※「6 審議事項(1) NHK経営計画(2021-2023年度)の修正について」、「6 審議事項(2) 2023年度(令和5年度)収支予算編成要綱」は、2023年1月27日(金)公表
日本放送協会第1415回経営委員会議事録
(2022年12月20日開催分)
第1415回 経 営 委 員 会 議 事 録
<会 議 の 名 称>
第1415回経営委員会
<会 議 日 時>
2022年12月20日(火)午後1時30分から午後4時20分まで
<出 席 者>
〔経 営 委 員〕
◎ | 森 下 俊 三 | ○ | 村 田 晃 嗣 | 明 石 伸 子 | |
井 伊 雅 子 | 礒 山 誠 二 | 大 草 透 | |||
尾 崎 裕 | 原 一 夫 | 堰 八 義 博 | |||
不 破 泰 | 前 田 香 織 | 水 尾 衣 里 |
◎委員長 ○委員長職務代行者(以下、「代行」という。) |
〔執 行 部〕
前 田 会 長 | 正 籬 副会長 | 林 専務理事 | |
板 野 専務理事 | 小 池 専務理事 | 伊 藤 専務理事 | |
児 玉 理事・技師長 | 中 嶋 理 事 | 熊埜御堂 理事 | |
山 内 理 事 | 安 保 理 事 | 山 名 理 事 |
< 場 所 >
○放送センター 22階経営委員会室 21階役員会議室
< 議 題 >
3 議事録確認
5 議決事項
(2) SKIPシティにおける川口市との土地交換について(資料)
6 審議事項
(1) NHK経営計画(2021-2023年度)の修正について(資料)
(2) 2023年度(令和5年度)収支予算編成要綱(資料1)(資料2)
7 報告事項
<議事経過>
<経営委員 入室>
森下委員長が経営委員会の開会を宣言。
(森下委員長)
本日の経営委員会は新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、みなさまにはマスクを着用のうえ、出席いただいています。
本日の議題および日程について説明。
1 視聴者のみなさまと語る会(大分)登壇者報告
12月17日にオンライン方式で開催された「視聴者のみなさまと語る会(大分)」に登壇した村田代行、明石委員、原委員から報告を受けた。
2 次期会長選任の経緯等の総括について
第1回(2022年7月26日開催)から第9回(2022年12月5日開催)までの指名部会の議事録を承認し、所要の手続きを経て、2022年12月23日に公表することを決定した。あわせて、第1413回経営委員会議事録を確認した。その後、次期会長任命の経緯等について振り返りを行った。
<前田会長、正籬副会長、専務理事、理事 入室>
(森下委員長)
はじめに、今月11日付で、新たに前田委員が経営委員に任命されました。また、礒山委員と水尾委員が再任されました。任期はいずれも12月11日から3年間です。前田委員は、本日、経営委員会に初めての出席となりますので、ごあいさつをいただきます。
(前田委員)
はじめまして、前田でございます。現在、広島市立大学の情報科学研究科に勤めており、専門は情報通信です。今の大学に30年ぐらいいるのですが、仕事始めてから広島に住んでおり、出身も広島なので、ずっと広島で仕事をしているような状況です。多くは情報通信に携わっていました。経営委員として、公共放送のNHKで、情報通信技術をどのように展開できるのか考えていきたいと思っています。その方面で仕事ができればと思っていますので、よろしくお願いします。
3 議事録確認
第1413回(2022年12月5日開催)、第1414回(2022年12月6日開催)、第1409回(2022年10月11日開催)の「放送法改正等に伴う日本放送協会放送受信規約の一部変更について」ならびに第1412回(2022年11月22日開催)の「日本放送協会放送受信規約の一部変更について」に関する議事録を承認し、所定の手続きを経て、2022年12月23日に公表することを決定した。
4 会長報告(資料)
(森下委員長)
次は、会長報告です。前田会長から報告をお願いします。
(前田会長)
NHKが、過去にポスティング業者等に委託して投函していた受信契約の案内文書のうち、お客様に返送していただく期日を記載しているものについては、郵便法上の「信書」にあたり、郵便法第4条の規定において禁止されている「信書の送達の委託」に該当するとして、12月14日に総務省から行政指導を受けました。
行政指導を受けたことは誠に遺憾です。今回の事態を重く受け止め、再発防止を徹底するとともに適正な業務体制を構築し、ガバナンスの強化に一層努めてまいります。
詳しくは正籬副会長より経緯を含めてご説明を申し上げます。
(正籬副会長)
改めまして、今回の行政指導につきましては誠に遺憾であり、重く受け止めております。
このたびの行政指導の経緯や詳細を説明します。
総務省から12月9日、NHKが放送受信契約に関してポスティング事業者等に委託して送達している文書について、郵便法の規定に抵触する可能性のある事例があったとして、過去に送達した分も含めて全て提出するよう要請がありました。
この要請を受け、過去に実施したポスティング施策について全件調査を実施し、仕様をすべて提出しました。
ポスティング施策の経緯ですが、NHKでは受信料の公平負担の徹底とクレームの抑止を目的に、2015年12月よりポスティング施策の試行を開始しました。受信契約が確認できない家屋に対して、外部の事業者に委託してポスティングを行い、2017年度からは全国に展開しています。基本的な仕様として、封筒に受信料のご案内のリーフレットと契約書等が入っています。
ポスティング施策の開始にあたっては、総務省のガイドラインに基づいて、外部の法律事務所の助言も受けながら違法とならないよう慎重に検討を行ってきました。
総務省は「信書」についての基本的な考え方を公表しています。この中で「信書」とは「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書」と郵便法及び信書便法に規定されているなどとしています。この「信書」については総務大臣の認可を受けた信書便事業者に限って、その送達が認められています。
ポスティング施策で投函した数はおよそ3,400万通となります。その中に、お客様に返送していただく期日を記載しているものが含まれていました。総数は2015年12月から2022年1月までの6年余りの期間でおよそ2,070万通です。
総務省から、この返送期日を指定しているものについては「信書に該当する」との指摘を受けました。この中には期日に加えて宛名欄があるものも一部ありました。2022年2月以降は返送期日を入れたものは投函していません。
受信契約の案内文書です。資料には、受信契約の案内文書の返送期日のあり、なしの資材を左右に並べています。
左側が今回、総務省より指摘を受けた過去に投函した「返送期日あり」の文書です。
右側が、コロナ禍を受けてお客様の心情に配慮して作成した勧奨のトーンを弱めている最近の文書です。こちらは総務省からは「信書ではない」という見解をいただいています。
資料の下側は、現在実施している「特別あて所配達郵便」です。封筒に返送期日、住所も書いていますが、この「特別あて所配達郵便」は、総務省は信書に当たるとしているため、返送期日があっても問題はありません。
次のページは、12月14日にNHKが公表した資料です。行政指導を受けたことを重く受け止め、公表の翌日15日には速やかに全国局長会議や全国視聴者部門の職員・責任者へ向けた説明会を開催し、本部が中心となり協会全体で再発防止を徹底することを確認しました。
ポスティング施策の運用にあたっては、外部の法律事務所への相談も行いながら、総務省のガイドラインに基づき検討を進めてきましたが、本施策の総務省窓口となる担当を視聴者局内に直ちに設置するなど、再発防止に向けて適正な業務体制の構築に着手しました。
現在、点検のため、ポスティング施策を停止していますが、視聴者の皆さまに共感、納得いただいた上で受信料をお支払いいただく営業活動において、日本郵便の「特別あて所配達郵便」およびポスティング施策は有効であると考えていることから、総務省に相談しながら文書等を速やかに点検し、運用を再開したいと考えています。
今後は再発防止に向けてチェック体制を見直し、適正な業務体制を構築するとともに、ガバナンスの強化に一層努めてまいります。
ご報告は以上です。
(明石委員) |
大変残念な事案という気がします。郵便で信書として出すべきところをポスティングしたわけですよね。それに対して弁済のようなものは発生するのですか。 |
(正籬副会長) |
現在、特に具体的にそのようなことは求められておりません。 |
(原委員) |
信書かどうかのポイントは返送期日を記載しているか、していないかということのようですね。2022年からは返送期日を記載していないものを発送していたようですが、そこで返送期日を書くか、書かないかの変更があったきっかけは何でしょうか。 |
(正籬副会長) |
大きな流れで言うと、「特別あて所配達郵便」で住所だけを書いて無宛名で送ることができるようになりました。これは信書になります。信書という扱いで送れば、住所と返送期日を書いても、問題はないということがはっきりしていますので、「特別あて所配達郵便」を中心に展開しています。 |
(井伊委員) |
2点質問です。1点目ですが、もともと信書にしなかった理由というのは手続きが面倒であったことなのか、それとも手数料や郵便代などのコストが高くかかるということなのか、どのような理由があったのでしょうか。2点目は、法律事務所の助言があって信書にしなかったということですが、やはり今後は一つ一つ、総務省に確認しなければならないということなのでしょうか。 |
(正籬副会長) |
まず1点目ですが、速やかに配れる集合住宅と一戸建てが多い所では、ポスティングもコストが変わってきます。信書はそれなりのコストがかかりますので、ポスティングとしてできるものについて法務相談をしながら実施していました。 |
(森下委員長) |
郵便法に関係するところは総務省にきちんと相談しておけばよかったということですね。 |
(正籬副会長) |
信書であるかないかについては法務相談を行い、適法だと考えて実施してきました。今後については、郵便法を所管するところにきちんと相談していくことが必要だと思っています。 |
(森下委員長) |
所管するところに相談する、非常に解釈が微妙な部分があるということですね。 |
(正籬副会長) |
微妙なところがありますので、適切に対応していきたいと思っています。 |
(不破委員) |
そもそも外部法律事務所に相談をした意図というのは、文書が適正かどうかというチェックであって、ポスティングしてよいかという、信書に当たるかどうかの確認ではないということですか。 |
(正籬副会長) |
ポスティング自体は禁止されている行為ではありませんが、文書が信書に当たるかどうかなど微妙なところがありますので、そうしたことを確認するために、いろいろご相談していたということです。 |
(森下委員長) |
再発防止策、チェック体制を整えているということですので、今回の経験を生かして特にリーガルチェックについてはしっかりとやっていただきたいと思います。この件に限らず、前回のNetflixの話もありましたので、NHK全体として微妙な法解釈のところやリーガルチェックの在り方について、これを機会にぜひ全局体制でしっかりと対応していただきたいと思います。行政指導を受けたことは大変重く受け止める必要がありますので、しっかりと再発防止に向けた体制を整えて、視聴者、国民の皆さまの信頼を損なうことのないように努力していただくことをお願いします。 |
5 議決事項
(1) 放送会館用地の取得および処分について(資料)
(森下委員長)
放送会館用地の取得および処分について、伊藤専務理事から説明をお願いします。
(伊藤専務理事)
札幌放送会館についてです。新札幌放送会館はすでに2021年6月に移転先で運用を開始していますが、もとあった土地と移転先の土地を札幌市と交換することになっています。
2ページです。位置図を見ていただきたいのですが、旧札幌放送会館は時計台のすぐ近くで、札幌市の中で大変よい土地といってもよいところにありました。青で示していますが、ここを赤で示したところに移転して、土地の面積そのものは2.5倍ぐらいに増えました。
その面積と金額ですが、新しい土地が約10,300㎡で83億7,000万円です。処分予定地の面積は約4,000㎡で、92億4,000万円ということで、差額の8億7,000万円をNHKが札幌市から2月に受領予定となっています。今の時期になったのは、札幌市との間でNHKの放送会館があった場所について、更地にしてから交換をするということだったので、少し時間が経過して今回の契約になります。契約と引渡日については、今月12月28日を予定しています。
このような契約を結びたいと思いますので、ご審議よろしくお願いします。
(尾崎委員) |
更地にして引き渡すということですが、コストはどれぐらいかかったのですか。 |
(伊藤専務理事) |
札幌放送会館の解体撤去費用については、11億6,000万円でした。札幌市の所有する土地にも建物がありましたので、お互いに建物を解体して更地で交換するという合意であり、それに伴った撤去対応ということになります。 |
採決の結果、原案どおり議決。
(2) SKIPシティにおける川口市との土地交換について(資料)
(森下委員長)
SKIPシティにおける川口市との土地交換について、伊藤専務理事から説明をお願いします。
(伊藤専務理事)
埼玉県の川口市にドラマを中心としたスタジオを建設するための土地交換についてご説明します。
位置図をご覧ください。2ページです。NHKが現在持っているのはC街区とB街区の西側の隣地です。これを今、川口市が持っているB街区と交換し、差額をNHKが支払うことになっています。
この面積ですが、現在NHKが持っているのが約2万4,000㎡で、新しい土地が約3万3,000㎡です。交換価格については、資料のとおりNHK側が約47億円、川口市側が約65億円で、差額の17億7,000万円余りをNHKから川口市に支払うことになっています。このB街区については、交換が成立した後、スタジオ建設等の着工を進めていく予定としています。
川口市の場合、川口市議会における議案の議決が必要になっているので、年明け1月6日に仮契約を結び、川口市議会で議決後に仮契約が本契約として効力を有することになっています。支払い、引渡日につきましては3月20日を予定しています。
以上のような契約を締結したいと考えていますので、ご審議よろしくお願いします。
(不破委員) |
以前、この川口の施設のご説明をいただいたときにも、その時の経営計画で必要な面積やスタジオの規模などの話があって、この施設の必要性を強調されていたと思います。その後、その経営計画が修正になって事業が場合によっては縮小される、番組の数などが縮小される可能性があると思っています。それに伴って川口施設の基本計画について、もう一度見直しをされる予定があるのかないのかを教えていただけますか。 |
(伊藤専務理事) |
基本的にこの川口につきましては、放送センターを建替える際にスタジオが不足しますので、こちらのスタジオの分を向こうで賄ってまいります。最終的には放送センターの次の建物をどの規模にするかというところで今後の事業計画との調整ということになっていくと考えています。 |
(不破委員) |
こちらの放送センターに戻らないで、川口のままでという話だったと思うのですが、いかがでしょうか。 |
(伊藤専務理事) |
おっしゃるとおりです。そのような方向で検討しています。いわば渋谷にあるスタジオを川口に移設するような形で考えていくということです。 |
(不破委員) |
そのときに経営計画が縮小されているのに合わせた見直しというのは行われていくのですか。 |
(伊藤専務理事) |
放送センター側で行っていくことになると思います。 |
採決の結果、原案どおり議決。
6 審議事項
(1) NHK経営計画(2021-2023年度)の修正について(資料)
(伊藤専務理事)
本日は、経営委員の皆さまからいただいた経営計画の修正案に対する懸念事項について、前回の経営委員会に引き続き、残る事項について、ご説明します。主に収支の見通しに関わる部分です。
経営委員会の懸念事項・質問として、1つ目は、「収支の見通しについては、収入は人口減少やテレビ離れ等の社会環境の要素、支出については労務費や今後の生産性向上のための投資、これらの要素を入れ込んだシミュレーションを数字で定量的に示してほしい。その際、潜在するリスクを明確にしてほしい」、2つ目は、「収入・支出の削減の蓋然性ならびに訪問によらない営業による収入減が反転する時期の想定について、詳細に知りたい」、3つ目が、「2024年度以降を見据えて、中長期的な展望を示してほしい」、というご懸念でした。
まず、1つ目です。10月の段階でお示しした収支計画案、収支見通しシミュレーションでは、剰余金から視聴者への還元を、2026年度までに合計1,500億円行うとともに、業務改革を進めて支出を縮減し、スリムで強靱なNHKの実現を進めていく計画です。その際、収入については、人口減少や、いわゆるテレビ離れなどの影響も考慮したうえで、2027年度に想定している、若干保守的な契約件数から見込んだ収入規模を2024年度以降の収入としています。
このため、今後の営業活動で努力を重ねることで、収入の減少幅を圧縮し、収支の改善を図ることが可能とみています。収入減の底打ちについては、のちほどご説明します。
一方、支出についてです。まず人件費については、今後の事業規模の縮小を想定して、職員数を徐々に減らしていくことを想定しています。具体的には、退職者と新規採用者の差で減らしていくことになります。のちほどご説明する来年度予算でも75人の職員の減少を見込んでおり、給与費も今年度に比べ、10億円近く減らすことにしています。
また、今後の生産性向上のための投資については、大きなものとして、2024年度から本格稼働する新ERP、その後、営業システムや番組管理のシステムなどを刷新していくこととしており、これらの投資については織り込んでいます。このうち新ERPについては、管理間接部門のコストダウン、要員の削減につなげていくことを想定しています。
ただし、電力料については、すでに前年同月比約3割増加しており、大幅な増加という状況です。建設資材の上昇による建築コストの上昇や円安の進行に伴う為替影響など、物価全般の上昇が収支を圧迫する大きなリスクになりうると認識しています。
今年度も、50億円規模のコスト増につながるとみています。このところの物価上昇については、世界的な政治経済状況の変化に伴うものでもあり、日本社会としても、ここ数十年間なかったことが発生している状況です。先の見通しはなかなか難しいところがありますが、今後の状況をしっかり見ながら対処していく必要があると考えています。
次に2つ目として、「収入・支出の削減の蓋然性ならびに訪問によらない営業による収入減が反転する時期の想定について、詳細に知りたい」、3つ目として、「2024年度以降を見据えて、中長期的な展望を示してほしい」というご要望をいただきました。
まず、支出の削減については、衛星波の削減やジャンル管理の徹底によるコンテンツ制作総量の削減や番組制作プロセスの見直し、設備投資の抜本見直し、送信コストの見直しなど、あらゆる業務分野について見直しを行い、スリムで強靱な新しいNHKらしさを実現していく計画です。
今年度についても、予算の策定段階では、事業収支は収支均衡と見ていましたが、現時点では、改革の進捗などにより、物価上昇を織り込んでもなお、決算段階で事業収支差金と資本収支差金の合計が、350億円程度となることを想定しています。こうした改革をさらに進めていくことを考えています。
収入については、営業改革の進捗がポイントになります。
新たな営業活動として、経費を削減する一方で、まず、デジタルで視聴者と大きな接点の拡大を行い、それ以外の接点を次々に積み重ねることで、最終的に契約につなげていく、マーケティングファネルに基づいた営業施策を展開しているところです。
これによって、視聴者のみなさまにNHKの価値を理解・納得していただいた上で、契約・お支払いいただくことを目指すかたちへの転換を進めています。
現在は、デジタル広告、イベント、ランディングページ、郵便、あるいはポスティングなど、マーケティングファネルに基づいた個別施策の一つ一つについて、世帯数の増加が見られる大都市圏を中心に、勝ち筋を導き出す取り組みを進めているところですが、まだ現時点においては、デジタル広告から契約に至るファネル全体としての縦糸を通した勝ち筋にまでは届いていない段階と考えています。
今後、お客様への直接のアプローチを含め、各施策のPDCAサイクルのスピードを上げ、早期にファネル全体での完成度を高めていくよう努めていきます。
また、全国一律の施策の展開から、エリアに応じたアプローチへのシフトにも力を注いでおり、非常に重要な要素となっています。
ファネルの各施策について、広告・イベントの検証などを通じて、施策ごとの最大の効果をはかるだけでなく、地域特性や居住者の世代・家族構成などを踏まえながら、エリアごとに効果を比較対照し、エリア特性に応じた勝ち筋の導出と、それらの効果的な展開を進めているところです。
単にこのような組み合わせが勝ち筋というところから、エリアごとにさらに細分化した勝ち筋の導出を、現在進めているという段階です。
これまでの分析でも、エリアによって効果的な打ち手の組み合わせは、大きく異なっており、このような分析を本格的に進めることで、営業モデル自体の効果を向上させていく取り組みを、大急ぎで進めているところです。
また、引っ越しなどの世帯移動の把握については、電力会社とのAPI連携を進めております。この取り組みをさらに進め、ガス会社などにも展開し、より効果的な営業活動を進めていきたいと考えています。
引き続き、エリアやカテゴリーごとに最適な打ち手を展開し、営業モデルを磨き、公平負担を徹底することで、受信契約件数および受信料収入の確保に努めていきます。
冒頭お伝えしたとおり、現時点で予測している2027年度の収入は、一定数の契約件数の下落を保守的な数字として見ているところです。ここまでご説明したような営業施策を、なるべく早期に実のあるものにすることによって、底を上げていくことに取り組んでいきたいと思っています。
いつ底打ち・反転できるのかについては、今回の信書問題の影響なども見極める必要もあります。反転については、2024年度から2026年度までの間には実現するべく取り組んでいますが、具体的なスケジュールと金額については、来年度策定する次期中期経営計画の中でお示ししていきたいと考えています。
経営委員の皆さまからいただいた経営計画に対する懸念事項に対するご説明については、以上です。
(堰八委員) |
2023年度の受信料収入見込みが6,240億円で、2022年度から460億円の減となっていますが、受信料の値下げが、来年10月とすれば、半年分だけの値下げとなることから、460億円を単純に倍にすると年間で920億円の減少という想定になるかと思います。 |
(伊藤専務理事) |
2023年度で事業支出規模を当初案より下げたのは、今年度の予算の進捗を見ていると、おそらく6,600億円台での決算となると考えており、来年度の予算を6,800億円で見るのは、大きいだろうと考えています。 |
(尾崎委員) |
さまざまな取り組みをやっていくということをご説明いただきました。例えば、ERPを変えて仕事を効率化し、事業支出を下げるというご説明がありましたが、具体的に、1年あたり何億円ぐらい費用が下がるかきちんと説明いただきたいです。おそらく算出されているはずであり、それがないと積み上がらないことから、それは一体どれぐらいなのでしょうか。例えば新ERPについて、新しいシステムに投資するわけであり、おそらく100億円規模や、1,000億円までいくかどうかはわかりませんが、どれぐらいの投資をして、どれぐらいのコスト削減があるから、投資効果はこれぐらいあるということをご説明いただかなければ、ただ単に言葉だけで言われても、よく分かりません。 |
(伊藤専務理事) |
ERPの投資規模については、システムの初期投資で90億円ぐらいと見ています。NHKは、メーカーと違い、単価をリアルタイムで見ていくレベルのERPは必要ないことから、NHKの組織運営上必要なレベルで、いろいろなかたちでコスト削減を行いながら、90億円で収めようと考えているところです。 |
(尾崎委員) |
おそらく発想が逆で、例えば10億円、20億円コストが下がるから、システムにはどれぐらい投資ができるということになるはずであり、システムにこれだけ投資するのであれば、これぐらい効果がないといけないということでやらないと、何となく成り行きではできないと思います。 |
(伊藤専務理事) |
大変重要なご提案、ご指摘だと思います。 |
(森下委員長) |
変動要因がたくさんあるということなので、そのあたりは十分に注意し、常にチェックしながら進めてください。 |
(伊藤専務理事) |
はい。 |
(大草委員) |
先ほどのご説明で、収入減の反転については、次期中期経営計画の中で、精査していきたいという話でしたが、収支見通しシミュレーションでは、2024年度以降の受信料収入は、5,700億円という同じ数字を置いており、2027年度に収支相償するときまで、ずっと5,700億円となっています。 |
(伊藤専務理事) |
シミュレーションとして、先ほどお話ししたようなテレビ離れなども含めた、若干保守的な数字として2027年度に5,700億円という数字を置いています。その上で、それを引き戻して2024年度まで同じ数字を持ってきていますが、実際のところは、2024年度、2025年度、2026年度は上振れするだろうと思います。また、2024年度、2025年度、2026年度のどこかで底打ちをさせることができれば、2027年度も上振れすると思います。 |
(大草委員) |
しかし、2022年度も契約数の減少が当初予算の見込から4倍のペースで進んでいるということもあり、必ずしも保守的とは限りません。今後、われわれとしても、この受信料収入の動きについては、注視していきたいと思っています。 |
(伊藤専務理事) |
非常に重要なところだと思います。来年度予算で受信料収入を460億円の減としていますが、このうち値下げの影響は380億円、契約件数の減で80億円と考えています。これを、この後どのように進捗させていくのかが、非常に大事なところになることから、しっかりと営業現場の取り組みを進めていきたいと思っており、数字も見ながら進めていきたいと思っています。 |
(森下委員長) |
それでは、本件の審議は終了します。本件は継続審議としますので、執行部は本日出された意見を踏まえ、改めて説明をお願いします。 |
(2) 2023年度(令和5年度)収支予算編成要綱(資料1)(資料2)
(伊藤専務理事)
2023年度(令和5年度)の収支予算編成要綱について、ご説明します。
前回ご審議いただいた「予算編成方針」をもとに、事業計画の詳細や予算科目別の内訳、主な事項の予算額を取りまとめたものです。
なお、放送法の改正に伴い、予算書等の表記方法が変わる可能性があります。具体的な手続きを定める省令が定められると今後の表記が変わる可能性があることは、ご承知ください。
1ページ目です。2023年度予算の基本的な考え方です。これについては、前回の「予算編成方針」から大きな変更はありません。中期経営計画の最終年度となる2023年度については、経営計画の修正に合わせて、受信料値下げと衛星波の1波削減を着実に実施し、スリムで強靱な「新しいNHK」を目指した構造改革をさらに強化することなど、基本的な考え方を網羅的に示しています。
2ページから3ページは、事業計画の重点事項として、中期経営計画の修正をふまえた5つの重点項目と構造改革による経費削減、建設計画と要員計画について、記載しています。
このうち、要員計画で、既存業務のさらなる効率化による要員減とあり、後ほど具体的な数字でお見せしますが、予算では75人の減を想定しています。
4ページは、2023年度の収支構造です。事業収支の全体構造は、予算編成方針でお示ししたものから変更はありません。放送法に基づき、科目別に整理した内訳を記載しています。
事業収入は、受信料の減収等により、前年度(2022年度)に対し450億円減の6,440億円を見込んでいます。事業支出は、将来的なコスト削減を見据えた先行投資を行う一方で、構造改革による支出の見直しを行い、前年度に対して170億円減の6,720億円とします。事業収支差金は280億円の不足となり、財政安定のための繰越金で補てんします。
内訳を見ると、支出のところで、国内放送費はほぼ同額、国際放送費は若干減っていますが、ほぼ同額です。給与は9億円の減であり、ここで先ほどお話しした75人分を勘案しています。
5ページは、資本収支です。建設費等による資産の増減と、その財源の対応を収支で示したものですが、内訳は、前回の予算編成方針から変更ありません。また、建設積立資産は、年度中に放送センター建替え建築工事を実施するため、140億円を取り崩します。2023年度末には1,552億円となります。
財政安定のための繰越金と還元目的積立金については、改正放送法が施行され、財政安定のための繰越金から還元目的積立金に2023年度当初から組み替えられることを想定した見通しで示しています。内訳は、前回示した予算編成方針から変更はありません。
2022年度末の時点では、財政安定のための繰越金が2,581億円と今のところ見込んでいます。これが2023年度になると、還元目的の積立金等に分解される形式で表記されることになります。このうち還元目的の積立金の受信料の値下げにあてる分は、来年度の補てんに充当する分を除いて、残り1,220億円です。特定目的の支出に充当する還元目的積立金は700億円ですが、これはネットワーク維持等の民放協力等に充てるお金です。
この700億円については、来年度中の支出の予定はありませんので、そのまま来年度末まで維持されると想定しています。
6ページです。ここからは事業収入を個別に見ていきます。
受信料収入は、今年度予算に比べ460.8億円の減収です。内訳は、460億円の減のうち、値下げの影響が380億円、契約件数の減少が80億円となっています。
7ページは、受信契約件数等の状況です。
支払数、契約総数が減少しています。また、衛星契約数も減少です。支払率は79%、衛星契約割合は54%となっています。
受信料収入の推移は、2022年度見込みから比べて、2023年度予算で475億円の減となっています。
8ページです。2023年9月30日までの受信料額と、値下げ後の10月1日以降の受信料額を示しています。
9ページは、その他の収入です。副次収入や交付金の収入など、受信料以外の収入の内訳です。
副次収入の放送番組等有料配信収入には、有料インターネット活用業務勘定における事業収支差金のうち、2023年度、累損解消後の9億円の繰入を含んでいます。
10ページです。ここからは事業支出の科目ごとの内訳です。10ページについては、国内放送費および国内放送番組等配信費です。11ページには、衛星波の1波削減についてまとめています。衛星波については、2024年3月末に2Kのうち1波を削減します。BS1、BSPを統合した新BS2Kには、BS4Kのコンテンツも一部併せて放送することを想定しています。
11ページの下は、国内放送費の総額、番組関係、技術関係、国内放送番組等配信費ですが、それぞれ若干変動していますが、大きな変化ではありません。
12ページは、それぞれの波ごとのコンテンツです。まず、総合テレビですが、公共メディアの基幹波という位置づけです。Eテレは、子どもから大人まで学びを支援するチャンネルという位置づけです。
また、ラジオ第1放送は、安全・安心を担う音声の基幹波、ラジオ第2放送は、いつでもどこでも学べる生涯学習波、FM放送は、リスナーの興味・関心に深く応える専門チャンネルという位置づけです。
全国放送番組費の地上放送の内訳についても、大きな変動はありません。Eテレについては、若干増額となっています。
14ページは、衛星放送です。BS1、BSプレミアム、BS4Kと記載しています。これは、11月までの内容となっています。BS1は、地球的視点から「いま」に深く迫るチャンネル、BSプレミアムは、個性と見ごたえを追求した知的エンターテインメントチャンネル、BS4Kは、超高精細映像コンテンツの先導的な役割を果たすチャンネルと位置づけています。
また、BS8Kについては、世界最先端の映像メディアチャンネルという位置づけです。
その下は、2023年12月からということで、統合した後の2つの波の性格です。新BS2Kについては、BS1とBSプレミアムのエッセンスを凝縮したライブ感重視のチャンネル、BS4Kについては、本物感・臨場感あふれる映像文化の殿堂という位置づけです。
それぞれのコストですが、統合に向けてそれぞれの波ごとのコストを下げていっており、衛星放送トータルで26億円余りの減となっています。
16ページは、報道取材です。災害のみならず、安全保障、感染症、地域課題など、暮らしの安全を支える「信頼できる情報」の発信を強化し、「情報の社会的基盤」の役割を果たしていく機能のためのコストとなっています。信頼できる情報で安全・安心な暮らしに貢献、激甚化する大規模災害に備え防災・減災情報をきめ細かく提供という2つの柱を置いています。取材費についても、ほぼ2022年度並みと想定しています。
17ページは、地域放送です。地域放送・サービスの充実については、全体では予算を縮減している中で、若干の増額を想定しています。
増額の理由について、一つはインターネット配信の強化です。地域全ての放送局について、夕方のニュースのコンテンツをインターネットで配信することを想定しており、この関係でインターネット配信費は7億円から11億円と増額しています。
また、設備維持運用経費等が大きく増えていますが、これについては電力料の影響が大きいということです。
地域放送コンテンツに係るコストについては、現状をしっかりと維持するということで臨んでいきたいと思っています。
18ページは、制作共通費です。番組制作や正確な放送を支えるシステムの開発・運用経費、権利者団体と包括的に契約している音楽の共通著作権費などです。
これについては、編成企画費・番組利用促進費が23億円ほど増額していますが、ここでデジタル時代の調査・取材手法の開発などを進めていきたいと考えています。
放送・サービス維持運用経費は、視聴者のみなさまに良質で安定した放送・サービスをあまねくお届けするために必要となる技術設備の運用経費です。これについても、現状とほぼ大きくは変わりませんが、電力料の増が見込まれている状況です。
19ページは、国際放送費・国際放送番組等配信費です。ウクライナ侵攻、パンデミックによる経済への打撃など、国際情勢が大きく揺れ動いている中で、やはり国際放送をしっかりと取り組んでいくことがNHKの責務であると考えています。
NHKワールドJAPANで、英語によるテレビ放送のみならず、17言語によるラジオ放送を展開している一方で、在外邦人向けのサービスにもしっかりと取り組んでいきます。全体としては、放送からインターネットでの配信へのシフトを進めているところです。
20ページは、その内容です。NHKワールドJAPANは、英語・外国人向け放送ですが、ポストコロナを見据えて、今だからこそ「日本再発見」ということで、日本をしっかりと世界に認識していただく取り組みを進めていきます。
NHKワールド・プレミアムは、日本語による在外邦人向けの放送で、海外の日本人の安全・安心に貢献するとことを1つの柱としています。ラジオ国際放送の外国人向け放送は、17言語で展開しています。
トータルの予算ですが、国際放送費は、衛星放送からインターネットへのシフトということで、コストの削減を図っており、それぞれ少しずつコストを抑えている状況です。
また、番組制作費についても、効率的な番組制作を進めていきます。
21ページは、インターネット活用業務です。インターネット活用業務については、来年度、全国の各放送局の平日午後6時台のニュース番組をインターネットで配信することを考えています。特に地域出身で今は東京にお住まいの方から、地元のニュースを見ることができてありがたいという好評の声をいただいています。
国際インターネット活用業務についても、海外への発信は衛星を使って放送するよりも、インターネットのほうが低コストということがありますので、それらをうまく使いながら世界中にコンテンツを発信していきたいと考えています。
コストについては、200億円を超えないという実施基準の上限がありますので、来年度については、197.5億円とぎりぎりではありますが、その枠内で進めていきたいと考えています。
22ページです。契約収納費については、業務モデルの大転換を進めているところであり、ここまでかなりのコスト削減を進めてきました。
しかし、来年度については、新しい手法を磨き上げていく観点から、それ相応のコストがかかる見込みであり、営業経費全体では17億円の減ですが、契約収納費はほぼ同額と想定しています。
一方で、契約収納活動に関わる職員の人件費は減の見込みとなっています。
営業経費と営業経費率の推移について、2018年度のところがピークで773億円でしたが、来年度予算については607億としています。全体の収入が大きく減っており、営業経費率は若干上がりますが、9%台にとどまっています。
23ページは、委託等の関係です。営業関連の委託は、大きく整理をしているところであり、地域スタッフの削減を順次進めている一方で、法人委託については、2023年度中に完全に終了と想定しています。その結果、契約収納費の内訳で、地域スタッフ等手数料・給付金法人委託手数料のところはマイナス37.8億円となっています。
一方で、特別あて所配達郵便などの契約収納促進費については増額となり、契約収納費全体で見ると、今年度と来年度でほぼ同額になっています。
受信対策費については、地域により電波の受信がうまくいかないところがあり、そのご相談に対応していますが、これについては若干の減と考えています。
24ページです。広報費については、視聴者のみなさまとの結びつきを強化、公共メディア・受信料制度への理解促進、NHKの価値を視聴者のみなさまに広く知っていただくことが必要だということで、若干の増額を見込んでいます。今年度の64億円から2.5億円ほどの増を考えています。特に、広報推進費は、インターネットを通じた理解促進活動の強化により増額で考えています。
25ページは、調査研究費です。視聴者の信頼と期待に応えるための調査研究の推進、新たな放送・サービスの創造に資する研究開発の推進という大きな課題は、放送を軸にしてきた研究から放送通信融合時代の研究への転換という非常に大きなテーマであり、その転換をこれから大きく進めていこうというところです。調査研究費は若干の減と考えていますが、質的な転換が非常に重要になるということが、来年度の課題だと思っています。
26ページは、給与、退職手当・厚生費です。給与は約10億円の減となっていますが、これが先ほどご説明した職員の減によるものです。要員計画は協会全体で見ると、1万343人から1万268人で75人の減となります。現状で50代が多いこともあり、採用人数との差で、ここ数年は減が続くと想定しています。
27ページは、予算における給与総額の推移です。2023年度の給与は、ピークの1998年度予算に比べ、372億円、25%の減となっています。
また、要員数も、ピークの1万6,920人から1万268人と、相応の減となっています。
28ページは、共通管理費、減価償却費等です。このうち、減価償却費が60億円の減となっていますが、これは、建設費等が設備投資の圧縮等によって減っており、抑制した結果です。この設備投資については、今後も抑制していくことを考えています。
一方で、放送と通信の融合の時代にふさわしい設備投資のあり方を検討し、実行しながら進めていくということで、ここの技術をめぐるところでの通信シフトを具体的にどう進めるのかについては、非常に重要な今後の経営課題の一つになってくると考えています。
業務別予算については、事業支出6,720億円のうち、相当部分が国内放送番組の制作と送出にあてられているということです。
29ページは、持続可能な組織の実現に向けた取り組みです。働き方改革については、過労死により2人の仲間を失うという大変つらい経験をしたことから、しっかりと取り組んでいきたいと考えています。
一方で、その働き方を変えるということでは、やはり一人一人が生き生きと仕事ができる環境の整備も必要になってくることから、ポジティブな意味での取り組みもしっかりと進めていきたいと思っています。
また、環境経営の推進では、NHK環境経営アクションプラン2021-2023年度で掲げた目標「2025年度末までに電力使用によるCO2の排出量をNHK全体で25%削減(2018年度比)」の達成に向けた取り組みを着々と進めていきます。
30ページは、来年度の経費の削減と重点事項への投資についてまとめています。経費の削減等は420億円規模と考えている一方で、重点事項への投資を250億円規模で考えており、差引き170億円の減が対前年度予算との比較となります。
削減の方は、ジャンル別管理の推進等によるコンテンツ関連の経費、技術関連での設備の見直しや維持経費の削減、営業関係での訪問要員の手数料の減などとしています。
一方で、重点項目の強化領域については、コンテンツの強化で138億円のプラスとなっており、この例としては、公共メディアNHKが一丸となり防災・減災意識を高めるためのキャンペーン、人生100年時代の多彩な学びを提供する番組の制作、超高精細で世界に通用する質の高い4Kドラマの制作、良質のアーカイブス番組を最新技術でよみがえらせ、最大限に活用することなどに取り組んでいきたいと考えています。
また、デジタル時代の調査・取材方法の確立について、取材・制作プロセスを、これまで放送を中心にしたものをネット通信でも展開するかたちから、一元的に取材・制作が行えるような体制へのシフトが急務であり、この関連の高度化・システム化のコストを投資していく予定です。
また、「命と暮らしを守る」報道の強化、安全・安心を支える放送サービスの機能維持も、NHKとしては非常に重要なところだと思っています。
さらに、地域発情報の発信強化や、デジタルコンテンツの強化なども進めていきます。
サイバーセキュリティの強化、システムの更新・整備等でプラス20億円と考えていますが、このサイバーセキュリティは、非常に重要なテーマになっており、ここの取り組みを、NHK本体だけではなく、グループ一体となって取り組みを進めていく必要があると考えており、急いで進めていきたいと思っています。
31ページは、NHKグループの新たな体制についてです。グループ全体での「新しいNHKらしさの追求」に向けた体制構築とガバナンスの強化について、12月1日にできた関連事業持株会社「(株)NHKメディアホールディングス」の傘下に5つのコンテンツ制作系子会社が入り、ここの効率化とガバナンス強化を進めていきます。
また、2023年4月には、4つの一般財団法人を合併して「(一財)NHK財団」を発足させ、その子法人に「(公財)NHK交響楽団」を加え、5つの財団を新しい財団グループとして統合することで、より効率的な経営を進めつつ、しっかりと社会貢献に取り組んでいきたいと考えています。
32ページです。建設費については、全体としては先ほどご説明したとおり設備投資の抑制をしていきますが、来年度以降については、放送センターの建替えに関する大きな投資があります。今、情報棟を建築中であり、この予算について、今年度は約100億円でしたが、来年度は240億円程度を見込んでいます。また、放送センター建替えに係る放送設備の整備についても、今年度は約17億円でしたが、来年度は約102億円と、かなり大きな投資になります。
一方で、それ以外の放送番組設備、地域放送会館、放送網の整備は抑制し、少しでも総額が増えないように取り組んでいますが、全体で見ると、今年度予算の建設費約750億円から、来年度は150億円程度の増になっています。
この関連で、放送センター建替えのために持っていた建設積立資産140億円を取り崩すことになります。
33ページは、有料インターネット活用業務勘定です。NHKオンデマンドについては、一時は累積で70億円を超える欠損がありましたが、ここに来て、Amazonなどのプラットフォーム事業者経由で非常に順調ということで、収益が上がっており、2023年度の半ば前後において、ようやくこれまでの繰越不足が解消される見込みです。黒字が生まれる状況になってくることから、この黒字の部分については、一般勘定の副次収入に繰り入れたいと思っています。
事業収入も、2022年度から2023年度に向けて5億円程度は増と見込んでいます。放送番組等有料配信費が増えることから支出も増えますが、事業収支差金は、来年度トータルで約20億円の黒字を見込んでいます。
34ページは、受託業務等勘定です。これは、NHKホールの貸出し業務など、NHKの設備を貸し出した場合などに発生するものです。また、G7広島サミット国際放送センターの運営業務も受託する予定で、その関係の収入も見込んでいます。
来年度の収支予算編成要綱のご説明については、以上です。
(尾崎委員) |
来年度、事業支出が170億円の減になるということでしたが、その中で、大きな要素は、減価償却費が60億円、年金の数理差異の処理が終わったということによる90億円で、合計150億円となり、大半がそこから出ているということですね。年金については償却が終わったことで来年からは出てこないこともあり、逆に言うと、そのほかのところでは、ほとんどコストは下がっていないという理解でよいですか。 |
(伊藤専務理事) |
2023年度については、基本的には、その次の時代に向けた先行投資を行うべき年だと思っています。 |
(尾崎委員) |
先行投資はどこの部分でしょうか。 |
(伊藤専務理事) |
デジタル部分です。 |
(尾崎委員) |
投資はコストには関係ないのではないですか。償却は後から出てくるものです。例えば1,000億円投資しても、2023年度にはその初年度の償却分しか出てこないはずであり、コストに大きく影響しないと思います。 |
(伊藤専務理事) |
先行投資とお伝えしたので、設備投資と感じられたのかもしれませんが、先行投資としては、業務フローの改革などもあります。さまざまなところで二重に業務が生じる部分がかなり出ると想定していることから、どれだけ業務フローの転換ができるのかというところが、2024年度以降に想定されるコストでやれるかどうかを決める非常に大きなターニングポイントになると考えています。 |
(尾崎委員) |
ご説明を聞いて少し心配になっていたのですが、そもそもなぜ90億円も年金の数理処理で処分しなければならない状況になったのでしょうか。2007年から15年間ということは1,000億円以上の何か積立不足があったのですか。 |
(経理局 部長) |
今回お示ししている数理計算上の差異というのは、2007年度において、当時の退職給付債務の計算に使っていた割引率を見直したものです。当時、4.5%という数字を使っていたものを2.3%に引き下げました。その分の差額を15年にわたって償却してきたということです。 |
(尾崎委員) |
1,300億くらいでしょうか。 |
(経理局 部長) |
そうです。毎年80億円規模です。現在の割引率は0.4%ですので、この後、もう1、2度にわたって割引率の引下げをやっており、そちらはまだ償却期間中です。期間が終わったところでまた下がることもあると思います。数理計算上の差異については、運用に伴う上振れ、下振れの償却は毎年新たに発生するものだと思います。 |
(尾崎委員) |
今年で大きな区切りが来たが、まだまだ償却している額とすると、数十億円あるという理解でしょうか。 |
(経理局 部長) |
はい。 |
(尾崎委員) |
2%からさらに下がった分についてはどうでしょうか。 |
(経理局 部長) |
0.4%まで下がった分については、この10年の間で償却が終わると考えています。 |
(尾崎委員) |
どの程度の償却額ですか。年間数十億円程度でしょうか。 |
(経理局 部長) |
はい。それぐらいの額になります。 |
(礒山委員) |
事業支出全体の削減の中では少ないのですが、給与が9億円減となることについて、ご説明では退職者が75名出るからという理由でしたが、単純に割ると1人当たり1,100万円か1,200万円程度になると思います。 |
(伊藤専務理事) |
採用については、NHKの今後を考えたときに、地域で働いていただける方をしっかりと採用することが、かなり大事な要素です。自分の生まれ育った土地を愛して、そこのために報道で貢献しようという方をなるべく多くしていくために、今、順次採用を展開しています。全国型と同じ給与水準で展開しています。 |
(礒山委員) |
9億円については、完全に退職者見合いの数字ということでよろしいでしょうか。 |
(伊藤専務理事) |
実際の要員減ということで、採用と退職の差で計算しています。採用のところは少数精鋭で採っていくことになりますので、しっかりと採用活動に取り組んでいこうと考えています。 |
(大草委員) |
財政安定のための繰越金と還元目的積立金について、2023年度の終了時点で財政安定のための繰越金が381億円ということで、これは2023年度当初と同額となっています。 |
(伊藤専務理事) |
NHKがどの程度、大規模災害等に備えたお金として持ち得るのかについては、総務省の省令で定められます。おそらく何%という数字で出されると思いますが、それが上限となり、それを超える分については、還元目的で使いなさいということになるのが改正された放送法の立てつけです。 |
(大草委員) |
将来の姿として、還元目的積立金もあるなかで、当てのないその他の繰越金についても、全体の事業規模の1割までは許容されるということですか。 |
(伊藤専務理事) |
1割になるかどうかはわかりません。総務省の省令で定められ、それを上限として、その範囲であれば、NHKとしてお金をもっていることが認められるということです。 |
(森下委員長) |
NHKとしては、1割程度は必要だと言っているということですね。 |
(伊藤専務理事) |
NHKとしては、1割は必要だと言っていますが、その数字のままで認められるかどうかは、まだこれからになります。 |
(堰八委員) |
全国放送番組費と国内放送費があり、国内放送費の今年度予算が3,187億円となっていますが、番組費が制作費、放送費がそれを送出する経費と考えるのですが、その理解でよろしいでしょうか。 |
(伊藤専務理事) |
番組費というのは、放送波ごとに予算を定めていますが、ご指摘のあった国内放送費3,187億円の中には、それ以外にも報道の取材費など、波に関わらずかかってくる費用も含まれています。それらをすべて合計したものが3,187億円という数字となります。 |
(堰八委員) |
取材費などがすべて入っているということですね。 |
(伊藤専務理事) |
はい。ほかにも技術関係で、放送設備の維持運用費など、国内放送を維持していくための費用が入っているということになります。 |
(堰八委員) |
衛星波の1波削減について、資料では2024年の3月末で2Kのうち1波を停波となっていますが、12月1日に番組改定を行い、周知徹底のためにBSプレミアムを3月まで継続して、3月末に止めるということで、実質BSプレミアムは、3月末まで番組は流さずに告知が流れるというイメージだと思っています。 |
(伊藤専務理事) |
衛星波の1波削減を視野にここ数年番組費を減らしてきています。スポーツなどの中継も削減してきており、徐々に下げてきているということです。 |
(堰八委員) |
衛星波の1波削減でいくら削減できるのでしょうか。これまでやってきたことは別として、2024年以降にいくらくらい効いてくるのでしょうか。 |
(伊藤専務理事) |
即答が難しいところもありますが、2020年度では、衛星3波の合計で775億円でしたが、2023年度では584億円ということで、すでに190億円程度計画的に落としてきています。ここから2024年度で大きく落ちるということにはなりません。計画的に進めてきており、放送権料の問題や外部のプロダクションにつくってもらっている分もあることから、段階的にやってきています。 |
(森下委員長) |
その点はぜひ整理していただきたいと思います。衛星波の1波削減したことで経費がどれくらい削減できたのかと問われた際に、どのように説明するのか整理しておいてください。3年、4年と段階的にやってきているということはわかりますが、どれくらい効果が出ているということを説明できるようにしておいてもらいたいと思います。 |
(伊藤専務理事) |
はい。整理して年明けにご説明できるようにします。 |
(前田委員) |
今、世の中では、DX(デジタルトランスフォーメーション)を国をあげて推進しています。民間企業や自治体でも推進されているだけでなく、文科省でも教育DXを推進し、大学でもDXを進めているところなので、このような計画などの資料にも大抵DXについて記載がありDX推進のために何をするかの記載があります。 |
(伊藤専務理事) |
NHKも、DXを進めていかなければならないと思っています。業務フロー全体を見ても、紙にはんこを押すということがまだまだ残っています。業務効率の改善とそれに伴うコスト削減について取り組んでいかなければならないということで、先般、経営企画局の中にデジタル業務改革室を設置し、そこでDXをコントロールしています。すでにいろいろな取り組みを始めている段階ですが、次期中期経営計画の中で、しっかりと柱を立てて進めていけるようにしていきたいと考えています。 |
(明石委員) |
範囲も広く、数字も多いということで、なかなかぴんとこないのが私の実感です。2023年度というのは、現経営計画の集大成の年ということで、新しいNHKがどのように出来上がるのかを知らせるということも、この予算の中で示していく必要があるのではないでしょうか。 |
(伊藤専務理事) |
ご指摘の内容は非常に大事なところだと思います。現経営計画の策定段階である2020年度では、予算比で550億円の削減を行うとしていたところを、さらに踏み込んで630億円の削減を行うというところまできています。 |
(原委員) |
資料の中で、事業支出の削減の詳細な内訳が記載されていますが、このようなかたちで、さきほどの経営計画の説明の中であった収支シミュレーションの2024年度、2025年度、2026年度の費用削減の内訳を示していただけると非常に理解しやすいかと思います。 |
(伊藤専務理事) |
2024年度、2025年といった将来の見通しですね。 |
(原委員) |
もちろん変動幅はあると思いますが、ある程度これくらい見込んでいるということを示していただければと思います。 |
(伊藤専務理事) |
現実的には難しいところもあるかと思いますが、そのあたりも次の中期経営計画の中で、しっかりと示していきたいと考えています。 |
(森下委員長) |
ぜひ考えていただきたいところですが、衛星波の1波削減について、資料には統合するということしか示されていません。視聴者の皆さんが気にされているのは、よいものはきちんと残してほしいということであり、きちんと評価をしてよいものは残しているということがわかるようにしていただきたい。 |
(伊藤専務理事) |
承知しました。 |
(森下委員長) |
それでは、ただ今の審議を踏まえて、2023年度(令和5年度)収支予算編成要綱を了承します。令和5年度収支予算、事業計画及び資金計画の策定に向けた準備をお願いします。 |
7 報告事項
(1) 地方放送番組審議会委員の委嘱について(資料)
(森下委員長)
報告事項(1)について、特段の質問等がなければ、資料の確認のみで、報告に代えさせていただきます。
<前田会長、正籬副会長、専務理事、理事 退室>
8 今後の経営委員会運営について
今後の経営委員会運営について、情報共有と意見交換を行った。
森下委員長が散会を宣言。
上記のとおり確認する。
2023年1月24日 |
森 下 俊 三 |
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大 草 透 |
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