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第1340回
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2019年11月29日(金)公表
※4 その他事項(2)インターネット活用業務実施基準について は2020年1月17日(金)公表

日本放送協会第1340回経営委員会議事録
(2019年11月12日開催分)

第1340回 経 営 委 員 会 議 事 録

<会 議 の 名 称>

第1340回経営委員会

 

<会 議 日 時>

2019年11月12日(火)午後1時から午後5時25分まで

 

<出 席 者>

〔経 営 委 員〕

  石 原  進 森 下 俊 三 明 石 伸 子
    井 伊 雅 子   槍 田 松 瑩 佐 藤 友美子
    堰 八 義 博   高 橋 正 美 中 島 尚 正
    長谷川 三千子   村 田 晃 嗣 渡 邊 博 美
  ◎委員長 ○委員長職務代行者(以下、「代行」という。)

 

〔執 行 部〕

  上 田 会 長 堂 元 副会長 木 田 専務理事
  板 野 専務理事 児 野 専務理事・技師長 荒 木 専務理事
  松 原 理 事 黄 木 理 事 中 田 理 事
  鈴 木 理 事 松 坂 理 事 正 籬 理 事

 

 

<場   所>
放送センター  22階経営委員会室  21階役員会議室

 

<議   題>

 

付議事項

 

○ 視聴者のみなさまと語る会(盛岡)登壇者報告

 

○ 説明会「視聴者サービスの継続について」

 

1 会長報告(資料)

 

2 議決事項

 (1) 日本放送協会定款の一部変更について(資料1)(資料2)

 (2) CDN事業者への出資について(資料1)(資料2)

 

3 報告事項

 (1) 新放送センターの基本設計について(資料1)(資料2)

 (2) BS右旋の帯域再編プラン変更への対応について(資料)

 (3) 2019年秋季交渉について(資料)

 

4 その他事項

 (1) 会計検査院による平成30年度決算検査報告について(資料)

 (2) インターネット活用業務実施基準について(資料1)(資料2)(資料3)

 

○ 指名部会

 

 

<議事経過>

 

 森下代行が開会を宣言し、経営委員会を開催。

 

 

○ 視聴者のみなさまと語る会(盛岡)登壇者報告
 11月9日に盛岡放送局で開催した「視聴者のみなさまと語る会」について、出席した堰八委員、村田委員、渡邊委員から、参加の感想の報告を受けた。25人の参加があり、多くの貴重なご意見やご要望をいただいた。

 

 

○ 説明会「視聴者サービスの継続について」
 視聴者サービスの継続について、執行部から説明を受けた。

 

<委員長入室>

 

<会長、副会長、専務理事、理事入室>

 

 本日の付議事項および日程について説明。第1339回(2019年10月29日開催)の議事録を承認し、所要の手続きを経て、2019年11月15日に公表することを決定した。

 

 

1 会長報告(資料)

 (上田会長)
 元法人委託会社の社長による受信契約者情報の漏えいについて、松原理事から報告します。
 (松原理事)
 このたび、受信料の契約・収納業務を委託していた法人委託会社の社長によって、受信契約者の個人情報が漏えいし悪用される事件が発生しました。視聴者の方々に、ご心配とご迷惑をおかけし、大変申し訳ありません。
 経緯ですが、名古屋拠点放送局・中央営業センターにおいて、受信料の契約・収納業務を委託していた法人委託会社の社長が、82歳の女性からキャッシュカードを窃取したとして逮捕・起訴された男に、業務用携帯端末に入っている受信契約者の個人情報を口頭で漏らしていたとして、10月23日に窃盗の共犯の疑いで逮捕されました。
 なお、本日この社長は起訴されました。また、逮捕の一報を受け、この法人委託会社との契約を10月25日付で解除しました。
 警察から話を聞くなどNHKで調査を進めたところ、漏えいした個人情報は、名古屋市と春日井市内の受信契約者の氏名、住所、電話番号、口座振替用の金融機関名の4項目について、23人分です。法人委託会社の社長は、業務用携帯端末に表示される情報を、共犯者に口頭で伝えていたと見られます。
 なお、業務用携帯端末では、受信契約者のリストをダウンロードして保存したり、印刷したりすることはできません。そのため、視聴者の名簿や一覧表が漏えいしたという事実はありません。また、漏えいした個人情報の中には、年齢や家族構成は含まれていません。
 次に、再発防止策ですが、3点あります。
 1つ目は、業務用携帯端末に必要最小限の情報だけが表示されるように改修し、口座振替で利用されている金融機関名を非表示としました。
 次に、個人情報管理状況の確認と研修を実施します。全国の法人委託会社に対して、11月15日までに、個人情報の管理状況などについて緊急の点検を行います。また、訪問要員に対して、コンプライアンス遵守を含む研修を行います。
 3点目は、プロジェクトを早急に設置し、現在の委託先の法人の選定や監督等のあり方、個人情報の管理のあり方について、外部の専門家の知見を借りながら具体的な方策を検討していきます。
 この案件につきましては、11月8日金曜日に法人委託会社の社長が逮捕されたことを名古屋拠点放送局で公表しました。また、本日、社長が起訴されたことを受け、経緯と漏えいしたと見られる情報、再発防止策について、NHKのホームページで公表します。
 情報が漏えいされた23人の視聴者の方々には、速やかに訪問して謝罪を行っていきます。
 今後、このような事態が発生しないよう、委託先における個人情報の適切な管理について、一層、指導・監督を徹底してまいります。

 (長谷川委員)

 新聞記事で見たのですが、最初のコメントで、「指導を徹底してまいりたいと思います」というコメントがありました。あまりにも公式のコメントだけをあてはめると、読んでいる人たちが、これは本当に検討しているのだろうかと感じると思うので、第一報の広報のときにも、そのあたりは気を使っていただいたほうがよいのではないかという印象を持ちました。

 (松原理事)

 はい。これまでの訪問要員の不正に関することについては、さまざまなチェック項目を設けて、事前にこちらで把握することに努めてまいりましたが、犯罪が起きたということを重く受け止め、さらに個人情報の重要性についてのコンプライアンスの意識を徹底していきたい、指導をしっかりやっていきたいとご理解をいただければと思います。

 (長谷川委員)

 一般視聴者の感覚に合致するようなコメントを工夫していただけたらと思います。

 (松原理事)

 はい。

 (森下代行)

 これは、アクセスをしたら、記録が残るようになっているのでしょうか。

 (松原理事)

 どの時点で、どこを開いたというログはわかります。

 (森下代行)

 そういう中で、毎日とか1週間とか、何か不自然なアクセスをしているものを打ち出すような機能を検討していただいたらよいかと思います。チェックですね。そのこと自体が一つのけん制力にもなります。今後いろいろと工夫されると思うので、よろしくお願いしたいと思います。

 (松原理事)

 はい。

 (石原委員長)

 業務用の携帯端末を使う人がデータを抜けるのでしょうか。

 (松原理事)

 この場合は、データを抜いたというのではありません。端末にデータが表示されるのです。それは仕事上必要なものです。契約している状況等が順番に出てきます。

 (石原委員長)

 表示が出ないようにはできないのでしょうか。

 (松原理事)

 これが出ないと、どこへ訪問したらいいかまったくわからなくなりますので、それは営業活動に必要な情報です。

 (石原委員長)

 それに対する対策をどうやるかということでしょうか。

 (松原理事)

 契約のある人のところへ行き契約勧奨すると、お客さまにご迷惑をかけるので、現場の訪問要員は、携帯端末を見て訪問します。そのために必要最小限の台帳は必要です。これを見ずには、まったく営業活動はできませんので、そこはご理解いただければと思います。

 (明石委員)

 契約・収納業務を委託する法人を見つけるのも大変な状況の中で、このような事件が起こってしまい、足元を見直さなければいけないと思います。
 また、コンプライアンス教育ももちろん大事ですが、契約・収納業務に対するイメージがよくない状況の中で、さらに個人情報の流出に対する懸念があると、これからの活動はさらに厳しくなります。契約・収納活動においては、より一層丁寧に、そしてご理解をいただくような訪問のあり方を強化していただきたいので、それも含めて教育をお願いします。

 (松原理事)

 はい。もちろんおっしゃるとおりで、今、受信料に関していろいろな議論が起こっていますし、そのような中でいうと、基本に忠実で、より丁寧なお客さま対応が求められています。昨今、NHKだけではなくて、訪問に対する恐怖感のようなものも強い状況も踏まえ、しっかりと今まで以上に丁寧な訪問対応を含めて指導していきたいと思っています。

 (佐藤委員)

 提携委託先の問題がすごくある上に、今回は社長というところが、NHKの契約責任が問われることになると思うので、指導はもちろんですが、いろいろな研修以外に、契約に対する事前の調査などをもっと徹底していくことも必要ではないかと思います。

 (松原理事)

 NHKは今、応募してきたところすべてと契約するわけではありません。一定の審査をして、各事業者に、反社会的な勢力がいないか、それと関係ないかということを書面で審査をしたり、あるいは口頭で説明をしたりしています。その後に、民間の調査会社が提供してくれる企業調査報告や、企業代行サービスを使って、経営者の経歴や、あるいは会社の業務内容、ペーパーカンパニーでないことなども含めて規模等についても把握をした上で、審査を受けて契約しています。
 その上で、営業局でも、過去の新聞記事などで、代表や役員、株主に契約・収納業務を行うのにふさわしくない人がいないかどうかを検索して最終的に判断をしています。今回は、その委託先の選定のあり方についても、外部の知見を入れて、変えるところがあれば変えますし、改良すべきところがあればしっかりと改良していきたいと思っています。

 (高橋委員)

 この法人委託先は、熊本に最初にあって、名古屋に進出したと伺っていますが、やっていることは情報の口頭での横流しですから、どこでもやろうと思ったらできるわけですね。実際は、もう契約を解除していますからなかなか難しいのかもしれませんが、本当に熊本でそのようなことがなかったかどうか、念のためNHK側として調べて、チェックをされたほうがよいのではないかと思います。

 (黄木理事)

 そのとおりにさせていただきたいと思います。今回のことで申し上げますと、共犯者が名古屋の人で、以前からの知り合いであり、発生したのも名古屋で業務を始めた後ですので、熊本との関係は薄いとは思いますが、きちんとした対応をしたいと思います。

 

 

2 議決事項

 (1) 日本放送協会定款の一部変更について(資料1)(資料2)

 (荒木専務理事)
 5月に成立しました改正放送法、そして10月に公布された「放送法施行規則の一部を改正する省令」によりNHKに関する規定が改正されたことに伴う、「日本放送協会定款」の一部変更について内容をご説明します。
 協会の定款は、放送法第18条にのっとり、協会の基本的な事項を定めたもので、放送法や放送法施行規則の規定を取り入れたものが多くあります。それらの改正をふまえて、別紙のとおり変更したいと考えています。
 改正放送法の施行日は未定ですが、施行に備えて、定款の一部変更について、総務大臣に認可申請を行いたいと考えています。
 変更する主な事項はご覧のとおりで、インターネット活用業務関係や中期経営計画など、いずれも放送法で改正される事項になります。お手元の別紙の定款変更案をもとに内容を簡潔にご説明したいと思います。
 別紙の左の欄は、定款の変更案、右の欄は現行の定款です。
 まず、別紙1ページ中ほど、定款の第4条第2項第2号を、改正放送法に合わせ常時同時配信を可能とする規定に変更します。これにあわせて、ページ下の第6項から2ページにかけて、常時同時配信の実施に係る規定を新設しています。
 3ページをご覧ください。改正放送法の規定を受けて、第6条として、中期経営計画についての規定を新設します。
 同じく3ページ下のほうです。改正放送法で新たに「役員の忠実義務」が盛り込まれたことを受けまして、これに対応する規定を第10条として新設します。
 次に、6ページの下のほうですが、「経営委員会の運営」について規定する第21条です。放送法の改正によって、監査委員の経営委員会招集権が新たに定められたことを定款の第4項に反映させています。
 第5項・6項については、経営委員長による経営委員会招集に関する規程にならった定款独自の規定ですが、第6項については、監査委員による招集が役員の不正等に関する臨時の招集であることを考慮した規定となっています。経営委員長が招集する際には、「事前に十分な時間的余裕を持って発出する」となっていますが、監査委員の招集については、こうした文言はありません。
 10ページの下のほうから11ページは、第61条、「情報公開」に関する規定です。協会の情報公開については、法律によらず、定款の旧第58条の規定を置き、自主的に取り組んできました。
 情報公開には、2つの要素があり、視聴者に対する情報提供と視聴者からの求めによる情報開示があります。今回の法改正で、新たに情報提供の義務が放送法や施行規則に定められ、方法や範囲、そして対象が、子会社や関連会社、関連公益法人等にも及ぶことが規定されたことを、定款の新61条では、第2項を新設する形で反映しました。
 なお、改正放送法に情報公開全体に関する施策の充実に努める義務も規定されましたので、定款の第3項に取り込んでいます。
 定款の主な変更点は以上ですが、あわせて、条文中の「号」以下の表記の統一などを行います。
 変更の期日については、改正放送法の施行日としています。
 ご審議のうえ、議決をいただきましたら、すみやかに総務大臣への認可申請を行うこととしています。

 (村田委員)

 役員の忠実義務ですが、放送法の改正を受けてこちらでも盛り込んだという説明だったと思います。放送法にはこれまで、役員の忠実義務はなかったということなのでしょうか。

 (荒木専務理事)

 明文の規定はありませんでした。

 

 採決の結果、原案どおり議決。

 

 (2) CDN事業者への出資について(資料1)(資料2)

 (板野専務理事)
 それでは、JOCDN株式会社への出資の案件について説明させていただきます。
 NHKが出資を行う場合には、放送法第22条の規定に基づき、経営委員会の議決をいただいたうえで、総務大臣の認可を得る必要があります。このため、本日、この場にお諮りするものです。
 まず、出資先は、JOCDN株式会社です。JOCDNは、Hulu、TVerなど、放送局のインターネット動画配信を支えるコンテンツデリバリーネットワークサービスを提供する会社です。
 その概要を別紙にまとめましたので、ご覧ください。2016年12月に出資、設立された会社で、登記上の本社は港区の日テレタワーです。社長には、日本テレビ出身の篠崎俊一氏が就任をしています。
 今年4月に株式会社WOWOWからの増資を受け、株主からの出資を反映した資本金と資本準備金を合わせた資本は7億4,550万円となっています。最大株主は、株式会社インターネットイニシアティブ社、IIJです。残りの株主はすべて東京、大阪、名古屋の民間放送局です。
 2として、出資額を記載しています。
 今年度予算に1億円を計上していますが、うち9,940万円を出資に充てたいと考えています。
 3の出資時期についてです。放送法改正後、所定の手続を経て、年度内を予定しています。
 次に、4の出資の法的な根拠についてです。JOCDNの業務は、NHKが株式会社に出資できる対象を定めた、放送法施行令第2条(出資の条件)のうち、第10号「協会の放送番組に係る著作物について、その複製物を作成し、若しくは頒布し、又はこれを有線送信する事業」に該当するものと考えます。
 次に、5の出資の方法です。同社が第三者割当増資に際して発行する予定の株式を、1株の払込金額5万円にて1,988株引き受けたいと考えています。
 最後に、6の出資理由です。NHKは、これまで、放送で培った民放との二元体制を強化するとの観点をふまえながら、インターネットによる動画配信においても、民放との連携を深め、NHKのコンテンツを効果的かつ安定的に視聴者に提供する基盤の強化に資するという観点から、同社への出資の検討を行ってきました。NHKが同社に出資することにより経営基盤が強化されれば、国内向け動画配信サービスの市場に一層適正な競争環境が生まれ、技術力の向上による安定的な配信やサービス価格の低下につながることが期待されます。
 また、NHKが実施するインターネット活用業務を通じて得た技術的知見や視聴者の利用動向などの情報、在京及び地域民放各社がTVerの事業を通じて得た知見、情報を出資者間で共有することにより、NHKと民放が連携して動画配信の技術力やサービス向上を実現させることも可能になると考えられます。
 NHKの同社への出資は、放送と通信の融合時代における国内のインターネット配信サービスのさらなる高度化や、放送業界全体の発展に資すると考えられることから、本会社の増資にあたって9,940万円を出資するものです。

 (高橋委員)

 出資後の出資比率は、どのようになっていますか。

 (板野専務理事)

 基本的に、民放各社と横並びになっています。

 

 採決の結果、原案どおり議決。

 

 

3 報告事項

 (1) 新放送センターの基本設計について(資料1)(資料2)

 (松坂理事)
 放送センターの建て替えについては、3年前、2016年8月に基本計画を公表した後、去年2018年4月に、放送センター建て替えの第Ⅰ期工事の設計施工業者が、竹中工務店・久米設計設計施工共同企業体に決まり、敷地全体の基本設計の作業を進めてきました。このほど基本設計がまとまりましたので、その概要についてご報告します。
 まず、基本設計の主なポイントです。情報の社会的基盤としての役割を果たす公共放送、公共メディアの拠点となることを目指すために、次のようなポイントを基本設計に盛り込みました。
 1つ目は、人々の安全・安心に貢献するため、いかなる災害にも対応し、機能を維持できる建物とすることです。具体的には、首都直下の大地震が起きた際にも、放送を出し続けることができるよう、放送機能を担う情報棟と制作事務棟を一体免震とします。
 3年前に公表した放送センター建替の基本計画では、情報棟と制作事務棟は別棟の免震構造とする計画でした。一体免震構造とすることによって、ケーブル切断のリスクがより小さくなるなど、大地震の時の安全性が高まることになります。
 また、外部からの電力の供給が停止した場合に備えた自家発電については、液体燃料の備蓄に加えて、都市ガスも併用する設備を整備して電源の確保対策を強化します。液体燃料については1週間分ほどを備蓄しています。さらに断水に備え、井戸も新たに掘って井戸水も利用する計画です。こうした対応によって防災・減災報道の拠点としての機能維持に万全を期します。
 次に地域との調和です。放送センターは緑豊かな代々木公園や代々木体育館という建築史に残る施設のある場所と、渋谷の街とをつなぐところに位置しています。このため、建物のデザインは、周辺の環境に調和するとともに自然な色合いのものとします。
 公開棟やNHKホールなどの公開エリアには、周辺の通り側からも歩行者通路やエスカレーターなどでアクセスしやすい計画としています。また、建物内外においてバリアフリーを進め、多くの人が利用しやすいユニバーサルデザインに配慮した設計とします。
 3つ目のポイントは環境への配慮です。建物の空調や照明などには省エネ性能の高い設備やシステムを導入するなどして、CO2排出量の削減を推進します。建物の屋上緑化や植栽を進めて敷地内の緑化にも取り組みます。緑化率は渋谷区の条例の基準の25%を達成する予定です。
 新放送センターの各建物の概要です。放送センターの建替計画では情報棟、制作事務棟、公開棟、それに各棟をつなぐ人工地盤を建設します。このうち第Ⅰ期工事では情報棟を建設します。NHKホールは現在のホールを継続使用する計画です。それぞれの建物の延床面積や高さは資料の表のとおりです。全体の延床面積の合計は、29万3,264平米となっています。基本計画公表時よりおよそ2万平米増えていますが、当初、延床面積に計上していなかった人工地盤などを行政との協議の結果計上することになったことによるほか、設計作業の中で増加したものです。
 これによっても、全体の容積率は、敷地の建築規制の上限の300%以内に収まっています。建物の高さは、最も高い制作事務棟がおよそ92メートルです。これは基本計画とほぼ同じです。参考までに、現在の建物では、本館の101メートルというのが最も高くなっています。
 各建物の全体の配置はページの下にあるとおりです。これは基本計画公表時と同じです。情報棟には報道の機能と情報番組の制作機能を、制作事務棟には映像や音声の制作スタジオと事務スペースを、公開棟には公開スタジオなどの公開施設を配置する計画です。
 次のページには外観のイメージとして、建物の建て替えが完了した際の上空から見たイメージ図と第Ⅰ期工事で建設する情報棟の完成予想図を示しました。上の図の黄色で囲んだ部分が新放送センターです。このうち情報棟は階段状になっている建物です。その奥の一番高い建物が制作事務棟です。情報棟の右隣下がNHKホールで、その向こうが公開棟というふうになっています。設計のポイントで説明しましたように、代々木公園などの周辺の環境と調和したデザインとなるようにしています。
 続いてコストについてご説明します。想定建設費は3年前の基本計画で示した内容に変更はありません。第Ⅰ期工事については設計施工一括方式を採用し、去年4月に業者を決定した際の契約額は税抜きで573億円となっています。第Ⅱ期以降の工事については、今後、発注の範囲、契約方式などを検討していきますが、最も効率的、効果的な技術を活用するなどコストの抑制に努めています。経費については建設積立資産を活用し、財政への影響を最小限に抑えます。
 第Ⅰ期工事のスケジュールですが、東京オリンピック・パラリンピックが終了した後の来年9月に着工します。はじめに、情報棟の建設地にあるふれあいホールの解体などを行って、情報棟の建物の建築工事に移っていきます。そして情報棟は2025年中の運用開始を目指します。第Ⅰ期工事の完了の時期については、情報棟が運用開始した後、現在の放送センターの建物からさまざまな機能を情報棟に移して切りかえる際に事故がないよう万全を期すため、基本計画の公表時の計画よりも1年延長して2026年末とします。
 最後に、その他として放送センターの建て替えに関連するその他の課題についてご説明します。NHKホールの取り扱いについては、すでに4月に公表していますが、継続して使用を続けるにあたって2021年3月からおよそ1年4か月間休館して、天井の改修や設備更新などの工事を行います。また、現放送センターのNHKスタジオパークの運用について建て替え工事の影響などを検討してきましたが、第Ⅰ期工事の着工に伴い、来年10月から閉館することにしました。スタジオパークが行ってきた公開サービスや放送体験については今月1日に渋谷駅前にオープンした「NHKプラスクロスSHIBUYA」やNHK放送博物館、各放送局で実施するほか、親子向けのイベントも各地で開催するなど視聴者サービスが低下しないよう取り組んでいきます。
 新放送センターの基本設計についての報告は以上です。
 きょうの報告を受けまして、きょう夕方の経営委員長ブリーフィングの後、執行部から基本設計の概要について外部公表します。
 今後の第Ⅰ期工事に関するスケジュールですが、これから情報棟の工事を行うために必要な詳細な実施設計の作業を進め、東京オリンピック・パラリンピック終了後の来年9月に着工する予定です。

 (森下代行)

 今回の設計で基本的に正面入り口が変わるわけですね。NHKホールに入るのは、渋谷から上がってくる道から入る人が多いだろうと思うんです。このあたりの入り方のところは工夫していただければと思います。正面から入るには、ぐるっと回らなければいけないですから。

 (松坂理事)

 渋谷駅から来ますと、公園通りの坂を上がってきて、けやき並木に出て、それからホールに入っていかれる方が一番多いと思います。けやき並木については、今後少し敷地の一部を提供して広げて、歩いて来られる方により利便性があるような形にします。それから井の頭通りからNHKホールや公開棟のところにエスカレーターなどでアクセスしやすいなどの工夫をして、特に公開エリアについては周りのアクセスを利用しやすいように対応していきたいと思います。

 (高橋委員)

 工事スケジュールについては、基本計画公表時よりも約1年延長するということですが、これは全体の工事へも影響する話なのでしょうか。

 (松坂理事)

 情報棟が完成した後に、東館を解体して次の工事に移るわけですが、その開始が1年遅れるということになります。その後の東館の解体、それからそこにつくる制作事務棟の工事などの期間についてはこれから精査していきますので、できるだけ遅れを取り戻せるような形で対応していけないか検討したいと思っています。

 (高橋委員)

 もともと長い工事スケジュールになっているのですが、世の中の一般の企業では、工期が1年延びるということで、たぶん大騒ぎだと思います。ですから、1年延長と書いてありますが、十二分に説明責任を果たせるような準備だけはしておいたほうがよろしいかと思います。

 (松坂理事)

 情報棟完成後のセンターの電源の切り替えに慎重を期したいということと、情報棟ができた後も、西館や本館は、引き続き取り壊しまで事業を継続しますので、放送などに影響が出ないように機能を確実に切り替えるということに万全を期す必要があるだろうということで、第Ⅰ期工事の完了を後ろにしました。全体の工事の影響が最小限になるように検討を進めていきたいと思います。

 (高橋委員)

 少なくとも私は理解しているつもりですが、世の中一般の人には、かなり大きなインパクトがある工期だという気がしましたので、あえてお話をさせていただいた次第です。

 (石原委員長)

 建物の高さが制作事務棟で92メートルですが、これは今と同じぐらいの高さでしょうか。

 (松坂理事)

 今の本館が101メートルで一番高いです。

 (石原委員長)

 低くなるのですね。

 (松坂理事)

 少し低くなります。日影規制の関係で敷地の南西寄りには高い建物が建てられますが、現在、本館がある場所は日陰の規制の関係で、今の高さでは建てられません。敷地の中で高い建物が建てられる場所は決められていますので、その辺を考慮しながら全体の構成を考えています。

 (明石委員)

 巨費を投じて、新しいNHKのシンボルとなる建物をつくるので、大変期待しています。今ここでコストとして挙げている第Ⅰ期、第Ⅱ期の予算に関しては、建設積立資産を活用し、と書かれていますが、人件費の高騰等々を含めて、建設コストは先が読めないところがあります。しかも工期が非常に長いことを考えると、実際のコストをどの範囲で想定していらっしゃるのか。例えば予算内ですべておさまる形になっているのか、それともやはり予算をオーバーしてしまう可能性も検討しているのか、その辺はいかがでしょうか。

 (松坂理事)

 人件費の高騰や資材の価格などは想定できない部分もあるかもしれませんが、第Ⅰ期の工事については、競争入札の採用によって、予定した価格よりも実際の契約額が抑えられたということもあります。第Ⅱ期以降どのような発注でやるのか決めるのはこれからなのですが、競争入札を行う、競争契約を行うということと、最新の技術によって安くなる部分もありますので、いろいろと工夫して採り入れながら、また、第Ⅱ期以降の工事についても建築の専門家の方の意見もいただきながら、できるだけ効率的に、1,700億円というのが建て替えの建設費として積み立てたものですので、この範囲内で収まるように努力していきます。

 (明石委員)

 工事が進んでいくと、想定外のコストがかかる可能性もあると思うので、できるだけ安い価格で契約ができるように、引き続き努力していただきたいと思います。

 

 (2) BS右旋の帯域再編プラン変更への対応について(資料)

 (荒木専務理事)
 総務省が所管するBS右旋の帯域再編プランが再度変更されることになりましたので、その経緯と今後の対応についてご説明いたします。
 8月27日の経営委員会でBS右旋に新しい事業者が参入するために帯域再編が必要となり、総務省からNHKに対しての協力要請に応じることを報告し、総務省にBSプレミアムの周波数変更の申請書を提出しました。
 しかし、その後になってBS右旋で現在放送している放送事業者が業務廃止の意向を示しました。このため、総務省が再度、帯域再編プランを変更することになり、その結果、BSプレミアムの周波数変更が必要なくなったというものです。
 これまでの経緯を簡単に説明します。2018年6月に閣議決定された規制改革実施計画で衛星基幹放送への新規事業者の参入促進の考えが示され、総務省が認定申請を受け付けたところ、9社から申請がありました。
 新規業者の参入を可能とするためには、既存の放送事業者の帯域再編が必要となることから、ことし7月に総務省からNHKに対して協力要請がありました。その要請というのは、BSプレミアムの周波数変更に協力してもらいたいというもので、この要請に応じることを8月27日の経営委員会で報告したうえで、8月30日にBSプレミアムの周波数変更に関する指定事項変更申請を総務省に提出しました。
 それぞれの事業者からの変更申請など諸条件が整ったため、総務省は9月9日の電波監理審議会に新規事業者4社の認定を諮問し、答申されました。
 しかし、その後10月になって、現在BS右旋で放送している放送事業者が、来年3月に業務を廃止することを表明したため、総務省が再度、帯域再編プランを見直すこととなりました。
 見直し後の新しい帯域再編プランでは、NHKについてはBSプレミアム、BS1ともに現状のままとなり、周波数変更の必要がなくなりました。
 今後の対応ですが、8月末に総務省に提出したBSプレミアムの周波数変更に関する指定事項変更申請を取り下げる手続きを進めます。
 帯域再編プランの再度の変更により、NHKの周波数変更はなくなりましたが、視聴者の皆さまへの影響が最小限に収まるように、総務省が今後立ち上げる関係事業者による検討体制にNHKも参画し、去年の4K・8K放送開始にあたって実施した帯域再編の際に得られた知見の提供など、技術的な支援をしてまいります。

 

 (3) 2019年秋季交渉について(資料)

 (松坂理事)
 労働組合日放労との秋季交渉について報告します。
 組合とは、毎年、春と秋に交渉を行っています。春は職員の処遇や業務・要員体制を中心に、秋はNHKの将来像や労働環境等について、幅広く労使で議論を交わしています。組合は今月1日の定期中央委員会で交渉にあたっての組合方針を決定し、協会に通知してきました。
 ことしの組合の交渉方針は、大きく3つあります。
 1つ目は、「組織の持続可能性を高めていくための働き方について」です。公共メディアへの進化を見据えて、どのように働き方を見直していくのか、労使議論を行います。
 2つ目は「職員制度の趣旨や仕組みの浸透について」です。専門業務型裁量労働制の見直しなどについて、労使議論を行います。
 3つ目は「健康に働き続ける環境整備について」です。保健事業の今日的な見直しや、スタッフの環境整備について労使議論を行います。
 協会からは、勤務制度等の見直しや、保健事業における新たな施策の検討について提案し、議論を行います。
 交渉期間は11月24日から26日までの予定です。交渉では経営の考え方を丁寧に説明するとともに、組合の意見に対して真摯に対応し議論を進めたいと考えています。

 

 

4 その他事項

 (1) 会計検査院による平成30年度決算検査報告について(資料)

 (松坂理事)
 会計検査院の検査結果について報告します。会計検査院による平成30年度の決算検査が終了し、11月8日に会計検査院長から検査報告書が内閣総理大臣に提出されました。
 NHKの平成30年度の決算については、検査報告の歳入歳出・決算その他検査対象の概要に貸借対照表、損益計算書等が掲載されています。
 なお、個別の指摘事項はありませんでした。検査の概要ですが、書面検査として財務諸表および関連諸表について検査が行われ、1,842件、4万3,483枚の証拠書類を提出しております。
 実地検査としては、昨年11月からことし7月までの期間、本部2回及び放送局18局所において、延べ298人日の体制で検査が実施されております。

 

 (2) インターネット活用業務実施基準について(資料1)(資料2)(資料3)

 (荒木専務理事)
 それでは、インターネット活用業務実施基準につきまして、認可申請後の状況などについて説明いたします。
 インターネット活用業務実施基準の変更案につきましては、10月15日の経営委員会で議決をいただき、総務大臣に認可申請を行ったところです。
 この認可申請の取り扱いに関して、総務省は、11月8日に「基本的考え方」を公表し、広く一般の意見を募集するとともに、NHKに対して検討要請がありました。総務省からの要請文書を資料の別添1としてお示ししております。NHKから検討結果を回答する期限は、意見募集の意見提出と同じく、12月8日となっています。
 別添2の1ページをご覧ください。「1.協会の業務に関する総務省の基本的考え方」です。この中で協会のあり方について、業務、受信料、ガバナンスの三位一体の改革が必要であるとしたうえで、全体の収支構造が妥当かどうかについて改めて検討することが適当であり、「具体的には既存業務の見直しや受信料額の適正な水準を含めた受信料の在り方について検討を行うことが必要である」としています。
 さらに2ページは、常時同時配信を可能とする放送法改正にあたっての国会の附帯決議で、協会の目的や受信料制度の趣旨に沿って、公正競争確保の観点で、適正な規模で運営することが求められている、と指摘しています。
 「2.業務の実施にあたって留意すべき事項」においては、(1)業務全体の見直し、(2)受信料の在り方の見直し、(3)ガバナンス改革、と三位一体の改革に関連する記述があります。そして(4)インターネット活用業務で、「協会の業務全体を肥大化させないことが求められる」としたうえで、令和2年度に事業収支差金の赤字を見込んでいることを踏まえて、インターネット活用業務の拡大によって事業収支のバランスを悪化させることのないように取り組むことが強く求められるなどとしています。
 4ページからのNHK案の概要は、10月15日に認可申請した実施基準案の内容についてまとめられている部分ですので、説明は省かせていただきます。
 5ページからの4は、NHK案自体についての総務省の基本的考え方を記したものです。
 (1)受信料財源業務に関する考え方のうち、アの項目では常時同時配信の画面上にメッセージを表示して認証を行うことについて「一定の合理性が認められる」としています。そのうえで、利用申し込みの促進のためや2020年の東京オリンピック・パラリンピックに際してメッセージを表示しないようにすることについて、「市場競争が阻害されかねない」という民放からの意見を踏まえて、こうした「特例措置は設けないことが望ましい」としています。
 イでは、放送法上の努力業務のうち、「地方向け放送番組の提供」に関しては、次の6ページで「地方の民間放送事業者にとっての影響の程度が判断できるものとなってはいない」とし、「常時同時配信の開始前に『地方向け放送番組の提供』を実施する時期及び内容等について、一定程度明らかにすることが望ましい」としています。もう一つの努力義務、「民間放送事業者との連携」については、「民間放送事業者の求めに応じて、協議の場を設け、毎年度行う協力の内容を具体化したうえで、実施計画において記載することが望ましい」としています。
 6ページの中ほど、ウでは、ユニバーサル・サービスに関する業務について「適切なものである」としています。
 また、エでは、国際インターネット活用業務について、次の7ページで、「適切なもの」としたうえで、現在の業務から「強化する部分を明らかにしつつ、既存部分も含めて、適正なコストで実施することが望ましい」としています。
 次のオでは、東京オリンピック・パラリンピックに関する業務について、「一定の社会的意義が認められる」としています。
 7ページの中ほどから、②業務の実施費用に関する項目があります。放送法では、実施基準の認可要件として、「過大な費用を要するものでないこと」が挙げられていますが、これに関連して、「基本的業務」とは別に個別に上限を設定して費用を管理することについて、業務に対する「効率化が働きにくくなることが懸念される」などとして、8ページでは、令和2年度については、一時的に発生する東京オリンピック・パラリンピックに関する業務の費用を除き、受信料収入の2.5%を維持し、既存のインターネット活用業務についても、真に必要なものかを検証して見直し、効率化を図ることが望ましいとしています。常時同時配信等については、費用上限の範囲内で段階的に実施して、その費用及び効果を検証し、改めて意見募集を実施したうえで、必要に応じ実施基準を見直すことが望ましいとしています。
 ユニバーサル・サービスに関する業務と国際インターネット活用業務については、効率的に行う必要があるものの、常時同時配信等の実施によって内容面において縮小されることは望ましくない、ともしています。
 また、費用の抑制的な管理のため、「外部専門家の知見を活用するなど、早急にインターネット活用業務の効率性を検証する仕組みを検討し、導入することが望ましい」ともしています。
 8ページの(2)は有料業務、NHKオンデマンドについての考え方を示しています。従来の見逃し番組サービスと過去番組サービスを統合してワンサービス化することについて「有料業務の累積収支の改善を遅らせる点は否定できない」とするとともに、既放送番組の配信を受信料財源業務で行うことについて明確な理由が示されていないとしています。9ページで、受信料財源で提供する既放送番組とNHKオンデマンドで提供する既放送番組との関係を、「再検討することが望ましい」としています。
 (3)の①では、インターネット活用業務審査・評価委員会に関して、「委員の選任に当たって、市場競争の評価等に必要な知見を有する、中立的な者を選定することを明らかにしておくこと」、また、「検討に当たって、外部事業者及び民間競合事業者から意見を聞くことができるようにすることが望ましい」としています。また、個々の番組等の必要性・有効性の点検結果について公表するとともに、実施計画の策定について委員会に意見を求めるに際して報告し、検討に活用することが望ましいとしています。
 ②では、インターネット活用業務の実施による知見を、民放と共有することが望ましいとしています。
 10ページの5では、今後の進め方について記述していますが、総務省は、意見募集への提出意見とNHKからの回答を踏まえて検討を行い、認可の適否について電波監理審議会への諮問を行う予定、としています。
 今後のスケジュールとしましては、この「基本的考え方」について精査、検討を行い、次回11月26日の経営委員会で、総務省に対する回答の方向性と概要について説明したいと考えています。その際にいただくご意見も踏まえ、12月8日の提出期限に向けてさらに検討を進めてまいります。
 実施基準案自体の見直しが必要になった場合には、改めて実施基準案を経営委員会にお諮りします。

 (中島委員)

 1ページの中にあります総務省、総務大臣の見解としては、ここに指摘されていますように、「業務」、「受信料」、「ガバナンス」の三位一体改革からして、NHKの取り組みが十分ではないということを表していることが、行間から読みとれますが、その点に関して、会長の見解をぜひ伺いたいと思います。

 (上田会長)

 まず、受信料に関しては、中長期的に受信料収入の見通し、それから支出との関係で、今、財政安定のための繰越金が1,000億円を超える規模になっていますので、これも十分踏まえて受信料の引き下げ・還元を行いたいと、かつ、時間的にもできるだけ早く行いたいということで、消費税の2%引き上げに際して受信料額を据え置き、実質2%の値下げを今年の10月1日に実行に移しました。
 今後ずっと右肩上がりで受信料収入が上がっていくというのは、世帯の減少等で難しい面もありますので、ぎりぎりのところで実施させていただいたつもりですが、その値下げのために、来年度予算は、今後ご審議いただきますけれども、赤字予算を見込みます。NHKの会計の仕組み上、赤字予算を見込むということは、1,000億円を超える繰越金を適正規模に調整していくことにもつながります。ただし、いつまでも赤字というわけにはいきませんので、2023年度には黒字転換して、財政安定のための繰越金も適正規模にしていくという見通しの中でやってきました。これが受信料に対する一つの考え方です。
 業務の見直しに関しましては、特にBSのチャンネルの見直しです。今、鋭意検討していますが、総務省のロードマップを踏まえ、4K・8Kの本放送を去年の12月1日からスタートし、BSチャンネルは2チャンネル増える形になりました。ご存じのように8Kは左旋という、受信の形も右旋と違うパラボラアンテナなどが必要です。チャンネル数を減らしていくというのは、いろいろな困難が伴うのですが、今、検討しています。ただし、今2Kの衛星放送を受信されている方がいらっしゃいますので、すぐにこれを止めてしまうということになると、今のテレビでご覧いただいている方が見られなくなりますので、ある程度時間をかけてやらざるを得ないのではないかと思っています。
 ガバナンスについては、連結経営です。今、25の関連団体がありますが、これに関して連結経営のさらなる深化を進めるため、前会長の時から、事業会社の内容を把握できるように透明性を高めるように努めています。それを踏まえて、統合するなどして、さらに効率を上げていこうということで、ことし4月1日にNHKアイテックとNHKメディアテクノロジーを合併しました。それから、来年4月1日に間に合わせるように進めていますが、制作関係の事業を行っているNHKエンタープライズとNHKプラネットを合併します。NHKエンタープライズは東京中心で番組制作をしており、NHKプラネットは地方に分散していたものを統合しまして、内部統制のあり方やいろいろな制度や仕組みを、この3年間で統一してきました。NHKの関連会社としての体制を整備して、来年4月1日に合併してさらに効率化を図ります。受信料の公平負担を進め、収入はしっかり頑張って増やしていかなくてはいけませんが、右肩上がりでずっとということは難しい状況です。効率化を進めつつ、視聴者・国民の皆さまに、公共放送、公共メディアとしてのサービスを最大限充実させていこうと考えています。電波の場合はある程度電波帯域でサービスが限られますが、インターネットの場合は非常に広がりがあり、どこまでやるのかという問題があります。公共放送から公共メディアへという形で展開していっても、公共という軸足が外れてしまってはいけません。われわれが国民、視聴者の皆さまにご提供するのは、「6つの公共的価値」で、ベースとして「公共」という軸足を外さずに、そこに常に立ち返るということです。限られた経営資源を最大限に有効活用しながら、自分たちの足場のところをしっかりと見据えていくことでやってきたのですが、必ずしも十分でないというご意見もあります。今回の意見を踏まえ、12月8日までの、非常に限られた期間ですが、全員の英知を絞って、この対応を全力で検討を始めたということです。

 (渡邊委員)

 ことし5月に全国広告連合会という大会が富山であり、参加したのですが、新聞社や全国の民放キー局すべての社長が集まり、今の問題点、市場の変化ということについて、かなり突っ込んだ話し合いがありました。
 その時に私が感じたのは、インターネットのほうに広告の費用が流れていて、企業で出す広告費用の金額はそんなに変わらないのですが、放送や新聞社とインターネットの業界の割合が、非常に変化してきているということです。インターネットにどんどんシフトしていき、新聞社も全国の民放キー局も、自分たちが非常に厳しい状況になっているという問題意識が、統一して出されていました。NHKがインターネット活用業務を実施する場合に、地方民放局はそこを一番気にしているのですが、今回の実施基準案の中の2.5%の費用の上限について、いろいろなプラスアルファの部分を加えると3点数%になるというのは、当事者の皆さんからすると、見過ごすことができないというエネルギーがあったような気がします。それを総務省がどう考えたかわかりませんが、結果、インターネット業務については2.5%という上限を決めたならば、その範囲で、とりあえずスタートするというようにしないと。全体の二元体制、民放とNHKのそれぞれの役割がある中で、なかなかその辺が一番背景にあるのではないかなと感じています。NHKのほうではそのような業界の動きはきちんとつかんでいらっしゃるのかなと思いました。

 (上田会長)

 すでに海外、アメリカなどでは、テレビの広告宣伝よりも、インターネットのほうが超えているといいます。日本でもそのような状況なので、私は会長になって、二元体制ということで、民放の方々とずっとお話をしてきていますので、非常によくわかります。ただこれまで、経営委員の方々にご説明していますように、現在インターネット活用業務をほとんど2.5%でやっているわけです。新たに常時同時配信を始めますと、どうしても追加的に費用がかかります。例えば、受信契約者と生計をともにする方に放送を補完するサービスとして提供するためには、認証という作業が必要です。全国的に約5,000万世帯あり、契約していただいているのは4,000万世帯ですが、これを全部行うわけですので、かなり膨大な費用がかかります。今2.5%使っているものの中で、このような費用を何とか手当てできないかを一生懸命検討しています。このため、2.5%の中でやっていく基本的業務とは別に、4つの公益性の観点から積極的な実施が求められる業務については個別に費用の上限を設定して抑制的に管理をする考え方をお示ししたのです。今、渡邊委員がおっしゃったようなこともしっかりと踏まえてやってきたつもりではありますが、それに対してもう一度再検討を要請されましたので、さらにぎりぎりまで、サービスを再考したり、費用を見直したり、しっかり検討していこうと思います。その中で、オリンピック・パラリンピックは、海外のお客さまもいらっしゃいますし、1年限りということもあり、認めてもいいのではないかというご意見もおありのようです。オリンピック・パラリンピックに関しては、2020年度に限って認めていただき、国際放送に関しては、これはしっかりやれと言われています。これは電波だけではなく、インターネットを通してでないと、世界の中に伝わっていかないのです。かつ、多言語に対応するようにということで、言語数を増やしています。今回の台風19号等でも、海外からの旅行客の方にもしっかりと伝えていこうということでやっていますので、必ずしも民業を圧迫するものではないものもあります。それから、インターネットに関して民放との協力でやっているものがあるわけです。そのようなものをしっかり説明しながら、われわれとしても本当にぎりぎり、ここまでやってきていますので、ここで諦めることなく、われわれも身を切る努力をさらにもう一段行い、何とかまとめたいと思っています。

 (渡邊委員)

 もう一点、先日、盛岡での「視聴者のみなさまと語る会」で、受信料を支払っている高齢者からこの件に関して懸念が出ました。その方はスマートフォンを持っていない、パソコンも使わないという人だったのですが、自分たちが支払う受信料の中からインターネットにかなりの費用を使うことが、あまり自分たちの利益にはならないというご意見でした。その人から言わせれば、今の説明のままではまずいのではないかとのことでした。受信料制度の中で、インターネットに対する受信料というものを新たに何か考えない限りは、これは解決しないのではないかと感じました。今、市場の状況と受信料を支払っている人の目から見ても、いろいろな意見があることについては気をつけなくてはいけないのではないかと思います。

 (上田会長)

 それも非常によくわかります。ただ、インターネットを活用するからこそ伝えられることもあります。例えば、台風の時、放送で一斉同報で流すことは非常に力があります。私は台風19号の時に、なるほどと思ったのですが、台風が近づくにあたりどうなっているかを知るためにテレビをつけっ放しにしておくというように活用されています。そういう面では一斉同報の威力というのは相当あると思います。一方で、例えば千葉のように停電が、長い期間にわたった時、きめ細かなライフライン情報を伝えないと、L字画面の放送で情報がどんどん流れているだけでは、視聴者・国民の皆さまが必要とする情報が、必要なところに届かないという問題があります。私どもはラジオを持っていますので、ラジオ、テレビとあわせて、インターネットをうまく活用しながらやると、その中で2.5%というものが、受信料をお支払いいただいている方にどの程度のものなのか。ご紹介いただいたご意見も忘れずに注意しながらやっていきたいと思います。

 (長谷川委員)

 受信料を支払っている皆さんのご意見ということで言いますと、先日の「視聴者のみなさまと語る会」では、見逃した番組を無料で1週間ぐらい見られればというご意見がありました。われわれは、このような急転換を全然予想していなかったので、「まさにそうなりますよ」と言いましたら、拍手が起こりました。高齢の方が多かったのですが、ほとんど満場の拍手という感じで、われわれ非常にいい気分で帰ってきましたらこのようなものが出ていて、びっくりしました。視聴者の方の中には、そのような声もあるということを、ぜひ総務大臣にお伝えいただきたいと思います。

 (上田会長)

 インターネットの特色の一つは、「いつでもどこでも」ということで、ある一定時間テレビの前に座っていないと情報の提供を受けられないということではないところに強みがあります。それはやはり見逃しといいますか、これもずっとやっていいというわけではなく、ある一定の限られた期間です。海外では結構長い期間、見逃しを見られるところがありますが、われわれの場合はNHKオンデマンドというサービスを有料で提供しています。インターネットの常時同時配信・見逃し番組配信を実施したいとお願いしている一つの理由は、「いつでもどこでも」という形に、視聴習慣が変わってきていることにあります。視聴者・国民の皆さまに、われわれが公共放送、公共メディアとして期待されるサービスを、この環境変化の中で提供していくという形に少しでも姿を変えていきたいと思います。

 (明石委員)

 今、会長がおっしゃった公共メディアとしてのあり方を見直すというのは、非常に大切なポイントだと思います。本当の意味でNHKが、民放とも違い、また国民にも理解されるためには、公共メディアという点がキーワードでしょう。例えば防災面でも、テレビは電源が切れてしまったら、情報そのものが収集できないので、これからの時代、インターネットというのは不可欠なツールであり、NHKが公共性を高めていくためにも、インターネット配信は必須のものであると捉えています。一方で、公共の範囲を逸脱してるのではないかと思われるようなコンテンツに関しては、当然批判が上がってくるでしょう。その点を踏まえて公共メディアとしてのNHKの今後のあり方についてもう一度見直し、そこを丁寧にわかりやすく説明することが、一般の視聴者に対しても、あるいは総務省に対しても、必要な要素なのではないかと思います。その点がやや漠然としてしまっていたことによって、今回のような結果になってしまったのではないかと思いました。ぜひそこをもう一度固めていただけたらと思います。

 (上田会長)

 それはご指摘のとおりで、謙虚にいろいろな皆さまの声を聞きながら、民放との二元体制といっても、寄って立つ軸足の部分が必ずしも民放と同じところで競合しているわけではありませんので、われわれに期待されているようなことを、しっかりと軸足をそこに定めてやるということだと思います。放送番組審議会などいろいろな場がありますし、「視聴者のみなさまと語る会」で聞いた経営委員の方から教わることもたくさんあるでしょうし、それらをしっかり取り入れながら、常に見直しながら進めていきたいと思います。またご指導をお願いしたいと思います。

 (森下代行)

 私が言いたいのは、受信料制度の見直しです。これは非常にいろいろな問題があり、簡単に解決しないことは承知しておりますが、何らかの形で、早い時期にNHKとしての考え方を示していき、その中で、世の中と議論をしていくということで、料金制度について検討体制を見える化するとか、あるいはこのような仕組みでやっていきますとか、何か姿勢を示すことが必要ではないかという気がします。もちろん、それをいっぺんに決める時ではないから、ただ、少なくとも問題があって将来的に長期的に検討するのというのはいいのですが、それだとなかなか理解されません。何かそのような考え方を示すのが必要ではないかという気がしますが、いかがでしょうか。

 (上田会長)

 経営委員の皆さまには非常にご理解いただいているように、現行の受信料制度は、放送の受信設備を設置している世帯をベースとしていますが、インターネットによる視聴は個人で移動もするのがベースであり、ずいぶんと異なります。今すぐにそのような議論をするより、むしろ、インターネットも使ったような形での公共メディアとしてのNHKの姿はどのようなものなのだと、まずは公共メディアとしてのNHKの姿を、ある程度しっかりと実際にサービスを提供し、お示ししながら、視聴者・国民の皆さまに評価していただき、本質的な研究をしていかなくてはいけないと思っています。まずは、具体的にご指摘を受けたようなところにしっかり対応しながら、そして、われわれ自身が、公共メディアと言っていても、視聴者・国民の皆さまに必ずしも具体的にご理解いただけていない部分もあると思いますので、そこのところをまずはしっかりと示していくことが必要ではないかと私は思っています。経営委員の皆さまのご意見も踏まえながら、ご指摘、ご指導をいただきながら、執行部としても、しっかり検討していきたいと思います。

 (森下代行)

 NHKとしてはこう考えているのだということを、しっかりと示して理解していただく必要があると思います。

 (上田会長)

 そうですね。

 (村田委員)

 今のやりとりで、陣頭指揮をとっていらっしゃる会長をはじめ、皆さんのご判断によると思いますが、中長期的に受信料制度ができたときの歴史的背景や、あるいは、今までどのような法解釈がなされていたのか、あるいは技術的にどういう影響を及ぼすのかというのは、たぶん、NHKの中の現場の閉じた議論だけでは、なかなか展望が得られなくて、外部のいろいろな専門家の話を聞くような、別に委員会を立ち上げなくてもいいから、勉強会のようなものを随時持っておくということが、タイミングが来た時に、すんなりと議論をしていく実行させる上では大事なことだと思います。

 (上田会長)

 私が会長になって最初に立ち上げた諮問委員会が、受信料制度等検討委員会で、これは今も存続しています。ただ、森下代行がご指摘なさったような議論をするには、今の受信料制度等検討委員会のこのメンバーの方がいろいろやっていただいていますが、仕組みそのものをもう少し変えていく必要があるかもしれません。

 (石原委員長)

 いずれにしても、いろいろと議論はありますが、大変厳しいし、明確に書いてあるのです。今、会長は、従来こう考えていたという話の延長でおっしゃっている感じがするのですが、大丈夫なのかとみんな心配していると思うのです。12月8日に間に合わせるには、次回11月26日の経営委員会で議論することになりますか。

 (荒木専務理事)

 きょういただいたご意見を踏まえながら精査、検討をして、次回11月26日に、その時点での執行部の考え方などをお示ししたいと思います。

 

 

 以上で付議事項を終了した。

 

 

<会長、副会長、専務理事、理事退室>

 

 

○ 指名部会
 会長任命に関する指名部会を開催した。

 

 

 上記のとおり確認する。

 

 2020年1月15日    

森 下 俊 三

 

 

高 橋 正 美