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2019年度 第6回
視聴者のみなさまと語る会in盛岡
(2019年11月9日(土))

 

<会 合 の 概 要>

 「経営委員会による受信者意見聴取」の2019年度第6回は、盛岡放送局で実施し、「公共放送の役割」などNHKの経営全般に関すること、「NHKの全国放送や地域放送のあり方」など放送に関すること、の2つのテーマについて、公募による25人の視聴者から意見を聴取した。

 

<会 合 の 名 称>

視聴者のみなさまと語る会in盛岡

 

<会 合 日 時>

2019年11月9日(土) 午後1時〜3時

 

<出  席  者>

〔参 加 者〕

視聴者の皆さま25人

〔経営委員会〕

堰八 義博  (委員)

 

村田 晃嗣  (委員)

 

渡邊 博美  (委員)

〔執 行 部〕

堂元 光   (副会長)

 

中田 裕之  (理事)

 

大久保 嘉二 (盛岡放送局長)

〔 司 会 〕

佐藤 龍文   アナウンサー

 

< 会    場 >

 盛岡放送局 第1スタジオ

 

< 開 催 項 目>

 以下のとおり進行した。

 

1 開会あいさつ

2 経営委員による説明

  協会の基本方針、その他協会の運営に関する重要な事項について

3 意見の聴取

 (1) NHKの経営全般について

 (2) NHKの放送について

4 閉会あいさつ

 

 「視聴者のみなさまと語る会」終了後、「『チコちゃんに叱られる!』の舞台裏」と題して、西ヶ谷力哉プロデューサーによる講演会を開催した。

 

<概要・反響・評価>

  • 公募の結果、ホームページを通じて109人から参加の申し込みがあり、抽選で44人に参加案内を発送した。

  • 当日は25人が来場し、「公共放送の役割」などNHKの経営全般に関すること、「NHKの全国放送や地域放送のあり方」など放送に関すること、の2つのテーマについて意見や提言を募った。

  • 参加者からは、「受信料」「スクランブル放送」「常時同時配信」などについて、多岐にわたる意見や提言が寄せられた。

  • 語る会終了後に行ったアンケートには、25人から回答があった。主なアンケートの結果は次のとおり。

    <参加者の満足度>
     「大変満足」10人、「満足」12人、「普通」1人、「不満」0人、「大変不満」0人(記入無し 2人)

    <経営委員会の仕事について>
     「今回のイベントに参加して、経営委員会の活動について理解が深まりましたか」との質問に対し、「理解が深まった」との回答が22人からあった。


◆協会の基本方針・重要事項の説明

(渡邊委員)

 私は経営委員としてNHKに関わっていますので、NHKの運営がどのような体制で行われているのか、説明させていただきたいと思います。
 NHKの経営委員は、放送法という法律に基づき、国会の同意を得て、内閣総理大臣から任命されています。さまざまな分野や地域から12人の委員が選ばれています。
 経営委員会では、経営の基本方針や、予算、事業計画などを議決するほか、NHK会長の任命も行います。会長や副会長、理事らが、決められた方針に沿ってNHKを運営できているかどうかをチェックすることも、私たちの仕事です。経営委員の中から監査委員が任命され、経営委員と会長以下の役員の職務の状況を確認しています。
 私たち経営委員は、NHKの経営にあたり、視聴者のご意見も踏まえ、適切な判断や検討を行うことが求められています。そのため、放送法に基づき、きょうのように、皆さまから直接ご意見を伺う会合を各地で開いています。
 NHKは、皆さまからいただく受信料で運営されています。税金でも広告収入でもなく、皆さまに公平に負担していただく受信料だからこそ、特定の利益や意向に左右されることなく、公共放送NHKとしての役割を果たすことができます。こうした考えから、テレビなどをお持ちの方はNHKと受信契約をいただくことが法律で定められています。NHKでは、受信料の公平負担の徹底に向け、支払率の向上を目指した努力を続けています。
 まず、1つ目。受信料の値下げを実施します。10月に消費税率の2%引き上げが行われましたが、受信料は値上げすることなく、増税前の料額に据え置きました。来年10月から、地上契約、衛星契約、それぞれ2.5%値下げをしますので、トータルで2018年度の受信料収入見込額の4.5%程度の値下げとなります。
 また、受信料のご負担を減らすため、経済的に厳しい状況にある学生への免除などを実施しています。10月から、新たにテレビなどを設置された方には、設置した月の受信料の支払いを無料にしました。ぜひNHKの活動について、より深く知っていただき、ご理解くださいますようお願いします。
 次に、経営計画についてです。NHKがどのような放送の未来を描き、皆さまにとってどんな存在でありたいと思っているのか、放送やインターネットでどのようなメディアを目指していくのか、それが書かれたものが「NHK経営計画」です。これは経営の基本方針で、私たち経営委員と執行部が話し合いを重ねてまとめたものです。ことしは3か年計画の2年目に当たります。計画を実行していくにあたって私たちが取り組む重点方針5つは、「“公共メディア”への進化」「多様な地域社会への貢献」「未来へのチャレンジ」「視聴者理解・公平負担を推進」「創造と効率、信頼を追求」です。
 NHKのさまざまな取り組みについて、ビデオにまとめていますので、ご覧ください。
 (ビデオ「“公共メディア”NHK」にてNHKの活動を紹介)

 このように、NHKは、視聴者の皆さまのそばで役に立ち、情報の社会的基盤としての役割を果たす「公共メディア」への進化を目指しています。テレビ、そして、インターネットの時代へと、メディアをめぐる環境は大きく変化しています。NHKは現在、スマートフォンのアプリなどで、ニュース・防災や、国際放送、ラジオなどのインターネットサービスを提供しています。
 さらに、現在、総合テレビとEテレの放送をパソコンやスマートフォンでいつでもどこでもご覧いただける、常時同時配信の実施を目指して、その実施基準の認可の手続きを、総務省に対して行っているところです。
 本日、皆さまからいただくご意見は、今後の経営委員会の活動の貴重な参考にさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

 

 

≪視聴者の皆さまからのご意見とNHK側からの回答≫

 

第1のテーマ:NHKの経営全般について

(司会)
 はじめに、事前アンケートで受信料の公平負担の徹底についてのご意見、ご要望をいただきましたので、経営委員、執行部よりお答えします。

(村田委員)
 NHKは、皆さまからいただく受信料をもとに、さまざまな活動を行っています。民放と異なり、全国にあまねく放送を提供する義務を負っています。災害などが起こった際には、多くの方々からNHKの報道に信頼を寄せていただいています。公平に幅広く受信料を負担していただくことが、公共メディアとしてのNHKにとって大変重要なことだと思っています。
 受信料制度については、さらにご理解をいただくことができるよう、訪問や文書による活動も進めていますし、訪問以外の形でも受信料を納めていただけるよう、いろいろな制度を検討しています。われわれ経営委員会としても、こうした執行部の取り組みの状況を注視して、公平な負担の徹底に向かって、さらに適切にサポートしていきたいと考えています。

(中田理事)
 公平負担の徹底のための具体的な取り組みについては、お客様を訪問して、直接、受信料の意義や公平負担の必要性をご説明し、支払いをお願いすることを活動の基本としていますが、なかなかお会いできないお客様もいらっしゃいます。特に大都市圏では、オートロックマンションやタワーマンションが増え、マンションの入り口から中に入れず、直接、お住まいを訪ねられないケースも増えています。その際は、郵便受けに受信料に対するご理解を深めていただくための資料とお支払いのお願い文書を投函する、ポスティングと言う活動を行っています。
 また、引っ越しをして、住所変更の手続きをしていただけないお客様には、転居の情報を持つガス会社や郵便局などと連携して、住所の変更の手続きと引き続きのお支払いをお願いする取り組みも行っています。
 さまざまな手を尽くしてもどうしてもお支払いいただけないお客様に対しては、民事手続きも行っています。簡易裁判所に支払い督促の申し立てを行い、誠心誠意ご説明をしても、なお、お支払いいただけない場合は、裁判を提起しています。
 一昨年の12月に、最高裁判所で、受信契約の締結に応じていただけないお客様に受信料の支払いを求めた裁判の判決が出て、受信料制度は合憲で、受信料契約の締結は法的な義務であるとの判断が示されました。引き続き、受信料の公平負担の徹底に努めてまいります。

【会場参加者】
 この数か月、受信料の公平負担の手段として、スクランブル放送を推す声が聞かれます。NHKの公式ホームページには、スクランブル放送について「NHKが担っている役割と矛盾するため、公共放送としては問題があると考えます」「放送法がうたう『健全な民主主義の発達』のうえで問題があると考えます」と、否定的な見解が掲載されています。
 この考えは、おそらくNHKの執行部のものだと思いますが、常日頃から「皆さまのNHK」と標ぼうされているのですから、執行部が決めつけるのではなく、受信料を支払っている視聴者にアンケートを取るなりして、皆さまの声を聞いたうえで決めていただきたいと思います。もし、アンケートを取ることすらしないのであれば、皆さまのNHKと標ぼうするのにふさわしくないのではないのか、と考えます。

【会場参加者】
 Eテレの予算が621億円となっていますが、受信契約および受信料の収納には770億円を支出しています。Eテレの予算総額よりも受信料および受信料の収納の額が多いとは、納得しがたい思いです。Eテレは非常に重要だと思うので、逆でもよいのではと思うぐらいです。営業経費の削減について、創意工夫をできないものでしょうか。

【会場参加者】
 きょう新聞で見たのですが、総務大臣から、常時同時配信について、「NHKの肥大化」について言及があり、今後検討が必要との発言があったようです。肥大化とは民放と比較してのことか、われわれはどういう見方をすればよいのか、教えていただきたいと思います。

(村田委員)
 確かに、視聴者の皆さまにさまざまなご意見を幅広く伺うのは、とても重要なことです。このような場も、規模は小さくとも皆さんの声を直接承る機会ですし、それ以外にも、視聴者のご意見を伺うさまざまな機会を持っています。
 スクランブル放送についての否定的な見解というのは、執行部や経営委員会の考えというよりは、放送法に規定されていることです。最高裁の判決でも出ているように、放送を受信できる設備をお持ちの方は、受信契約を結ぶ義務があります。NHKとしては、皆さまのご意見をさまざまな形で聞く努力をしつつ、法律の枠組みの中で運営していることを、ご理解いただければと思います。

(中田理事)
 放送法第64条では、「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置したものは、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない」と定められています。受信料は、NHKが公共放送としての使命を果たすために必要な財源として、放送を視聴しているかどうかにかかわらず、NHKの放送を受信することのできる受信設備、テレビを設置した人に負担を求める特殊な負担金だと考えられています。
 NHKは、特定の利益や視聴率に左右されず、社会生活の基本となる確かな情報や豊かな文化を育む多様な番組を、分け隔てなく、あまねく提供する役割を担っています。また、災害時には大幅に番組編成を変更し、正確な情報を迅速に提供するほか、教育番組、福祉番組、あるいは古典芸能番組など、視聴率だけでは計ることのできない番組も、数多く放送しています。
 スクランブル放送に対する考え方については、NHKのホームページにも記載していますが、スクランブルをかけて受信料を支払っていない方が番組を視聴できないようにする方法は、NHKに求められている公共の役割と矛盾するため、公共放送にはふさわしくないと考えています。ただ、いただいたご意見については、きちんと受けとめたいと思っています。
 Eテレとの比較で、営業経費が高過ぎるのではないかとのご意見をいただきましたが、受信料は、Eテレだけで使っている訳ではないため、Eテレの予算と営業経費を直接比較することにはならないかと思います。770億円をかけて受信料の総額7,000億円を集めているということです。
 ただ、おっしゃるとおり、Eテレはとても大切ですし、営業経費を削減することも非常に重要なことだと思っています。受信料は80%以上の方に支払っていただいていますが、残りの方に支払っていただくためのコストが、かなりかかってしまいます。これを少しでも減らすように、日々、努力しているところです。
 NHKの肥大化についてご質問がありましたが、NHKはご承知のとおり、1つの波だけではなく、テレビだけでも、地上波の総合テレビとEテレ、衛星放送のBS1とBSプレミアムがあり、さらにBS4K、BS8Kがあります。ラジオも3波あり、民放とはかなり事業規模が異なります。単純に民放の売り上げとNHKの受信料収入を比較するのは難しいのではないかと思います。
 10月に受信料の実質値下げを行いましたが、さまざまな努力をして既存の業務を見直すほか、皆さまのご負担をなるべく減らしつつも、サービスは十分届けられるように、日々、努力をしていることをご理解いただければと思います。

【会場参加者】
 NHKは公共放送であり、言わば税金に近い形でお金を納めていますが、私は、内容がそれにふさわしければ、何も問題はないと思っています。教養番組としても非常に立派で、NHKでなくては制作できない番組があることも事実です。
 しかし、先ほど理事から説明のあった、受信料の支払率が80%というのは、本当でしょうか。今、話題を呼んでいるN国党の立花孝志さんの動画を、3日ほど連続で見たのですが、支払率は80%ではないとの話をされていました。
 NHKには、7,000億円ものお金が、毎年、安定的に入ってきています。民間の会社は、利益を上げるために大変な苦労をしていますが、NHKは、何の苦労もなく、しかも最高裁判所のお墨付きまでもらって7,000億円が入ってきます。お金の使い方に不正は出てこないのでしょうか。
 かつて、紅白のプロデューサーがお金を横領した事件がありました。当初、テレビや新聞では2,000万円の横領と発表されていましたが、その後、NHKの内部調査によって、金額は2億円であったことが判明しました。他にも、不正を行った人が複数いたことが明らかになったと聞いています。今後、同様のことが起きないよう、きちんとした監査体制ができているのか、お伺いしたいと思います。

【会場参加者】
 長崎出身で、単身赴任でこちらに来ています。ここ何年かあちこち転々としていますが、NHKはどこに行っても大体同じような番組が流れるので、安心して見ています。
 先日、「NHKオンデマンド」の登録をしようと思いましたが、「見放題パック」は、「見逃し番組」が1,000円弱で、「特選ライブラリー」も合わせると2,000円弱かかります。受信料も支払っているのに、過去の放送を見るのにまたお金がいるのかと思うと、登録するかどうか悩みます。私のような者が踏みとどまってしまうと、利用者の増加が遅くなると思います。例えば1,000円ぐらいでしたら、私もすぐに登録して、家族の分も支払って、「見放題」によい番組があれば家族にも勧めて、みんなでオンデマンドを楽しむと思います。
 これからはそのような時代になると思うので、リアルタイムの放送だけでなく、オンデマンドを広げるために、料金を少し安くして、もっとアピールをしたらよいのではないかと思います。

(渡邊委員)
 先ほど、不正防止のための監視体制についてのご意見がありました。以前は、NHKグループで不正やパワハラなどが起きていました。グループ全体で約1万7,000人の組織ですので、残念ながら今も全くないという訳にはいきませんが、何かあった時には、たとえ小さなことでも、すぐわれわれ監査委員に、内容や処分に関する連絡が来るようになっています。
 今は、会計監査も含めて、不正を組織の中で発見できるように、あるいは再発しないように、かなり厳しい形で取り組みが進められています。われわれ民間の人間が監査委員になっているのは、NHKの物差しではなく、民間や一般の物差しで見る役割があるためだと思って、われわれもはっきり意見を申し上げています。
 また、支払率に関しては、全国の平均が約80%で、高いところも低いところもありますが、秋田県が日本で一番高く98%で、岩手県など東北は、全国の中でもおしなべて高くなっています。平均が約80%でないと7,000億円の収入にはなりませんので、確かな数字だと思います。

(村田委員)
 私どもNHKは、受信料として皆さまから7,000億円という大きなお金をいただいています。先ほど、営業経費が770億円との話がありましたが、努力せずに7千何百億円をいただけることはなく、お支払いいただくためにさまざまな営業努力をしているところです。
 例えば、支払率70%を80%まで引き上げるより、80%を85%に引き上げるほうが大変ですし、85%を90%に上げるのはさらに大変なことです。限界効用がありますので、パーセントはそう簡単には上がっていきません。さらにたくさんの方により公平にご負担いただくためには、いろいろな営業努力を重ねる必要があります。
 770億円の営業経費は適当か、もっとコストを削減すべきでは、とのご意見もあろうかと思いますが、いろいろな方法で、より多くの方々にお支払いいただく努力を行っています。
 さらに、日本全体の問題として、今後、急速に人口が減り、世帯数も減っていきますので、いつまでも今の世帯数と人口を前提にした予算で運営していく訳にはいきません。長期的な観点から計画的な取り組みを行っていることを、ご理解いただければと思います。

(中田理事)
 NHKオンデマンドについて、もともと番組は受信料でつくっているのだからもっと安くできないのか、と思われる方もいるかもしれません。しかし、インターネットで番組を配信すると、放送とは別に、出演料や音楽の使用料などの放送権料が発生します。また、配信に係る設備も放送とは別になりますので、設備にも費用がかかります。
 料金を下げれば皆さんにもっと利用していただけると思いますが、一方で、たくさん利用していただかないと料金を下げられないとう事情もあります。インターネットがだいぶ普及してきていますが、まだすべての方が利用しているわけではありません。今の状況では、設定している料金が採算ぎりぎりのラインですので、ぜひご理解をお願いします。

【会場参加者】
 放送法第64条に基づいて運営していることは分かりますが、スクランブル放送を唯一の公約として国会で議席を獲得した政党もあります。1議席や2議席で法律が変わるわけではありませんが、それも民意の1つとして取り上げていただきたいと思います。
 また、2017年12月の最高裁で、NHKの受信料について合憲であるとの判決が下されていますが、その中で、憲法でもうたわれているとおり、契約についてはNHKと居住者の間で合意が必要であるとされています。どうしても合意が得られなかった場合は、NHKがその契約しない居住者を提訴して、裁判所がNHKとの契約を命じて初めて契約が成立するといった内容の判決が出ていますので、それらを踏まえたうえで、受信料の徴収を進めていただきたいと思います。

【会場参加者】
 今後、人口が減少して5,000万人になったり、世帯数が3分の2になったりすると、たとえ受信契約が100%となっても、今の7,000億円の収入は見込めなくなると思いますが、その時、NHKは規模を小さくするのでしょうか、それとも受信料を上げるのでしょうか。2030年なり、2050年なりといった先の時代に、番組は、どれぐらいの予算をかけ、質を保っていこうと考えているのでしょうか。

【会場参加者】
 先ほど、インターネットでの同時配信についての話がありましたが、きょうの新聞によると、それに少し「待った」がかかったようです。このインターネット同時配信のシステムと、そこに何を求めているのか、狙いは何かといったことがよく分からないので、説明をお願いします。

(渡邊委員)
 N国党の件については、おっしゃるとおりです。主義主張はいろいろとありますが、国政選挙に出て、かなりの割合の票を取って、比例代表で当選されましたので、今後は、公の場、国会で意見が出されることになります。執行部も、われわれ経営委員も、当然、耳を傾けて、真剣に聞かなくてはいけないと思っています。
 最高裁の件については、たとえ最高裁で合憲との判決が出たからといって、それを印籠を示すように使うといったことは考えていませんし、今後、より丁寧に、視聴者の皆さんとよい関係をつくるための努力をしなくてはいけないと思っています。
 訪問員も、最近、マナーやエチケットの研修を行い、苦情の数も以前の半分ぐらいに減っていると聞いています。ただ、まだ苦情をいただいているのも事実で、ゼロに近づけなければならないと言っているところです。
 最後に、今後、世帯数が減っていきますが、いま皆さんにお示ししている経営計画は、2018年から2020年までの計画です。この後の3年間は、来年値下げを行うこともあり、予算規模も7,000億円より下がる可能性があります。今期は赤字になるという話で、それに伴い、今後、規模も含めて再検討されるのではないかと思います。

(村田委員)
 スクランブル放送や受信料にも関係しますが、放送法はなかなか複雑な法律で、これまで何度か改正されています。
 今は、科学技術がどんどん進んで、常時同時配信のようなことも可能になってきました。単身世帯の方が増えて、昔なら、訪問員が訪ねたらどなたかが家にいて、受信料について説明することができましたが、今は、訪問してもご家庭にはどなたもいらっしゃらないことが多いといったように、われわれのライフスタイルも変わってきています。
 放送法に限らず、いろいろな法律の改正が、社会や科学技術の変化のスピードの速さに対応しきれないところがあろうかと思いますが、変化を見据えながら、改正できるところや見直しを検討すべきところは、国会を中心に議論をされるべきであろうと思います。
 また、世帯数や人口の減少については、今、日本の人口は1億2,500万人ですが、2046年あたりに1億人を切るとのことで、あと、30年弱ぐらいで2千5、6百万人減と、大幅に減少することになります。
 一方で、楽観はできないものの、科学技術の発展によって、経費が節減できたり、今まで人が行っていたものを簡単な機械で操作できるようになったりといったことが期待されます。NHKの業務も、より少ない人数、より少ない労働力でできるようになるかもしれません。そのような科学技術の進歩を念頭に置くと、人口の減少に伴って収入が減り、NHKの番組の質が下がるのではという懸念には、ある程度、歯止めがかけられるのではないかと思っています。

(堰八委員)
 NHKは、平時は皆さんにいろいろな番組で楽しんでいただいていますが、災害時には、最初にNHKのテレビをつけていただく、あるいはラジオを聴いていただく方が非常に多くいらっしゃると承知しています。残念ながら受信料をお支払いいただいていない方でも、災害時にそういった情報を得ることができます。公共放送として、どんな時も、全国あまねく、正しい情報を提供していく使命がNHKにはあると思います。
 一部の国では、税金のように支払い義務を課して、支払っていない方には、罰金などの刑罰が課されているところもありますが、NHKは、皆さまにご理解のうえお支払いいただく受信料を財源とし、国家権力に左右されない不偏不党の精神に基づいて、番組を提供しています。引き続きご理解いただき、受信料の支払率を引き上げていきたいと考えています。

(中田理事)
 常時同時配信のねらいは何か、とのご質問をいただきました。今はインターネットが普及し、技術の進歩により、インターネットで普通に動画を見られるようになっています。今までは、それぞれのご家庭に置いてあるテレビでしか番組を見られなかったのが、今は、スマートフォンがあれば、技術的にはどこでもテレビ番組が見られます。
 放送法では、これまでテレビと同じ番組を常時インターネットで流すとことは、NHKに認められていませんでしたが、放送法が改正されましたので、今後、可能になってくると思います。
 先日は千葉県で、台風による停電によりテレビが見られなくなりました。また、昨年は、北海道で地震の際にブラックアウトが起きて、全道でテレビが見られない状況となりました。そのような災害時に、スマートフォンがあればテレビと同じ情報を得られるというのは、非常に意味があります。
 今、NHKは、インターネットで常に同時配信を見られるだけでなく、見逃し配信として、放送した番組を時間差で見られるように申請を行っています。いつでもどこでもテレビの映像を見られることになりますので、お客様にとっては非常に利便性が増すのではないかと思います。それが常時同時配信のねらいです。

【会場参加者】
 私は会社員で、なかなか夜7時や9時のニュースまでに自宅に帰ることができませんので、ニュースが見たい時は、ニュースアプリや、「らじる★らじる」の聞き逃し配信などをよく利用しています。今後も引き続き、そういったサービスを拡充してほしいと思います。
 インターネットの常時同時配信は非常に便利だと思うので、早く実現しないかと楽しみにしています。花巻では、町なかはよいのですが、例えば、旧東和町、大迫町などの山あいのところでは、各家庭に光回線が来ていません。やっとADSLが来ているだけといった世帯がかなりあります。そういったところでは、映像がスムーズに動かず、動画を見ることができません。そのような世帯へのケアをどう考えているのか、お聞きしたいと思います。

【会場参加者】
 4K・8K放送についてお尋ねしたいのですが、正直なところ、素人の目には、違いがよく分かりません。4K放送が8K放送に包含できるような内容であれば、経費節減の観点からも、上位の8Kだけでよいのではないかと思います。

【会場参加者】
 私は、現在80歳です。スマートフォンを持っているのが普通の時代になってきていますが、われわれの年代では、スマートフォンもパソコンも持っていない方がたくさんいます。今は、役所などでもホームページを利用するよう案内されることが多く、その必要性は痛感していますが、対応できないのが現状です。そのような高齢層への対応をどのようにお考えでしょうか。

(中田理事)
 放送は、放送法に義務づけられた必須の業務で、NHKには、全国あまねく放送を届ける義務があります。しかし、インターネットサービスは、放送を補完する業務という位置づけですので、NHKが受信料を使って地方に光回線を延ばすことはできません。これから、インターネットや光回線がさらに普及して、5Gの時代になっていくと思われますので、地方でも活用しやすくなっていくのではないかと思います。
 地域サービスとして、地域放送をテレビやラジオでどう届けていくかというのは、経営の大きな課題と認識していますので、しっかり検討していきたいと思います。
 4Kと8Kの違いについては、テレビには、デジタルカメラの画素数に当たる走査線というものがあり、それがたくさんあればあるほど、画質がきめ細かくなり、きれいな映像が映ります。例えば、4Kは2Kに比べて4倍の画質となり、8Kは4Kに比べてさらに4倍の画質となります。8Kは2Kと比べると、4×4で16倍の画質となります。
 8Kだけ、または4Kだけをご覧になると、違いはあまり分からないかもしれませんが、8Kと4K、2Kのテレビを同じ映像で比べると、明らかに違います。8Kは、大画面でも非常に迫力や臨場感がある映像で、音響もすばらしく、まるでその場にいるような没入感や臨場感を得られます。
 盛岡放送局の入り口から入って突き当たりのスペースに、8Kテレビで22.2チャンネルの音響設備が整った視聴設備がありますので、ぜひ体験していただければと思います。受信機は、おっしゃるように今は値段が高いのですが、たくさん作れば値段は下がっていきますので、いずれはご家庭でお楽しみいただけるような時代がくると思います。
 また、8Kは、テレビ以外の分野でもいろいろと活用されています。例えば医療の分野では、人間の目よりもよく見えると言われる8Kの映像を見ながら、非常に細かい手術をロボットで行うといったことが可能になってきています。高画質にはさまざまな可能性があります。NHKは技術開発の責務も負っていますので、引き続き研究を進めていきたいと思います。
 それから、高齢者がスマートフォンやパソコンを持っていないことをどう考えるのかというご質問がありました。おっしゃることは非常によく分かりますが、先ほど申し上げたように、インターネットはあくまでも放送の補完という位置づけであって、インターネットを活用することで放送のサービスを下げることはありません。スマートフォンやパソコンを持っていない方には、引き続き、放送でのサービスをお楽しみいただきたいと考えていますので、ぜひご理解をお願いします。

(大久保盛岡放送局長)
 盛岡放送局のロビーに、4Kと8Kのモニターを並べて置いています。また、入り口を入って突き当たりの「おでんせプラザ」に、8Kで22.2チャンネルの音響を組んでいて、平日は公開しています。たまに、見学対応などで閉めていることもありますので、事前に確認のうえでお越しいただければと思います。
 また、東京開催の大相撲については、8Kで中継しています。千秋楽や14日目は土日でも公開していますので、よろしければぜひお越しいただき、8Kを体験していただければと思います。

 

 

第2のテーマ:NHKの放送について

(司会)
 事前アンケートで、地域放送についてのご意見・ご要望をいただきましたので、地域放送の取り組みについて、経営委員、執行部よりお答えします。

(堰八委員)
 NHKは、全国に54の放送局があります。そして、全国の視聴者の皆さまからいただいている受信料で番組を制作しており、地域の視点に立った業務運営は大変重要であると考えています。
 経営委員には、地域在住の委員がいます。私はふだん札幌に住んでいますし、渡邊委員は福島、村田委員は京都といったように、全国各地から委員が選出されています。経営委員会では地域の視点に立ったいろいろな意見が表明され、業務運営にも反映されています。
 盛岡放送局長から地域番組について話を聞きましたが、月曜日から金曜日は、朝は「おはよういわて」、夕方6時10分から6時59分までは「おばんですいわて」を放送し、月に1回程度、金曜日には「再発見いわて」を放送しているとのことです。皆さんも、朝夕の地域の番組を見つつ、同時に全国のニュースも情報として得たいという、両方のニーズがあると思います。そこをよく考えながら、地域の皆さまへの貢献について配慮をしていきたいと思います。
 経営の効率化のため、従来から見ると地域放送局も人員が削減されていますが、番組制作などいろいろな面で、協会本部が地域放送局を支援する体制も整えています。地域の皆さまに喜んでいただける番組を作っていくよう、これからも努力をしていきたいと思います。

(大久保盛岡放送局長)
 盛岡放送局の取り組みについて、説明いたします。
 お配りしている経営計画の重点事項に「多様な地域社会への貢献」と書かれていますように、今、NHKでは、地域改革を大きなテーマとしています。盛岡放送局でも、少しでも県民の皆さまに貢献をしたいという気持ちで、日々、業務に当たっています。
 盛岡放送局の放送には、3つの柱があります。1つ目は、夕方6時10分からのニュース番組「おばんですいわて」です。岩手県内の一日の動きを中心に、記者やキャスターのリポート、中継、気象情報などをお伝えしています。
 事前にいただいたご質問の中に、同じニュースを繰り返し放送していることがあるのはなぜか、というものがありましたが、重要なニュースと判断したものについては、お昼の放送に続いて、6時10分の「おばんですいわて」、8時45分のニュースで繰り返してお伝えする場合があります。NHKをよく見てくださっている方が多く、大変ありがたく思っていますが、ずっと見ていただいている方ばかりではないので、繰り返しお伝えすることにも意味があると思っています。ただ、そのご質問の中で、翌日の朝も同じニュースを流している、といったことが書かれており、さすがに翌日の朝も全く同じニュースを流すのはいかがなものかと思いますので、ご指摘の趣旨を踏まえて対応していきたいと考えています。
 2つ目の柱は、基本的に毎月第2金曜日の夜7時半から放送している県域番組「再発見いわて」です。昨日は、台風19号の検証番組として放送しました。この「再発見いわて」は、昨年度から本数を増やし、月に1本というペースで放送しています。
 3つ目の柱は、月曜日から金曜日の夕方5時にラジオ第1で放送している「まじぇ5時」です。東日本大震災をきっかけに、身近な情報を伝えるラジオのローカルサービスを充実させようと5年前から放送している番組です。
 また、この3つの柱以外にも、東北ブロックで放送の「東北ココから」を制作したり、ことしの3月11日には「NHKスペシャル」を制作したりもしています。岩手県で取材したものを、県内だけでなく全国、あるいは世界に向けて発信しているところです。
 今後も、皆さんのご期待に応えられるよう、努力を続けていきたいと思います。

【会場参加者】
 いつもNHKの的確な報道を拝見しています。ことしは選挙の年でしたが、岩手県の選挙に、盛岡放送局に長く勤めていた名物アナウンサーが立候補し、当選しました。地域貢献や地元への愛着などを前面に打ち出し、特異なキャラクターもあって、たしか岩手県史上最高の得票であったと思います。個人的に大好きな方で、よかったと思っています。しかし、一方で、視聴者あるいは有権者という立場では、この現象をどう考えたらよいでしょうか。
 私の耳には、「あれはないと思う」という声も聞こえてきました。そのアナウンサーは、露出度が高いため知名度も抜群で、また、頭脳明晰で話も上手で、一生懸命やってきた他の候補者からすると、やっかみも含めて「もうあれではかなわない」という訳です。よい悪いと言うことではないのですが、今後のことを含め、このような現象をどう見ていったらよいのかを聞きたいと思います。
 かつて、岩手県で放送局出身の有名な方が当選されたこともあり、新しい話という訳ではありませんが、有権者の自由、あるいは立候補者の自由として片づけてよい話か、お聞かせいただきたいと思います。

【会場参加者】
 地震情報について、テレビの場合は、画面にテロップが流れるので番組をそのまま見ることができますが、ラジオの場合は、番組が急に中断されて地震情報が流れます。
 近くの地震であればまだしも、例えば宮崎県の地震の情報が放送されることもあります。その地域に親戚などがいる方は、そこでテレビに変えたり、スマホで連絡したりといったこともされるでしょうが、ラジオで、事細かく震度3の地名、震度2の地名と読み上げられると時間がかかり、震度1まできたころには、もう先ほどまでの放送の内容がわからなくなってしまいます。宮崎県の地震の情報は、せいぜい四国・中国地方まででよいのではないでしょうか。こちらは全く揺れていないのに、せっかく聴いている番組が中断されるのは残念です。

【会場参加者】
 以前はとても少なかったと思いますが、最近はEテレで、発達障害や性的マイノリティーについての放送を見ることがあります。番組でそのような子どもを持つ方の生の声を聴くことができ、いろいろと勉強になります。
 今後も、放送を続けていく予定でしょうか。また、発達障害や性的マイノリティーだけではなく、いろいろな障害を持った方の情報を放送していただけるのか、お伺いしたいと思います。

(堂元副会長)
 まず、選挙への立候補の件については、立候補をすること自体は自由となりますが、今おっしゃったご懸念については、よく理解できます。
 アナウンサーであれ、記者であれ、立候補の表明をした人をテレビに出すわけにはいきませんので、職員に関しては、選挙に出るようだとの情報があった際には、直ちに確認し、放送には出さないことを大原則としています。
 ラジオでは、昔は震度1でも速報を出していましたが、今は出していません。震度の出し方は、ご意見も踏まえて徐々に変えてきています。
 以前と異なり、昨今の台風や大雨は、大きな勢力のまま上陸して広域に甚大な被害をもたらすことがありますので、地域優先で放送しています。地震については、震度によっては、最初は全国で文字スーパーを出すこともありますが、その後は地域優先で、ブロック単位などで放送するように変わりつつあります。いただいたご意見は、現場にも伝えて検討していきたいと思います。

(中田理事)
 最近、Eテレで発達障害や性的マイノリティーを取り上げた番組が多く放送されているとのご意見をいただきました。例えば発達障害では、以前はそう認識されていなかった方が、実は発達障害であると分かるケースが増えています。考えられていたより多いということも分かってきました。そうしたことをうけて、最近では、Eテレだけではなく総合テレビでも、発達障害の問題を取り扱うようになってきました。事の重要性が皆に認識されてきて、NHKが伝えることによって、さらに理解が深まってきています。
 LGBTも同じで、以前は自分から表明する方はごく少数でしたが、最近は自分から表明される方も増えていて、どのように配慮をしていくか、差別をなくしていくかといったことが、社会的に重要なことと受け止められてきました。こうしたことにきちんと取り組むのは、NHKの公共放送としての使命ですので、これからも積極的に取り上げていきたいと思います。
 お配りした「NHK経営計画」のパンフレットの右上に、NHKが追求する6つの「公共的価値」が書かれています。「安全で安心な暮らしに貢献」、「正確、公平・公正な情報で貢献」などとともに、「教育と福祉への貢献」を挙げていますが、NHKがNHKである限り、公共的価値として追求していくべきものと考えています。これからも、発達障害や性的マイノリティー、その他いろいろな障害に関する放送を続けていきます。

(大久保盛岡放送局長)
 アナウンサーの立候補の件については、盛岡放送局としては、先ほど堂元副会長からご説明申し上げた、大原則どおりの対応を行いました。補足まで申し上げます。

(村田委員)
 発達障害や性的マイノリティーの話が出ましたが、社会の多様化に伴い、さまざまな価値観を持つ方がいることが認識されてきましたが、その中で困難や課題に向き合っている方の役に立つこと、あるいはそのような方の暮らしぶりを伝えていくことは、公共メディアとしてのNHKの重要な役割であると思います。
 また、外国から来て日本で仕事をしたり学んだりする方も増えていますが、彼らと文化的に共存し、共に暮らしていくためにはどうしたらよいのか、NHKは敏感にとらえて、いち早く対応していかなければならないと思います。
 立候補の件については、ご当地の選挙のことは知りませんでしたが、NHKの対応としては、執行部からご説明があったとおりかと思います。これは他の都道府県でも、民放でも、当然起こり得ることです。実際に、地方民放でかなり名の売れた方が選挙に出られて、国政、あるいは都道府県、市町村の首長になられるケースが、最近、増えてきていると思います。テレビが政治的にどう一線を引くべきかは、NHKだけで考えていく問題ではないと思います。メディアと政治の関係は、メディアの進歩にあわせて、さまざまなディスカッションの場で、または、大学や高等学校の教育の場で、議論を重ねていかなければいけないのではないかと思います。

【会場参加者】
 「ラジオ深夜便」など、NHKのラジオをよく聴いています。時報のピ、ピ、ピ、ピーンという音の最後の音が大きい時があって、イヤホンで聴いていると耳が痛くなることがあります。そろそろ時報だと思って、耳からイヤホンを外すこともありますが、適当な音量を出してもらえないでしょうか。
 また、全国各地の会場で「深夜便のつどい」を行っていますが、よい話もあり、とてもおもしろく聴いています。岩手県、または盛岡市で「深夜便のつどい」を行う予定があれば、教えてください。

【会場参加者】
 昨年、「クローズアップ現代+」で、かんぽ生命の保険の不適切な販売について取り上げられました。その後、郵政が、経営委員会に対して逆ギレとも取れる抗議を行い、結果的に経営委員会がその抗議を受け入れて上田会長にガバナンスの問題で厳重注意を行い、執行部が郵政に謝罪文を出したとの報道がなされています。私は、このことを大変残念に思っています。
 日本郵政が行った不正について、番組で取り上げて問題を追及するのは、公共放送として当然のことです。経営委員会には、抗議は突っぱねてほしかったと思っています。経営委員には、権力者の意見を尊重するより視聴者のほうを向き、報道の現場を委縮させるような言動は控えていただくよう、強く要望します。

【会場参加者】
 最近、働き方改革の影響もあってか、ローカル枠のニュースが減らされていると感じます。今年度も、ラジオで土日の県域放送がなくなったり、ニュース枠が大幅に削られたりしています。人を減らすのは必要なことと思いますが、どうも地方から優先的に減らされているのではないか、と感じています。
 災害報道については、この間の台風19号の際にもいろいろなニュースがありましたが、私は最終的に、配信もされていた地元の民放のニュースを見ました。NHKは少し報道力が弱いと感じました。「報道のNHK」だと思っていますので、今後、重点的に対策を取ってほしいと思います。

(大久保盛岡放送局長)
 まず、ローカル枠についてですが、ご指摘のとおり、土日と祝日の昼のニュースは、ブロック単位の体制に変わりました。また、災害報道が不十分であったとのご感想については、非常に重く受けとめたいと思います。
 今、NHKは、地域改革として、それぞれの局で地域貢献を大きなテーマに取り組んでいます。ニュース枠に関してはご指摘のとおりですが、例えば県域放送の「再発見いわて」は、本数を増やして放送していますし、「おばんですいわて」も、力を注いでブラッシュアップし、より伝わりやすくなるよう工夫しています。ローカル軽視と言われることのないよう、しっかり対応していきたいと思っています。スクラップもあればビルドもある、とお考えいただければと思います。
 台風19号の際には、気象予報士に終夜で対応いただき、定期的に放送を出しましたが、他社のほうが見やすかったとのご意見がありましたので、しっかりと受けとめ、今後の対応を考えていきたいと思います。

(司会)
 「深夜便のつどい」に関しては、今のところは、盛岡市での開催の予定はありません。

(中田理事)
 時報の音についてですが、音というのは非常に難しくて、年齢が高くなると高い音が耳に障るようになると言われます。テレビでナレーションのバックに音楽を流すと、年配の方から、音楽がうるさい、ナレーションが聞こえないという苦情を多くいただきます。
 人によって違う音を出すことはできないので、NHKの音声担当は、なるべく多くの方にとって快い音となるよう、ミキシングという、音の調整をしているのですが、聴こえ方は人によって異なるため、非常に難しい問題です。受信機側の技術開発で、一人一人に適正な音が聴こえるようにするといった研究があるとも聞いていますが、そのような形でしか解決は難しいのではないかと思っています。
 ただ、いただいたご意見は非常に貴重ですので、帰って共有したいと思います。ありがとうございます。

(司会)
 時報の件については、NHKの時報の音量は、全国一律の出力で流しています。

(渡邊委員)
 先ほど、かんぽ生命の話が出ましたが、私たちも当事者の一員ですので、少しご説明をしたいと思います。昨年、「クローズアップ現代+」が放送されましたが、私は、日本郵政やかんぽ生命の仕事をしている、優秀で丁寧な方をたくさん知っていましたので、最初は、本当にそんなことがあるのかと驚きました。番組の最初に、「押し売り」や「ノルマがひどい」といった文字が大きく出ましたので、真面目に働いている多くの人はどう思うだろうか、すべてが真実であるのだろうかとも思いました。
 経営委員会がこの件に関わったのは、去年の10月からです。放送はそのずっと前でしたが、10月5日付けで郵政からNHK経営委員会に手紙が来ました。郵政に説明に来たNHK職員が、会長には番組に関する権限はないと言ったが、それはおかしいのではないか。返事が2か月間ほど途絶えているので、経営委員会で何とかしてほしい、とのことでした。
 経営委員会としては、それにどのような対応をするか、話し合いを行いました。われわれには個別の番組に意見する権限はありませんので、番組についての話はしていません。
 経営委員会では、「一職員の発言をガバナンスの問題にまで結びつけてもよいのか」、「職員の発言には見逃してはいけない問題が含まれている」など、たくさんの意見が出ました。しかし、放送法と違った説明をしてしまったことは問題であったため、最終的には会長に責任があることについて、ガバナンスの観点から申し入れをしました。
 経営委員としての役割を果たすために、今後もきちんと取り組んでいきたいと思います。

(村田委員)
 経営委員会は、放送法で個別の番組の内容については干渉しないよう定められていますので、われわれは番組の内容に干渉したことはありません。
 郵政から視聴者としてクレームがあり、担当者が説明に行った際に、会長に番組編集の最終責任がないと誤解を与えるような発言がありました。
 放送法第51条には、「会長は、協会を代表し、経営委員会の定めるところに従い、その業務を総理する」と書かれており、最終責任は会長にあることが明記されています。そこで、会長に、視聴者に誤解を与えるような説明がなされたことについて、ガバナンスの問題について誤解のないようにしてほしいと要請しました。
 NHKは、常に正確で公正・公平な放送を出すために、最大の努力をしています。今回の問題に関しては、おそらく「クローズアップ現代+」は非常に先駆的な取材を行い、事実を報じたと思います。しかし、NHKであれ、ほかの報道組織であれ、間違った放送をしてしまう可能性はあります。もし、われわれが誤報を出したり、その結果、取材対象の方々の人権を傷つけるようなことになったりした場合は、最終責任は会長が負わなければなりません。そのことを、視聴者に誤解のないようはっきり伝えていただきたいというのが、経営委員会の趣旨です。
 今回の問題に関する一部の報道は、その辺がややゆがめられて報じられているのではないかと、危惧しています。

【会場参加者】
 昔からよく、マスコミは第4の権力であると言われます。今はSNSが発達しているので、われわれもだまされなくなりましたが、一昔前は、新聞などが大きく書き立てると、それだけで真実だと思う人が大半だったと思います。
 NHKがとてもよい番組を作られていることは認めます。夜7時のNHKニュースは、すべてのニュース報道の中で視聴率が1番かと思います。限られた時間の中で、一日の出来事を取り上げる訳ですから、いろいろな選択があってしかるべきだとは思います。しかし、ニュース報道の公平性という点では、時に疑問があります。
 最近話題になった、あいちトリエンナーレの「表現の不自由展・その後」では、なぜかすべてのマスコミが、慰安婦像だけを映しました。しかし、他に、昭和天皇のお写真に対してガスバーナーを当てて焼く、出てきた紙くずを足で踏んづけるという、もっと重要な映像があったのです。戦争で亡くなられた方たちをやゆするような内容もありました。
 公平・公正なNHKでしたら、ぜひほかのマスコミに迎合せず、公平に放送してほしかったと思います。そうすれば、国民はまた違うイメージを持ったはずです。慰安婦像は何度も見ているので、皆あまり何とも思わなくなっていますが、昭和天皇のお写真をガスバーナーで焼くなど、とんでもない話です。なぜあれが芸術と言えるのかと、腹立たしく思っています。

【会場参加者】
 NHKは、地域放送を通じて地域社会に貢献する施策としては、どのようなことを考えているのでしょうか。
 地方の民放であれば、地元のニュースに特化する特性から地域密着型になりやすいと思いますが、全国に放送局を持っているNHKでは、どのように地域社会への貢献を考えているのか、お伺いしたいと思います。

【会場参加者】
 NHKの番組PRが多く、非常に見づらいと感じています。私は、ほとんどNHKしか見ていないのですが、民放と変わらない方法で、どぎついPRが流されるようになりました。もちろん、番組を見てもらえるように宣伝していることは分かるのですが、もう少しNHKらしい方法で表現してほしいと思います。また、品が無く、民放と全く変わらないような番組が放送されています。

(中田理事)
 地域社会への貢献の具体的な施策についてですが、まず、全国ネットワークや国際放送を生かして、地域の魅力や誇りを、全国に、世界に伝えることは重要なことだと思っています。例えば、観光地であれば観光客を呼ぶという役割を果たしますし、外国人観光客が大変増えていますので、国際放送で世界に伝えることにも、大きな意味があると思っています。
 また、災害報道については、NHKはこれまで全国放送をベースに地域の災害の状況を順に伝えていく形を取っていましたが、今は、ローカルファーストという方針に変えています。全国放送では、例えば多くの死者が出た地域の情報に集中しがちですが、地域の人には、自分たちの住んでいるところの情報が大切ですので、地域の情報を優先して伝えるようにしています。
 ただ、近年は災害が広域化して、同時多発的にいろいろな地域で大きな災害が起こっています。先日の台風19号のように、複数の県にまたがって流れる川で、上流地域の大雨が下流に被害を及ぼすといったこともありますので、広域の情報も必要となります。NHKは、全国の放送局のネットワークをフルに生かして、広域に対応した放送を行い、地域へ貢献しています。
 あいちトリエンナーレの件は、NHKにも同様のご意見をいただいていますので、きちんと受けとめたいと思っています。昭和天皇の写真については、映像は出していないかもしれませんが、私の記憶では、コメントでは触れていたと思います。どのような情報を出すことが公平な報道となるかは、大きな検討課題として、引き続き考えていきたいと思います。
 また、番組PRが多く見づらいというご意見については、特に、よくNHKを見ているという方から多くいただきます。皆さんがいつもNHKをご覧になっているのであれば、PRはあまり必要ありませんが、たまにしか見ない方には、いろいろな時間帯にたくさんPRを出さないと、気づいていただけません。番組のPRは、見ている人がうるさいと思うぐらいやってはじめて効果がある、という考え方もありますが、なかなか難しい問題です。いつもNHKを見ていただいている方への配慮も必要ですので、そのバランスを模索しているところです。
 品がないというご意見については、課題として持ち帰りたいと思います。

(大久保盛岡放送局長)
 地域社会への貢献についての補足ですが、各放送局では、毎年、部局目標を立てて、業務に当たっています。
 盛岡放送局の目標の1つ目は、東日本大震災の復興の報道と、防災・減災報道です。2つ目は、ラグビーワールドカップ、東京オリンピック・パラリンピックに向け、県内の動きをしっかり伝えていくこと。そして、岩手県の関係者のいろいろな分野での活躍を、積極的に取り上げていくことです。
 先日の台風19号の際には、きょうの司会の佐藤アナウンサーが気象予報士と一緒に終夜で出演して、1時間に1回、10分から15分ほど定期的に全国放送を脱して、県内の情報を伝えました。
 また、岩手県内のいろいろな関係者の活躍を伝えることが、地域を元気にするのではないかと考えています。地域社会への貢献につながる活動に、日々取り組んでいます。

(司会)
 本日は、皆さまから、さまざまなご意見を頂戴しました。
 最後に、経営委員から、全体を通して一言申し上げます。

(堰八委員)
 皆さま、きょうは大変ありがとうございました。私も何度か「視聴者のみなさまと語る会」に出席させていただいていますが、きょうは、非常に落ち着いた雰囲気の中で、さまざまな角度から大変貴重なご意見を頂戴することができました。今後の経営に生かしていきたいと思います。

(村田委員)
 私も全く同感で、ふだん経営委員会で議論しているだけではなかなか気づかないような、さまざまな課題や問題について、皆さんに教えていただきました。厳しいご意見もありましたが、NHKがんばれ、という励ましの声をいただいたように感じています。本日は、誠にありがとうございました。

(渡邊委員)
 私も経営委員として3年になりますが、皆さまの心の声を、オブラートに包むことなく直接聞くことができて、大変参考になりました。
 来週早々、経営委員会がありますので、そこでもいただいたご意見を生かしたいと思います。きょうは本当にありがとうございました。

(司会)
 皆さま、きょうは本当に貴重なご意見をありがとうございました。

 

 

<視聴者のみなさまと語る会in盛岡>参加者当日アンケート

※全表の単位はすべて人数

質問1:性別

男 性 女 性
15 10

質問2:年齢

10代 20代 30代 40代 50代 60代 70代 80代
0 0 1 6 9 3 4 2

質問3:参加回数

はじめて 2回目 3回目
21 0 4

質問4:今回のイベントを何でお知りになりましたか(複数回答あり)

ホームページ 放送(テレビ) 放送(ラジオ) メール・
Twitter
チラシ 友人・知人 その他 未回答
10 4 1 14 0 0 0 1

質問5:今回のイベントに参加していかがでしたか

大変満足 満足 普通 不満 大変不満 未回答
10 12 1 0 0 2

質問6:印象に残ったコーナーはどこでしたか(複数回答あり)

経営委員の説明 経営全般 放送 講演会 特になし
2 8 9 7 2

質問7:NHK経営委員会の仕事を知っていましたか

よく知っていた 知っていた 知らなかった その他
1 7 15 2

質問6:今回のイベントに参加して、NHK経営委員会の活動について理解が深まりましたか

深まった 変わらない わからない その他 未回答
22 2 0 0 1

 

 

<実施後のアンケートで寄せられた主なご意見> (盛岡)

 

経営全般について

  • ほぼ安定的に入る収入を、むだなく効率的に使用してほしい。
  • 公共放送として、公正・中立に徹してもらいたい。
  • 経営委員には、権力者の顔色をうかがうことなく、一般視聴者の方を向いて職務にあたるよう、強く要望したい。また、スクランブル放送の是非については、執行部が決めつけず、受信料を支払っている視聴者にアンケートを取るなどして、視聴者の意見を聴いた上で決めるよう、強く要望する。
  • NHKという大きな組織の運営が、いかに難しいことであるか。視聴者の見方や意見も多岐にわたるなか、「公平負担」の意義の大きさと、それに応える組織としての役割を、どれだけの国民が理解できているだろうか。

 

放送について

  • NHKの重点事項に「地域社会への貢献」とあり、大変心強く感じた。東日本大震災から8年、復興支援に取り組んでいるが、沿岸地域は、朝ドラの「あまちゃん」に勇気づけられた。「なつぞら」等も含め、地域の人々の苦労や成果を、実話を素材に脚本・演出する方法を今後も続けていただきたい。
  • 「いだてん」を毎週楽しく拝見しており、最終章を期待している。
  • 最近のNHKのスタイルは、多少、下品と言われようが、より身近に感じられるようになって、好きだ。
  • 最近は「NHKなのに、かなりエッジのきいた事をやっているな」と思っている。
  • 「Eテレ」の担う役割は、本当に大きいので、もっとたくさんの人に番組を知ってもらいたいと思う。
  • ラジオ第2やEテレのいろいろな語学番組で、同時期に「とっさの旅行会話」のような内容を同じシチュエーションで放送してもらえると、世界一周のようで楽しいと思う。

 

運営・その他について

  • 経営委員の方々が、真摯(しんし)に対応し、答えていたのが良かった。
  • 参加者の問題意識の高さに感心した。また、答弁者の親切な対応に好感を持った。参加することができて、有意義だった。
  • 執行部と経営委員会の関係性や役割についてよく理解することができた。
  • 皆さんが、この会に出席するにあたり大変勉強されていることに驚いた。他の方の意見を聞けて大変参考になった。
  • 放送を見るだけで、経営については全く考えたことがなかったので、とても興味深く話を伺った。
  • 生の意見をたくさん聴くことができて楽しかった。NHKにはこれからもがんばってもらいたい。
  • 今回は、「『チコちゃんに叱られる!』の舞台裏」の講演会にひかれて参加したので、意見は出さなかったが、皆さんの意見に同感した。今後も、ニュースや子ども向け番組、親子で見られる番組など、楽しんで見られる番組を続けてほしい。
  • 皆さんの意見や経営委員のやりとりは大変参考になった。何の目的もなく参加して議論に参加できなかったので、これからはもっと問題意識をもって番組を見ていきたい。
  • 広域災害の報道について聞きたかったが、時間がなくできず残念だった。また、こういう機会を設けてほしい。
  • 登壇者の席が窮屈そうだった。
  • 「語る会」なので、対面式に座るのではなく、輪になって語り合いができるようにしたら、もっとよいと思う。
  • いろいろと参考になる話を聞けた。意見を言いたい人がたくさんいたようで、もっと要望を聞ける時間があったらよかった。NHKのますますの発展を期待している。
  • これまで2回、NHKで合唱団のメンバーとして参加し歌ったことが、よい思い出となっている。これからも、地域の皆さまの出演の機会を作ってもらえると、NHKに対する愛着も増すと思う。