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平成30年度 第5回
視聴者のみなさまと語る会in新潟
(平成30年11月3日(土・祝))

 

<会 合 の 概 要>

 「経営委員会による受信者意見聴取」の平成30年度第5回は、新潟放送局で実施し、「公共放送の役割」などNHKの経営全般に関すること、「NHKの全国放送や地域放送のあり方」など放送に関すること、の2つのテーマについて、公募による45名の視聴者から意見を聴取した。

 

<会 合 の 名 称>

視聴者のみなさまと語る会in新潟

 

<会 合 日 時>

平成30年11月3日(土・祝) 午後1時30分〜午後4時40分

 

<出  席  者>

〔参 加 者〕

視聴者の皆さま45名

〔経営委員〕

佐 藤 友美子  (委員)

 

渡 邊 博 美  (委員)

〔執 行 部〕

荒 木 裕 志  (理事)

 

黄 木 紀 之  (理事)

 

矢 野 達 史  (新潟放送局長)

〔 司 会 〕

小 見 誠 広   アナウンサー

 

< 会    場 >

 新潟放送局 ロビースタジオ

 

< 開 催 項 目 >

 以下のとおり進行した。

 

1 開会あいさつ

2 経営委員による説明

  協会の基本方針、その他協会の運営に関する重要な事項について

3 意見の聴取

 (1) NHKの経営全般について

 (2) NHKの放送について

4 閉会あいさつ

 

 「視聴者のみなさまと語る会」終了後、「あらゆる『窓』から社会を見る」 と題して、大越健介報道局記者主幹による講演会を開催した。

 

<概要・反響・評価>

  • 公募の結果、ホームページ等を通じて231名から参加の申し込みがあり、会場の広さの関係から抽選を行い、93名に参加案内を発送した。

  • 語る会には、45名が参加し、「公共放送の役割」などNHKの経営全般に関すること、「NHKの全国放送や地域放送のあり方」など放送に関すること、の2つのテーマについて意見や提言を募った。

  • 参加者からは、「受信料の公平負担」、「役員の男女比」、「4K・8K放送」、「常時同時配信」、「地域放送の充実」などについて、多岐にわたる意見や提言が寄せられた。

  • 語る会終了後に行ったアンケートには、45名から回答があった。主なアンケートの結果は次のとおり。

    <参加者の満足度>
     「大変満足」15名、「満足」24名、「普通」1名、「不満」2名、「大変不満」0名(未記入3名)

    <経営委員会の仕事について>
     「今回のイベントに参加して、経営委員会の活動について理解が深まりましたか」との質問に対し、「経営委員会の活動について理解が深まった」との回答が35名からあった。


◆協会の基本方針・重要事項の説明

 (佐藤委員)

 東京オリンピック・パラリンピックが開かれる2020年。皆さんはどのような方法で情報を知り、ドラマやスポーツ中継をご覧になっているでしょうか。NHKが2020年に向かって、どのような未来を描き、皆さまにとってどんな存在でありたいと思っているのか、その思いを形にしたのが、今年度から3か年の計画を記したNHK経営計画2018-2020です。
 この経営計画のご説明の前に、NHKの経営委員会についてご説明します。経営委員は放送法に基づき、国会の同意を得て、内閣総理大臣から任命されています。さまざまな分野や地域から12人が選ばれています。
 経営委員会はNHKの経営の基本方針や予算、事業計画などを決めます。
 また、NHKの会長の任命も行い、執行部が決められた方針に沿ってNHKを運営できているかどうかをチェックするのも、経営委員会の仕事です。また、経営委員の中から監査委員が任命され、経営委員を含めた役員の職務の状況を確認いたします。本日登壇している経営委員は、2人とも監査委員です。
 私たち委員は、NHKの経営にあたり、視聴者のご意見を踏まえた適切な判断や検討を行うことが求められています。そのため、放送法に基づき、本日のような機会をいただいて、皆さまから直接お話を伺う会合を各地で開いています。
 さて、NHKの新しい経営計画は、皆さまの受信料で運営するNHKの経営の基本方針です。これから2020年度まで、どのような放送や事業に取り組もうとしているのか。経営委員会で話し合いを重ねて、まとめました。
 ラジオ、テレビ、パソコン、インターネット、スマートフォンといった情報や娯楽を届けてくれるものは、より多彩になっています。NHKは、東京オリンピック・パラリンピックが開かれる2020年に向け、「いつでも、どこでも」視聴者の皆さまのそばで役に立ち、情報の社会的基盤としての役割を果たす、「“公共メディア”への進化」を目指しています。この実現のために、私たちが3か年で取り組む5つの重点方針をまとめました。
 重点方針の1つ目は、「公共放送から“公共メディア”への進化」です。放送を太い幹としつつ、インターネットや新しい技術も活用し、信頼できる情報を早く、深く、わかりやすくお伝えします。人々の命と暮らしを守るため、防災・減災、緊急報道、復興支援に力を入れます。多彩なコンテンツを制作し、12月1日からは高精細な4K・8Kスーパーハイビジョンの本放送、BS4KとBS8Kがスタートします。国際放送は、名前を「NHKワールドJAPAN」と改め、日本の視点を生かしたニュースや番組を伝えます。
 重点方針の2つ目は、「多様な地域社会への貢献」です。地域の魅力を広く伝えるとともに、地域社会が抱えるさまざまな課題について、全国のネットワークも生かしながら取材し、積極的に発信していきます。
 3つ目は「未来へのチャレンジ」です。2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは、臨場感あふれる最高水準の放送・サービスを目指します。また、多様な価値観を認め合う社会を目指した放送・サービスを充実していきます。
 4つ目は、「視聴者理解・公平負担を推進」です。視聴者の皆さまから、より必要とされるNHKを目指し、放送・サービスについて、理解を深めていただく活動を展開します。受信料の公平負担の徹底に向けて、支払率を毎年度1ポイントずつ向上させます。また、社会福祉施設や経済的に厳しい状況にある学生などを対象に、3か年で170億円規模の受信料の負担軽減策を実施します。
 5つ目は、「創造と効率、信頼を追求」です。働き方を抜本的に見直す改革を進め、関連団体を含むNHKグループ一体となって、効率的な組織運営を推進します。
 以上の新しい経営計画で取り組む重点方針のもとに、私たちは、変化の時代の中でも変わらずにNHKが担う公共の役割や価値を実現していきます。
 最後に、平成30年度の事業計画に対応する収支予算は、受信料などの収入で7,168億円、国内放送費などの支出で7,128億円を計上しています。事業収支差金は40億円となり、全額を4K・8K設備などの建設費に使用します。
 経営委員会としては、受信料の重みを自覚し、コスト削減に心がけ、計画の着実な実行に努めるよう求めています。放送法を順守しながら自主自律を貫き、公正で効率的なマネジメントにより、皆さまから信頼され、役に立つ“公共メディア”となるよう、経営委員会としても、執行部と共に努力していきます。きょう、お集まりの皆さまからいただく貴重なご意見は、ぜひ経営委員会の活動の参考にさせていただきたいと思います。

 

 

《視聴者の皆さまからのご意見とNHK側からの回答》

 

第1のテーマ:NHKの経営全般について

(司会)
 はじめに受信料の公平負担の徹底について、経営委員、執行部よりお答えします。

(渡邊委員)
 公平負担の徹底は、受信料をお支払いいただいている方から一番求められていることだと思います。約7,000億円の受信料収入でNHKは成り立っていますが、受信料の推計世帯支払率は、全国平均では約80%です。
 新潟県の支払率は約96%で、全国47都道府県で2番目に高い受信料の支払率です。支払率が90%以上の地域は全国で10県です。支払率が平均の80%以下の地域はどのぐらいあるかと申しますと、9つの都道府県です。具体的な名前は申し上げませんが、都市部や、非常に人口の多いところが入っています。90%以上の地域と80%以下の地域の数は同じぐらいで、現状は約80%の支払率になっています。
 新潟の方は受信料を支払っていらっしゃる方がほとんどですので、その件に関して皆さんの忌憚のないご意見や、こんなことをしてはどうかということがありましたら、ぜひこの場で出していただければありがたく思います。

(黄木理事)
 NHKの基本的な役割は、確かな情報と豊かな文化を、いつでもどこでもどなたにでも、わけへだてなく享受していただく、こちらからお伝えするという役割です。それを支える財源は受信料であり、税金でも、広告収入でもなく、皆さまに公平に負担していただく受信料だからこそ、特定の利益や意向に左右されることなく、私たちが自律的に公正・公平であると考えるものを、自信を持ってお伝えできるという仕組みです。
 受信料の公平負担の徹底に努めるということは、NHKにとって最も重要な責務です。一軒一軒お宅を訪問させていただき、テレビをお持ちであれば受信契約のお願いをしています。信頼のできる民間の会社に受信料関係業務の一部を委託するなどして、効率的に契約収納業務の強化を図っています。
 また、住所変更の際には、NHKのホームページや、フリーダイヤルでご連絡を受け付けたり、郵便局に転居届を出される時に、一緒にNHKの住所変更届も出せるようにワンストップにしたりするなど、受信料の契約を高めていくためのさまざまな努力をしています。
 それでも、なかなかご契約やお支払いをいただけない方がいらっしゃいます。NHKの公共放送の意義や受信料制度について、できるだけ誠心誠意丁寧に説明をし、ご理解いただけるように努力を続けています。
 それでもなおご理解いただけない場合には、最後の方法として、公平負担を徹底するという意味で、民事手続きによる支払いの督促や、民事訴訟といったものも使い、公平負担の徹底を最大限努力します。しかもそれをできるだけ効率的に使って、よい情報を皆さまにお届けできるように日々努力をしていますので、ご理解をいただけたらと思います。

【会議参加者】
 事業収支ですが、「その他の事業収入」と「その他の事業支出」の内容で、一番多いものを具体的に教えていただけますか。

【会議参加者】
 私は体に障がいがあります。今は幸いにして両親と同居しています。高齢化社会になり、要介護の方や障がいがある方が増えました。今の免除基準だと、世帯主に重度障害がないとだめだという規定らしいので、今後の検討課題として、もう少しそれを緩めていただけないでしょうか。要介護認定を受けていたり、重度の障がいがある方がご家族にいたりしても、一定の収入より以下の方は全額免除するなり、半額や3分の1を免除するなり、もう少し負担しやすい方向を考えていただけないかなと思います。

【会議参加者】
 最近、国会等でNHKの受信料に対してマイナンバー制度を使うという話も出ていますが、詳しい話を聞きたいです。

(黄木理事)
 「その他の事業収入」と「その他の事業支出」についてお答えします。
 まず、「その他の事業収入」で一番大きいのは副次収入で、例えばNHKのキャラクターがいろいろ展開して商品になったり、イベントが開かれたりという形があります。それから大河ドラマなどいろいろなドラマをDVDで購入していただけたりします。受信料を使い、つくらせていただいた放送番組を二次展開し、その収入としてNHKに入ってくるもの、これを副次収入といいます。これが一番大きいです。
 それにほぼ匹敵するのがもう一つあり、財務収入といいます。この中の大きなものは、NHKのグループ企業がNHKのノウハウを使ってさまざまな世の中に役に立つビジネスの展開をし、それによって出た利益をNHKに配当という形で戻したものです。受信料収入に加えて、少しでもそのような収入を「その他の収入」として入れることで、全体の規模を大きくしようという努力をしています。
 「その他の事業支出」の部分で、ここに書いてあるもの以外で一番大きいのは、共通管理費です。どの企業でも企業を運営していくために必要な管理費というのがあり、最近では情報セキュリティーの費用なども含まれています。
 もう一つは調査研究費で、これも今100億円前後を事業支出として支出をしています。NHK放送技術研究所を中心に、スーパーハイビジョンなど世界トップクラスの研究開発をしています。NHKだけではなく、日本の放送事業者、さらには世界の放送事業者にも役に立つ技術を開発するという形で、受信料を使わせていただいています。これらが主なものです。
 受信料の免除や支払いの軽減については、基本的に生活保護など経済的な条件でおこなっています。さらに、この3か年の経営計画では、社会福祉施設や経済的に厳しい状況にある学生などを対象に、3か年で170億円規模の受信料の負担軽減策を実施します。社会福祉法人や、学生でひとり暮らしをしていて、親元の世帯が住民税の支払いを免除されている対象である場合や、奨学金などを受けている学生で、経済的な理由で奨学金を受けている方という経済条件を一つの目安とし、免除の対象を拡大します。
 このような一つ一つの考え方に従って、できる限り公平に負担の軽減をしていこうと考えていますので、いただいたご意見も十分考えさせていただきながら、経営を進めていきたいと思います。

(佐藤委員)
 今の軽減策の件については、経営委員会と執行部の間でも議論がありました。今回はこのように学生や社会福祉施設ということになりましたが、いろいろなことをこれからも考えていきたいと思っています。どうもありがとうございました。

(黄木理事)
 マイナンバーのご質問もいただきました。マイナンバー制度というのは、まだ今は、NHKが使える個人情報という扱いにはなっていません。もちろん、受信料を今支払ってくださっている方が例えば転居されますと、口座支払いの形で支払ってくださっている方は、そのまま移動することも可能ですが、毎回振り込みでお支払いをいただいている方の場合は、次からそこに振り込み用紙をお送りしても、届かないわけです。どちらに変わられたのかは、マイナンバーのようなものがあれば、すぐトレースすることは可能ですが、今はマイナンバーを私どもが使える制度になっていません。
 したがって、そこにもうお住まいではない場合、今度は別の地域の担当の人間が、ずっとその地域を回っていますので、新たにいらした方を見つけて、今度はまたテレビはお持ちですかというところから始めるということです。
 ですから、受信契約数は80%となっていますが、特に3月の移動期には、一旦減って、それからまた一軒一軒契約をし直していただき、またもとに戻すということを毎年やっています。

【会議参加者】
 渋谷のNHK放送センターの工事計画を進めているようですが、全国の放送局はかなり老朽化していますので、その計画について聞きたいです。

【会議参加者】
 経営委員の12人中4人しか女性がおらず、今この場にも、登壇者に女性が1人しかいません。経営委員は任命されてなるものですが、公平・公正という番組づくりを心がける中で、これからはLGBTの問題なども出てきますが、もう少し男女比を公平・公正にしていただけたらと思います。この件をどのようにお考えでしょうか。

【会議参加者】
 受信料の支払率が平均80%で、それ以下が約10都道府県ということで、大変不公平さを感じます。最後の手段として、民事訴訟を活用するなどというふうにうたっていますが、昨年NHKとして民事訴訟を提訴されたのは、実際何件あるのかお聞かせ願いたいと思います。

(黄木理事)
 まず提訴のご質問についてお答えします。これは放送受信契約の未契約者に対する提訴の状況として、ことしの4月13日に発表したもので、昨年度1年間という区切り方ではありませんが、世帯については339件をこれまでに提訴をしています。そのうち275件が解決済み、判決まで行ったのが33件、それから現在訴訟中であるのが31件です。これは世帯の件数です。事業所はまた別ですが、そのようになっています。

(佐藤委員)
 女性の比率が少ないということは、私たちも非常に気にしています。ただ、経営委員は国会の承認ということなので、自分の意思でできるものではなく、女性の経営委員は4人ですが声はかなり大きくて、議事録を見ていただくとわかりますが、発言の比率は高いのではないかと思います。
 執行部については、ことし女性の理事が1人出ました。他の理事は全員男性という中で女性1人なので、これは本当によくないことだと思っていまして、私も経営委員会で何回も発言をしています。これから少しずつ変わっていくと思います。内部から登用するには、育てる時間が必要ですから、そこは非常に難しいところなのですが、何人か候補の方もいるようですので、女性の理事が出るように働きかけていきたいと思います。

(渡邊委員)
 なかなか一気に理事になるというわけにはいきませんので、そうすると、女性の職員が管理職としてどのぐらい活躍するかということを、われわれ経営委員は注視をしていまして、たしか直近の数字では全職員の8.7%が女性の管理職で、その数は毎年増えています。最終的にはそこから理事になる、活躍される方が出てくるというのが、一番やはりよろしいことではないかなと思って、私たちもそういう働きかけをしています。

(黄木理事)
 全国の放送局の建て替えの件ですが、これも順次やっています。最近でいえば静岡放送局とか、その前は仙台放送局が新しい局舎に建て替わりました。この後も札幌放送局などの建て替えの計画が、今進んでいます。
 いずれも古いものではもう50年を超えています。しかも例えば南海トラフの地震などがあった際の浸水区域にあったりすると、新しい用地を探して交渉するなど建てるために時間がかかっているのが現状です。きちんと情報を伝え続けるために、放送会館の建設を計画的に進めていきたいと考えています。

(渡邊委員)
 渋谷の放送センターの建て替えの話も出ました。これは2020年東京オリンピック・パラリンピックの後に、建物を使いながら新しく建てるという方法で、かなり長期間の建て替え計画になっています。今は準備段階でその具体策が練られていて、実際の工事はまだ始まっていないという状況です。

【会議参加者】
 受信料の公平負担を徹底させるというのであれば、ニュース番組以外はスクランブルをかけるというのが正しい選択だと思います。また、インターネットでの常時同時配信も来年あたりから始めるという話が出ていますが、その辺はどうなっているのでしょうか。

【会議参加者】
 4K・8K放送について質問します。私は対応するテレビを購入するのは経済的にちょっと無理かなと思っています。放送内容については、鮮明さを優先した番組になるのでしょうか、やはり従来どおりの番組と同じように、ストーリー性などを重視するのでしょうか。

【会議参加者】
 4K・8K放送を見るために、またアンテナが必要だと聞きました。それはどのくらいの価格でしょうか。教えてください。

(荒木理事)
 公平負担に関連して、ニュース以外にスクランブルをかけたらどうかというお話をいただきました。公共放送NHKが目指す目標として、私たちは今「6つの公共的価値の実現」ということを掲げています。それは1つが安全、安心な暮らしをきちんと送っていけるような災害情報を中心としたニュース、それから正確で公平・公正な情報をきちんと届けるということ、これはだいたいニュースの範囲内ですが、そのほかに質の高い番組の提供によって、文化の向上を図っていきたいという価値も目指しています。
 同時に地域社会への貢献や、高齢化社会の中で人にやさしい放送をきちんと出し、教育と福祉にも貢献すること、日本と国際社会の理解促進、この6つの価値を掲げています。
 安全、安心から質の高い文化の創造まで総合的な価値を全体として目指していこうということで、今のところニュース以外の放送番組にスクランブルをかけるというようなことは考えておりません。こうしたNHK全体の公共的な価値の実現を目指す活動にご理解をいただいて、公平負担をお願いしていくという方針で行きたいと思っています。
 4K・8K放送についての質問もいただきました。12月1日からいよいよ本放送が始まります。非常に高精細な画面ということで、8Kの場合は絵画や彫像などを高精細に映し、これまで人間の目であまりとらえられなかったものまでわかります。例えば「モナ・リザ」という有名な絵がありますが、右目と左目の描き方が違うことで全体的な印象を形づくっているということなどが、非常に鮮明にわかるようになります。ヨーロッパのオーケストラの演奏の生中継なども、非常に高精細で音声も非常にいいです。4Kでは、小津安二郎監督の過去の映像作品などを4Kでリメークをして映したり、8Kではキューブリック監督の「2001年宇宙の旅」という70ミリで撮影された映画を8Kでリメークをしたりしています。これまで2Kでは見られなかったものが4K・8Kで味わえるということを目指しています。12月1日から4Kは18時間、8Kは12時間10分間の放送が始まりますので、ぜひ見ていただきたいと思います。

(黄木理事)
 設備については、8Kをご覧になる場合には、今までと同じBSアンテナではだめで、新しく8K対応アンテナに変えていただく必要があります。4Kについては、これまでも4Kテレビは市販されていましたが、衛星からの電波を受けて映し出すいわゆるチューナーがついていないものが今までは売られていました。したがって、これまでに4Kのテレビをお買いになった方が、12月1日からの4K放送を受信しようという場合には、新たに数万円の外付けの4Kチューナーをつけ加えていただくと、ご覧になることができます。この場合はBSアンテナを変えなくても、4Kはそのまま見ることができます。ようやく今月ぐらいからメーカー各社が、4Kチューナー内蔵の4Kテレビを売り出すようになりました。
 ケーブルテレビでご覧になっている方々は、それぞれのケーブルテレビ会社が、4K・8K対応のセットトップボックスというものを、ある段階からサービスとして出してきてくれると思います。ものすごく高くなるというようなことではないと聞いています。そのセットトップボックスを使うと、4Kチューナーを内蔵していない4Kテレビでも見られるということで進んでいます。

(矢野局長)
 新潟局から4K・8K放送についての補足をさせていただきます。今、黄木理事からありましたが、新潟県には力のあるケーブルテレビ会社がたくさんあって、光ケーブルで4K対応を進めているところもあり、アンテナを買わなくても見られる会社もあります。加入されている世帯ではぜひ問い合わせてみてください。8K放送の番組としては、ことし新潟では長岡の大花火を8Kで収録しており、今制作中です。12月の本放送以降は目玉番組の一つとしてお見せできると思いますので、これもぜひお楽しみください。

(佐藤委員)
 スクランブル化についてご意見をいただきました。本当に努力が足りない、公共放送の負担を徹底することができていないなとお感じだと思います。公共放送NHKの場合、国民全体の情報の基盤として、公共放送を維持運営するために、特殊な負担金として受信料という形でいただいています。安心、安全などさまざまな役割を担うための受信料ということになります。
 実はこれには深い理由があります。私も経営委員になってから勉強したのですが、「放送制度論のために」という、放送法をつくるときに当時かかわった方が書いている300ページを超える本があります。そこには、民主主義の基盤としての放送をきちんとやっていかなければいけない、かつて放送が政府の圧力や国家権力によって偏り、プロパガンダに使われて戦争になった経緯があるので、そのようなことが絶対ないようにするために、国営放送ではなく公共放送としてやっていくことをとても大事に思ってつくった、と書いてあります。
 これからインターネットでの常時同時配信などが始まるのを機に、いろいろ変えなければいけないところも確かにあると思います。しかしそれは放送のしかたであって、この根幹のところは守らなければなりません。そのためには皆さまに負担金としていただくことをきちんとご理解いただくということが大事ではないかと思っています。これからもいろいろな意見をいただいて、こちらの考え方もお話しさせていただきたいと思います。

【会議参加者】
 先ほど4K・8K放送の良さについて話を伺いましたが、2Kが始まったときも今のような説明があって、非常に肌が鮮明に見える、詳細なものが見えるということをうたっていました。4K・8K放送においても、モナ・リザのほおの色もわかるということですが、私たちはそんなにほおの隅々まで見ようというようなことはないです。そんなに4K・8Kが必要なのでしょうか。また、受信機が相当高いということで、それだけお金を使ってもいいものかとも考えています。

【会議参加者】
 経営に対してすごく努力しているのはよくわかりましたが、きょう集まっている方々はかなり高齢で、若い人の意見をどうやって聞こうとしているのでしょうか。こういう会の意味はあるのですが、こういうときに聞かれる意見というのは、年代や世代が偏っていないかという視点が必要ではないかなと思いました。

(司会)
 ありがとうございます。若い方は、どうでしょうか。

【会議参加者】
 今後、テレビ放送の内容を、インターネットで同時配信をするという話を聞きましたが、それはどういうサービスになるかをぜひ教えてください。

(司会)
 やはり若い方は、インターネットが本当に身近なツールなんですね。

(荒木理事)
 4K・8Kについてご意見いただきました。2Kで十分よく見られているのだから、4K・8Kは高いお金を出してつくったり見たりする必要はないのではないかというご意見でした。やはりそういう意見も確かにあります。私たちも4K・8Kの可能性がどういうところにあるのか、実際まだ世界的に見ても試行段階で、特に8Kについては日本が先進的に進んでいるわけですが、まだそれほど世界でも普及していないという部分があります。一方、4Kは各国の放送局も非常に関心をもっていて、番組をどんどんつくっていこうという風潮も出てきています。私たちはテレビの最高水準の可能性を求めていくということは必要だと思っており、やはり4Kでなければ味わえない映像、それから表現といったようなもの、それから4Kでとらえて初めてわかるものというのもあります。例えば報道の現場でも、4K・8Kというのは非常に情報量が多いので、空撮でとっただけで、例えば高低差も全部わかって、地形の立体的な映像ができてくるというようなことが、実際に可能になっています。山の噴火などでも、例えば4K画像だと、そこに霧がかかっていても、霧を取り除いて見られるとか、さまざまな技術も4Kによって可能になる部分もあります。まだ発展途上のものもありますが、一つずつクリアしながら、テレビの可能性を追求していきたいと思っています。
 それから、若い方のご意見をどのように取り入れているのかというご質問ですが、このような「視聴者のみなさまと語る会」をキャンパスミーティングという形で、学生の皆さんからご意見をお伺いする会も開催しています。そこでは、「私たちはテレビを見ません」という若い学生さんたちと我々が、直接会って話をするというような場面もあります。
 それから、局内では、20代、30代、40代ぐらいの若い人たち、中堅の人たちがタスクフォースという勉強会をつくり、私たちの目指すサービスはこうあるべきということを経営に提言してもらい、それを経営方針の一つの重要な柱にしていこうと考えています。
 企業経営の中でダイバーシティ、多様性を取り込んでいくということは、非常に重要だと思っています。若い人たちのテレビ離れというような中で、NHKが将来的にどう公共放送として成り立っていくかを考える時、ダイバーシティは一番重要な部分だと思いますので、これからもきちんと取り組んでいきたいと思っています。
 インターネットについては、今、NHKは放送を幹としながらも、若い人たちがインターネットで情報を収集するという環境の変化の中で、インターネットに対する発信力も強化していかなくてはいけないと考えています。例えば「NHKニュース防災アプリ」は、災害時に非常によく使ってもらえるようになっていますし、最近では鉄道の運行状況などもわかるようにして、便利に使っていただけるようになっています。
 それから、今私たちが目指しています放送の常時同時配信は、放送の内容をそのままインターネットで見られるようにするというものです。まだ法改正ができていませんので、実現していませんが、法改正ができればそれを実現したいと思っています。それは放送の内容がインターネットで見られるということや、見逃し配信で、一定期間の前に、例えばきのうのニュースやドラマが見たいという時も、インターネットで見られるというようなことも検討しています。放送を大きな幹としながらも、より多くの人たちに視聴機会を得ていただくために、そういうことを考えていきたいということです。

(佐藤委員)
 学生を対象にした「視聴者のみなさまと語る会」には私も何回か出ています。テレビを持っていないという学生がいる状況の中でテレビの話をするので、なかなか話が合わないところもありますが、見ている学生さんはちゃんといまして、硬派のドキュメンタリー番組などを評価いただいていたりすることがあります。
 また、NHK放送文化研究所では、若い世代の調査をしています。先日研究発表を見に行ったところ、ニュースでも最近はヤフーではなく、ラインニュースをみんな見ていて、生活のしかたが変わり、ニュースに対する接触も変わってきているとのことでした。では信頼できるものは何かというと、NHKや新聞だと。そういう意味ではNHKの役割は非常にあるのではないかということを感じます。民放さんとももちろん一緒にやっていかなければいけないですが、NHKへの信頼感みたいなものを若い方のためにも大事にしなければいけないと思います。

(渡邊委員)
 経営委員会は12名の委員のうち女性が4名で、それから教育関係の委員が5名います。大学の先生や中高一貫教育の学校長をなさっている方もいます。経営委員会の時に皆さんから若い方の目線とか、あるいはテレビを持っていない人の目線のご意見というのは活発に出されています。
 経営委員会は確かに年齢の高い人がほとんどですが、案外柔軟な形でいろいろな切り口で検討もしているということだけ、お伝えしておきます。

 

 

第2のテーマ:放送について

(司会)
 事前アンケートの中で、地域放送についてのご意見、ご要望を多くいただきました。地域放送の取り組みについて、経営委員、執行部よりお答えします。

(佐藤委員)
 地域放送の取り組みということで、少しお話します。現会長の上田会長は、以前は監査委員として全国54の放送局を全部回りました。その経験から会長になってから、地方をもっと大事にしなければいけないのではないかということで、執行部の中に地域放送を考えるセクションもつくりました。その中で今変わってきているところだと思います。
 後で矢野局長から具体的な事例が出てくると思いますが、これまではどちらかといえば大きな局、拠点局や東京を中心に合理的に放送をつくっていこうという感じが流れとしてあったのですが、今はもっとより身近な地域放送を皆さまにお届けできる体制はどうかということが考えられています。例えば、いろいろなところで災害がありますけれども、地域局だけで災害報道が全部できなくても、ほかのところからすぐに応援が来る体制ができています。また、一部の業務をほかの局で、例えば編集だけを東京、大阪でやるということなども可能になっています。
 人数が少なくても、質のよい放送が出せるような仕組みもつくっています。皆さんも感じていらっしゃると思いますが、地域放送の枠というのもきっちりとり、全国放送だけが流れるのではなく、地域の話題を重点的に流すような取り組みもしています。

(矢野局長)
 新潟県は受信料の世帯支払率が95.7%という、本当に全国的に見ても極めて高いお支払いをいただいており、これはNHKに対する信頼と期待のあらわれだということで、新潟局としては、一生懸命に、新潟県内向けの地域放送を充実させていこうと考えています。
 今年度は、番組を充実させました。1つは、毎週金曜日の夜7時半からの「金曜夜 きらっと新潟」です。「NHKニュース7」と「チコちゃんに叱られる!」の間にある番組です。去年までは月2本程度の放送でしたが、今年度からはほぼ毎週放送することにしました。新潟局の限られた要員、予算でですが、本部で制作した新潟を扱った番組もうまく再編集したりすることで、「毎週金曜日の夜は新潟の情報が出ている」となるように今年度からしています。
 平日夕方の「新潟ニュース610」も充実を図りました。特にことし新潟県ではいろいろなことがありました。年明けに大雪で電車がとまったり、春には前の知事が突然辞めたり、いろいろな出来事、事件、事故がありましたが、これらを深く伝えるということを合言葉に放送しています。
 おかげさまで、「きらっと新潟」も「ニュース610」も、新潟県は民放さんも頑張っていますが、負けずに民放さんの上を行く視聴率をいただくことも多く、皆さまからのご支持をいただいているのかなと思っています。
 災害報道でもできるだけ地域放送の枠を増やし、細かい避難所の情報や、市町村ごとの風の強さ、雨の降り具合などを伝えるように、ことしからかなり強化しました。9月に台風24号が来ましたが、当初は夜中に新潟を縦断していくという予報があったので、あの日は日曜日でしたが、午後の早い段階から、合計10回以上、特設で新潟県内向けのニュース枠を設け、合計で3時間以上放送しました。幸い台風は上のほうにそれ、それもあったと思いますが、新潟県ではけが人がゼロでした。このような形で県民の皆さまの安全、安心を守ることも、NHKの最大の使命の一つということで、地域放送の充実を図っています。
 きょうのご意見をもとに、たゆまぬ改善を図っていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【会議参加者】
 「新潟ニュース610」で、地方議会の議長等の公費の不正使用について深く掘り下げて報道したことにつきまして、変わったなと、なかなかいいことをやるなと思いました。最近いじめで高校生が自殺した件がありましたが、その報道につきましても、民放各局に比べて、NHKの報道する時間、量と内容が深かったなと思います。逆にちょっと深過ぎて、NHKがこのいじめ問題について深く突っ込んでいるという背景は、どういうところにあるのかが知りたいです。

【会議参加者】
 この間の日曜日に新潟市長選挙がありました。春に知事選挙がありました。そのたびに開票速報で、大越キャスターの「サンデースポーツ2020」がつぶれています。例えば地上デジタルのサブチャンネルで「サンデースポーツ2020」をその時間帯は流すといった検討はできないでしょうか。

【会議参加者】
 日本にいると災害、天災は必ずあると思います。災害が起きてから準備していない人に限って、すぐ食料を買い占めたりします。例えばガソリンを常に満タンにしておくなど、ちょっとした防災のノウハウやヒントを紹介する番組があったらいいかなと思います。

(矢野局長)
 いじめに対しての報道は、NHKとしては先ほどの災害報道でも申しましたが、県民の皆さまの安全、命を守るということを最大の使命と考えていることから、今回のような本当に高校生の命が失われてしまったという案件、これを二度と起こしてはいけないという思いもあって、かなり手厚く力を入れて報道してきた次第です。亡くなられた生徒さんのお父さまのインタビューで、お父さまが学校側を責めているような部分については、ご意見をいただいたこともありますが、やはり本当に命を守るという視点から、今回この報道は続けてきたということです。
 サブチャンネルの利用についてもご意見をいただきました。市長選、知事選とも、かなり激戦となり、遅い時間までなかなか当確を打てなかったということもあり、急きょ「サンデースポーツ2020」に代えて、県域放送をしました。サブチャンネルの利用は、視聴者サービスに資すると判断した場合、ちゅうちょせずにやろうと考えています。これまでもスポーツ中継の延伸などで実施してきましたが、今後もさまざまなケースでサブチャンネルの活用を探っていきたいと思います。ご意見ありがとうございます。
 日ごろの災害の対策、備えのご意見もいただきました。おっしゃるとおりだと思います。これまでも随時、一口メモ的な防災対策を放送してきました。北海道で大規模停電があった時は「ニュース610」で、新潟でももし停電があったらこんな対策がありますよという企画を放送しています。何か起きた時は関心が高まるということで放送していますが、日常的にも忘れずにやっていきたいと思いました。ご意見ありがとうございます。

(荒木理事)
 災害報道は、被害を伝えるだけの報道ではなく、防災、減災報道という、できるだけ被害を少なくしていく報道を目指していこうと考えています。その中で、やはりふだんからの備え、例えば耐震補強や日ごろのさまざまな物品の備えなど、そういうものの必要性をきちんと伝えていけるように、番組の中や番組の間のお知らせ、ニュースも利用しながら、そういうことが伝えられていくように、これからも充実させていきたいと思っています。ありがとうございました。

(黄木理事)
 実は北海道で停電になったとき、テレビだけではなく、ラジオが、大変重要な役割を果たしました。ラジオにつきましては、実は目立たないのですが、月曜日から土曜日の午後1時前の5分間、ラジオ第1で「安心ラジオ」という番組を放送しています。土日にも再放送を夜にしていますけれども、これは防災、減災のノウハウなどを適宜放送している番組です。もしよろしければちょっと聴いていただければと思います。

(司会)
 「安心ラジオ」の放送は、私の先輩の野村正育アナウンサーがナレーションを担当しておりまして、ホームページにも放送の内容も上がっていますので、ご参考にしていただければと思います。

【会議参加者】
 地域の放送を充実させる方向に進んでいるということですが、私の感覚では一向に進んでいるようには思えず、むしろ民放のほうが充実してきていると思います。地域の時代と言われて久しいですが、NHK自体ももう少し地域に、財政的にも人的にも配分を増やして、地域の情報を県民が正しく理解する番組づくりをぜひお願いしたいと思います。

【会議参加者】
 災害時の多言語放送についてお聞きします。テレビ、ラジオ、それからインターネット配信も含め、災害時のニュースと、ふだんの災害の備えについて、例えば日本語だけではなく、英語、中国語、韓国語、スペイン語、ポルトガル語、アラビア語などの言語も同じように配信をしてもらいたいです。国内にはもう250万人以上の外国人の方がいますし、新潟県内は1万5,000人、新潟市内には5,000人の方がいらっしゃるので、同じように情報を公平に提供してもらえたらなと思います。
 また、NHKだからこそフェイクニュースではなく、正確なニュースを知ることができるという安心感も与えてほしいです。

【会議参加者】
 放送メディアは、絶大な影響力を持っています。それによって人が動き、地域が変わっていきます。地域や人や文化を育てる力を持っています。放送して終わりではなく、放送したところから、地域や人や文化がどう変わっていくかというところが重要だと思います。放送を通じて社会を育てていくという部分は目に見えない部分ですが、これからの時代に向けての取り組みを聞かせていただきたいです。

(荒木理事)
 地域の放送の充実についてのご意見をいただきました。NHKは東京の予算と地方の予算、それから人もほぼ半分ずつなのです。地方を重視していくというのは、NHKの一つの大きな重点目標でありますし、柱でもあります。
 私はこれまでもずっと言っているのですが、最近の日本の状況というのは、実は地方の中にこそあらわれています。例えば少子高齢化にしても、それから、年金・医療・保険などの社会保障の問題、農業の問題、漁業の問題、さまざまな日本の抱えている問題というのは、実は地方の中に顕在化しているということを深く感じております。そこを重視していくことが、私たちのニュースをより厚みのあるものにしていくのだということを繰り返し言っています。
 東京があって、東京から出す放送のために地方があるのではなく、地方の放送のために東京があるのだという、そういう発想の転換をしようよということを言っています。
 先ほど民放のほうが充実しているという厳しい意見もいただきました。今、地方重視のために、県域のローカルニュースというものを充実させていこう、さらに災害時もばくっとした全体像を伝えるのではなく、この河川のこの部分が危ないということをきちんと伝えていくような、きめの細かい情報、災害を自分のことと思ってもらえる報道をやっていこうとしています。それはテレビもラジオも、それからインターネットも通じて、きめ細かいものを出していこうということでやっています。
 災害時に県域ローカル放送を出すときには、いろいろつくり込んでつくらなくてもいいと、本当に必要なものを必要な時に、例えば白板でも何でも使って出すというような、そういうようなことでいいというふうに言っています。地域改革というのは今、経営の大きな3本柱の一つになっていますので、ぜひこれからも期待していただきたいと思います。
 それから、外国人向けの災害情報の発信については、今、私は国際放送の担当として力を入れております。国際放送は今、日本の国内ではインターネットで見られます。スマートフォンでも「NHKワールドJAPAN」のアプリがあり、それを入れると国際放送が、英語の放送ですけれども見られます。
 これに今年から地震の速報だとか津波の警報が英語で自動的に情報が出るプッシュ通知が入るようになりまして、11月から中国語でも速報が入るようになりました。これを少しずつ増やしていこうと考えています。
 それから、ラジオ第2放送では、ふだんは語学番組などを放送していますが、災害時には、ここで多言語ニュースを充実させようと思っています。先日の北海道地震の際は外国人向けに、このラジオ第2放送でさまざまな言語のニュースを流しています。
 また、初めての試みで、総合テレビの画面にQRコードで外国語放送のスマホのニュースの画面に行ける案内をしました。その結果、ふだんの数倍のアクセスがあったということです。
 日本に来る外国人は、4,000万人にもなるだろうという時代の中で、日本にいる外国の人たちに危険を察知して避難してもらうとか、災害に備えてもらうような情報をさまざまな手段を使って伝えていきます。
 それから、文化を育て、人を育て、地域を育てるという放送の役割をきちんと果たしてほしいというお話がありました。
 私は最近よく言うのですが、放送というと送りっ放しと書きます。でも、それじゃだめなんだということを一生懸命言っています。届けて、そこでどういうことが起こるのか、きちんとフィードバックして、それをとらえて次につなげていくというようなことです。先ほどお話した、若いNHK職員たちのタスクフォースの提言の中に、情報を届け切って社会的な基盤になっていくというのがありました。これは我々も非常に重要なことだと思いまして、情報をただ送るのではなくて、届け切ってそういう場をつくっていくという機能も、やはり重要なご指摘だと思いますので、これから実行していきたいと思います。

(矢野局長)
 去年、新潟局では「ディレクソン」という取り組みをしました。これは県内の若い視聴者の方に集まっていただき、荒木理事からあったように、一方的に私たちが放送を届けるのではなく、むしろふだん見ていらっしゃる方から、こんな番組をつくって新潟を元気にしたい、新潟の文化を盛り上げたいというアイデアをいただいて、若いディレクターやアナウンサーや記者が一緒になって、1つのテーブルを囲んで議論して、番組をつくるという取り組みでした。
 枝豆をつくっている若い農家の方のアイデアが採択されまして、一生懸命枝豆をつくっているのに、新潟の枝豆はおいしくて作付面積も一番なのに、どうも東京に行くと何だか評価されていないんだよねという彼の一言から、みんなでアイデアを出し合い、架空のドラマをつくったらどうかということになりました。新潟が独立宣言をして鎖国をして、新潟のいいものを、農産物もお酒も燕三条の食器も東京に出さないというふうにしたら、見直してもらえるのではないかというアイデアが出て、私たちNHKの職員だけだと、なかなかそこまでの大胆なストーリーは考えにくいのですが、視聴者の方からそんなアイデアをいただき、実際にドラマにしました。
 番組はご好評をいただいて、その後もアイデアを出してくださった方と交流が続いています。こうした活動はさらに力を入れてやっていきたいと思っています。

【会議参加者】
 公平と公正については、民放のある企業に絡む事件の報道を見ていますと、コマーシャル収入があるところは甘いと感じます。それに比べてNHK新潟では公正に真実を伝えている、信頼される情報じゃないかなと、信頼性についても裏打ちされているという意味で評価しています。ありがとうございます。
 フェイクニュースが世論をどんどんおかしくしていき、将来にわたっての社会不安となっています。NHKの力でそういったものを取り上げる番組を若い人も見るような形でもっとやっていかないと、非常に怖い世の中になるのではないかと思います。

【会議参加者】
 アナウンサーの方のアクセントが結構気になります。さすがNHKのアナウンサーだなという感じを、もう一度重要視していただきたいと思います。

【会議参加者】
 私はBS1で放送している「駅ピアノ」という番組が好きです。ナレーションがなくテロップだけの番組です。どうしても技術が発達すると4K・8Kのように情報の量を増やしたり、詳細にしたり、臨場感を重視したりとなりますが、むしろ「駅ピアノ」は情報を削り取って、行間を創造力に託したり、感性を刺激するような番組だと思っています。
 短歌や俳句など、そぎ落とした行間を生み出すのが日本の文化だとすると、技術が進歩しても、例えば4Kなら音だけにするとか、あえて白黒とか、加えるだけではなく、そぎ落として感性や創造力を刺激するような番組づくりはできないのかなと思いました。ぜひそういうのを増やしてほしいです。

【会議参加者】
 私はきょう大分から来ているのですが、熊本の地震を経験しました。その復興関連番組を地域放送でやっているのですが、それは全国になると、別の地方ではほかの番組をやったりしているので、実際に全国に放送するということが、あまりかなっていないなと思う時があります。また、せっかくNHKは4K・8Kのカメラがあるのだから、それをうまく活用しながら番組をつくれば、もっとその地域や災害を受けた人々のことも知ることができるし、番組を見た人がこの地域の今はどうなっているのだろうと興味を持てると思うので、もっと全国で放送してほしいなと思います。

【会議参加者】
 カメラワークについて意見します。「ガッテン!」で、専門家の方がボードを使ったりパネルを使ったり、あるいは模型を使ったりして説明されている場面がありますが、その時にカメラを突然その回答者のほうへ振ってしまうと、肝心のパネルが見えなくなってしまいます。それは視聴者に対してはあまりよいことではないのではと思いました。もし回答者の顔を映したかったら、小画面に回答者の顔を映すなど、工夫はできると思います。視聴者が、そのような説明や、料理番組だったら料理の先生の手元がずっと見られるような工夫をぜひしていただければと思います。

【会議参加者】
 障がい者の方とか、これから当然増えるであろう独居老人のことや、あるいは女性問題というと子供とか家族の話になるのですが、むしろ独身女性の問題であったり、子供を持てない女性の問題であったりとか、そういうところも吸い上げるような番組づくりをしていただきたいと思います。

【会議参加者】
 新潟放送局への要望です。例えば、新潟市長選は、保守が2つに分かれて非常に混戦だったわけですが、ゴールデンタイムのローカル放送で、4人の候補の論戦をやるとか、また、J2に落ちてしまったアルビレックス新潟について、ゴールデンタイムで1時間番組をやるとか、そのような力の入れ方があってもいいのではないでしょうか。

(荒木理事)
 公平・公正、フェイクニュースについて、非常に重要なご指摘をいただきました。今、既存のメディアに対する一種の不信感や、そういうものから離れていくというような風潮が、世界各国に広がっていると思います。例えば、アメリカ大統領選挙でもそうでした。アメリカで上院、下院の中間選挙が行われていますが、その中でもさまざまな、いわゆるフェイクニュースといったようなものが出て、それによる社会の分断も指摘をされています。
 ポスト・トゥルースといって、要するに自分が聞いて気持ちのいい情報のみ欲しいというような風潮が出てくる中で、NHKは公共放送として、さまざまな立場からさまざまな角度、さまざまな視点から見た複合的な情報をきちんとお伝えする。それで視聴者の皆さまに正しい判断をしていただくような材料を提供していくんだという立場に立ち、このフェイクニュースというものとわれわれは一線を画すというだけではなく、フェイクニュースに対してきちんとものを言っていくような、そういう報道を目指していきたい。それが公共放送の信頼を強め、回復していく手段だと思っていますので、そうしたことに取り組んでいきたいと思っています。
 それから、アナウンサーのアクセントについては、最近よくご指摘を受けます。アクセントがおかしいのではないか、言葉の使い方が違うんじゃないか、それから誤読、そういう読み方はしないでしょうということもあります。そういうご指摘をいただいていますので、きっとアナウンスルームでもしょっちゅう言われていると思いますが、さらに徹底していきたい。
 われわれが子供のころも、NHKアナウンサーの話しているように話すのがいいと言われていましたが、やはりお手本になるようなものになっていければと思います。
 また、「駅ピアノ」を例にいただいたご意見も、これも非常に重要な問題です。番組をつくるときには、あれもこれもといろいろなものを盛り込むよりも、そぎ落としていくという作業は、非常に重要だと思っています。
 今、総合テレビでも「ノーナレ」というナレーションのない番組もつくっています。NHKの番組をいろいろな世界的なコンクールに出すと、NHKのドキュメンタリー番組はナレーションが多過ぎると指摘を受けます。私の個人的な考えですが、日本の視聴者は非常に質が高いと思うんです。だからより多くの情報が欲しいということで、ドキュメンタリーだとついついコメントが多くなって、説明が多くなっていく。それは世界的な風潮から見ると、説明が多過ぎるとも言われます。ですから、今「ノーナレ」という、ナレーションをなしにして、映像と音声だけで伝えていくという手法の番組も制作しています。ご指摘ありがとうございました。
 それから、地方の番組をもっと全国でということですが、これも今、県域ローカル番組やニュースを充実させていく中で、非常にいい地方の番組というものができてきているので、できるだけ全国放送でやるような枠をつくっていこうということを考えています。
 地方に日本の課題というのが集約されているという部分もありますので、災害報道も含め、そういう取り組みをしていきたいと思います。
 カメラワークの演出については、「ガッテン!」の担当者にそういうご指摘があったことを伝えておきます。どういう経緯でそうなったか、またこれからそういうことのないようにきちんと伝えていきたいと思っています。
 少数派の意見を吸い上げる番組づくりというご意見も、本当にそのとおりだと思います。社会的に弱い立場にいる方の意見、主張、要望、状況というものをきちんと伝えていくということが、公共放送の役割だと思いますし、先ほど佐藤委員のお話からもありましたように、民主主義の基盤ということから考えると、やはりこの少数意見をきちんと尊重していくということが、我々の役割だと思います。いろいろな立場にいらっしゃる方の意見をきちんと取り上げていくということも、これから目指していきたいと思っています。

(矢野局長)
 地域放送についてご意見をいただきました。選挙報道で大事なのは、事前に、有権者の判断材料になるように、きちんと候補者の訴えを伝えるということだと思っています。今回の市長選も大きな番組にはしなかったのですが、夕方の「ニュース610」で1週間通して4人の候補者の声を毎日10分以上伝えるということをやりました。合わせると1時間ぐらいの番組サイズになるのですが、ご意見いただいたように、もっとどーんと目立つ特集番組でというアイデアもあろうかと思いますので、今後の参考にさせていただきます。
 それから、アルビレックス新潟ですが、盛り返してきて、J1復帰というような機運が出てきた際には、ぜひ特集番組をやらせていただきたいと思います。今シーズンの低迷している時も地道に番組を続けてきていますので、選手にも頑張ってもらって、「特番をやりたい!」という思いはわれわれもあります。ぜひご支援ください。

(司会)
 アナウンサーのアクセント等についてお話しさせていただきますと、やはり毎年若い人がアナウンサーとして入ってきたり、職員のアナウンサーだけではなくて、契約のキャスターの人たちにも番組にどんどん出演してもらっていますので、例えば新人の研修については記者やディレクターなどに比べて、アナウンサーのみ1か月ほど長い期間をとってトレーニングをしたり、半年後、2年目、3年目の研修という形でトレーニングをしたり、職員以外の契約キャスターについても、研修の機会を設けるようにしています。
 それから、皆さまのご意見やご指摘をきちんと受けとめて対応していくということで、例えば東京のアナウンス室では「苦言・金言視聴者の声から」という形で、ご意見をいただいたものの中から情報共有するものについて回したり、NHK全体の会議でも放送倫理委員会で「みなさまの声」としてまとめられていますので、そうした資料で情報共有をしたりするようにしています。
 日本語の使い手として、NHKのアナウンサーへの厳しい視線やご期待を感じていますので、しっかりとご指摘や期待を受けとめながら、アナウンスメントを磨いていきたいと思っています。
 それでは、最後に経営委員から全体を通して一言申し上げます。

(渡邊委員)
 きょうは本当にありがとうございました。私もやはり直接お話をして、皆さんのお話を聞くというのが、経営委員として仕事をする上で、一番大切なことだと実感しました。さまざまなご意見やご希望、ご指摘を真摯に受けとめ、これからに生かしていきたいと思います。本当にありがとうございました。

(佐藤委員)
 きょうは限られた時間でしたが、皆さまの愛にあふれたご意見をいただきました。95%の受信料支払率を超える愛をすごくいただいたような気がします。
 皆さまのご意見は、経営委員会の中でも報告して、議事録にもきちんと載りますので、またぜひご覧いただければと思います。皆さまのご意見をきっちり伝えて、よりよいNHKのために頑張りたいと思います。どうもありがとうございました。

 

 

<視聴者のみなさまと語る会in新潟>参加者当日アンケート

※全表の単位はすべて人数

質問1:性別

男 性 女 性
33 12

質問2:年齢

10代 20代 30代 40代 50代 60代 70代 80代 未回答
1 0 0 2 12 15 9 4 2

質問3:今回のイベントを何でお知りになりましたか(複数回答)

放送(テレビ) 放送(ラジオ) ホームページ 新聞 メール Twitter その他
13 0 11 4 20 0 0

質問4:今回のイベントに参加していかがでしたか

大変満足 満足 ふつう 不満 大変不満 未回答
15 24 1 2 0 3

質問5:印象に残ったコーナーはどこでしたか(複数回答)

経営重要事項 経営全般 放送 講演会 特になし 未回答
6 7 13 26 0 5

質問6:NHK経営委員会の仕事を知っていましたか

よく知っていた 知っていた 知らなかった その他
2 21 22 0

質問7:今回のイベントに参加して、NHK経営委員会の活動について理解が深まりましたか

深まった 変わらない わからない その他 未回答
35 8 0 0 2

 

 

<アンケートに寄せられた主なご意見>

 

経営全般について

  • 公平・公正は民主主義の根源。大切に、NHKの放送を続けてほしい。
  • NHKには大いに期待している。
  • 経営委員・理事ともに前向きに取り組んでいるのがよくわかった。
  • 民放との差別化をしてほしい。
  • 受信料を支払っていない人にスクランブルをかけることに問題はない。
  • インターネットでの見逃し配信をぜひ実現してほしい。

 

放送について

  • 4K・8Kの長岡花火の番組に期待している。
  • 地方発の番組を全国でも見られるようにしてほしい。
  • 「新潟610」の大ファン。その気持ちをお伝えしたく参加した。
  • アナウンサーの言葉の乱れが気になる。
  • 東京オリンピック・パラリンピックに向けて、スポーツアナウンサーの育成に力を入れてほしい。
  • 社会的弱者の意見も吸いあげる努力を心がけてほしい。
  • ラジオ番組の充実をさらに強化してほしい。
  • 気象情報の「警報」「注意報」の位置を工夫して、全体の傾向をつかみやすくして欲しい。

 

運営・その他について

  • さまざま意見をお聞きし、丁寧な回答で理解を深めることができた。
  • 10代の参加者として意見を伝えられてよかった。
  • 経営委員、執行部だけでなく、参加者も熱心な方々ばかりで感心した。
  • NHK側の話が長く、話を聞かされる会になってしまっていた。
  • 講演会がとても良かった。来たかいがあった。
  • 講演会目当ての参加だったが、なぜ公共放送が必要なのかを気づくことができたので、語る会に参加できて良かった。
  • 経営委員や理事にしっかり意見を受け止めてもらえて良かった。
  • アナウンサーの司会進行がよかった。