コンプライアンス委員会

第3回(2013.3.12) 議事要旨

1 日  時  平成25年3月12日(火) 10:00〜12:00

2 場  所  放送センター22階 経営委員会室

3 出席者  (敬称略)

(1) 諮問委員
月尾嘉男(座長)、村上輝康(座長代理)、鈴木英夫、西浦裕二、松山良一

(2) 担当経営委員
石原 進、渡惠理子

(4) 関係者
中村美子(放送文化研究所メディア研究部主任研究員)、
斉藤正幸(放送文化研究所メディア研究部主任研究員)、
山田賢一(放送文化研究所メディア研究部主任研究員)、
田中則広(放送文化研究所メディア研究部専任研究員)、
梶原 均(放送総局知財展開センター著作権・契約部長)

 

4 議事要旨

(1)英・独・中・韓 4か国のテレビ国際放送
 中村主任研究員、斉藤主任研究員、山田主任研究員、田中専任研究員より資料(資料1)に基づき説明

 

(主な発言)

 

<委員>
BBCワールドニュースは93億円という比較的少額で、3億3,000万世帯をカバーしているが、理由はあるのか。

<NHK>
 BBCワールドニュースの予算の内訳は公表されていないので、93億円が何に使われているのかということは分からない。

<委員>
 国際放送の分野で成功しているのは、どこの国の放送サービスなのか。その放送サービスとNHKワールドTVを比較した場合、何が違うのか。

<NHK>
 効果的・効率的なサービスへの移行を思い切って進めている点について、BBCには見習うべき点がある。BBCは世界的な信頼を得ており、それは、これまでの長い歴史に負うところが大きい。われわれが同じように信頼を得るにはどのようにしたらよいかは難しい課題だ。BBCの国際放送は政府との関係が密接であるが、編集権の独立についてはBBCも神経を尖らせている。緊張関係の中で、独立した放送をしていくことが課題であり、そうすることによって信頼を得ているのだと思う。

<NHK>
 韓国のKBS WORLDはうまくいっていると感じる。あまり費用をかけず、それなりに視聴率を取っており、影響力もある。国内で放送されたコンテンツをうまく二次利用していることが重要なポイント。韓流ブームに乗って、著作権をクリアしたうえでドラマを放送しているということが、今の世の中の流れに乗っている。ドキュメンタリーについても、韓国のよいところも悪いところも、特に隠すことなく放送している。ニュースは英語化せず韓国語だけだが、全体として韓国を外国に伝える手段としてうまく使っている。

<NHK>
 こうして国際放送を比較してみると、ドイチェ・ベレの姿に矛盾がないと感じる。300億円以上の財源を、すべての国で確保できるのかという問題は非常に大きいが、活動目的が明確で、サービスの内容、全世界に向けた使用言語、テレビ・ラジオ・インターネットで世界をカバーという姿に矛盾はなく、非常にいい例だと思う。

<NHK>
 ドイチェ・ベレは、政府との関係に非常に神経を使い、距離を置いている。

<委員>
 先進諸国の国際放送局は予算削減に直面しているとのことだが、具体的にはどのように対応しているのか。

<NHK>
 世界的にこれまで国際放送はラジオ短波放送が中心に行われてきた。放送のデジタル化が進む中で、短波放送の有効性が急速に小さくなり、ラジオからインターネットへ、さらに余裕があるところについてはテレビにシフトしてきた。
 対象地域についても、その時代の国際情勢によって見直され、現在はBBCもドイチェ・ベレもイスラム諸国への情報発信にシフトしているという傾向がある。

<委員>
 政府からの予算削減の背景には、国際放送に期待していた効果が得られない地域への放送をやめて、効果が期待できる地域にシフトするという考え方があるのか。

<NHK>
 国際放送が外交政策の一環であるとしたら、その時代の情勢により対象国を変えることになるだろう。平成17年から18年にかけてBBCワールドサービスは、東欧向け7言語を含む10言語のサービスを全廃した。これは、この時期に東欧の民主化が進んだことによるものだ。現在は、イスラム諸国における民主化、オイルマネーや経済問題、軍事的な観点からも、現地に向けてアラビア語・ペルシャ語で放送することが重要だと判断しているのだろう。
 訴求力があるかどうかということではなく、何をしたいのか、何を訴え、それによる効果を得たいのか、そういう判断が背景にあると推測する。

<委員>
 4か国すべてにおいて、視聴率や視聴実態といったものは各々把握しているのか、またお互いが他国の状況も把握しているのか。

<NHK>
 イギリス、ドイツ、フランス、アメリカ、オランダの5つの国際放送機関が提携して視聴実態調査を行い、情報も公表している。調査については、頻繁に行っているという印象を持っている。

<NHK>
 中国については、そういう情報は公表されていない。
 部分的に、アフリカで中国の放送メディアの存在感が高くなっているというはなしを耳にする程度。

<NHK>
 韓国のKBSについて日本に限定した話でいえば、現地法人のKBS JAPANの発表では、平成21年・22年のケーブルテレビのチャンネルの中で視聴率1位あるいは2位だったという。その程度は需要実態が把握できている。

<委員>
 中国は非常に効率よく国家宣伝をしていると見ることもできると思う。

<NHK>
 言論の自由が余りない国・地域にとっては、中国の放送に違和感がないので、それなりに効果はあると思うが、欧米や日本などの民主国家においては異なる。

<委員>
 先ほど、KBS WORLDの事業規模についてかなりの少額であることが予想されるとの説明があったが、送信経費も含めて考えるとあまりに少額のように思えるが。

<NHK>
 先ほど申し上げた金額の中には人件費も含まれておらず、送信経費についてもわからない。ただ、KBSが持っているコンテンツを最大限活用して、独自制作の部分の経費を抑えているという点は大きい。

<NHK>
 NHKワールドTVは、一部視聴可能世帯も含めて全世界の2億5,000万世帯が視聴可能になっている。2億5,000万世帯に向けて送信・配信するのに20億円の予算を計上している。他の国際チャンネルがやろうという場合、NHKと同じ水準で受信可能世帯を確保するには同程度の経費が必要になると考える。

<委員>
 ブータンやベトナムでは韓国のドラマを大量に放送しているが、あれはアリランTVやKBSがやっているのではなく、韓国政府がパッケージを無料で供給しているという話を聞くが。そのような方向にあるのか。

<NHK>
 いろいろなケースがある。韓国政府はいろいろと後方支援をしていて一概には言えない。政府がパッケージで供給することもあれば、コンテンツ販売のイベントを開いたり、あるいはお金のないプロダクションに対して脚本審査の上で政府が経費支援をするなど、様々な取り組みがある。

<委員>
 放送機関と政府の距離について言及された。この点は、国際放送の対象とする国・地域や言語の選択において、その部分が密接に関わっていると思われるが、各国の国際放送において対象地域や使用言語を決定しているのは、政府なのか放送機関なのか。

<NHK>
 イギリスについては協定書に記載されているとおり、外務省とBBCが協議をして対象地域・使用言語を決めている。ドイツについては放送協議会を含めてドイチェ・ベレが計画を立て、政府・議会に報告をして、議会の了承を得るというかたちになるが、基本的にはドイチェ・ベレ自身が決めている。

<NHK>
 韓国については、アリランTVは、監督官庁とアリランTVが協議して決めているものと思われる。英語とアラビア語と限定されていることから、世の中の流れに乗ったものだと思う。KBS WORLDについては、独自の判断によるもの。

<NHK>
 中国は言うまでもなく政府が判断している。

 

(2)放送番組の著作権と海外展開における権利処理の課題
 梶原部長より資料(資料2)に基づき説明

 

(主な発言)

 

<委員>
 これまでの議論の中でも、番組が充実しないとなかなか見てもらえないという意見があった。財源の問題もあり、独自制作には限界があるとなると、ある程度既存のコンテンツの活用が大きなカギを握ることになる。海外展開する際には権利処理において課題があるとのことだが、答申に向けて、今の枠組みの中で、具体的に何ができて何ができないのかという点について、もう少し理解をしておきたい。

<委員>
 海外展開する際には、インターネット配信権が必要になる場合が多く、NHKでは迅速な権利処理に向けて、番組制作時に許諾を得る取り組みをしているということだが、権利者等からネット配信に対する許諾が出にくいという状況は変わってきているのか。また、支払う金額の面からは、事前許諾と事後許諾で違いはあるのか。

<NHK>
 そういう取り組みによって、徐々にではあるが、権利者等の意識が変わってくるということはあると思う。
しかし、NHKの番組に出なくてもいいという出演者であればネット配信に対する考え方も変わらないのではないか。同じように神社・仏閣等についても状況を変えることは難しいかもしれない。
 支払う金額については、使用について事前に許諾が得られたとしても、提供の都度というところが実際には多く、事前と事後の違いはあまりない。

<委員>
 韓国はオールライツを取って、韓流ドラマ等のコンテンツ展開を非常にうまくやっていると聞くが、どのような仕組みで権利処理をしているのか。

<NHK>
 国や地域によって、制作体制や権利に対する意識が異なる。最近は変わりつつあると聞くが、韓国ではそもそも権利者の権利が弱かったという素地があった。また、韓国には日本という大きな市場があり、ここでかなりの回収が見込めるので、ある程度コストがかかっても権利処理をしているのだと思う。
 日本の場合は、東南アジアなどがマーケットとして期待されているが、販売金額が安いため、ビジネス上、コストを考えると制作時に権利処理をすることに二の足を踏むケースがある。

<委員>
 仮に、NHK以外のコンテンツホルダーが、マーチャンダイジング等の展開が期待できるということで、期間を定めて著作権料を請求せず、自由に放送することを認めたとしたら、NHKのメリットはあるのか。正規ルートでないところで使われることを考えると、無償でもNHKで放送してもらうことは権利者の立場からすると安心感がある。

<NHK>
 権利処理の観点から言えばメリットはあるが、タイアップ的な取り組みがどこまでできるのかという点については、放送法や番組基準等に照らし合わせて検討する必要がある。

 

(3)「国際発信」に係る主な活動について
 事務局より資料(資料3)に基づき説明

 

(主な発言)

 

  • ここで紹介されている取り組みに横串を通すともっといろいろなことができるということは明らかだ。その際に、NHKは最も広範囲に発信できるネットワークを持っている立場にあるので、何らかの仮説や問題提起を答申に盛り込んだらどうか。
  • これまで、いろいろなところで行われてきた「国際発信」の取り組みについては、政府がとりまとめて、一緒にやれることは、やっていこうということになっている。目的は、日本ブランドの売り込みで、日本に行きたいとか、日本のものを買いたいというイメージをつくることにある。
    つぎの段階として、そのような取り組みをどのように海外に発信するかということになり、国際放送に期待するところが大きい。何のための国際放送かといった、そもそも論について議論して、答申に盛り込んだらどうか。

 

(4)自由討論 (資料4)

 

(主な発言)

 

  • 新たな枠組みでの国際放送を開始してから4年以上経過した今、NHKワールドTVをどうしていくのか。省庁・民間等で様々な取り組みがなされている中、NHKワールドTVをどう位置付けていくのか。そのような根本的な議論をしないと大きな発展が望めないのではないか。
  • 比較対象とされる、BBCワールドニュースやCNNはニュース専門チャンネルで、KBS WORLDはエンターテインメントチャンネルという立ち位置がある。NHKワールドTVと比較する際に、これらを渾然一体のものとして議論をすると結論に結びつかない。
    いまのNHKワールドTVは、アジアのなかでリーダーシップを発揮しながら公正な報道をすることによって日本のプレゼンスを高めていくという考え方にあり、その観点からは、編成を含めてよくやっていると思っている。ただし、これからもニュース・報道中心の放送とするのか、日本の文化や風土、ファッションなども含めたものを発信する場としていくのかという点については、議論をしないと、最終的に日本のプレゼンス向上につなげることができない。
  • 議論を始めるにあたっては、NHKワールドの目的について議論をしないと進まないと考えている。一体どのようなことが国際放送に期待されているのか。平成19年当時、情報通信審議会が示した国際放送の「ねらい・目的」についても、今日的にこのままでよいのかということも含めて議論したい。

 

(5)事務連絡
 次回は、4月9日(火)に開催する。