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第1407回
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2022年9月30日(金)公表
※「6 審議事項(1) 経営計画について」は、2023年1月27日(金)公表

日本放送協会第1407回経営委員会議事録
(2022年9月13日開催分)

第1407回 経 営 委 員 会 議 事 録

<会 議 の 名 称>

第1407回経営委員会

 

<会 議 日 時>

2022年9月13日(火)午後1時00分から午後5時50分まで

 

<出 席 者>

〔経 営 委 員〕

  森 下 俊 三 村 田 晃 嗣 明 石 伸 子
    井 伊 雅 子   礒 山 誠 二 大 草   透
    尾 崎   裕    原 一 夫 堰 八 義 博
    長谷川 三千子   不 破   泰 水 尾 衣 里
  ◎委員長 ○委員長職務代行者(以下、「代行」という。)

 

〔執 行 部〕

  前 田 会 長 正 籬 副会長 林   専務理事
  板 野 専務理事 小 池 専務理事 伊 藤 専務理事
  児 玉 理事・技師長 中 嶋 理 事 熊埜御堂  理事
  山 内 理 事 安 保 理 事 山 名 理 事

 

 

< 場   所 >
○放送センター  22階経営委員会室  21階役員会議室

 

< 議   題 >

 

1 内部統制関係議決について

 

2 説明会

 (1) 関連事業持株会社設立に向けた検討状況について

 (2) 経営計画について

 

3 議事録確認

 

4 会長報告(資料1)(資料2)

 

5 議決事項

 (1) 内部統制関係議決について(資料)

 

6 審議事項

 (1) 経営計画について(資料1)(資料2)

 

7 評価・報酬部会

 (1) 2022年度役員ヒアリング

 

8 指名部会

 

 

<議事経過>

 

<経営委員 入室>

 

 森下委員長が経営委員会の開会を宣言。

 

 (森下委員長)
 本日の経営委員会は新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、みなさまにはマスクを着用のうえ、出席いただいています。

 

 本日の議題および日程について説明。

 

 

1 内部統制関係議決について

 内部統制関係議決について、事務局から説明を受けた内容を踏まえ、意見交換を行った。

 

<中嶋理事 入室>

 

 

2 説明会

 (1) 関連事業持株会社設立に向けた検討状況について

 執行部から、関連事業持株会社設立に向けた検討状況について説明を受け、意見交換を行った。

 

 (2) 「経営計画について」

 執行部から、経営計画の進捗について説明を受け、意見交換を行った。

 

<前田会長、正籬副会長、専務理事、理事 入室>

 

 

3 議事録確認

 第1406回(2022年8月30日開催)の議事録と別紙1「2022年度後半期の国内放送番組の編成について」(外部発表後に公表)、別紙2「2022年度後半期の国際放送番組の編成について」(外部発表後に公表)、第1402回(2022年6月14日開催)ならびに第1405回(2022年7月26日開催)の「インターネット活用業務実施基準の変更について」に関する議事録を承認し、所定の手続きを経て、2022年9月16日に公表することを決定した。

 

 

4 会長報告(資料1)(資料2)

 (森下委員長)
 職員の労災認定と今後の健康確保施策について、前田会長から報告をお願いします。

 (前田会長)
 3年前の2019年10月に亡くなった40代の男性管理職について、先月、渋谷労働基準監督署より労災認定を受けました。NHKをともに支える職員が亡くなったことは痛恨の極みであり、ご遺族には心より深くおわび申し上げます。
 2013年7月に、当時の首都圏放送センターに所属していた佐戸未和記者が亡くなり、翌年長時間労働による労災と認定されたことを受けて、これまでNHKグループ全体で働き方改革に取り組んできましたが、今回、再び労災認定を受けたことは極めて遺憾です。深く反省し、これまでの健康確保の施策を速やかに再点検するなど一人ひとりの健康にいっそう留意して再発防止を徹底します。

 (安保理事)
 かけがえのないご家族を失ったご遺族のみなさまに本当に申し訳なく思っています。私たちの大原則は、業務に携わる全ての人の健康を最優先に考えるということです。佐戸未和さんが亡くなってから長時間労働に頼らない職場づくりを進めてきましたが、再び労災認定を受けるという結果になりました。このたびの職員の労災認定について、労基署から指導を受けた詳細や今後の対応についてご説明します。
 2019年、3年前の10月に亡くなった40代の男性管理職について、先月、渋谷労働基準監督署より労災認定を受けたことがわかりました。NHKにはご遺族の代理人から連絡がありました。
 男性管理職は、首都圏放送センターで都庁キャップを務めていました。当時の勤務状況を確認すると、発症前の2か月から6か月の平均で過労死ラインとされる法定時間外80時間超え、正確には92時間を超えている期間がありました。2019年の4月から9月にかけては、東京オリンピック・パラリンピック1年前関連や、統一地方選、参院選、台風災害などの対応がありました。なお、この労働時間は出勤時刻から退勤時刻まで休憩時間1時間のみを除く時間数を人事局が算出したもので、渋谷労働基準監督署が労災と認定した労働時間数などは確認できておりません。
 渋谷労働基準監督署からは、8月下旬に「指導票」を受領しました。これは法令違反による是正勧告ではなく、指定期日までに改善の状況を報告するように指示するもので、10月7日までに報告することになっています。ポイントは1点で、産業医による面接指導の受診率向上に向けて取り組むように、という指導です。「疲労蓄積度セルフチェックにおいて、仕事の負担度の点数が低かった者や面接指導を希望しない者の中にも長時間労働による健康障害を発生させるおそれがある者が含まれることが懸念される。必ず産業医の面接指導を受診することとする対象者が増えるよう、実施基準などの見直しを行うように」という内容です。
 法定基準では、月間80時間を超える時間外や休日労働を行った職員に対して産業医面接指導を勧奨すること、となっています。協会では、2017年の「NHKグループ 働き方改革宣言」以降、勧奨基準を順次拡大してきました。協会独自の基準として、月間の休務日数が3日以内にとどまっていたり深夜労働時間が40時間を超えていたりするなど、「リスクとなりえる要素を抱える職員」も対象とし、できるだけ広く勧奨を行ってきました。法令上受診するか否かは任意ですが、面接勧奨のルートを複数設け、健康確保への意識向上に努めてきました。
 しかしながら、受診率は2021年度、放送センターで4%とかなり低い数字で、対象となった40代管理職も受診に結びつけることができていませんでした。勧奨する対象者を広くすることで、本当にリスクを抱えた職員を救う手段になりえていなかったのではないか、と受け止め、深く反省しています。今後の対応のうち、まず産業医面接指導の受診率向上については負荷が高いポストについていたり、持病のあるハイリスクの職員を対象に受診を義務づけることを検討しています。
 基幹職に対しては、部下だけでなく自分自身の健康を守るものである健康確保施策をしっかり理解して適切に運用するよう、指導を徹底するほか、外部有識者から助言をいただく検討会を開催し、3か月をめどに健康確保施策の改善案をまとめていく予定です。
 産業医面接指導は長時間労働抑制のいわばアラートです。どうすれば長時間労働を抑制することができるのか、各現場で職場討議を実施してもらうほか、基幹職に負担を集中させない業務整理、デジタルを活用した効率化、要員計画の目標達成に向けた業務削減、マルチスキル化、賞与や目標、評価に反映させる仕組みなどを検討し、健康を最優先の組織風土づくりに取り組みます。

 (長谷川委員)

 健康管理をしっかり見直そうという、これは非常に大切なことです。前回の佐戸未和さんの件以来、二度と同じことは繰り返すまいとみんなで言ってきたのですが、長時間労働を抑制ということだけに目を向けて,もう1つの重要なこと「職員のしっかりとした健康管理」がお留守になっていたのです。健康管理と長時間労働の抑制とはいわば車の両輪です。片方だけでは駄目なのです。これからはしっかりとこの2つを組み合わせて、取り組んでいってください。

 (尾崎委員)

 基幹職を含めた職員の個別の勤務データはあるのでしょうか。

 (安保理事)

 あります。

 (尾崎委員)

 あるのであれば、一定値を超えた場合は強制的に残業させないとか、1週間休暇をとらせる制度など、ルールを決めれば将来的にはこのようなことは起こらないと思います。万が一、起こったとしてもエビデンスを持って対応し、説明することができます。ルールを作って、個人の判断ではなく、法人の判断として対応をすることまで決めないと撲滅は難しいと思います。

 (安保理事)

 今後の対応として、長時間労働の抑制にむけて施策の見直しを進めます。毎月、本部も地域放送局も全職員の勤務データを人事局が見て、注意が必要だという場合には分析をして、長時間労働の事情や今後の休暇の取得について確認をしています。産業医の面接指導の勧奨を法令で決まっている以上に広げていったことにより、健康確保へのリスクが伝わりきれていなかったというところが反省点です。本当にリスクの高い人が隠れてしまったのではないかということです。

 (尾崎委員)

 リスクの高さについては、大変難しい問題です。個人の判断に任せるのではなく、ルールを決めて、超えたら禁止するという形でやらないと難しいと思います。
 ある職場で過重労働している人が多く出ていた場合、その職場は管理がされていないとして、上司には厳しい評価をくだすなどすれば、上司も部下の労働時間をしっかり見ることになると思います。ペナルティを課すような仕組みにしないと、業務に自らブレーキをかけることは難しいと思います。ぜひ検討してください。

 (安保理事)

 長時間労働や休日出勤が続いている職員に対して「健康確保休暇」というシステムがあります。人事局が毎月チェックして、必要な場合は休暇の取得を指示しています。
 ご指摘のとおり、本人への指導というだけでは守られないということも認識しておりますので、アラートを出すときに、本人とその部署の上司にも出しています。上司には、本人への指導だけではなく業務の見直しも必要ということでアラートを出しています。それで改善を図っている状況です。

 (村田代行)

 上司にもアラートを出しているという説明でしたが、産業医への面接指導においては、勧奨するだけではなく、受診しやすくするような工夫がされていたのですか。

 (安保理事)

 「行ってください」という任意でした。受診率の低さについて原因を把握するために、9月9日と9月12日に開催した職員説明会で、今回の事案を説明するとともに、産業医の面接指導についてのアラートや受診率向上にむけたアンケートも実施しました。実施基準の見直しも必要だと思っています。外部有識者の健康確保施策検討会も開催し、改善策を策定したいと考えています。

 (森下委員長)

 受診率4%を執行部はどのように受け止めていますか。これは大変低い数値です。やっていないと同じではないですか。個人の責任で会社の責任はないという姿勢でしょうか。佐戸未和さんの件が起きてから、実際の現場の職員の立場を考えてやっているのでしょうか。形式的な取り組みでなく厳しく反省して取り組まなければ、再発してしまいます。今後は健康管理にむけて、さまざまな取り組みを行うようですので、半年後または1年後の実施状況について経過報告してください。
 経営委員会としても問題意識があるなかで、執行部を信用してフォローしてこなかったということもあります。これからはきちんとフォローして、本当にどのようになっているのか見ていかなければいけません。

 (大草委員)

 監査委員会での共有事項をお伝えします。2013年に首都圏放送センターの佐戸未和さんが亡くなったことをきっかけに、協会は「NHKグループ 働き方改革宣言」を掲げ、さまざまな観点から健康確保の施策に取り組んできたとのことですが、それらの施策への対応が不十分であったと言わざるを得ません。
 こうしたことが二度と起こらないよう、まず業務実態を早急に検証し、繁忙期のカバー体制の強化や業務の効率化など、現場でのより実効的な対策と対応の徹底を強く求めました。組織全体の健康に対する意識改革も重要です。産業医による面接指導の受診への対応なども含め、上司や部局長が責任をもって職場の健康管理に取り組むことや、その結果を評価に反映していくことで管理者の意識向上を図ってください。何よりもNHKグループ全職員、全社員が健康は仕事との優先順位づけの問題ではなく、仕事をする上での当然の前提条件であるという発想に転換していただいて業務を進めていただくよう組織全体における健康への意識の醸成に取り組んでいくことを切に望みます。やはり人事がいくら言っても、職場がしっかりと体制をつくらないとまた再発します。職場の発想の転換をぜひお願いしたいと思います。

 (水尾委員)

 4%というのは、ただ低いというだけではなく、産業医に相談しても仕方がないと思っている人も多いということを意味しているはずです。産業医に対して、どういうことを望んでいるのか、アンケートの結果や実態についても教えていただきたいと思います。

 (礒山委員)

 二度もこのようなことが起こるということは重大な問題だと思います。担当理事なり人事局長に処分をきちんとすべきではないかと思います。実際の上司にいくら言ってもそれを実行しないわけですから、そのくらいの覚悟が必要だと考えます。一般事業会社でも、人事担当の役員がその責任を負うことがあります。今回の場合はそのような重い話だと思います。ご検討ください。

 (原委員)

 組織風土というのは一朝一夕には変わらないと思います。健康第一で思いやりのある職場にしていかないといけないと思います。休暇も取得しやすく、自分の健康についても上司や同僚などに相談しやすい雰囲気をつくることが必要です。職員へ産業医の役割や相談方法などについて周知する施策も必要ではないでしょうか。

 (森下委員長)

 経営委員会としても極めて重大な問題だと思っています。さまざまな取り組みを、経営委員会としても全面的に応援しますので、ぜひこれを実りあるものにしてください。
 経営委員長としてひと言申し上げます。2013年に首都圏放送センターの佐戸未和さんが亡くなり、労災認定を受けて以来、「2度とこのような不幸なことは起こさない」とNHKをあげて再発防止に取り組んできたはずです。しかしながら、再び職員が亡くなり、労災認定を受けるという事態になりました。理由のいかんに関わらず絶対にあってはならないことです。
 今回、労災認定を受けたのは40代の男性管理職です。現場を支え、マネジメントを担う基幹職は組織を背負っていく人材です。これまでの「働き方改革」の中で、「基幹職が置き去りにされていないか」「基幹職に過重な負担がかかっていないか」といったことを早急に確認してください。勤務時間の管理、産業医による面接指導の受診について、組織全体でしっかりと取り組んでください。

 

 (森下委員長)
 「BS1スペシャル」へのBPO意見について、前田会長から報告をお願いします。

 (前田会長)
 昨年12月に放送しましたBS1スペシャル、「河P直美が見つめた東京五輪」につきまして、BPO放送倫理・番組向上機構の放送倫理検証委員会が9月9日に、重大な放送倫理違反があったとする意見書を公表いたしました。NHKとしては指摘を真摯に受け止め、再発防止に向けた取り組みを一層徹底していきます。

 (山内理事)
 議案の概要とBPO放送倫理検証委員会の意見、再発防止策の実施状況についてご報告します。
 この番組は、公式記録映画の製作チームに密着取材した、前後編合わせて99分の番組です。番組では、都内で取材した男性にモザイクをかけ、「五輪反対デモに参加しているという男性」「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」という字幕をつけて放送しました。これについてNHKの調査チームは、あいまいな情報をもとに裏付け取材が行われず、上司によるチェックも十分行われないまま放送したものであり、誤った内容だったと結論付け、2月10日に公表しました。
 NHKでは、2015年に起きましたいわゆる出家詐欺問題を受けまして、匿名のインタビューの必要性や内容の真実性をチェックする「匿名チェックシート」や、番組を第三者的立場でチェックする「複眼的試写」を導入していましたが、この番組では「匿名チェックシート」が使われないなど、チェック機能が働いていませんでした。
 番組の制作担当者は、それぞれの役割と責任を果たしていなかったとして、ディレクターとチーフ・プロデューサーが停職1か月、上司の専任部長が出勤停止14日などの懲戒処分となりました。
 この番組について、BPO放送倫理検証委員会は委員会独自の調査を行ったうえで、今月9日、意見書を公表しました。結論は、「重大な放送倫理違反があった」というものでした。
 その理由として、放送倫理検証委員会は、取材、編集、試写の各段階に問題があり、デモや広い意味での社会運動に対する関心が薄かったという点、取材相手への配慮や誠意を欠いていた点などを指摘しています。
 「取材段階」では、「取材の基本を欠いて事実関係をおろそかにしたことや取材対象者に対する緊張感を欠いていたと考えられる」と指摘しています。「編集段階」では、「発言者の意図を正確に確認することなく独自の解釈で編集した結果、視聴者を誤信させる番組を作ってしまった」と指摘しています。
 「試写段階」では、「デモや広い意味での社会運動に対する関心が薄かった。民意の重要な発露としての市民の活動に真摯な目線を向けるべきだった」と指摘しています。
 重大な放送倫理違反があったという意見を真摯に受け止め、再発防止に向けた取り組みをさらに進めてまいります。
 現在進めている再発防止策は、意見書の指摘にも対応していますが、より一層の現場への浸透が必要だと考えています。
 まず、今回の問題を受け、全国の各局に番組やコンテンツの内容の正確さやリスクについてチェックする「コンテンツ品質管理責任者」を新たに配置しました。「複眼的試写」や「匿名チェックシート」の活用を判断し、適正な実施をチェックする体制を整えました。新たな体制のもとでの複眼的試写は、7月末までに、全国で900回近く実施しています。
 各現場における取り組みをサポートするため、本部に事務局を設置し、再発防止を徹底する勉強会を、全国で240回実施しました。
 「コンテンツ品質管理責任者」を対象にした会合も定期的に設け、取材・制作のリスクに関わるさまざまな事例の共有や注意喚起にあたっています。
 また、「BS1スペシャル」については、「NHKスペシャル」などと同様、本部内に事務局を設け、番組の提案・採択から放送まで、チェック機能を働かせるようにしました。
 ただし、今回の意見書を踏まえたとき、チェック機能を強化するだけでは、十分な対策とは言えません。今年度入局した新人層からシニア層に至るまで、各年代、各階層の研修にも、今回の教訓を盛り込んでいますが、引き続き原点に立ち返る人材育成を徹底しています。
 「NHK放送ガイドライン」に定めた、取材や制作のあらゆる段階で真実に迫ろうとする放送の基本的な姿勢を再確認し、再発防止策を着実に実行していくことで、視聴者のみなさまの信頼に応えられる番組を取材・制作してまいります。

 (明石委員)

 大変丁寧に検証をされた意見書であり、現場の状況にも配慮をしながらも厳しい指摘をしているという印象を持ちました。
 1点目です。BPOの意見書には、2015年の問題を事例に出しながら、数年ごとに生じてしまうのはなぜかという問いかけとともに、「二重三重に事実確認を行う仕組みだったが、本件放送では使われなかった。番組の中核とはならないシーンには使用しないことが習い性になっていた」、「ただでさえ忙しい現場にさらなる負荷を強いる再発防止策であれば、抜け道が探られることになりかねない。繰り返し同じような問題が起こるのはどこかに無理があるからではないか」とありました。これは非常に今のNHKの体質をついていると感じました。意見書に照らしてNHKがとった5つの再発防止対策を見ると、4月から7月までの間に行われた複眼試写が900回、勉強会は240回実施したとあります。多数実施したのは悪いことではないようにも思いますが、一方で一過性のものになり、継続的な体質改善につながっていないのではないかという懸念を持ちました。最終的に人材育成、研修で実施をするだけでは、こうした問題意識を現場に徹底させることとは難しいのではないでしょうか。そのための方法についてはあらためて確認していただきたいと思います。
 2点目です。不祥事の外部への伝え方は、組織におけるレピュテーションリスクに関わることだと思います。
 報道として事実を伝えることと、NHKとしてのコメントを出す場合においては伝え方を、分けて考えるべきではないかと思います。不祥事の際の外への伝え方のルールは、当然、NHKにもあると思いますが、それが本当に視聴者、国民に理解していただけるような伝え方になっているのか、もう一度工夫されたほうがよいと感じました。

 (山内理事)

 なぜ繰り返されるのか、厳しいたがをはめればはめるほど、そこから逃れていくということが人間の世界では起こりうるということで、厳しいチェック体制を重ねれば重ねるほど、むしろ漏れるという危険性が常にあると思います。今回に関しては、2015年の出家詐欺以降に作ったルールが形骸化されていました。形骸化の一番最たるものが、結局、現場任せになっていたというところがやはり一番大きかったと思っています。匿名で報じているのに、匿名チェックシートを使わなくてよいということを現場が判断したら、そのまま通ってしまったということで、客観的に見る目線が全然入らないまま放送に至ったということが問題であったと思います。
 現場への負荷ではなくて、責任者が客観的に見る仕組みをつくるというのがこのコンテンツ品質管理責任者だと思います。番組数が増えて、このコンテンツ品質管理責任者のほうに負荷がかかってくるということも十分考えられますので、実際にデータを取ったときにどれぐらいの負荷がかかっているのかということを、定期的な会合の中で確認をして、エビデンスを取りながらやっていくということが大事だと思っています。
 研修に関しては、単なる研修を座講でやるというよりは、この場面をどう判断するかということを常に問いかけること、これが原点に立ち返ることだと思いますので、ディスカッションをしながら自分たちの原点は何かということを確かめ合うということになると思います。その作業がやはり一番大事であることは変わらないと思います。
 2点目の、外部への伝え方については参考にさせていただきます。

 (原委員)

 字幕の役割ですが、これまでテレビを見るなかで、音声が聞き取りにくいところを字幕でカバーすることはよく見たのですが、映像で発言している内容と違う字幕を作るというのはあまり見たことがありませんでした。このような場合は非常に危険性があるので、チェックシートではどのようにチェックをするような仕組みになっていますか。

 (山内理事)

 事実確認をするもうひとつのチェックシートがあります。今回はそこで行うべきだったのですが、ディレクターがカメラを回していないときに聞いた話を基に字幕をつけているという状態でした。上司がしっかりと認識しないまま字幕だけがひとり歩きしていったということが問題であったと考えています。

 (原委員)

 字幕の根拠になる証拠を確認していなかったということですか。

 (山内理事)

 そういうことです。メモも取っておりませんでしたので、その男性が話したということはディレクターだけの頭の中にありました。そのまま字幕として、放送になってしまったということが大きな問題です。放送前にご本人を探して、事実関係を確認してから放送しなければいけませんでした。

 (原委員)

 そこは第一次的に管理されているチーフ・プロデューサーの役割で、それが求められる立場であると思います。新しく設けたコンテンツ品質管理責任者の方はどの部門にいるのでしょうか。

 (山内理事)

 全国に229人います。渋谷の放送センター、地域放送局、関連団体に配置されています。ひとりに負荷がかからないように、番組をつくるグループごとに配置しています。

 (原委員)

 メーカーで考えますと、番組を制作する部門は製造部門になると思います。そのような部門にいると、第三者性が十分に担保できるのかということが重要です。製造部門から離れた、品質管理あるいは品質保証部門のような第三者の目でチェックできる体制にしたほうがより実効性が上がるのではないかと思います。

 (山内理事)

 NHKの中で番組づくりをしている職員は、特定の番組の分野で長くやってきて、何十年続いている習慣もあります。客観的なスキル、ノウハウを持った職員を育てて、コンテンツ品質管理責任者として配置していくために、この4月にこのスキームを立ち上げたという形です。何とか育てていきたいと考えています。

 (堰八委員)

 コンテンツ品質管理責任者を置いて複眼的な試写をしていくというなかで、今回の一連の流れを見ていますと、仮に複眼的な試写で見ていたとしても、「本当に確認は取ったのか」ということに触れてはいますが、その後の確認が取れないままに終わっています。複眼的試写というのは、チェック機能もある面、最終的には現場に携わった人間がしっかりと確認をしないと今回と同じ結果になってしまいます。決められていた「匿名チェックシート」を作っていなかったことは大きな原因だと思います。河Pさん側のXディレクターは当該取材対象者の、携帯番号を聞いています。NHKのディレクターは最後まで聞いていません、知らなかったのです。その後にXディレクターに聞いて分かったのです。Xディレクターは自分たちの仲間というくくりの中に入ってしまい、デモに参加した人たちだけが取材対象者になってしまいました。本来であれば、Xディレクターもこの番組においては取材対象者だったのです。そこも今回の大きな問題です。決められたことを現場ではしっかり守ることです。これが最終的には一番大事だと思いますので、徹底していただきたいと思います。

 (大草委員)

 昨日の監査委員会での指摘事項を共有します。再発防止を徹底するための研修を行うことは重要で、職員に今回の事案を繰り返し思い起こさせ、風化させない工夫をしていただきたいと思います。
 あわせて、組織的なチェック体制が機能するようにしていただきたいと思います。ルールがあっても守られなければ意味がないということを肝に銘じて、BPOの指摘を真摯に受け止めて、本当の意味での再発防止に努めていただきたいと思います。当初の記者会見では、この問題について一部正確でない説明をするという不手際がありました。その後に謝罪をしておりますが、このようなことがないように、事後の対応についても慎重に検討していただきたいと思います。

 (森下委員長)

 2月10日にNHK側の調査報告書がありまして、それ以来ずっとしっかりと対応を取ってきていただいたところです。半年が経過しましたので、実態や現場の実施結果が出てきているのではないかと思います、あらためて今まで出た意見を含めて、再度チェックして検討してもらいたいと思います。BPOから当該問題について重大な放送倫理違反があると指摘されたことを大変重く受け止めなくてはならないと言わざるを得ません。公共放送の原点に改めて立ち返り、高い倫理観を持って視聴者の皆さんから信頼される番組づくりを行う取り組みを組織全体でしっかりとやっていただくようにお願いをします。

 

 

5 議決事項

 (1) 内部統制関係議決について(資料)

 (経営委員会事務局長)
 今回の改正は、本年6月3日に成立した電波法及び放送法の一部を改正する法律等により、放送法及び放送法施行規則が改正されることに伴い、総務省「日本放送協会の子会社等の事業運営の在り方に関するガイドライン」を踏まえ、放送法第29条第1項第1号ハに規定する事項及び改正法による改正後の放送法第29条第1項第1号クに規定する事項について議決する案です。新旧対照表に沿ってご説明します。
 1ページです。放送法第29条第1項第1号ロ、及び放送法施行規則第17条に規定する事項について、ここでは監査委員会の職務の執行のため必要なものとして定める事項について定めています。改正放送法等の影響はないと考えられるため、変更はありません。
 2ページからの、放送法第29条第1項第1号ハに規定する事項については、協会の業務並びに協会及びその子会社から成る集団の業務の適正を確保するために必要なものとして体制の整備を規定しています。(6)協会及びその子会社から成る集団の業務の適正を確保するための体制について、何点か変更します。
 新2⑦に、改正放送法で規定された関連事業持株会社について、位置づけを追記しています。この追記にともないそこから下の規定の採番が変更になります。
 旧2⑦では、「会長は、協会の職員を子会社(公益法人を除く)の非常勤取締役へ就任させる」としていましたが、「公益法人」に取締役という機関がないことから、新2⑧では、「公益法人」を削除するとともに、常勤の取締役を就任させることも鑑み、「非常勤」を削除します。一方、関連事業持株会社による管理の面も考慮して、「原則として」を追記しています。これにより、関連事業持株会社の傘下の子会社も含め、原則として、協会の職員を常勤・非常勤問わず、子会社の取締役へ就任させるという規定になります。
 監査役に関わる旧2⑧に対応する新2⑨でも、同様に「公益法人」「非常勤」を削除するとともに、関連事業持株会社が管理すること等を鑑み、「原則として、関連事業持株会社の子会社を除く」としています。
 旧2⑫に対応する新2⑬は、改正放送法により、子会社の出資に関する根拠条文が22条から22条4号に変わるので、「第4号」を追記します。
 旧2の⑫から⑮は、総務省ガイドラインにより、内部統制関係議決の中で、明確にすることが求められている項目です。総務省ガイドラインに、関連事業持株会社、および関連事業持株会社の子会社についての業務範囲の規定が盛り込まれましたので、その旨を、新⑭、⑮に追記します。
 6ページです。放送法第29条第1項第1号クに規定する事項については、「放送法第29条第1項第1号ハに規定する事項の経営委員会議決」(6)の「協会及びその子会社から成る集団の業務の適正を確保するための体制」に類するものとして、関連会社及び関連公益法人等についても同様の事項を定めるものです。また、タイトルについても、改正放送法では、該当する条文が放送法第29条第1項第1号オからクに変更になっていますので、反映しています。
 3の「関連会社の業務範囲」の①②については、改正放送法により、子会社の出資に関する根拠条文が22条から22条4号に変わるので、「第4号」を追記します。施行日は、改正放送法の施行日です。
 最後に改正点を反映した内部統制関係議決を載せています。説明は以上です。

 

 採決の結果、原案どおり議決。

 

 

6 審議事項

 (1) 経営計画について(資料1)(資料2)

 (森下委員長)
 次は審議事項です。経営計画の修正について執行部から説明をいただき、審議をしたいと思います。

 (伊藤専務理事)
 現在の経営計画を検討した2020年度の段階では、新型コロナの影響がまだ見えておらず、営業改革も不透明な状況でした。このため、受信料の値下げなどが具体的に明らかになった段階で経営計画を修正するとともに、衛星波の1波削減についても、具体的に明示していくこととしていました。
 それでは、資料に基づき説明します。
 本日は、「修正経営計画の重点事項・さらなる構造改革に向けて」についての説明が中心となります。
 まず、前提となる「経営計画の修正に向けた基本的な考え方」として、11ページの「経営計画の現況と今後の考え方」について説明します。スリムで強靱な「新しいNHK」への変革を目指す現経営計画は、ここまで順調な進捗だと認識しており、2023年度までの550億円の支出削減は、計画どおり実施できる見通しです。また、営業改革も予定どおり進捗しており、今年度営業経費率も9.3%まで下がっています。これらにより、2つの大きな公約である「還元の原資として700億円程度を確保、2023年度に値下げ」と「2023年度中に、衛星波を1波削減」を達成できる見通しが立ちました。経営計画の公約を具体化した形に修正し、改革の完遂を示したいと考えています。
 12ページです。「経営計画修正の考え方」について、2023年度の受信料値下げをどのように担保するかが課題です。2023年度に受信料の値下げを行えば、その後、複数年にわたり経営的に厳しい状態が続くと想定される中で、どのように経営計画を進めていくのか、検討していく必要があると考えています。
 本日、総務大臣から、総務省の「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」に、「公共放送ワーキンググループ(WG)」が設置されることが公表されました。この中では、NHKのインターネット業務の位置づけや、受信料制度などの財源の在り方までが検討の視野に入ってくると聞いています。このWGは、9月21日にキックオフがあり、取りまとめを行うのが2023年6月予定となっています。つまり、来年度には、NHKをめぐるインターネット業務の位置づけや制度などについても、大きな変更が行われる可能性があるということも踏まえ、今後の経営計画を考えていく状況ということになります。
 経営計画の期間については、いろいろと検討を行いましたが、結果として予定どおり現在の経営計画は2023年度までとし、WGの議論の進捗など、さまざまな状況を踏まえ、2024年度以降、新たなNHKに向けた経営計画をつくっていく形にしたいと考えています。
 修正経営計画の重点事項をどのように考えていくかについて、3ページに「修正経営計画の重点事項・さらなる構造改革に向けて」と銘打って、次ページ以降で考え方をまとめています。
 4ページです。現経営計画はすでに1年半が経過していますが、「2021、2022年の環境変化の受け止め」については、現経営計画で想定した環境変化のいずれの要素も“加速”している状況と認識しており、現経営計画と方向性は同一であると考えています。
 5ページです。「修正経営計画の方向性(案)」について、この2年間、コロナの長期化や、ウクライナ情勢等の発生で、物価上昇等の懸念も広がっています。そうした中で、2年間の環境変化を踏まえた、課題・要望への対応を経営計画に盛り込んでいくことや、それらを実行していく必要があると考えています。
 課題・要望への対応については大きく4点あり、人口・世帯減少が加速化し、社会インフラの維持が大きなテーマになっていること、海外のネット動画配信サービスの拡大、コンテンツ競争の激化が進んでいること、コロナ禍、ウクライナ情勢等を受けた、“信頼できる情報”へのニーズが高まっていること、不透明な情勢のなか、SDGsの浸透も踏まえつつ、構造改革・資本増強等の対応を取っていかなければいけないこと、の4つの観点について、対応の必要性などを挙げています。
 これに加え、営業改革等これまでの改革の進化・深化を図っていく必要があります。この点については、現経営計画3年目に向けての強化ポイントと考えています。
 その内容について、6ページです。現経営計画においては、「徹底した構造改革」に加え、5つの重点項目に力を入れることを進めてきました。修正経営計画の案としては、先ほどの4つの観点を踏まえ、「徹底した構造改革」をさらに進めるとともに、「安全・安心を支える」、「あまねく伝える」の2つの項目について、さらなる強化を進めていきたいと考えています。
 7ページです。「安全・安心を支える」について、これまでは安全・安心という言葉で災害対応に力を入れてきましたが、それに加え、安全保障・国際情報・地域/文化の情報、あるいは感染症に関する情報等、「信頼できる情報」を確実に提供して、人々の暮らしの安全・安心を支える必要が増している状況にあると考えています。
 また、「あまねく伝える」については、放送通信融合時代であっても、世代・場所を越え「放送の価値」をあまねく持続的に届け続けることに対して、公共放送への期待・役割が増しているのではないかと考えています。
 このような点をまとめたのが8ページです。「修正経営計画の重点事項(案)」として、まず、スリムで強靱な「新しいNHK」への変革をめざす方針は堅持します。その上で、「新しい“安全・安心”の追求」、「新しい“あまねく”の追求」という2項目を立てていきます。
 「新しい“安全・安心”の追求」については、感染症の拡大、国際環境の変化を踏まえ、経済安全保障を見据えて信頼できる情報を確保し、情報空間維持に貢献する。あるいは、信頼され魅力あるコンテンツを強化するとともに、日本のコンテンツ産業全体の底上げや、放送業界全体のオールIP時代への対応に貢献するということを掲げていきたいと思っています。
 「新しい“あまねく”の追求」については、インターネットへの対応はもちろんのこと、それに加え、地域を含めた二元体制の持続可能性を高めていくことや、NHK自身のレジリエンスとリスクマネジメントの強化、持続可能性に配慮した投資を行っていきたいと考えています。
 さらに、「これまでの方針の進化・深化」として、営業改革の徹底により安定した収入を確保することや、コンテンツ取材制作への資源シフトと並行して、放送通信融合時代にふさわしい業務フローへの転換をしっかりと進めていくことも求められていると考えています。
 14ページです。NHKの現経営計画については、“三位一体改革”へしっかりと応えていくことが求められていました。この「業務」、「受信料」、「経営」の3つの論点について、明確に応えていくことが必要だと考えています。
 業務の在り方については、「スリムで強靱」の徹底により、支出をさらに削減することを具現化するとともに、衛星放送の1波削減を実現する。受信料の在り方については、受信料値下げをしっかりと実行するとともに、“訪問によらない”営業活動へ転換し、営業経費をさらに削減する。経営の在り方(ガバナンス)については、中間持株会社の設置を待たずに、子会社ガバナンスの強化・業務効率化を断行しており、今後、中間持株会社を設置した段階で、さらなる推進を図ります。これらの取り組みを通じて、“三位一体改革”にしっかりと応えられるような内実のある形での経営計画に高めていく必要があると考えています。
 「現経営計画で実現した改革」については、15ページ以降に記載しており、支出については計画どおり削減しています。
 次に、16ページに示すように、スリムで強靭な組織への転換を進めています。
 また、17ページに示すように、営業経費については大きく削減をしており、来年度はさらなる削減を進めていく方針です。
 最後に18ページに示すように、グループの構造改革も断行し、業務委託費の10%削減につなげていくとともに、関連団体数についても2023年度には22まで削減していきます。
 以上が“三位一体改革”についてです。
 次に、外部環境変化です。
 20ページです。「2021、2022年の環境変化の受け止め」について、先ほども説明したとおり、いずれの要素も“加速”している状況です。21ページには、その詳細を記載しています。
 22ページです。「人口・世帯数の減少」について、2050年においては、全国の居住地域の約半数で人口が半減し、人口減少がさらに進行していると想定されます。一方で、その地域におけるネットワークの維持が民放、NHKいずれも負担となっている状況です。
 23ページです。「メディア環境、視聴者行動の変化①」について、非常に大きな変化として、現経営計画を策定した時点では、テレビの視聴時間をネットの利用時間が追い抜くのは2023年と想定していたのが、すでに2020年の段階で追い抜き、2021年にはその差が拡大をしています。急速な変化にどう対応するかが、NHKにとっても喫緊の課題となっています。
 24ページです。「メディア環境、視聴者行動の変化②」について、AmazonプライムビデオやNetflixといったサービスの利用が急速に増加していますが、それに比べ日本のサービスについては、伸長がそれほどでもなく、ABEMAやGYAO!については横ばいという状況です。
 25ページです。「メディア環境、視聴者行動の変化③」について、コンテンツ制作費の推移を比べると、AmazonプライムビデオやNetflix等は大幅な伸びを示している一方で、NHK、民放5社においては、制作費が減少している状況です。NHKにとっての課題は、制作費の総額が抑制されている中でも、選ぶべき番組をきちんと選んで、そこに集中投資をしていくことであり、高品質な番組をしっかりとつくっていく体制を構築し、実行していくことが重要だと考えています。
 26ページです。「メディア環境、視聴者行動の変化④」について、教育コンテンツへのニーズの拡大です。家庭学習が拡大していく中で、お子様がデジタル端末を使いながら学習するケースが非常に増えています。一方で、家庭での学習に利用できるコンテンツがない、あるいはタブレットを学習以外の用途に利用してしまうといった保護者からの懸念の声も上がっています。こうしたところにNHKとして貢献していくことができるのではないかと考えています。
 27ページです。「不確かで曖昧な情報の拡散①」について、フェイクニュースあるいは情報の偏りを93%の人が体験している状況です。欧米あるいは日本でも、フェイクニュースが世論や国政に影響を与えつつある事例が発生しています。
 28ページです。「不確かで曖昧な情報の拡散②」について、こうしたフェイクニュースの影響力や危険性がましている状況の中で、アメリカの調査においては、フェイクニュースに対応していく責任は誰が負うべきかとの質問に対して、「報道機関」を上げている人が4割いたということです。NHKとして、この問題にどのように対応していくのかについても、社会的な要請が強く、総務省の「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」でも、このことがしっかりと書かれている状況です。
 29ページです。「不確かで曖昧な情報の拡散③」について、フェイクニュースの影響力や危険性が増している中で、NHK・新聞の信頼度が依然として高い水準にあります。NHKとしては信頼というものを最も大事なものとして扱いながら、業務に当たっていくということが重要だと考えています。
 30ページです。「新型コロナ等による社会・経済状況の変化①」について、アメリカのスタンフォード大学の教授らが開発した「世界経済政策不確実指数」が、年々右肩上がりの状況です。トレンドとして経済政策の不確実性が高まっていることが表れています。また、企業の間でも新型コロナウイルス感染症の拡大により、危機管理対応を強化しているところが増えてきています。NHKにおいても、これまでの危機管理を越えた形で、災害対応のみならず、さまざまな形でのリスクヘッジをしていく必要があると考えています。
 31ページです。「新型コロナ等による社会・経済状況の変化②」について、社会・経済の不安定化が加速し、危機管理/持続可能性確保のための対策の重要性が向上しています。エネルギー問題や世界的なSDGs意識の高まりもあり、多くの企業が関連した取り組みに着手しています。放送業界は電力消費の多い業界であり、NHKとしても率先して持続可能性を意識した対策を行っていく必要があると考えています。
 以上が環境変化のまとめです。
 経営計画の修正を行っていく上で、本日は修正経営計画の重点事項を中心に説明させていただきました。ご審議をよろしくお願いします。

 (堰八委員)

 修正経営計画という言葉について確認です。今回の説明については、現経営計画が残りあと1年半あるなかで、その1年半について、当初計画から中身を修正することについての考え方を説明いただいたのか、現経営計画が2023年度に終わって、2024年度から3年間の新しい経営計画をつくるにあたっての考え方だったのか、どちらで理解すればよいでしょうか。

 (伊藤専務理事)

 本日は、2023年度までの現経営計画について修正を加える必要があることから、その内容について説明をさせていただきました。ただ、検討を進める上で、その先に起きてくることを十二分に検証する必要があり、来年度まででやるべきことは、当然その先にもつながってくることから、今回の内容で説明をさせていただきました。

 (明石委員)

 今のご説明では、現行の経営計画の中で時代の変化などさまざまな状況を踏まえ、修正を加えるという意味だと理解しました。「修正経営計画」としてしまうと、3年間の経営計画そのものを修正するというイメージにも捉えられてしまうことから、現経営計画について、検証結果や、新たな時代背景、環境などの変化に伴って追加の項目を入れるという表現のほうが合うのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

 (伊藤専務理事)

 修正経営計画という言葉よりも、経営計画の修正というほうがふさわしいのではというご趣旨だと思いますので、そのご指摘も踏まえ検討を進めていきます。

 (森下委員長)

 次回は「収支の考え方」について議論ということでよろしいですか。

 (伊藤専務理事)

 はい、次回は「収支の考え方」について、ご説明します。

 (森下委員長)

 わかりました。それらの論議を踏まえ、現経営計画の修正案について、大筋決めていくということですね。本件は継続審議としますので、執行部は本日の議論を踏まえ、改めての説明をお願いします。それでは、本日の審議は終了します。

 

 (森下委員長)
 付議事項は以上となりますが、何かご意見等ありますでしょうか。

 (前田会長)
 先ほど2件の報告をしましたが、2件とも誠に申し訳ないと思っています。ここで私の考え方を申し上げます。
 これまで、NHKでは経営計画を何度も行ってきました。その結果、拡大の一途をたどり、事業量も右肩上がりで波も増やしましたが、人員は増やしておらず、減員となっています。現経営計画では、そのような状況も踏まえ、今までのトレンドとは違う形で、持続可能な組織に変えていくということで大幅に方向修正しました。
 現状、職員それぞれの職務内容も含め、業務量が目いっぱいで余裕がない状況です。そのため、ゆっくり余裕があり同僚のことを気遣うということまで至らない状況と判断しています。
 NHKとしては、絶対にこの時間以上は働いてはだめだということも制度的に定めており、何時間経過したら業務をやめてくださいという決まりはあるのですが、やはり仕事量が多過ぎると思います。理由として、1つは生産性が低過ぎると思います。丁寧にやっていると言うと聞こえが良いのですが、いろいろな改善方法を含め、仕事のやり方を抜本的に変えないと今後やっていけないと考えています。
 そういう意味で、全部を変えようとしておりますし、経営委員の皆さまからのご指摘はそのとおりだと思います。
 構造改革をしていくなかで、もう少し柔らかい温かみのある職場に切り替えない限り、同じことが起こると思います。対策だけでは絶対にうまくいかないと思います。本気で変えていかないと組織として長続きしないと思います。
 いろいろな矛盾もありますが、対症療法では意味がなく、根本的なことを変えていかなければだめだと思います。仕事量そのものを思い切り見直して、どこまでやるか基準を決めていかなければ、全部完璧を求めてやるとなると、みんな本当にプロ意識が強いので絶対的にやってしまい、労災がなくならないと思います。ぜひ本気で見直していきたいと思っています。ここ2年でもいろいろな改革を行っていますが、仕事の改革の原点はそこにあると思っており、是正されない限り温かい組織にならないと思います。働く人を温かい組織で守る必要があり、この部分は本気で反省し、取り組みたいと思っています。

 (森下委員長)
 分かりました。期待しています。

 

<前田会長、正籬副会長、専務理事、理事 退室>

 

<中嶋理事、児玉理事・技師長、伊藤専務理事、小池専務理事、板野専務理事 順次入室>

 

 

7 評価・報酬部会

 (1) 2022年度役員ヒアリング

 中嶋理事、児玉理事・技師長、伊藤専務理事、小池専務理事、板野専務理事に対して、2022年度役員ヒアリングを実施した。

 

<中嶋理事、児玉理事・技師長、伊藤専務理事、小池専務理事、板野専務理事、 ヒアリング終了後、順次退室>

 

 

8 指名部会

 会長任命に関する指名部会を開催した。

 

 

 森下委員長が散会を宣言。

 

 

 上記のとおり確認する。

 

2023年1月24日       

森 下  俊 三 

 

 

大 草  透