コンプライアンス委員会

第1回(2013.1.15) 議事要旨

1 日  時  平成25年1月15日(火) 11:00〜13:00

2 場  所  放送センター22階 経営委員会室

3 出席者  (敬称略)

(1) 諮問委員
月尾嘉男(座長)、村上輝康(座長代理)、鈴木英夫、西浦裕二、松山良一

(2) 担当経営委員
石原 進、渡惠理子

(3) 経営委員
浜田健一郎(委員長)、作田久男(委員長職務代行者)

(4) 関係者
冷水仁彦(NHK理事)、川上 淳((株)日本国際放送代表取締役社長)

 

4 議事要旨

(1)経営委員長挨拶および諮問内容の説明
 本諮問委員会は、外国人向けテレビ国際放送の充実・強化を目的に設置したもので、5月末の答申と時間も限られているため、検討の対象は「NHKワールドTV」に絞り、いろいろな角度からの検討をお願いしたい。
 われわれ経営委員会の現状認識は、海外における受信環境は整備されつつあるが、外国人の視聴者がチャンネルを合わせていただくまでは至っていないということ。こうした現状を打破したいので、新たなビジネスモデルの構築も含めて検討していただきたい。
 時を同じくして、国際放送に関連する2つの検討会が総務省内に設置された。新政権における成長戦略としてコンテンツ産業の育成強化という方向性も打ち出された。国際放送に関する検討という点においては本諮問委員会と一致するものであるが、各々重点の置き方が異なると考えている。総務省等における検討と有機的に連携し、相互補完的な役割を果たすかたちでの答申をお願いしたい。

 

(2)開催要綱について
 「『外国人向けテレビ国際放送』の強化に関する諮問委員会開催要綱」(資料1)について確認

 

(3)座長の選任、座長代理の指名
 委員の互選により月尾諮問委員を座長に選任
 月尾座長より村上諮問委員を座長代理に指名

 

(4)議事の取り扱いについて
 事務局提案の「『外国人向けテレビ国際放送』の強化に関する諮問委員会議事の取り扱いについて(案)」(資料2)について了承

 

(5)今後の進め方等について
 各諮問委員の所信も含め、今後の進め方についての意見交換を行った。

  • いかにチャンネルを合わせてもらうかを考えるには、コンテンツの議論は切り離せない。アメリカはケーブルテレビの普及が進んでいて、IPTV等も含め、多チャンネル化が進んでいる。そのような状況の中では、コンテンツの差別化が重要となる。
  • 個別の番組についての議論は番組審議会の役目になる。この諮問委員会では深く番組について議論しにくいが、いかに多くの人々に見てもらう仕組みをつくるかという点について議論するなかで、コンテンツの充実の話ができればよいのではないか。
  • 諮問委員会設置の究極の目的や、外国人向けテレビ国際放送の究極の目的は何かという点について、意識合わせをすべきだ。
    単に、チャンネルを合わせてもらえればよいのかというと、恐らくそうではない。いかに日本を知ってもらい、ファンになってもらうかが究極の目的のひとつ、重要な目的なのではないかと思う。オリンピックの招致活動もそのひとつかもしれないが、類似の活動がいろいろとある。それぞれがベクトル合わせもせず、ばらばらと行われている印象がある。そういう活動の一環として、外国人向けテレビ国際放送があるのだと思う。関連する活動との相乗効果も念頭に置くことで究極の目的を果たすことができるのではないか。
    問題の本質を捉えることが大切で、あわせて関連する諸活動とのベクトル合わせについても問題意識を持っていきたい。
  • NHKが行う外国人向けテレビ国際放送は、コンテンツのグローバル・リーチがどれくらい行き渡るかという点に最終的な議論のポイントがあると考えている。5年前に新たな外国人向けテレビ国際放送の在り方を検討したときには、新サービスは、総合映像国際放送であるべきだと定義した。インターネットによるコンテンツ配信サービスが行われ始めた時でもあったので、従来の放送と、通信を利用したサービスをどう融合していくかという点についても活発な議論がされた。テレビ国際放送は、放送衛星を介して放送するだけでなく、インターネット等の活用も含めて、総合的にコンテンツを届けていくサービスと考えられてスタートしている。チャンネルを合わせてもらうということと、実際にコンテンツを見ていただくということの懸隔(けんかく)を埋めていくことがこれから5年あるいは10年の重要な課題である。コンテンツのグローバル・リーチということにこだわりたい。
    また当時は、フルスケールの英語による国際放送が本当にできるのかという、サービスの存立自体が課題だった。今は、放送すること自体は当たり前で、いかに効果的に見てもらうかということに重点が移っている。この間、制作体制の充実に力点が置かれてきたと思うが、今はいかにマーケティングしていくか、どれだけ普及させていくかが重要になっているので、NHK国際放送局やJIBの経営資源の割り当てがどのように行われてきたのか、おそらく制作体制は分厚くなっていると思うが、マーケティング部門への経営資源の割り当ては十分なものなのかという点について焦点を当てた議論ができればと思っている。
  • BBC、CNN、CCTVと、諸外国が国際放送に力を入れてきている。そのなかで日本の国際放送は周回遅れ以上の差が生じている。何とかしないといけないという切羽詰まった認識を持っている。
    NHKの国際放送は、国際放送をやること自体が目的となっていて、視聴可能数の拡大が大きなターゲットとなっている。一番大事なのは、誰にどのようなメッセージを伝えるかということ。この点がはっきりしないまま、アクセス数を増やすためにどうしたらよいか、番組はどうしたらよいかということを検討することを改めなければいけない。
    諮問委員会では、短期的な課題と中長期的な課題を分けるべきだと考えている。短期的なものとしては、テレビ国際放送を、いかに見られるようにするかということの検討。中長期的には、日本のイメージ向上や情報発信の強化のために、国際放送という手段で誰にどのようなメッセージを発するかという点について検討してはどうか。
    日本ブランドの海外展開や情報発信の強化については、いろいろなところが、ばらばらに取り組んでいるのが現状。一丸となって誰に何を訴えるのかという視点が欠けたままである。その点について整理し、連携を取りながらやる必要がある。
    国際放送については訴求ターゲットをどう絞るかだと思う。今のサービスは特定の層にターゲットを絞ることなくつくられている。かつての日本は海外に対して黙していてもよかったのかもしれないが、経済力が低下した今、日本人がどのようなことを考え、何をしたいのかということについてあらゆる手段を通じて訴えていかねばならない。諮問委員会では、誰に何を訴えていくのかという点について議論していきたい。
  • 2年前の今頃、ベトナムの中国国境に20日間ほど滞在したことがあった。その時、村に1台しかないテレビを見ていた子供が「今一番好きな国は韓国だ」と答えたことに非常に驚いた。以前ベトナム人が最も嫌いな国は韓国だったが完全に逆転している。その背景にあるのが、韓国が一種の国策としてドラマなどを無償提供していることだ。
    また、ある雑誌にブータンの少女が「今の幸福度は10点満点中8点で、2点足りないのは韓国に生まれなかったこと」と答えたという記事が載っていた。ブータンも無料で韓国ドラマがたくさん見られる環境にあるとのことだ。
    韓国は1997年からクール・コリア戦略を始めていて、もとはブレア政権時のイギリスがクール・ブリタニカとしてイギリスを海外に売り込もう戦略を取ったことを参考にしたものである。韓国は、外国に番組コンテンツを提供することで自国のイメージ向上に成功した。日本もそういう取り組みをするべきだと考えていたので、諮問委員の話をお受けした。
    年初の新聞で日本の民間放送や代理店などが共同で「ジャパン・チャンネル(仮称)」というものをつくって当面シンガポールに拠点を置きサービスを行うという報道があった。一部は「クール・ジャパンファンド(仮称)」という官民合同出資によるファンドが支援するということなので、官民合同で日本のイメージアップに、まずはアジアから取り組むということだと思う。今後の議論でも主に民間から行う情報発信と、公共放送が行う情報発信をどう位置付けるかという点についても議論しなければならない。国内においても民放とNHKがあるように、それぞれの役割を担えばよいと考えている。クール・ブリタニカ戦略の中でもBBCの関わりが求められ、それが現在のBBCの国際放送に反映しているという経緯もある。
    アメリカは映画の輸出で同様の取り組みを行ってきた。戦略を練り、効果的なプロパガンダとして映画を使ったところ大成功した。「鉄は映画に続く」というキャッチフレーズをつくり、まず映画でアメリカの良いイメージを売り込んだ後、鉄、今でいえば家電製品などを売り込んだ。そこまで、露骨にビジネスとして考えなくてもよいと思うが、少なくとも自国に好感をもたれるような仕組みづくりをいろいろな方策を通じてやっていかなければならない。その一翼を担うようなことができればよいのではないかと考えている。
  • 効率よくわれわれの議論を進めるために、参考となる他国の類似の活動・成功事例を紹介してほしい。また日本ファンをつくる、日本ブランドを受け入れてもらうための類似の活動がいろいろあるとのことだが、横一線で見られるように整理してほしい(事務局が第3回会合に向けて準備することとなった)。
  • さきほどコンテンツに関する議論の扱いについて話があったが、避けては通れないのではないか。クール・コリアの話が出たが、韓国は著作権がかなり自由に扱える。オールライツを持っていてコンテンツ展開が簡単にできるということがある。NHKにも素晴らしいコンテンツがたくさんあるが、著作権の問題で、二次展開が難しく、かつ仮に展開できても法外な値段になる。この部分について、ある程度切り込まないとコンテンツ展開はできないので、それに伴う権利処理についての議論は避けて通れないと思う。
  • 過去のコンテンツを展開する際に、著作権処理がある種制約になっているという点については多くの人が指摘されているので議論の対象とすることはよいと思うが、諮問委員会としての結論をどう出すかということは検討しなければならない。
  • 総務省の検討会で放送コンテンツ流通の促進のために権利処理の効率化を図ることの検討がされていると聞いている。

 

(6)外国人テレビ国際放送の現状について

  • ① 「外国人向けテレビ国際放送の現状と課題」(資料3)
    冷水理事より、資料に基づき説明
  • ② 「JIBの現状と課題について」(資料4)
    川上社長より、資料に基づき説明
  • ③ 質疑
  • お二人が指摘された課題は、新たな枠組みの外国人向けテレビ国際放送が始まった4年前の課題と同じではないか。実際にはこれまでの4年の実績があるので、当初掲げた目標やねらいと照らし合わせて、この4年間で何ができて、何ができなかったのか、できなかったのであればその理由は何かということが示されないと議論にならない。次回は一般的な課題だけでなく、4年間の実績を踏まえた説明をお願いしたい。
    特に財源の問題は、当初から想定されていたことで、裏を返せばJIBがNHKから自立できていないということだ。単にNHKの予算の問題ということではなく、どうしてそうならざるを得ないのか、もう一歩突っ込んだ議論をしないとらちが明かない。
    あわせてオールジャパンという言葉がたびたび出てくるが、どういうイメージを持っているのか、仮説があるのか、このあたりも具体的にお話しいただきたい。

 

次回は、2月12日(火)に開催し、本日の説明を受けての質疑・意見交換を実施する。