2016年12月3日(土)特集 フロントライン

相次ぐ“食品回収”の裏で何が?

photo

部分はクリックで用語解説表示

野口
「食品に変なものが入っていたら、もちろん買った私たちにとっては良い気分はしません。
ただ、1つの商品に入っていただけで大量に回収を行うのは、例えば食品ロスの面から見て“やや行き過ぎかな”と思う方もいるかもしれません。
今日(3日)は、この問題に企業はどう向き合っているのか、解決策はあるのかなどについて考えていきたいと思います。」

竹内
「先月(11月)発表された食品の自主回収では、2,000万個を超えるものから、数千、数万というものまであります。
その回収の主な理由は、金属片やプラスチック片から、病原菌やカビなどとなっています。」

野口
「最近では他にも虫の混入といったことも報告されていますが、一体なぜ今、食品回収が相次いでいるのでしょうか。」

●相次ぐ食品回収 背景に何が?

野口
「スタジオには取材にあたった経済部の野口恭平記者です。
食品回収が相次いでいる大きな要因は、やっぱりSNSということですか?」

photo

野口恭平記者(経済部)
「SNSは情報が拡散するスピードがものすごい早いので、対応が遅れれば遅れるほど企業のブランドイメージを直撃してしまいます。
これは中小企業だけではなく大手企業も同じで、対応が後手に回れば経営を揺るがしかねない事態につながると思います。
今回、最近回収を発表した30社程度に取材を申し込んだんですけども、カメラを入れて取材を応じる企業はありませんでした。
企業側も相当神経をとがらせているなと改めて感じました。」

野口
「浅野さんも実際に会社を経営していて消費者と直接向かい合っているわけですけれども、やっぱり敏感にならざるをえないですか?」

photo

経団連 審議員会副議長 浅野邦子さん
「金ぱくの中に髪の毛とか、細心の注意を払っていてもあることはあります。
『ISO 22000』を取っておりまして、アセップ工場で、ふつう金ぱく手わざの中なんですけど、そういう対応をきちんとしております。
社長も会社全体で売り上げより品質管理ということを徹底して、うるさく言っています。」

野口
「うるさくしてもしつくすことはないという感じですね。」

photo

竹内
「異物混入と一口に言ってもいろいろあります。
業界団体では、混入したものによって事業者が取るべき対応を示しています。
食品産業センター作成の『手引書』によりますと、健康への影響や被害の広がりが大きいとされる、例えば病原菌や化学物質が混入した場合は、ただちに回収です。
一方、昆虫や毛髪などですが、回収まではしなくてよく、当事者間での解決が望ましいとなっています。」

野口
「ただ結局、今回を見ているとすべて回収ということになっている。
それだけ当事者間での解決が難しくなってしまった?」

野口記者
「今の時代は、当事者同士の交渉の過程がインターネットで公開されることもあると思うんです。
それなら先に自ら公表して、速やかに回収したほうがトラブルを避けられるという考え方が強まっているように感じます。
今回の取材の中でも、企業の中にはかつては回収しないようなケースでも“このご時世だからしょうがない”と話す担当者もいました。
このような企業側の姿勢が回収の件数や量を増やす結果につながっているのではないかと思います。
こうした現状に企業はどう向き合うべきなのか。
かつて失った消費者の信頼を取り戻すために地道な取り組みを続けている企業を取材しました。」

●相次ぐ食品回収 どう向き合えばいいのか

野口
「情報公開で信頼関係を築いていくというのは地味ですけど、そういう取り組みしかないとすれば、浅野さんはどういうふうにご覧になりました?」

photo

経団連 審議員会副議長 浅野邦子さん
「事故は気をつけていても、どれだけハード面をきちんとしても、ソフト面の中でそういうふうになってくると思います。
でも、すぐ対応して、当社の社長は事故が起こったら“即地球の裏まで飛んでけ!”というぐらいの厳しい指示をしておりますので、対応策をどう速やかにすぐやるかということだけだと思います。」

竹内
「いち消費者としては“何か入っていたら嫌だな”と思う一方で、大量回収は食品ロスの問題もありますよね?」

photo

野口記者
「実際に回収をしていても、異物が混入しているのはごく一部であるケースが多いんですけども、回収した商品は基本的には廃棄せざるをえないということなんです。
さらに、大量の商品回収にかかるコストも企業にとっては無視できません。
例えば2,700万個を超える缶詰を発表したマルハニチロのケースでは、回収にかかるコストは数千万円かかる見通しだということなんです。」

野口
「それでも2,700万個全部は回収できないわけで、この時代、企業はどう対応していくべきでしょうか?」

野口記者
「食品の安全・安心という観点からすれば、問題があった場合はきちんと回収することは当然だと思います。
ただ、企業が自分を守るためだけに商品回収を繰り返すだけでは大量の回収を減らすことは難しいのではないかと思います。
企業には“この企業に苦情を言っても真摯に対応してくれる”と消費者に感じてもらえるような環境を作ることが重要だと思います。」

野口
「SNS、インターネット、そしてデジタルの発展が企業に脅威を与えているわけですが、その中でやることは案外アナログなことが必要なのかもしれません。
そこには私たちの心の持ちようも、もちろん入っているかもしれません。」

Page Top