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第1409回
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2022年10月28日(金)公表
※「 8 審議事項(2) 放送法改正等に伴う日本放送協会放送受信規約の一部変更について」は、2022年12月23日(金)公表
※「1 審議事項(1) 経営計画の修正について」、「8 審議事項(1) 経営計画の修正について」は、2023年1月27日(金)公表

日本放送協会第1409回経営委員会議事録
(2022年10月11日開催分)

第1409回 経 営 委 員 会 議 事 録

<会 議 の 名 称>

第1409回経営委員会

 

<会 議 日 時>

2022年10月11日(火)午後1時00分から午後5時40分まで

 

<出 席 者>

〔経 営 委 員〕

  森 下 俊 三 村 田 晃 嗣 明 石 伸 子
    井 伊 雅 子   礒 山 誠 二 大 草   透
    尾 崎   裕    原 一 夫 堰 八 義 博
    長谷川 三千子   不 破   泰 水 尾 衣 里
  ◎委員長 ○委員長職務代行者(以下、「代行」という。)

 

〔執 行 部〕

  前 田 会 長 正 籬 副会長 林   専務理事
  板 野 専務理事 小 池 専務理事 伊 藤 専務理事
  児 玉 理事・技師長 中 嶋 理 事 熊埜御堂  理事
  山 内 理 事 安 保 理 事 山 名 理 事

 

 

< 場   所 >
○放送センター  22階経営委員会室  21階役員会議室

 

< 議   題 >

 

1 審議事項

 (1) 経営計画の修正について(資料1)(資料2)(資料3)(資料4)(資料5)

 

2 今後の議事運営について①

 

3 今後の議事運営について②

 

4 議事録確認

 

5 監査委員会報告(資料)

 

6 会長報告(資料1)(資料2)(資料3)

 

7 議決事項

 (1) インターネット活用業務実施基準の変更について(資料1)(資料2)

 

8 審議事項

 (1) 経営計画の修正について

 (2) 放送法改正等に伴う日本放送協会放送受信規約の一部変更について(資料)

 

9  評価・報酬部会

 (1) 2022年度役員ヒアリング

 

10 今後の議事運営について

 

11 視聴者のみなさまと語る会(富山)登壇者報告

 

12 視聴者のみなさまと語る会(1都3県・学生)開催決定

 

13 経営委員会規程の改正について

 

14 指名部会

 

 

<議事経過>

 

<経営委員 入室>

 

 森下委員長が経営委員会の開会を宣言。

 

 (森下委員長)
 本日の経営委員会は新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、みなさまにはマスクを着用のうえ、出席いただいています。

 

 本日の議題および日程について説明。

 

<前田会長、伊藤専務理事 入室>

 

 

1 審議事項

 (1) 経営計画の修正について(資料1)(資料2)(資料3)(資料4)(資料5)

 (森下委員長)
 審議事項です。経営計画の修正案について執行部から説明をいただき、審議をしたいと思います。

 (前田会長)
 経営計画の修正案について説明します。
 これまで、何度も経営委員の皆さまからご意見をいただきまして、執行部としては、さまざまな環境変化もある中で、この際できることは目いっぱいやろうと考えています。「スリムで強靱」となるために、受信料に関していえば、今できる範囲で下げていく考えですが、下げるということはスリム化することが大前提であり、退路を断ってしっかりと経営改革をするという意思表示でもあります。
 値下げ幅については、少なめにするなどさまざまなバリエーションもありますが、やはり最終的には、NHKは視聴者の皆さま、国民の資産であり、その資産内容をきちんと保持しながら、将来にわたって事業内容をしっかりと維持できる形にしないと公共放送として成り立たないと考えています。これまでも、値下げをしてきましたが、値下げ幅が小さく、値下げ実感が薄いのではないかと感じており、値下げしたことも忘れられて、まだ高いと思われているといった問題があります。
 過去、実態的に事業規模が継続的に右肩上がりで肥大化してきており、6,000億円から7,000億円と増大してきましたが、実態としては、波を増やすなど、事業拡大することでこのような状況となってきております。一方で、職員の数を増やしていないことから、職員からすると、仕事がとてもきつくなったと感じており、業務が回らなくなることで、外部に委託する、それが駄目ならさらに違うところに委託するといった状態になっていますので、ここは一度原点に返って将来のために改革をする必要があると考えています。
 そのためにも、やはり受信料の値下げ水準について、約束したことをきちんとやらせていただきたいと思っています。NHKの職員にとっては非常にきついことですが、ここで生まれ変わるチャンスを逃すと、なかなか先が読めないということや、民放各社はすでにやっているなかで、NHKだけが取り残されてしまうという状態がよくないかたちだと思いますので、このような内容で提案させていただきたいと思っています。
 働き方改革など、さまざまな局面で全て改革モードにしており、頭の切り替えも相当大変ですが、2年以上やってきたことでかなり浸透してきました。ある程度めどがついたことも踏まえ、今回この内容で提示させていただきました。
 今回のシナリオは、おおまかに言えば、繰越剰余金1,500億円を還元する計画です。今期、2022年度末の剰余金の予想額がおそらく2,300億円ぐらいになることから、2,300億円の中から1,500億円ということで、半分以上を還元する計画になっています。このことから、還元が足りないということもないと思います。
 残りの剰余金については、もともとNHKに資本金がないことから、何かあったときのためにも、それなりのお金が必要ということがあります。もう一つとして、民放と協力するという改正放送法の要望もあり、これについてもお金が無いとできないことから、若干の資本は必要と考えており、それらを合算しても還元原資1,500億円を引いた約800億円程度で大丈夫じゃないかと考えています。
 また、現経営計画が終わったあとの3年間で、赤字を解消していく必要がありますが、計画を検討する前提としては、受信料収入を横ばいとしています。少し努力目標を入れて、見込みを上げることは簡単ですが、それをしてしまうとかえってややこしくなることから、シミュレーションとしては、きつめのシナリオとしています。つまり、営業努力要素を入れていないことになりますが、実際に営業努力がゼロとはならないことから、この計画についても達成可能だと思っています。
 一方で、電力コストが上がっておりますが、現時点の規模であれば必要な努力で吸収できると計算しています。受信料の値下げをした上で、受信契約がどんどん減る状態になると、これはもうNHKは全く信頼されていないということになりますが、努力要素を織り込むことで、そのようなことにはならないと思います。
 今回提示させていただく計画自体は、少し見ると、これは大丈夫なのかと思われるかもしれませんが、ここには営業努力要素を織り込んでいないということをご理解願いただきたいと思います。
 私からの説明は以上です。詳細は伊藤専務理事から説明します。

 (伊藤専務理事)
 それでは、説明します。
 前回の経営委員会でのご意見についてです。受信料値下げについて、「衛星波と同程度地上波も下げるべきではないか」、あるいは「地上を値下げせず衛星だけとなると、説明が難しいのではないか」といったご意見をいただきました。営業改革については、「中長期のシミュレーションにおいては、出入りの改善状況チェックが不可欠」といったご意見、コンテンツ強化については「もう少し具体的で丁寧な説明が必要なのではないか」といったご意見、今後の投資については、「還元原資700億円のほかに、改正放送法も踏まえ、二元体制の維持、リスク対応等で使っていくものと理解したが、具体的な見通しはどうなっているのか」ということや、最終収支についても、「一時的ではなく、恒常的な還元を行う場合、足元のインフレを見ても、この先3年程度の収支をしっかり見極める必要があるのではないか」といったご意見をいただきました。
 次に、「“還元”についての国民の受け止め」についてです。この調査は今年9月の調査であったことから、まだNHKの受信料値下げについての認知率は約19%だった一方、値下げの原資を用意できる見込みとなったことについて、受信料支払者の7割強が評価しているという結果でした。
 次に、「“還元”の基本的な考え方」について、以前の説明から少し変わりまして、地上波でも下げるということを示しています。
 次に、「値下げの考え方について」です。公約を達成し、改革を実現して還元のための原資700億円を確保、衛星1波の削減を行うことや、インフレ等もあって、少しでも値下げをして欲しいという視聴者の要望、経営委員会における地上料金の値下げ等のご意見を踏まえて、今後の構造改革を拡大し、6,000億円を下回る、より“スリムで強靱な”事業規模とするとともに、剰余金の大幅な活用に踏み込むことで、「地上料金、衛星料金のそれぞれの1割値下げを実現」、「経済的に厳しい学生への免除を拡大」を行いたいと考えています。経営全体へのインパクトとしては、一時的に収支は赤字となりますが、2027年度には収支均衡を想定しています。
 次に、「値下げプラン」について、料金のシンプル化として、継続振込と口座・クレジットどちらも、衛星料金は1,950円、地上料金は1,100円としています。学生免除については、これまで奨学金受給等の学生のみ免除だったものを、被扶養の学生については原則免除にしたいと考えています。
 次は、「インフレ傾向にある現状と収支見通し」です。想定しているインフレ影響として、「電力料」で今年度20億円のプラス、「設備投資」でも20億円のプラスなど、年間で50億円程度のコスト増を見込んでいます。
 そのうち、「電力料」については、すでに前年同月比約3割増加している状況です。「設備投資」では、単年で約20億円のコスト増となり、「建築コストの高騰」についても、ここ1、2年でかなり急上昇している状況です。
 次に、「今後の投資方針有識者会議・政策方針との整合」について、総務省の有識者会議がまとめた「デジタル時代における放送の将来像と制度の在り方に関する取りまとめ」の中で、攻めと守りの2つの戦略が示されています。
 「守りの戦略」では、放送ネットワークインフラの将来像として、NHKと民放各社が一緒になって送信設備を保有したりメンテナンスしたりすることを想定しています。一方で、「攻めの戦略」では、放送の価値のインターネット空間への浸透と明示されています。
 これらを視野に、「放送ネットワークインフラのコスト低減に向けた投資」として、民放の皆さんと二元体制を維持していくためのネットワークの共同利用を考えていくべきではないかということや、放送信号からIP信号等に移行している状況を踏まえたオールIP時代への対応、あるいは大規模な災害・事故などへの対応などについて、NHKとしても投資をしていく考えです。
 また、「情報空間の健全性確保に向けた投資」についても、インフォメーションヘルスという言葉もよく使われるようになってきていますが、公共的コンテンツとして、NHK以外のコンテンツを作っている人たちが作ったコンテンツを、NHKを通じて展開していくことや、人材育成視点でのコンテンツ産業への貢献といったことなど、パブリックな位置づけをきちんと認識しながら、やっていきたいと思っています。
 続いて、「衛星波の整理・削減について」、BSプレミアムについては、2023年度末で停波をすることを想定しています。12月1日に番組改編を行い、これ以降はBSプレミアムでは、新BS2K(仮称)のサイマル放送や画面上の周知等を想定しています。
 次に、「衛星波削減を踏まえたサービストータルプラン(案)」について、新BS4Kでは「世界水準のコンテンツ」、新BS2Kでは「衛星放送の魅力凝縮」、地上波では「新しい“安全・安心”の追及」と「新しい“あまねく”の追求」を行っていくイメージです。
 「収支計画案」です。来年10月からの受信料の値下げで、2023年度単年でも受信料収入が460億円減収となります。事業収支差金のマイナス分は剰余金から充当することで対応します。また、恒久的な値下げを実現するため、その後も支出費用を段階的に縮減しつつ、不足分は剰余金を活用することになります。先ほど会長からも説明がありましたように、剰余金は2021年度決算の2,231億円と2022年度予算で見込む90億円の増加をあわせると2,321億円となりますが、それを投入していくことになります。2023年度については、剰余金からの充当が280億円になります。
 次に、中期的な「収支見通しシミュレーション」について、事業収入については、先ほど会長からも説明のあったとおり、営業努力を考慮せずに5,900億円という数字を入れております。事業支出は2024年度の6,470億円から2026年度の6,150億円に減っていく流れですが、これも詳しくは来年の経営計画で変えていくことになるかと思います。
 シミュレーションの結果、事業収支差金は2024年度でマイナス570億円、2025年度でマイナス400億円、2026年度でマイナス250億円となり、剰余金からの投入額は2023年度分280億円を加えて、1,500億円と想定しています。その先の2027年度には、収支均衡を想定しています。
 「剰余金の使い方」について、まず剰余金のうち1,500億円については、2022年度から2026年度まで、値下げによる収入の不足に充てていくことを想定しています。一方、その他の剰余金については、改正放送法の民放協力努力義務やリスク対応等に充てていきたいと考えています。
 そのうちの1つが、今後とも必要とされる“放送機能”全体を支える貢献として、民放との地域における二元体制の維持、オールIP時代対応、コンテンツ産業の底上げのための支援事業・基金で、おおむね700億円程度をプールしたいと考えます。
 また、リスク対応については、NHK自身の災害時等の対応として、視聴者負担の増加抑制、財政安定化という見方があるかと思います。こちらには少なくとも500億円程度が必要だと考えています。
 最後に、経営計画の修正案として、議決後に公表する資料として3種類あります。
 まず、修正の本文として、A4用紙1枚を準備しており、現在の経営計画の冊子の一部を書き換えた内容となっています。
 また、説明資料として、「新しいNHKらしさの追求」という資料と、収支の見通しとして、「NHK経営計画(2021-2023年度)の修正における収支の見通しの算定根拠(案)」という資料も準備しています。
 おおむね書いてあることについては、大きな変更はありません。一部ご紹介すると、説明資料「新しいNHKらしさの追求」では、最初の1ページ、2ページで「現在の経営計画(2021-2023年度)の概要」をまとめています。3ページでは、「現経営計画の進捗」として、訪問によらない営業による営業経費率の削減、次の4ページでは、「経営資源シフトの取り組み」として、コンテンツ分野でのジャンル管理について示しています。さらにその下には、「NHK本体とグループの一体改革」についても示しています。
 次に、5ページでは、「保有するメディアの整理・削減」として2Kの衛星波のうち1波の削減について示しています。6ページは、「衛星波削減を踏まえた放送サービスのトータルプラン」についてです。7ページは、「現経営計画で想定した環境変化の加速」として、環境変化が加速している面があるという内容です。新型コロナウイルス感染症やウクライナ情勢等の影響により、放送を取り巻く環境変化が加速し、新たに課題が発生し深刻化しているということです。
 また、8ページでは、「強化する重点項目」として、現経営計画の5つの重点項目のうち、「安全・安心を支える」、「あまねく伝える」の2つを強化していくと示しています。強化する内容として、「“安全・安心”の追求」について、やはりこれまで安全・安心というと災害というイメージがありましたが、安全保障や感染症、地域課題など、個々人の身に何らかのリスクを負わせるようなことからもお守りする「信頼できる情報」を出していきたいと考えています。「“あまねく”の追求」では、地域インフラへの投資の強化について記載しています。
 その一方で、これまでの「徹底した構造改革」として、「これまでの方針の進化・深化」について記載しています。こちらでは、強化する重点項目について徹底した構造改革により原資を確保したうえで、さらに80億円規模の追加削減に取り組むと記載しています。
 9ページが「強化する重点項目」の具体的内容です。10ページは「受信料の値下げによる還元」として、一般向けに公表する資料です。その次の11ページが、「繰越金を活用したその他の還元」ということで、ネットワークインフラや災害対応について記載しています。最後に13ページで「修正後の収支見込み」を記載しています。
 もう一つの公表資料として、収支の見通しの算定根拠(案)がありますが、こちらには、事業収入、事業支出、構造改革、経営課題に対する重点投資などいくつかの項目がありますので、後ほどご覧いただければと思います。
 私からの説明は以上です。

 (礒山委員)

 前回までの経営委員会でのさまざまな意見を反映いただいたかたちでの修正も含め、相当の経営努力をされる覚悟を感じました。それを見てまずは評価させていただきたいと思います。
 また、先ほどから説明いただいた1,500億円を還元原資とすることについて、昨年1月に菅前総理が、月額で1割を超える思い切った受信料の引き下げにつなげると明言しましたが、そのときに衛星波や地上波という意見はなかったなかで、今回、地上波も含めてクリアする案になっていると思います。
 事業収入がこれだけ落ちることになることから、合理化が非常に大事だと思います。数字的には、これまでの議論でのわれわれの要望を反映していただいたと評価します。

 (尾崎委員)

 一生懸命ご検討いただいたと思いますが、もし私がNHKの責任者だとすると、2024年度から2026年度の中身は大変心配です。事業収入で、受信料収入が5,700億円で横ばいとなる、もしくは、営業努力によって増収する余地はあるとの説明でしたが、今後も日本の人口は減少し、世帯数も減っていく中で、いわゆる営業努力をするケースであっても、必ず受信料収入は減っていくのではないでしょうか。テレビ離れも進んでいるなかで、横ばいというのは、かなり頑張るケースだと私は思います。このような状況で、本当にご提示いただいたような事業収入5,900億円でいけるのかについては、とても懸念があります。
 逆に、もっと世帯数はこうなっていく、日本の人口はこうなっていく、テレビの普及率がこうっていくなどのデータを踏まえた積み上げを、ケース分けをしながら出していったり、何をどれくらい売り上げれば、こうなるといった検証をやったりしておかないと、今後3年間の計画としては、とても怖い計画だと感じます。
 また、事業支出についても、もちろんさまざまな努力をして減らしていくということはわかりますが、これから日本の方策として、労務費を上げていくということになってきています。世の中の労務費が上がっていくと、当然NHKも上げていかなければ、才能ある人が逃げていきますし、新しい人をリクルートできないということになります。
 NHKがこれだけコンテンツで勝負しようということは、それだけ能力のある人を確保していかなければならないということであり、労務費も当然これからは上がっていく方向になると思います。そこを、人数を絞っていくことで労務費を一定にすることもあるかと思いますが、先ほどもご説明があったように、これまで人数を増やさずにこれだけ事業費を大きくしてきたということは、これから人数を削減していくことは難しいのではないでしょうか。こういったことも踏まえ、今後の労務費はどう考えるのかということはぜひ説明していただきたいと思います。
 もし、労務費を減らしてやっていこうと考えるのであれば、逆に今度はITに投資をしていかなければならないと思いますし、その設備投資として、生産性、作業効率を上げるための投資が当然出てくるはずであり、それは一体どこからどのように投資するのかといった資金計画も、労務費をさわらないのであれば必要となるという点など、今回ご提示いただいたシミュレーションの裏には、もっと分厚い検討内容があるのだと思います。そこを説明していただかないと、「これはよい計画です」とは言いにくいと思います。
 きちんと数字を置いて、どのようなリスクが潜んでいるのか、何をどうすれば、計画が達成できるのかをきちんと示していただきたいと感じます。

 (前田会長)

 今、NHKの年齢構成において年齢層の高いところがボリュームゾーンとなっており、ここがとても大きいという構造です。このような年齢構成の構造上の問題で平均給与がとても上がってきたのですが、構造問題という意味では、この部分が変わりますので、別に高いところの給与を下げたり、人員整理をするといった必要もないと考えています。時間は若干かかりますが、構造的な問題は解決できると思っています。
 むしろ制作費が圧倒的にかかっています。人件費については、職員が1万人しかいないことから、そこを何か対処してコストを下げるという方策も取りにくいです。構造的な問題を解決すれば、この点はあまり心配していません。
 受信料について、支払率は8割となっており、やや頭打ちです。
 ただ、衛星契約割合はまだ53%ということで、伸びる余地があり、ここは伸ばす努力をしていることから伸びると思います。しかし、衛星契約が伸びても、要するに2階建ての上だけということになりますので、そこまで爆発的に収入は改善しません。
 受信料収入については、何もしないとおそらく下がりますが、そこについては、営業職員が1,000人おり、1,000人が何もしない、働かないということであれば別ですが、さまざまな取り組みをやっています。一挙に収入が上がるような方策はやめましたが、地道にやることに切り替えたので、さまざまなところと連携し、一緒にやっていくといったことをやれば、収入が雪崩のように落ちるようなことはないと思います。このようなことも踏まえ、横ばいと想定しています。
 さまざまなシミュレーションをしましたが、致命的にこれをやることで経営ができなくなるということは、ないと思います。努力要素は入れておりませんので、私はこれぐらいで大丈夫だと思っています。

 (長谷川委員)

 やはり今ここで大事なのは、「よいですね」と言うことではなく、とにかくここで一番心配なこと、これだけは起こしてはいけないということを、しっかりと見極めて、そのようなことは起きないという保証ができるかできないかをここできちんと議論することが大事ではないかと思いますし、そのためには、きちんとした数字が必要だと思います。
 何が絶対起こってはいけないことなのかについて、NHKの場合は、どこにしわ寄せがいくのかというと、番組の質が落ちることもあるかと思います。あらゆるところで高度で高品質なクオリティーということを言い続けていますが、前回の経営委員会でのこちらからの意見でもありました、コンテンツ強化についてもっと丁寧な説明が必要ではないかということについて、本当にコンテンツの質を落とさないためには、どこまでお金を削ることができるのかしっかりと議論すべきだと思います。
 スリムにするという説明で、あまり波を多くし過ぎることで、かえって質を落とすことになるといけないことから、波を減らすなど少しスリムにするということは、非常にわかるのですが、さらにそれ以上事業費を削減するとなると、質のほうにまで踏み込んでいくことになるのではないかと危惧します。どのくらいまで削減すると、そのようなレベルになるのか、しっかりと恒久的に質を確保できる見通しがあるのかどうか、そのようなところが、もう少しきちんとした、安心できる議論が必要ではないかと思います。

 (前田会長)

 例えば、NHKでドラマを作るときに、脚本家によってそれぞれ脚本の作り方も違います。
 ドラマもある意味では、時間制限がなく、1年間で作ればよいわけです。それを毎週放送するのであれば、毎週毎週ずっと作って出来上がっているということです。ここで、構造的な問題解決として必要なのは、いかに合理的な工程表を作り、待ち時間を減らすか、です。全員が一斉に作業に入れないことが問題であり、1つのことをやるときに、50人ぐらい必要なのですが、カメラを撮る人と役者がいて、ほかの人もいるなかで、全部意見が合わないと動かないのです。ものすごく膨大な時間と作業と待ち時間が発生することになります。それが全部コストに跳ね返ってきます。
 その点を、今かなり改善させ、よい形になりましたし、ある意味ではコストが下がりました。働き方も変わりました。そのような構造となっています。
 それから、もう一つ、毎日膨大なニュースを放送していますが、このニュースの出し方について、抜本的に変えようとしています。
 新聞は朝刊と夕刊がありますが、それの拡大版というかたちで、少し幅の広い締切り時間があって、24時間の中でどのようなやり方をしているかというと、夜中に起きた事件は、朝の7時まで待てと止めています。ダムのようにとめておいて、7時になったら出すということです。
 24時間放送できるテレビ局が、そのようなやり方をやっていると、ニュースの鮮度が落ちます。ニュースの鮮度は落ちるし、書いた記者も7時間待機しなければなりません。そのやり方も全面的にやり替えることにしました。

 (長谷川委員)

 それで質も上がり、費用も下がるということですか。

 (前田会長)

 かなり抜本的なことをやっています。そこはご指摘があったとおり質も十分維持できると思っています。

 (森下委員長)

 生産性を上げる方法をいろいろ試行しているということですね。

 (前田会長)

 あとは、AIを使った自動要約という装置ができています。これは、今まで人がやっており大変だった要約作業で、例えば1時間のものを、自由自在に5分でも10分でも要約できるシステムを開発したことで、人がやる必要がなくなりました。

 (長谷川委員)

 分かりました。ひと言で言えば、昔ながらの職人芸はやめようとしているということですね。

 (前田会長)

 そのとおりです。

 (堰八委員)

 値下げのところで確認させてください。「剰余金の使途の考え方」について、前回の経営委員会での説明では衛星放送中心の値下げの考え方だったのが、地上波を含めて値下げをする方向に変わり、さらに両方とも10%の値下げであったことから、少し驚きました。その点で、そろばん勘定の問題ですが、2023年度から2026年度までの事業収支差金を剰余金約1,500億円で充当し、2027年度からは収支均衡になるという中で、その他の剰余金の試算について、民放との二元体制の維持で約700億円、リスク対応で500億円、合わせて1,200億円をこれからキープしておきたいという話でした。今、2,300億円程度の剰余金から1,500億円引くと、800億円相当しか残らないわけですが、そうすると、単純に1,200億円をキープしておくためには、400億円足りない勘定になります。ここは、これから生み出すということでしょうか。

 (伊藤専務理事)

 リスク対応のところについては、500億円を上限とする枠という考え方です。最初の段階で、恐らく100億円程度準備されていますが、今後の決算で余った金額がここに積まれていき、最大で500億円程度になるまで積んでいくイメージです。

 (堰八委員)

 わかりました。つまり、収支均衡となっていますが、さらなる努力によって、若干でも毎年黒字が出れば、その分はこちらの枠の中に入っていき、最終的な目標である500億円程度になるまでは、値下げ等の原資などにはもちろん使わずにリスク対応のために使うという考え方でしょうか。

 (伊藤専務理事)

 そのような考え方です。

 (堰八委員)

 もう1点、営業経費ですが、法人委託を先にやめることの影響もあるなかで、地上波のほうも思い切って下げるという判断について、会長がおっしゃった「退路を断ってやる」という決意はすばらしいと思うのですが、今回の値下げ影響も踏まえ、安定的に見通せているのか、これからの外部との委託など、営業経費のところは大丈夫なのでしょうか。受信料を20円、30円でも下げるだけで、厳しい状況になるのではないかと思いますので、営業経費の計画が狂うといったことはないでしょうか。

 (伊藤専務理事)

 現在、新しい訪問によらない営業について、さまざまなチャレンジをしているところであり、何がベストなのかを探りつつ取り組んでいます。しかし、そのような中でも、使っていくお金の管理については、収支管理をきちんとやって、しっかり回していくことが重要だと思っておりますし、そこをしっかりと分析できる仕組みをつくっていきたいと思っています。
 これから営業業績をどう上げていくのかということは、この計画全体の非常に重要なキーになります。これだけお金を絞っているなかで、どれだけ業績を上げられるかは、経営的な最重要課題にもなってきます。
 そのためには、コンテンツを作っているところ、あるいは管理をしているところ、みんなに営業ファーストの考え方を定着させていく必要があると思っており、コストの問題のみならず、職員の意識改革も含めて、協会全体で総力戦でやっていきたいと思っています。

 (大草委員)

 数字の部分で確認ですが、支出が2022年度で6,900億円弱ぐらいであり、それを収支均衡と見込む2027年度で5,900億円ということは、支出を1,000億円、パーセンテージにして大体14%削減するということですね。
 また、収入も現在の6,700億円から5,700億円ということで、約1,000億円、パーセンテージにして15%削減するとなっています。1,000億円というと、随分収入も支出も削減規模が大きい気がしますが、1つ目は、支出の1,000億円削減について、本当にきちんとゴーイング・コンサーン(事業継続の前提)をしながら減らせるのかという点が気になります。2つ目は収入について、現在、さまざまな改革をやっているということですが、営業経費の節減は先行しているなかで、営業収入の下振れは、予算に対して歯止めがかかっていないのではないでしょうか。
 訪問によらない営業の成果や、勝ちパターンがまだ見いだせていない状況においては、1,000億円というのは、一見余裕度が大きいように見えますが、収入の減少について、パーセンテージにして15%の減少でとどめることができるのかという点について、少し不安に思います。
 支出、収入の削減の蓋然性、並びに訪問によらない営業の成果見込み、あとは収入が反転していくという説明がありましたが、反転する時期が想定どおりでよいのか、遅れることはないのか、といった点について教えていただきたいと思います。

 (伊藤専務理事)

 まず、支出については、昨年度予算で7,130億円と想定していましたが、決算ベースでは6,600億円台であり、非常に多くのお金が余りました。今年度についても、今のところ、一定額残るだろうと見ており、予算編成後にさまざまな改革を進めることで、想定されている支出を下回るという状況で、ここ数年推移しています。
 この流れがうまく今後も続けば、ご指摘いただいたようなことは、それほど大きな懸念にはならないのではないかと思っています。
 営業のところは、ご指摘のとおり、まず支出の削減を先行させたことで、確かに支出は減りましたが、その結果、営業業績がどのような手応えなのかについては、これからというところがあります。
 ただ、ここについては、あらゆる手を尽くしていくということと、さらに来年4月からは割増金が法的に導入されますので、視聴者に対して向き合うツールが、1つ増えるということもあります。
 一人ひとりの視聴者に対して、どのようなツールの組み合わせで向き合っていくのかについても、エリアごとに分析をしており、例えば4人家族で小さいお子さんが多いエリアといったエリア分析をしたうえで、それに見合うツールの充て方をトライして、PDCAを回すというかたちで進捗させているところです。このあたりがうまく機能してくるようになれば、状況も変わってくるのではないかと考えています。
 また全国で行っていく中で、各エリアを比較対照することで、より効果的に数字を分析していくということもやっておりますので、なるべく早期に対策をして、営業業績が上がっていくように持っていくなど、しっかりやっていきたいと思います。
 また、コンテンツとの連携について、例えば地域放送局などで、さまざまなイベント等の中継等を行うときに、営業のチームが一緒に、イベントの前段階、イベント中、あるいはイベント後のフォローアップなど、さまざまなかたちで連携しながらやっていくといった、NHKの優良コンテンツと営業活動の連携にもしっかり取り組んでいきたいと思っています。

 (大草委員)

 もう1点、今年度末で剰余金が2,300億となる見込みについて、その剰余金の中で、経営努力によってコスト削減した部分については、未来永ごう、効果があるものだと思うのですが、他方、コロナによる期ずれの部分もあるかと思いますので、その部分を値下げの原資に充ててしまうと、実際には予算の不足が生じてしまうと思いますが、いかがでしょうか。

 (伊藤専務理事)

 期ずれについては、ご指摘のとおりだと思います。現実として、建設工事関係では、やはり半導体不足で相当影響が出ており、つくりたいけれどつくれないというものが相当数あります。一方で、毎年毎年、計画を見直す部分もありますので、ある意味、相殺されるところもあると思っています。

 (前田会長)

 建設工事については、全国さまざまなところで今、修理等をおこなっていますが、コストが上がったとすれば、修理する期間を若干延ばすなどの対処もできます。一度にすべてつくれるわけではありませんので、全国50ぐらいある建物に対して、計画的に進めていますが、当然、かなり物価が上がっている中で、建設をするのもあまり賢くはないので、時期を延ばすというやり方も十分ありうると思います。

 (井伊委員)

 先ほど、尾崎委員から人口構造の変化などのデータを示すなど、もう少し根拠を出してほしいという指摘もありましたが、「2025年問題」と言われているように、団塊の世代が全て後期高齢者になると、施設に入る人も増えるでしょうし、若い人はテレビを持たない人も増えるとなると、今回ご提示いただいた2026年度までの想定について、その後も含めて、本当にどうなっていくと考えているのか、この資料だけでは見えないことがあまりに多いかなと思います。
 また、もう一つ気になるのは、今回も免除基準の変更についてご提示がありましたが、今までの免除基準についても、根拠のはっきりしないものがいろいろとあると思っておりまして、その影響も小さくないのではと思います。
 2018年に受信料を値下げしない代わりに、社会福祉法人が経営する施設を全て受信料免除にしましたが、このことについて、私は本当に問題があると思い、何度も当時の経営委員会で指摘をしました。ほかにも設置月の無料化などもありました。
 2018年の議論の中でも象徴的だった受信料体系の免除基準の部分などに、とても違和感がありますので、そのあたりも整理をしていかなければ、視聴者の皆さまも納得できない点があるのではないかと思います。

 (伊藤専務理事)

 免除基準については、歴史的な流れもあり、ご指摘のようなさまざまな問題もあるかと思います。

 (井伊委員)

 歴史的な流れで積み重なってということですが、本当に理解ができない、根拠がはっきりしないものがあるので、そこは整理しないと納得できないです。

 (伊藤専務理事)

 受信料の各種割引制度も、かなり複雑ですので、そのようなところは整理していきます。

 (井伊委員)

 これだけ払ったのでこれだけ見返りがあるといった、受益と負担の関係がはっきりするようなシンプルな制度にしていかなければ、値下げをしても納得感がないと思います。

 (伊藤専務理事)

 基本はシンプル化を進めることだと考えており、その一つが今回の継続振込と口座・クレジット料金の一本化です。これは、システム負荷をかなり緩和するという点もあります。とにかく受信料制度が複雑であり、さまざまな組み合わせをやると、3万とおりぐらいあるということで、値下げするときに、システムの関係でものすごく時間がかかることが単純にコストなので、そのようなことはどんどん改めていく必要があると思います。
 また、人口構造についてもご指摘いただきましたが、今回、1つの目玉としては、被扶養の学生について原則受信料を免除するところだと思っています。これは将来の顧客の創造につながります。見ていただかないと、顧客になりようがないことから、学生の間に無料で見ていただくことで、社会人になったら受信料を払って見てもらうという方向に持っていきたいと考えています。
 ただ、学生の皆さんがどこまでNHKに関心があるのかということもありますので、取り組みもいろいろと考えなければと思っています。接点をとにかくつくるためには、何年か最初は無料で見てもらうということもやっていきたいということです。

 (不破委員)

 経営委員会としては、これまでも地上波の受信料値下げについて検討をお願いしてきたことから、今回、真剣に検討いただいたことは、大いに評価をしたいと思いますが、問題はその裏づけとなる原資の部分です。受信料は一度下げると、足りなかったのでやっぱり上げますということはできないことから、かなり慎重に原資を考えなければなりません。
 それを踏まえた上でこの資料を読ませていただくと、「このように努力します」であるとか、「このように変えていきます」というような、定性的なことが書かれていますが、それによって、100億円下がりますなどの、いくら下がりますという積み上げが見えないことから、定量的な議論が、この資料だけではできないと思います。
 おそらく執行部では、もっと定量的な議論の上でこのような結論になったかと思いますので、その内容を見せていただかなければ、経営委員としてこれで是とする判断をするのは非常に軽率なことになってしまうと思います。
 もう一点、現場の方がどこまでこの計画を理解されているのでしょうか。現場が混乱すると困りますし、現場も含めた議論がどうなっているのかについてもご説明いただきたいと思います。

 (伊藤専務理事)

 定量的な分析は、さまざまな角度から進めているところであり、現状のお金の使い方に、新しいファクトも入れて計算していきます。積み上げるという考え方も存在しますが、今、まさに数字の部分で、例えば攻めの要素をどのように入れていくのかなどについて検討しているところで、必ずしも固まっていないという状況です。

 (不破委員)

 何らかの見通しはあるということですか。

 (伊藤専務理事)

 もちろんです。インターネット展開をどうしていくのか、あるいはグローバルな報道を強化するにはどうすればよいのか、災害報道のみならず、報道におけるプロフェッショナルをつくるにはどうすればよいのかなど、それぞれ予算を見ていくことになると思っていまして、そこは、経営計画がかたちになってきたことから、これから詰めをやっていき、具体的には来年の夏頃から経営委員の皆さまとさまざまな議論ができるかと思っています。

 (前田会長)

 さまざまな環境要因もありますが、今の受信料支払率80%を維持することはかなり強烈に努力が要ります。衛星契約割合は、50%がおそらく60%程度までは頑張ればいくと思いますが、80%までいくかというと、それはわかりません。
 ただ、学生に手当てをするということをしなければ、おそらく永遠に未来のお客さんがいなくなってしまいます。これだけ新聞やテレビ離れが起こっているときに、全く手がかりがない状態で、何もしないとなると、そのような状況が起きてしまいます。そうなるとNHKが成り立たなくなりますので、きついところはありますが、学生免除の拡大はやったほうがよいと思っています。

 (不破委員)

 学生の優遇措置もそうですし、先ほど会長から説明のあったニュースのオンデマンド化などについて、いわゆる先行投資が必要だと思いますので、その辺りも含めて定量的な内容を示していただいて我々も評価させていただければと思います。

 (前田会長)

 インフラはすでにありますので、そのようにシフトすればよいだけです。必ずしも何か新しくつくらなければならないということではありません。

 (明石委員)

 前回の経営委員会で、還元原資700億円、原則として衛星波のみの値下げという印象を持っていたものが、大幅に変わった印象です。しかも、われわれへの説明の前に、新聞報道などで地上波も値下げする方針を知るといった状況だったので驚きました。前回、700億円を使って衛星波の値下げだったものが、なぜ地上波を含めて1,500億円となったのか、ご説明はいただきましたが、私としては、すぐには納得ができないと感じています。
 また、前回までの経営委員会において、他の理事の方も参加している中でご説明いただいた内容から、今回新しいプランとなりましたが、次期中期経営計画にも大きく関わる内容だと思いますので、当然、各理事や各局長など、計画を考えていく皆さまがどれぐらい理解をされているのか、了承しているのか気になります。
 この資料を拝見すると、一部の部署だけで数字やプランをつくっている印象を受けてしまうことから、そのあたりのコンセンサスがどこまで取れているのか教えていただきたいと思います。

 (前田会長)

 けさ、役員説明会をやりました。その後、理事会もやりまして、全員賛成でしたので、ご理解はいただいていると思います。

 (明石委員)

 わかりました。これまで、原則として地上波を値下げしてほしいと要望してきましたので、地上波を値下げすることに関しては、非常に評価をしています。
 それに伴って、事業計画そのものも削減できるところは削減していく方向性に関してもよいと思いますが、やはり現場の方も含めて、職員の皆さんもかなり衝撃を受ける内容ではないかと思います。ぜひそこは、丁寧に説明をしていただきたいです。
 このような大きな組織が急激に縮小や、方向転換をすることは、とても大変なことだと思うので、そのあたりはしっかりとお願いしたいと思います。

 (前田会長)

 十分やらせていただきます。今の事業規模のトレンドについて、2021年度から私が責任を持って会長を務めておりますが、それまで事業規模が右肩上がりで来ていました。2021年度以降の現経営計画をつくったときにも、職員に対して十分説明しましたので、職員の方も自分たちが伸び切っている実感があります。伸び切ってしまって、仕事も手一杯になって、それもあふれてしまうという実感があることから、現場の方からすると、総量を減らしてほしいという思いがものすごく強い。それは私もそのとおりだと思います。
 ただ、生産性も実はとても悪かったことから、「これからは生産性を上げましょう」「上げないと働き方は変わりません」ということを、私は職員に、ここ2年間で相当直接対話してきましたので、理解いただいているものと考えています。
 また、衛星波を中心として値下げする方針としていたことについては、もともと基本的に衛星波の料金は割高感があるという思いがものすごく強いことから、1年前に計画を発表したときに、衛星波をやらせてくださいと宣言したきりです。そのままずっと来ておりますので、1年以上たって、今回の見直しでは地上波も含めて値下げをやろうということです。
 突然方針を変えたということでは全くありません。これまでさまざまな議論を重ね、皆さんからのご意見も伺ってここまで仕上げたということです。

 (大草委員)

 今回は2023年度までの現経営計画の修正案ということで、当然、2023年度で切れているわけですが、「それ以降については、どのように考えていますか」や、「将来的な事業規模について、どのように考えているのですか」という質問があった場合、どの程度まで踏み込んで答えられるのでしょうか。

 (伊藤専務理事)

 2024年度からまた新たな中期経営計画をつくることになります。それをつくるのが来年の夏から秋頃の時期になると思っておりまして、最終的には2024年の1月で議決をいただけるよう運びたいと考えています。

 (大草委員)

 5,900億円の事業規模については言及しないということですか。

 (前田会長)

 この数字はあくまでもシミュレーションということです。

 (伊藤専務理事)

 営業改革の今後の進捗が上振れしていけば、この数字も上がっていくことから、2022年度から2023年度にかけて、どこまで改革を進められるかの成果が次の経営計画に表れるということになります。

 (森下委員長)

 皆さんから多くの意見を出していただきましたが、後ほど再度審議する時間がありますので、この場はいったん終わりにします。

 

<前田会長、伊藤専務理事 退室>

 

 

2 今後の議事運営について①

 執行部から、経営計画の修正について説明を受け、意見交換を行った。

 

 

3 今後の議事運営について②

 執行部から出された、経営計画の修正に対する経営委員会の見解について、意見交換を行った。

 

<前田会長、正籬副会長、専務理事、理事 入室>

 

 

4 議事録確認

 第1408回(2022年9月27日開催)の議事録を承認し、所定の手続きを経て、2022年10月14日に公表することを決定した。

 

 

5 監査委員会報告(資料)

 (大草監査委員)
 2022年度監査委員会監査実施計画について、本日の監査委員会で一部変更を決定しましたのでご報告します。
 監査委員会では、2022年度監査委員会監査実施計画をことし7月25日に定めましたが、協会が2022年9月に公表した「職員の労災認定」や労基署による指摘を受けて進めている健康確保のための取り組みと、同じく9月にBPOから意見が出された「BS1スペシャル」に関する再発防止の取り組みについて、喫緊の重要な経営課題であるとの認識から、新たにその他の監査項目に追加することとしました。詳しくは別紙をご覧下さい。監査計画の内容は、監査の実施過程で必要に応じて見直されるものであり、重要な修正が必要になった場合はその都度経営委員会に報告していますが、今回はその機会となります。
 監査委員会からは、以上です。

 

 

6 会長報告(資料1)(資料2)(資料3)

 (森下委員長)
 前田会長から報告をお願いします。

 (前田会長)
 「高野山テレビ中継放送所」の工事で世界遺産の参道を破損した事案についてです。関係する懲戒処分については人事担当理事から、再発防止策については技師長から説明します。

 (安保理事)
 それでは、ことし4月の「高野山テレビ中継放送所」の工事に関する懲戒処分についてご説明します。
 協会として処分したのは5名です。いずれも当時の職位で、技術局の局長、専任局長2名、部長、それにグループ経営戦略局付きで、株式会社NHKテクノロジーズ(以下、NT)に出向中の社長です。あわせて5人、いずれも減給の懲戒処分です。
 処分の理由です。技術局長らは、委託元として、NTに対する指導や管理が不十分でした。文化財の保護を呼びかける立場でもあるNHKが、関連会社の法令違反により世界遺産を傷つけたことは、NHKの社会的信用を大きく損なうものでした。直接の原因はNT側にありますが、技術局の関係者についても、公共メディアの社会的責任を考えると、重い責任があると考えます。「関連団体運営基準」では、NHKは「関連団体の事業運営に対して運営基準および基本契約等に基づき指導・監督を行う」と定められています。今回の事案では、NTの現場社員の独断で違法な工事が行われましたが、技術局は委託元としての責任を十分に果していませんでした。4名は、当時それぞれ重要な立場にあり、いずれも委託元としての責任は重いと言わざるを得ないと判断しました。
 NTの社長は、NHKグループとして法令順守とコンプライアンスの徹底、社員教育や管理監督が十分ではありませんでした。この件について会長が担当役員の児玉 理事・技師長を厳重注意としました。技師長は報酬の一部を自主返納することとしました。10%3か月です。NTでも、関係する社員7人の処分を行いました。工事担当者として、大阪総支社の社員2人が出勤停止3日。上司など、本社も含めあわせて5人が、出勤停止1日から5日、または減給となりました。こちらも、当時の職位です。さらに、取締役2人が役員報酬の一部を自主返納します。
 処分についての説明は以上です。

 (森下委員長)
 再発防止策について説明をお願いします。

 (児玉理事・技師長)
 事案の原因と再発防止策についてご説明します。世界遺産の破損についてです。関係者の方々に多大な迷惑をおかけしたこと、視聴者の信頼を著しく損ないましたことを改めて深くおわびいたします。
 この工事では、去年3月にNTが現地調査をもとにヘリコプターと人力を活用した資材搬入を立案し、6月にNHKがその内容で工事をNTに発注しました。今年2月に、NTの担当者は、資材の一部を世界遺産である「女人道(にょにんみち)」を利用して、運搬車を使った納入に変更しましたが、必要な許可申請や上司への報告を行いませんでした。上司は工事の施工計画書の変更に気が付かず、工事の施工管理をNTに委託していたNHKへの報告もありませんでした。4月に着工しましたが、高野町から「必要な申請が出されておらず、法令違反」という指摘を受け、工事を中止しました。文化庁に顛末書を提出し、7月に文化庁からの通知を受け取った後、先月、復旧工事を完了しました。
 原因と背景についてです。NHKおよびNTの担当者は、女人道が世界遺産に登録されていることは認識していたものの、文化財保護法に基づく史跡の現状変更に係る規制事項等への理解が著しく不足していました。NTでは、今回の工事計画の変更の際に、定められた業務プロセスに則った運用が行われておらず、社員に法令順守や業務手順の確実な履行を求める日常的な指導も不十分で、内部統制やチェック機能が働いていませんでした。発注者であるNHKは、NTに対して、工事内容・施工方法の変更に関する指導や、法規制の確認・対応について仕様書の記述も不十分でした。その背景としては、長年にわたる委託構造の中で、NHKとNTの間で役割や責任があいまいになっていました。
 再発防止策です。事案発生以降、文化財保護に関する勉強会の開催、法令チェックシートの活用、業務手順の見直しや確認内容の明確化を進めてきましたが、さらに法令順守の取り組みを強化します。
 技術局に法令順守推進機能を位置づけ、毎年の法令チェックシートの改訂や地元自治体への法令確認の実施状況の把握、法規制対応要領などを盛り込んだ「標準工事手順書」を作成します。あわせて、屋外設備の整備等に関わる全職員とNT社員を対象に定期的な法令順守の勉強会を開催します。
 委託管理体制も強化します。技術局に委託管理責任者を設置し、NT側の管理責任者と連携し、仕様書の確認・見直しなど継続的な品質点検を行います。そして、工事の発注から検査検収の間のステップ毎の確認内容を明確化して、NTでのレビューの記録をNHK担当者と確認することにしましたが、委託管理責任者が第三者的な視点で確認状況を点検することにします。
 加えて、委託構造を見直し、送受信業務の工事と設計・施工管理をNTが重複して行うことを今年度末までに解消します。そして、来年度末までに設計・施工管理業務はNHKが行う体制に移行します。このほか、リポートラインの階層の見直しや一報連絡の重要性の浸透によって、危機管理事案の経営層への迅速な伝達を徹底します。以上の再発防止策を徹底し、二度と法令違反を起さないよう取組んでまいります。世界遺産の破損について以上です。

 (明石委員)

 再発防止策も含めて、総じて組織対応をして新たな事案が起こらないようにしていく方向性は理解できますが、現場の方がもう少しきちんとした知識と専門性を持っていれば、起こらなかった事案ではないかと思います。組織対応をしていろいろなチェックリストを増やし、責任体制を明確にするようなことが増えれば増えるほど、業務が煩雑になり、責任体制が明確にならないという側面もあると思いますがいかがでしょうか。

 (児玉理事・技師長)

 高野山の事案につきましては、もともと法令をチェックするためのチェックシートが用意されていたのですが、きちんと活用されていませんでした。2007年に作られた手順書やチェックシートは、引き続きNT側で活用されているとNHKは思い込んでいました。NT側ではデジタル放送への移行が終わった以降、それぞれ社内での教育でも活用していませんでした。お互いがやっているだろうと思い込んでいました。改めて新しく強化するというよりは、もともとあった仕組みをきちんと働かせるようにしていくということが私は高野山の事案についての重要な再発防止になると考えます。

 (森下委員長)

 再発防止策を考えていただいておりますので、これをしっかりと実行していただくことをお願いしたいと思います。次も報告であります。前田会長、お願いします。

 (前田会長)
 2点目です。2019年に当時の首都圏放送センターの男性管理職が亡くなり、労災と認定された件につきまして、当時の上司などを処分しました。人事担当理事から説明します。

 (安保理事)
 処分の対象者は3名です。首都圏放送センターの報道部門の統括だった専任部長と、労務担当で取材統括でもあった副部長2名。いずれも減給の懲戒処分です。労務担当の2人は、男性管理職が亡くなる前の7月に交代した前任と後任の関係でした。
 処分の理由ですが、3人は、職員の健康確保のために設けられた長時間労働を抑制する取り組みを徹底することができませんでした。労務担当の副部長2人は、おおむね勤務管理のルールに則って対応し、一定の業務負担軽減もしていましたが、亡くなる2か月前から6か月前の時間外労働の平均が、いわゆる過労死ラインとされる80時間を超えていた期間がありました。
 専任部長は、報道部門の統括として業務全体のマネジメントにあたる立場であり、管理職の業務バランスなどを考える必要がありました。長時間労働になったときなどの報告は、専任部長にも届いていました。
 いずれも、業務の抑制などにもう一歩踏み込むことができず、状況を改善させることができませんでした。男性管理職が亡くなったこと、さらに労災認定されたことにも鑑みると、3人の責任は重いと判断しました。
 当時、首都圏放送センターのセンター長だった中嶋太一理事につきましては、会長から厳重注意を受け、役員報酬の一部自主返納を申し出ました。

 (中嶋理事)
 本件の過労死につきましては、話がありましたとおり、私が首都圏放送センター長になった当時に起きたことであります。先ほど安保理事から説明があったような理由で、懲戒処分が今回行われまして、私は会長から厳重注意処分を受けました。ご遺族に対して改めて深くおわびするとともに、皆さんにもご迷惑をおかけしました。大変申し訳ありませんでした。

 (安保理事)
 再発防止の進捗について説明します。9月29日に全国局長会議を開催し、会長や私から、業務改革の徹底と職場環境の見直しを局長に指示しました。
 今月からは、長時間労働が続いたり、休日・休暇の日数が少なかった職員がいた場合、所属する部署の局長に対し、原因分析と、再発の防止にむけた取り組みについて報告を求めることにしています。
 全国すべての職場では、11月末までの期間に、業務スクラップやカバー体制の構築、業務負担の偏りの是正など、職場の業務改革をテーマに意見交換し、結果を本部へ報告する取り組みが始まっています。
 健康確保施策の見直しも進めており、毎週開催している外部有識者による検討会での助言も踏まえ、12月には、より実効性の高い施策に見直す予定です。一人ひとりの職員の心身の健康を大事に、時間的、心理的ゆとりを持った職場づくりに向けて組織風土そのものを変えていくよう取り組んでまいります。説明は以上です。

 (長谷川委員)

 職員の健康管理をしっかりしようするときに、おそらく80%ぐらいの方は健康管理という言葉を聞いただけで、そのようなことが面倒だと感じる方がいると思います。例えば、職員への広報として、「体調管理はトップアスリートに学べ!」など、職員にアピールする広報を工夫していただけたらよいと思います。

 (大草委員)

 この点については監査委員会でも大変重要な問題と捉えておりまして、森下委員長からの要望も踏まえて、一般論として管理するだけではなくて、人事局といろいろ共有しながら個別の部署ごとに、当分の間、モニタリングを監査委員会でフォローさせていただきますので、ご協力をお願いします。

 (安保理事)

 大草委員からありました勤務データですが、一律的に全体を直すだけではなくて、繁忙な職場、一番リスクが高いところについて、どのようにしていくかということが必要だと思っています。よろしくお願いいたします

 (森下委員長)

 具体的な改善策について、監査委員のほうで定期的にフォローをしていただくということですので、よろしくお願いします。それでは、本件は終了します。

 

 

7 議決事項

 (1)インターネット活用業務実施基準の変更について(資料1)(資料2)

 (伊藤専務理事)
 改正放送法が10月1日に施行されたことに伴いまして、インターネット活用業務実施基準の一部について、形式的な変更が必要になっています。ご審議の上、議決いただきたいと思います。
 参考としています「インターネット活用業務実施基準の変更について」でご説明します。
 まず、放送法の改正によりまして、実施基準の策定義務を規定する第20条第9項は、第10項に繰り下げられました。実施基準では第1条で放送法第20条第9項の基準であることをうたっておりますので、これを第10項と改めます。
 同様に実施基準の認可の要件を定めた第20条第10項は、11項に繰り下げられました。またこの中で、受信契約の締結義務を定めた放送法第64条第1項の内容に言及している部分が、64条1項の改正に伴って変更されています。11項の3号、黄色マーカーの部分に注目していただければと思いますが、「その放送受信についての契約をしなければならない」という文言が「受信契約を締結しなければならない」と変わっています。
 実施基準では第4条で放送法第20条第10項に触れておりますので、改正法に合わせて変更します。赤字・下線が変更するところです。実施基準の本則の変更は以上です。
 変更の施行日については附則で定めています。すでに施行されている放送法とのずれを速やかに解消するため、総務大臣の認可を受けた日とします。ここまでご説明した内容につきましては、議決をいただければ速やかに総務大臣に認可を申請します。
 もう1点、実施基準につきましては、すでにNHKワールド・プレミアムの外国動画配信事業者への提供について、8月の経営委員会で議決をいただき、認可申請をしているところです。今回ご説明した変更は形式的な変更であり、またすみやかに施行する必要があることから、認可申請中の案よりも先に総務大臣の認可を受けて施行されることが想定されます。
 その場合には、現在認可申請中の案を一部修正する必要が生じます。本日、この修正についても併せて議決をいただきたいと考えています。
 スライドの下の枠をご覧ください。附則第1条のマーカー部分の変更に伴って廃止する基準を「令和4年1月11日に認可を得た基準」としていますが、この日付を、先にご説明した変更について認可を受けた日付と入れ替える修正を行います。修正はさきにご説明した変更につきまして認可を受けた場合に速やかに行います。
 最後に意見募集についてご説明をします。実施基準につきましては、放送法施行規則の規定によりまして、経営委員会の議決をいただく場合は意見募集を行うこととされていますが、放送法改正に合わせて放送法施行規則が改正され、形式的な変更については意見募集が不要となりました。今回ご説明した内容はいずれも形式的な変更に該当し、意見募集は不要となります。この資料での説明は以上です。
 本日、議決いただければ速やかに総務大臣に認可を申請します。現在、認可申請中の案の修正については、日付が確定次第、必要な手続をします。ご審議のほどお願いします。

 

 採決の結果、原案どおり議決。

 

 

8 審議事項

 (1) 経営計画の修正について

 (森下委員長)
 次は審議事項です。経営計画の修正について再び審議をします。

 (前田会長)
 内容は、先ほど説明したとおりなので、簡単に伊藤専務理事から補足の説明をさせていただきます。

 (伊藤専務理事)
 NHKの現在の経営計画は、黄色い冊子全4ページで記載していますが、この内容の修正について、「『NHK経営計画(2021-2023年度)』の修正について(案)」として、A4用紙1枚で準備しています。現経営計画のどこをどのように変更したかが、こちらの資料に書かれていることになります。
 修正案についてご説明します。ポイントとしましては、4点あります。「感染症の拡大やウクライナ情勢など新たな課題を踏まえ、『5つの重点項目』のうち、『1.安全・安心を支える』、『3.あまねく伝える』の内容を強化します」、「衛星波1波を2023年度末に削減します」、「構造改革や経営努力の成果を視聴者のみなさまへ還元するため、受信料を1割値下げします」、「受信料の値下げを踏まえ2023年度の収支見通しを修正します。なお、放送法の規定により、収支予算・事業計画の国会承認をもって確定されます」、この4点が主なポイントになります。
 5つの重点項目のうち、1について、災害時の安全・安心は直感的にあると感じますが、それ以外にも安全保障、感染症、地域課題など、暮らしの安全を支える、「信頼できる情報」の発信が求められていると認識していますので、これを強化していきます。
 また、3の「あまねく伝える」では、地域インフラへの投資を強化し、放送通信融合の時代に、世代や場所にかかわらず「放送の価値」を届け続けるとしています。世代とは、NHKのテレビに接することが比較的少ない若い世代、場所とは、テレビの前にいなくてもインターネットを通じてという趣旨です。
 続いて、スリムで強靱な「新しいNHK」を目指す構造改革について、まず、衛星波の削減として、2024年3月末に衛星波2波のうち1波を削減します。
 「インターネット活用業務」については、在外邦人向けコンテンツについて、放送だけではなく、インターネット配信も活用し、きめ細かく届けていきます。
 また、「受信料の価値を最大化」するマネジメント施策として、訪問によらない営業活動の進化、あるいはジャンル管理について記載しています。
 裏面の「視聴者のみなさまへの”還元”について」です。構造改革による支出削減に加えて、経営努力によって生み出した財政安定のための繰越金をもとに、下記のとおり受信料の値下げや視聴者のみなさまの将来負担の軽減につながる先行支出などを行うとしています。
 このうち、値下げについては、2023年10月から実施をします。地上契約1,100円、衛星契約1,950円となります。さらに、学生への免除を拡大します。
 視聴者のみなさまの将来負担の軽減につながる先行支出等については、ネットワークコストの削減、視聴者の将来負担の軽減につながる先行支出として、民放との放送ネットワークの効率的運用、あるいはソフトウエア化対応研究等、さまざまなことに600億円を使っていく考えです。
 また、日本のコンテンツ産業全体の視点から、公共的コンテンツの創造・展開の強化に係る支出として100億円、それ以外に、NHK自身の災害時等の持続可能性を担保する財政安定のための繰越金が、少なくとも500億円程度は必要だと考えていると記載しています。
 最後に、経営計画期間中の収支見通しについては、最後の2023年度のみ変更しています。いずれも、大きな削減となっています。
 説明は以上です。

 (尾崎委員)

 一生懸命努力して、受信料を値下げしようという執行部の姿勢には敬意を表しますが、原資が剰余金ということで、剰余金は、無制限・無尽蔵にあるわけではないので、値下げを永続的なものにしようと思うと、やはりスリム・強靱と掲げてやってきた改革を、さらに高度に続けなければならないと思います。
 2024年度以降、本当に必死になって努力をしないと、値下げをしたあとでもクオリティを保ちながらNHKが経営できるかどうか心配なところがあります。2023年に値下げをしますが、中長期的に頑張ってやっていくという経営陣の覚悟が問われることになると思うので、そこをしっかりやっていただきたいと思います。

 (伊藤専務理事)

 2024年度以降の経営計画を考えていく上で、今年度残りの期間と来年度いっぱいで、どこまで現場の意識改革が進められるかがキーになると思っており、その改革の成果を次の経営計画につなげていくことになると考えています。そこの進捗がはかばかしくないと、次の経営計画の中身も堅実なものになりませんし、そのコストでやれないとなっては元も子もないので、しっかりと取り組んでいきたいと思います。

 (尾崎委員)

 2023年度だけの経営計画の変更ではなく、本当に中長期的にこれはやり遂げることを、今、決めているという認識をぜひ持っていただきたい。

 (伊藤専務理事)

 ご指摘のとおりです。

 (長谷川委員)

 5つの重点項目のところで、「経営資源をコンテンツに集中させ、生産性向上につながる制作工程改革を加速させます」と記載がありますが、この経営資源をコンテンツに集中させるという部分は、非常に大事なところだと思います。経営資源はお金だけのことではありません。制作者が集中できる環境をつくってあげるということが何よりも大事です。その意味からも、放送に携わっている人たちを営業の場に駆り出すようなことはくれぐれもやめていただき、集中できる環境をできるだけつくってあげることで、優秀なコンテンツ生み出していくような方向性にしていただきたいと願っています。

 (伊藤専務理事)

 コンテンツづくりはプロフェッショナルでなければならないですし、場面、場面で、かなり集中度を高めないと、正確で信頼できる情報を発信できません。しっかりとその辺は確保していきたいと思っています。

 (堰八委員)

 われわれとしては、前回の経営委員会でも値下げについては衛星波だけではなく、地上波も考えたほうがよいと意見してきたことから、今回、両方とも1割値下げするという強い決意を示されたことに対しては、敬意を表したいと思います。
 その上で、営業経費について、法人委託をやめることで大幅な削減となることから、これは1つの合理化・効率化でよい施策ですが、一方で、それを補うための新たな受信料収入を安定的に維持する、あるいは増やしていくためのさまざま取り組みについて、必ずしも進捗状況が芳しくない部分もあるかと思いますので、ここはぜひしっかりと取り組んでいただきたい。
 前田会長が会長になる直前の2020年度の事業支出7,300億円が、2027年度見込みで5,900億になるということで、1,400億円事業支出を落とすために、さまざまな改革に取り組まれると思います。1,400億円というと、中堅企業1社当たりの年間売上げにも匹敵する金額であり、非常に相当の努力と覚悟が必要だと思いますので、ぜひ皆さんで協力して、完遂をしていただきたいですし、われわれもしっかりと応援していきたいと思います。

 (伊藤専務理事)

 ありがとうございます。

 (明石委員)

 衛星波、地上波ともに値下げをすることは、視聴者や国民から非常に評価される内容になったと思います。しかし、かなりのダウンサイジングを強いられることを考えると、2024年度以降の経営計画は、ある意味では予算ありきで、そこからどのように絞っていくのかが重要になるのではないでしょうか。
 2023年度までよりも、2024年度以降が非常に重要だと思いますので、ぜひ理事の方を含め、執行部でよく精査をして、次期経営計画は持続可能なものをつくりあげていただきたいと希望します。

 (伊藤専務理事)

 2024年度から新しいERPを導入し、予実管理をしっかりとやる方向で検討しています。放送現場は、予算が減っていく中で、かなり予実管理をしっかりやらないと回らなくなると思っておりますので、その仕掛けを2023年度中につくっていきたいと思っています。

 (井伊委員)

 学生への免除を拡大することは、大学の教師としてはとてもうれしいニュースではありますが、NHKの受信料は、免除基準に根拠がはっきりしないものも少なくないと私は考えています。
 2018年の基準変更の際にも経営委員会で何度か指摘をしましたが、よい制度というのはシンプルな制度だと思います。受益と負担の関係が分かりやすいものにすることで初めて、受信料の値下げに対して国民の理解や、ありがたみも伝わると思います。できるだけシンプルに、分かりやすい制度にしていくことを、このような大きな改革をするときには心がけていただければと思います。

 (伊藤専務理事)

 ありがとうございます。

 (森下委員長)

 それでは、経営委員長としてのコメントを申し上げます。
 2023年度に受信料値下げの方針がうたわれている現経営計画の修正について、経営委員会では数次にわたり審議を重ねてきました。本日、経営委員会から出された懸念事項等に対して、今後検討していただくことを条件として、執行部の提案を大筋で了承し、この修正案の意見募集を行うことを決定します。
 スリムで強靱な「新しいNHK」への変革を目指す現経営計画は順調な進捗であることから今回受信料の値下げが可能となったものであり、皆さまのご努力に敬意を表します。一方で、今後とも「訪問によらない営業」を着実に拡大させ、軌道に乗せていく必要があります。また、放送やサービスの価値をいっそう高め、より多くの視聴者に良質なコンテンツに触れていただくことも課題です。
 2023年度に視聴者の期待に応えられる値下げを行うにあたっては、後年度の負担が非常に大きなことから、さらなるスリム化と、強じんな新しいNHKへの改革を徹底することが求められます。執行部には計画実施にあたっては、強い決意と緻密な計画で臨んで欲しいと思います。
 これから意見募集を行いますが、経営委員会では、いただいた意見を真摯に受け止め、視聴者・国民の皆さまの期待に応えるために何をすべきかをあらためて整理していきます。引き続き、執行部と議論を重ね、計画へ適切に反映することを求めていきます。
 以上です。それでは、本件は終了します。

 

 (2) 放送法改正等に伴う日本放送協会放送受信規約の一部変更について(資料)

 (森下委員長)
 次は審議事項です。放送法改正等に伴う日本放送協会放送受信規約の一部変更について執行部から説明をいただき、審議をしたいと思います。
 (正籬副会長)
 放送法改正に伴う日本放送協会放送受信規約の一部変更についてご審議をお願いします。
 受信規約の変更につきましては、総務大臣に認可申請する案の議決にあたり、法令に基づき経営委員会において意見募集を行うこととなっております。素案を取りまとめましたので、ご審議をお願いします。
 説明資料を使ってご説明します。今回の受信規約変更の概要、条文ごとの変更内容、それから割増金の内容について説明したものです。
 1ページです。受信規約変更の概要について説明します。今回、放送法と総務省令の改正等に対応するため、2023年4月から放送受信規約を一部変更したいと考えております。2022年10月に受信料の適正かつ公平な負担を図るための制度の整備を含む改正放送法が施行され、これに合わせて受信契約の条項に定める事項などを規定する総務省令が改正されました。そのため、今回、受信規約に放送受信契約の申込み期限を新たに規定するとともに、割増金に関する事項など、法令の改正に対応するために必要な変更を行います。そのほか支払い手段の多様化への対応や、個人情報保護法の改正に伴う告示の変更等、必要な規定の変更を行います。
 2ページです。受信規約素案の条文ごとに内容をご説明します。
 割増金に関連する変更についてです。第3条において、受信契約の申込み期限を現行の受信規約で「遅滞なく」とされていることとの整合性等から、受信機の設置の月の翌々月の末日までと規定します。
 第12条において、割増金は事由に該当する場合、全て一律に請求するのではなく、個別事情を総合勘案しながら運用していく方針から「請求することができる」と規定します。
 割増金については、後ほど詳しくご説明しますが、割増金の対象となる具体的な不正として、解約と免除を虚偽の内容で届け出ることを規定します。また、受信契約の申込み期限を過ぎた場合の割増金について、割増金の対象期間や地上契約をされている方が衛星放送の受信設備を設置された場合も適用されることを規定します。割増金の倍数は改正省令で定める上限の2倍と規定します。
 第12条の2において、延滞利息も割増金と同様に請求することができると規定します。
 付則において、変更規約の施行以前の受信機設置者の割増金の取扱いについて、契約申込み期限は「変更後の受信規約施行の翌々月末日まで」、割増金を請求する期間は「変更後の受信規約施行後の期間分」と規定します。
 続いて、そのほかの法令に関連する変更についてです。
 第2条において、「受信契約を締結する必要はない場合」について、「事業所等住居以外」の必要がない場合を規定します。
 第4条におきまして、「契約の成立時期」について、2017年の最高裁大法廷判決を踏まえ「受信機の設置者とNHKの双方の意思表示の合致の日に成立する」と規定します。
 その他の変更事項についてです。
 第6条において、支払い手段の多様化対応として、「継続振込」による支払いを紙の払込用紙以外でも行えるように、振込用紙が電磁的方法により提供される場合を含むことを規定します。
 第13条の2において、個人情報保護法の改正に伴う対応として、ガイドラインの告示日・番号等を変更します。
 第7条において、用字の整理を行います。
 3ページです。割増金に関する受信規約素案の内容についてご説明します。改正放送法では、「不正な手段により受信料の支払いを免れた場合」と「期限までに受信契約の申込みをしなかった場合」に割増金を請求できることが規定されました。
 「不正な手段により受信料の支払いを免れた場合」として、悪質性が高いと考えられる「解約」と「免除」の2点について不正があった場合に対象となることを規定します。「解約」と「免除」以外にも不正は考えられますが、その他の不正で割増金の対象とする場合には、悪質性などを総合勘案して、第3号の包括条項で対応したいと考えています。
 「期限までに受信契約の申込みをしなかった場合」の申込み期限を、「受信機の設置の翌々月の末日まで」として、期限が過ぎた場合に「請求することができる」と規定します。2〜3か月の申込期間があれば十分に申し込みいただくことができ、NHKからも申込みを促す等の必要なご案内が可能であると考えています。なお、地上契約をしていて新たに衛星放送の受信設備を設置された場合も、申込み期限を過ぎた場合は割増金の対象となります。割増金の額ですが、国内の類似法制度の水準や公平負担が実現されることを期待して導入された制度であることを踏まえて、改正省令で定める上限の「2倍」と規定します。
 4ページです。割増金についてのNHKの方針のご説明です。NHKとしては割増金が導入されてもNHKの価値や受信料制度の意義をご理解いただき、納得してお手続やお支払いをいただくという、これまでの基本方針に変わりはなく、割増金は事由に該当する場合に全て一律に請求するのではなく、個別事情を総合勘案しながら運用していくものと考えています。法改正の国会審議の経緯として、金子総務大臣の答弁と附帯決議を記載しています。
 別紙の素案についてです。具体的な受信規約の条文の変更内容は左側が変更案、右側が現行規約として示しております。各条のご説明は割愛させていただきます。なお、付則の第1項で施行日を来年2023年4月1日と規定しています。
 説明は以上です。ご審議よろしくお願いいたします。

 (森下委員長)

 それでは、この変更案を大筋で了承し、意見募集の手続に進めたいと思いますが、よろしいでしょうか。ただいまの審議を踏まえまして、経営委員会は執行部案を大筋で了承し、明日から1か月間の意見募集の後、本件について改めて審議をいたします。

 

<前田会長、正籬副会長、専務理事、理事 退室>

 

<正籬副会長、林専務理事 順次入室>

 

 

9 評価・報酬部会

 (1) 2022年度役員ヒアリング

 正籬副会長、林専務理事に対して、2022年度役員ヒアリングを実施した。

 

<正籬副会長、林専務理事、 ヒアリング終了後、順次退室>

 

 

10 今後の議事運営について

 「経営計画の修正について」、ならびに「放送法改正に伴う日本放送協会放送受信規約の一部変更について」の意見募集について、意見交換を行った。

 

 

11 視聴者のみなさまと語る会(富山)登壇者報告

 9月17日に参集で開催された「視聴者のみなさまと語る会(富山)」に登壇した森下委員長、尾崎委員から報告を受けた。

 

 

12 視聴者のみなさまと語る会(1都3県・学生)開催決定

 2022年度の5回目となる「視聴者のみなさまと語る会(1都3県・学生)」を、1都3県にお住まいの学生の方を対象に2022年12月1日木曜日にオンラインで開催することを決定した。

 

 

13 経営委員会規程の改正について

 放送法および放送法施行規則の改正・施行に伴い、経営委員会規程を改正し、2022年10月11日に施行することを決定した。

 

14 指名部会

 会長任命に関する指名部会を開催した。

 

 

 森下委員長が散会を宣言。

 

 

 上記のとおり確認する。

 

2023年1月24日       

森 下  俊 三 

 

 

大 草  透