら、おいしく食べられるなどの活用法も期待されそうです。
究極的には、五感すべてを融合させて、より“没入感”を高めることが、開発に携わる人たちの目標です。」

●VR開発競争 何が必要か

野口
「どちらかというと、日本企業はゲームがVRの主力でしたけれども、これから市場が拡大していく中で、日本企業にとってどんなことが大事になってくるのでしょうか?」

野上記者
「今、まだ日本では端末を作る企業数も少なく、ソフトの開発側もゲーム会社が多いのに対して、アメリカや中国ではベンチャー企業が積極的にVRの開発に乗り出しています。
VRは、まだ発展途上で、今は大きな利益を生むわけではありませんが、将来、私たちの暮らしを変えるかもしれないだけに、日本でも活発に投資が行わるような環境を作って、VRに関わる産業のすそ野を広げていくことが大切だと思います。」

野口
「夏野さん、産業のすそ野を広げていくということですが、日本企業はどうしていったらいいのでしょうか?」

慶應義塾大学・特別招聘教授 夏野剛さん
「日本企業は、非常に優位の立場にいると思うんです。
というのは、ものづくりの技術がないと、触覚や嗅覚を再現したりすることができないので、そういう意味では、日本に技術は豊富にあるんです。
ただ、こういう新しい分野で、すぐにお金にならない分野に対して投資のお金がなかなか回らない。
実は日本というのは、企業にも個人にも、お金が余りまくっている国なんです。
個人金融資産は1,700兆円ありますし、上場企業の内部留保が380兆円もあるので、本当にお金があるんですが、将来の収益につながるところへの投資というのは、ちょっと経営者が引いてしまうんです。
ここでお金が回り始めると、日本に大きなチャンスがあると思います。」

野口
「リターンも大きくなるわけですからね?」

慶應義塾大学・特別招聘教授 夏野剛さん
「将来的には大きな分野になることは間違いありません。」

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