2017年3月11日(土)未来人のコトバ

「防災ガール」代表 田中美咲さん 「当たり前を疑う」

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部分はクリックで用語解説表示

東京・原宿にあるアパレルショップ。
ここの人気商品は…。

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竹内
「こちらのミサンガ、オシャレですよね。
実はこう見えて防災グッズなんです。」

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アクセサリーとして手首や足首に巻くミサンガ。
この商品、ひもをほどくと2メートルほどのロープになります。
非常時などに洗濯物を干したり、ケガをしたときに止血に使ったりすることができます。
さらに笛も付いていて、自分がいる場所を知らせることもできるんです。

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作ったのは、防災グッズなどの開発などを行う団体「防災ガール」。
代表の田中美咲(たなか・みさき)さん、28歳です。

防災ガール 代表 田中美咲さん
「(これまで)自分が持ちたくなる、オシャレと思えるものはなかったです。
女心をくすぐるほうが買いやすいし使いやすい。」

“防災をもっと身近に感じてほしい”と活動を続ける田中さんのコトバに迫ります。

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竹内
「今日(11日)の『未来人のコトバ』は、『防災ガール』という社団法人の代表を務める田中美咲さんです。
“防災”、普段は、あまり意識していないという人もいるかと思いますが、田中さんも以前はそんな1人だったと言います。
その田中さんを変えたのが東日本大震災でした。
大切にしているコトバは“当たり前を疑う”です。」

●当たり前を疑う

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東京・文京区にあるシェアオフィス。
ここに「防災ガール」の事務所があります。
常駐しているのは、田中さんだけ。
その活動を多くのボランティアが支えています。
「防災ガール」を立ち上げたのは、4年前。
これまでに13種類の防災グッズを開発してきました。

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竹内
「こちらは?」

防災ガール 代表 田中美咲さん
「トートバッグといえばトートバッグなんですけど。」

プリントされているのは、渋谷の地図。
立体的になっていて、水害のときに避難できる高い場所や帰宅困難者の受け入れ施設が分かるようになっています。

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そして、この携帯用のパンプスは靴底が厚めに作られています。

防災ガール 代表 田中美咲さん
「(一般的な)折り畳めるパンプスは底がすごくペラペラで、疲れやすくて長距離は歩けないんですけど、長距離も歩きやすく、走ったりもできるよう設計しました。」

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懐中電灯などの防災グッズを入れる袋も、小さなポーチにして持ち歩けるようにしました。
田中さんが商品を開発する時、大事にしているのが“当たり前を疑う”という姿勢です。
“防災袋は家に備えてあれば大丈夫”。
そんな考え方に疑問を持つことが必要だと言います。

防災ガール 代表 田中美咲さん
「いつどこで被災するか分からないので、持ち歩けるものにする必要があるなと思った。
私たちは機能性よりも本当に持ちたくなるかどうか、持ちたいものから考えて緊急時にもこれは使えるという考え方を新しくすることで新たな商品を売り出すことにしました。」

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大学卒業後、IT企業に就職した田中さん。
入社直前に起きた東日本大震災のあと、ボランティア活動をした経験が大きな転機になりました。

防災ガール 代表 田中美咲さん
「復興支援をずっとしていて、同じことを繰り返さないようにしたいと思い始めて、人が悲しんでいる、みんなが大変な思いをしているのをどうやったら繰り返さずに済むのか、その上で何をしたらいいのか。」

普段から備えをしていたら防げた被害もあったのではないか。
田中さんは会社を辞め、防災の活動に専念することにしたのです。

防災ガール 代表 田中美咲さん
「私自身も防災というものを楽しいと感じたこともなければ、できる限り避難訓練、防災グッズから離れたいという、嫌だな、面倒くさい、分かりづらい、ポジティブなイメージは一切なかったんです。
なんで必要だと分かっているのにやらないんだろうと思ったときに、そこはすごく大きな課題なんじゃないかなと。」

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取り組んでいることの1つが、新しいスタイルの避難訓練です。
東京・渋谷区で行われた帰宅困難な状況を想定した訓練。
スマートフォンの位置情報を頼りに支援施設として使えるコンビニなどにたどり着くと、ポイントが加算されるというゲーム形式です。

参加者
「すごい楽しかったけど、真剣に考えることができました。」

参加者が楽しみながら主体的に行動することが狙いです。

防災ガール 代表 田中美咲さん
「(これまでの訓練は)やらされていたり、全部準備されていたりするので、知識も経験もつけられないし、楽しいとも思えないから忘れたくなっちゃうので意味がない。
これが当たり前なんだと思って受けてしまうのではなく、本当にこの伝え方がいいのか、本当にこれで私たちが学べるのか、0から100まで疑いまくる。
いかに私たちでも分かりやすいか、主体的にやりたくなるかにすごくこだわっています。」

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この日、訪れたのは、去年(2016年)大きな地震に見舞われた熊本です。
田中さんの活動に影響を受けた地元のボランティアたちが使われなくなったブルーシートでバッグを作る取り組みを行っています。
田中さんは、こうした場に積極的に出かけ、災害時に一人一人が臨機応変に対応できる意識を広めています。

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防災ガール 代表 田中美咲さん
「自分で決断し行動できる人を増やしたいと思っていて、誰かに言われたことだけをやる人だと、何か起きた時に応用がきかなかったり創意工夫ができないので、生きていくスキルが乏しい可能性が高いんです。
当たり前のものを当たり前と思い続けるよりも、変化し対応していくことが重要なんだと知ってもらいたいなと思っています。」

竹内
「田中さんは、特に20代、30代の若者が防災への意識が低い現状を変えようと活動しているんですけど、その活動を支持して、今では活動を支えるボランティアが全国に120人ほどに上っているということなんです。
真山さんは、“当たり前を疑う”というコトバ、どうご覧になりましたか?」

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作家 真山仁さん
「ものすごく大事なことだと思うんです。
彼女がすばらしいのは、普通は“え、そうなの?”と誰でも疑問を持つんですけど、行動しないんです。
特に若い人もそういう人が多いと思うんですけど、持った疑問の答えを行動して探して、彼女なりの答えが見つかっているじゃないですか、これはすごい大事。
ただ、ポイントは、彼女がどんどん自分の新しい常識を作っていくんですけど、今度は自分が作った当たり前を疑えるかどうかです。
自分では“ずっと疑っている”と言っていますけど、たどり着いた答えがパーフェクトだと、その時は思うんですけど、だんだんいろんなことを経験していくと、“これが本当はパーフェクトではない”と分かるはずなんです。
そのときに多くの人は守りにいく人が多いんですけど、そういう意味では、今やり続けたことを3年後に会って、まだ疑っているかということを是非聞いてみたいです。」

竹内
「自分を疑うのは難しいですよね。」

野口
「当たり前のことを疑い続けられるか、ということですね。
私が聞いていて思ったのは、主体的だとか変化に対応するとか、防災という話ではないですけど、ものすごいたくましさを持たないといけないというのは、とてもよく分かりました。」

竹内
「当たり前に従うのは楽なので、どうしても選びがちなんですけど、そこで立ち止まって自分に問いかけるのが大切だと思いました。」

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