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第1319回
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平成30年12月28日(金)公表
※2 審議事項(1)「平成31年度予算編成方針」、同(2)「2019年度(平成31年度)国内放送番組編集の基本計画について」、同(3)「2019年度(平成31年度)国際放送番組編集の基本計画について」は平成31年2月1日(金)公表

日本放送協会第1319回経営委員会議事録
(平成30年12月11日開催分)

第1319回 経 営 委 員 会 議 事 録

<会 議 の 名 称>

第1319回経営委員会

 

<会 議 日 時>

平成30年12月11日(火)午後1時30分から午後5時45分まで

 

<出 席 者>

〔委  員〕

  石 原  進 森 下 俊 三 井 伊 雅 子
    槍 田 松 瑩   小 林 いずみ 佐 藤 友美子
    高 橋 正 美   長谷川 三千子 村 田 晃 嗣
    渡 邊 博 美      
  ◎委員長 ○委員長職務代行者(以下、「代行」という。)

 

〔役  員〕

  上 田 会 長 堂 元 副会長 木 田 専務理事
  坂 本 専務理事 児 野 技師長 松 原 理 事
  荒 木 理 事 黄 木 理 事 菅   理 事
  中 田 理 事 鈴 木 理 事 松 坂 理 事

 

 

<場   所>
放送センター  22階経営委員室  21階役員会議室

 

<議   題>

 

○ 視聴者のみなさまと語る会(静岡)登壇者報告

 

付議事項

 

1 会長報告

 

2 審議事項

 (1) 平成31年度予算編成方針(資料1)(資料2)

 (2) 2019年度(平成31年度)国内放送番組編集の基本計画について(資料)

 (3) 2019年度(平成31年度)国際放送番組編集の基本計画について(資料)

 

3 報告事項

 (1) NHKメディアテクノロジーとNHKアイテックの合併について(資料)

 (2) 「平成29年度業務報告書」に付する総務大臣の意見について(資料)

 (3) 2018年秋季交渉の結果について(資料)

 

4 その他事項

 (1) 総務省「放送を巡る諸課題に関する検討会」について(資料1)(資料2)(資料3)

 (2) 最高裁大法廷判決を受けたNHK受信料制度等検討委員会での意見交換会の報告について

(資料1)(資料2)(資料3)(資料4)

 

○ 説明会「地域改革 2018年度上半期報告」

 

 

議事経過

 

 石原委員長が開会を宣言し、経営委員会を開催。

 

 

○ 視聴者のみなさまと語る会(静岡)登壇者報告

 12月8日土曜日に開催された「視聴者のみなさまと語る会(静岡)」に登壇した石原委員長、小林委員から感想の報告を受けた。

 

 

<会長、副会長、専務理事、理事入室>

 

 本日の付議事項および日程について説明。第1318回(平成30年11月27日開催)の議事録、および第1316回(平成30年10月23日開催)と第1317回(平成30年11月13日開催)の平成31年度予算関連等の議事録のうち「NHK経営計画(2018-2020年度)の修正」に関する議事録を承認し、所要の手続きを経て、平成30年12月14日に公表することを決定した。

 

 

付議事項

 

1 会長報告

 (上田会長)
 単身赴任手当の不正受給につきましてご報告します。
 帯広放送局技術部の副部長が2年5か月にわたって単身赴任手当等を不正に受給していたことが分かり、本日、懲戒免職にしました。偽造された証ひょうを提出し、多額の手当を受給し続けるという極めて悪質な手口であり、受信料で支えられているNHKで、決してあってはならない言語道断の行為であります。また、単身赴任の要件を満たさない期間があるにも関わらず、届け出が遅れて多額の手当を精算するに至った事案につきましても、懲戒処分を決めました。視聴者・国民の皆さまの信頼を著しく損なうことになり、会長として深くおわび申し上げます。
 こうした事態が起きたことを重く見て、会長の私が役員報酬の50%、副会長が20%、人事・労務統括理事の松坂が30%、コンプライアンス統括理事の鈴木が20%を、それぞれ1か月、自主返納いたします。また単身赴任制度を所管している人事局長を、譴責の懲戒処分にしました。
 今後、不正受給が決して繰り返されないよう、単身赴任手当を受けているすべての職員を対象に、緊急総点検を行います。加えて手続きの厳格化やルールの周知徹底を図ってまいります。事案の概要と再発防止策につきましては、人事・労務統括理事の松坂とコンプライアンス統括理事の鈴木から説明いたします。
 (松坂理事)
 それでは、単身赴任手当の不正受給について説明します。
 不正受給をしていたのは、帯広放送局技術部の51歳の副部長です。離婚した元配偶者との間に子どもがいます。2016年6月に水戸放送局から帯広放送局に異動しましたが、その際、子どもを茨城県に残して単身赴任すると届け出ました。子どもの住民票の提出を求めたところ、「住民票は移していないので提出できない」と説明し、代わりに生活実態を示すものとして、届け出先住所のガス検針票を毎月提出していました。ガス検針票はPDF化してメールに添付され提出されていましたが、最近になって検針票29枚すべてが偽造だったことが分かりました。
 子どもは届け出た住所には住んでおらず、離婚した元配偶者と別の場所に住んでいたと見られます。職員は動機について、「実家への仕送りや子どもの養育費などでお金が必要だった。単身赴任と認められない状態にあると分かっていたが不正を続け、申しわけありません」と話しています。
 処分については、本日、理事で構成する責任審査委員会を開催し、懲戒免職としました。不正に受け取っていた単身赴任手当等、524万2,160円は、全額弁済させることで合意しています。
 次に、多額精算の事案についてです。2015年11月から単身赴任を続けている30代の一般職の職員が、一部の期間、2016年6月から2017年7月ですが、単身赴任の要件を満たしていなかったのに、ルールを十分に理解せず変更手続きを速やかに行っていませんでした。職員は、配偶者と子どもは遠方の留守宅で暮らしていると届け出て単身赴任を始めましたが、配偶者が出産のため、転勤先に来て一時同居していたと判断される時期がありました。職員は、「留守宅に家財を残すなどしており、単身赴任と認められると思っていた。支給要件に関する確認や変更を行っていなかったことを深く反省している」と話しています。
 この期間に受け取っていた手当など224万2,800円を精算し返金させています。きょう、出勤停止14日とする懲戒処分を決定しました。
 また、不正受給事案などの管理責任を重く見て、単身赴任制度を所管している人事局長を譴責の懲戒処分に、人事局の担当管理職4人を厳重注意にしました。
 それから、単身赴任手当などについてです。単身赴任手当は、一般職が月額3万3,000円、管理職が4万円のほか、勤務地と配偶者等の居住地間の月1回分の往復交通費相当分を手当として支給しています。遠隔地の場合、この交通費相当分が高くなります。このほか単身赴任者が、協会が確保する転勤者用住宅に入居できない場合、住宅補助費を加算しています。単身赴任が認められるのは4つ、子どもの教育、自家の管理、配偶者が職業を有する場合、父母または同居親族の介護、これらに限られます。単身赴任を開始する際は、必要な届け出を行い、事由によって、住民票や配偶者の就労証明書、自家所有認定証、病院の診断書など公的な書類を提出させて確認しています。単身赴任の届け出や変更があった場合は、速やかに行うことになっており、毎年10月には人事局・総合事務センターが届け出内容に変更がないか確認をメールで行っています。
 今回の不正を受けた問題点や課題です。単身赴任手当は、住民票や配偶者の就労証明書などの公的な証ひょうで生活実態を確認して支給してきましたが、証ひょうを偽造されることは想定しておらず、帯広のケースでは不正を見抜くことができませんでした。単身赴任のルールは複雑な面がありますが、こうしたルールが十分周知されていなかったほか、家族状況等が変化したときに遅滞なくすぐに届け出るよう求める対応にも厳格さを欠いていたと考えています。また、単身赴任の審査などは、人事局・総合事務センターで行い、委託先の関連団体NHKビジネスクリエイトが事務を行っていますが、難しいケースでの判断や情報共有で、人事局の対応が十分でなかった点があると考えています。
 過去の多額精算についてご説明します。証ひょう類の保存期間としている過去7年間を調べていますが、懲戒処分に至るような不正はありません。多くは、異動後3か月以内に家族を呼び寄せた場合は、単身赴任とみなさず返金するというルールに従って精算したものや、転職など配偶者の状況が変化すると単身赴任も解消される場合がありますが、そうしたルールを正確に認識しておらず、解消手続きが遅れたケースなどがあります。
 (鈴木理事)
 続いて再発防止策について説明させていただきます。
 今回の事態の重大性に伴いまして、単身赴任手当の緊急総点検を実施いたします。手当を受給しているすべての職員、およそ1,400人を対象に総点検を行い、あわせて手続きルールの徹底を行います。配偶者など別居家族の住民票など、コピーではなく原本の提出によって現状を点検します。また、現在の受給者に対して単身赴任の認定ルールの手続きを分かりやすく説明した資料を配布して、手続きやルールに対する理解の徹底を図ります。
 それから2つ目が手続きルールとチェックの徹底です。手当の本人による届け出手続きにおいては、新たなルールとして住民票と必要書類の原本の提出を義務化するとともに、定期的なチェックを徹底して、提出期限を厳守させます。ルールを守らない場合には手当を支給しないという措置をとろうと思っています。
 3つ目が、コンプライアンス研修等による教育の徹底です。今回のような事案を二度と起こさないように、改めて職員倫理、コンプライアンスおよび諸規程に関する教育・研修を徹底いたします。職員としての基本的な倫理向上のため、規則遵守のための教育の徹底を図ります。
 (松坂理事)
 今回の事案につきましては、経営委員会が終わった後、記者会見を開く予定にしております。なお、報道局のチーフ・プロデューサーの盗撮事件については、きょう、停職3か月の懲戒処分にしております。

 (森下委員)

 この帯広の件ですが、長期にわたっているわけです。毎年10月にチェックをするというルールはきちんとできていたけれども、証ひょうが偽造されていたため、なかなか分からなかったということでしたが、仕組みとしてこういうものが長期間分からないというのは、管理上問題だと思います。つまり毎年10月にチェックするという、このチェックの仕方が形式的になっていたのではないかということです。書類だけ整っていればよいというのではなく、その書類も本物かどうか、コピーなのか偽造なのか、少なくとも1年に1回チェックされていることで引っかかる仕組みにしないといけないと思います。これはもともとNHKビジネスクリエイトが担当しているようですが、従来のタクシーチケットなどもそうですが、どうしてもこういう事務作業を軽視する傾向が現場にあるのではないかという気がします。日常が忙しいという現状もあるかもしれませんが、こういう事務作業についてはあまり重視せず、書類が整っていればそれでよいとする風潮が管理部門にもあるのではないかという気がするのです。その点では、NHKビジネスクリエイトは専門的な部署できちんと調べておけば、偽造されたものに引っかからないはずだと思います。「きちんと」という意味は、書類が単に形式的に整っているということではなくて、事実関係あるいは今回の場合であればガスの検針票がどういうものなのかということまで調査することです。いずれにしてもそういう意味で、やはり専門的にきちんとチェックするということと、1年に1回の計画的な定期検査の時にこういうものが見つかるような仕組みを検討すべきだと思いますが、いかがでしょう。

 (松坂理事)

 1つは今回、検針票がコピー、つまり原本ではなかったということです。コピーでしたら、住民票などでも改ざんされる可能性もありますので、今後は原本を提出してもらうということがあります。それから、ガスの検針票というのは、割とレアなケースで、こうした場合について実際に現場に足を運んで確認するとか、突っ込んだ調査も必要だと思っています。それからNHKビジネスクリエイトに業務は委託していますが、疑問がある点については人事局の職員が深くかかわって対応していくことが必要だと考えています。今回のケースでは、ガスの検針票の様式が変わっていたということで、偽造ではないかという疑いが出たのですが、そういった点に気づくことも結果的に遅くなっていますので、今、森下委員が言われたことも含めて、対応策に生かしていきたいと思っています。

 (森下委員)

 書類が整っているというだけではなく、例えばガスだったらガス会社に電話すれば契約がずっと続いているのかどうか、分かるわけです。だから、それが先ほど言ったように少なくとも年に1回チェックするときに、ガスの検針票などは特殊なケースなので、それは直接ガス会社に電話をすれば分かると思うんです。そういう意味でも、先ほど言った実効のあるチェック体制にしないと、形式的なことだけやっているとなかなかこういったものは見つからないと思うので、ぜひそのあたりを検討していただきたいと思います。

 (松坂理事)

 分かりました。

 (佐藤委員)

 1,400人の人たちには、所属する部署が全部あり、上司がいるわけですよね。上司は自分の部下が単身赴任をしているかどうか、どういう状況になっているか把握できないのでしょうか。今回そこのところが触れられていませんが、それに対してケアをすることがあってもよいのではないかと思います。逆にそれによって、支給が適切か、不適切であるかも分かるのではないかと思うのですが、その辺はいかがでしょう。

 (松坂理事)

 人事情報と考課関係の書類などを上司が作成したり見たりというのは当然しますので、部下の家族状況ということはある程度把握します。ただ、どうしてもプライバシーに関するところで、離婚や同居などまではなかなか完全に把握できていないという実情があります。どこまでどのようにして把握していくのかというのも1つの課題だと思います。

 (石原委員長)

 ほかによろしいですか。それでは、監査委員会からコメントをお願いします。

 (高橋委員)

 ただいま会長からご報告がありましたこの事案につきまして、監査委員会の見解を述べたいと思います。
 当事案は公金の不正・不適切な受給という、視聴者・国民の信頼を大きく揺るがすものであり、監査委員会は極めて強く遺憾の意を表します。
 言うまでもなく、NHKは視聴者の皆さまの受信料で成り立っている公共放送であり、公金意識の徹底はNHKのガバナンスの根幹をなすものであります。あらためて全職員に公金意識を浸透されることを強く求めます。
 なお、不祥事が続く中、今回公金に関わる不正が発覚したことは、NHK全体のコンプライアンス意識が緩んでいると指摘せざるを得ません。これまでの再発防止策にとどまらぬ抜本的な対策が必要ではないかと考える次第です。今後、執行部が全役職員の意識改革をいかに進めていくか、監査委員会は注視してまいります。

 (石原委員長)

 ただいまの報告を受け、私からもひと言申し上げます。経営委員会は、先月経営計画の修正議決にあたり、すべての役職員が受信料の重みを肝に銘じ、視聴者の信頼に応えるべく業務にあたるよう、執行部に求めました。しかし今回、職員が単身赴任手当を不正・不適切に受け取った事案が発覚したことは、視聴者に対する重大な裏切り行為であると言わざるを得ません。
 不祥事が起きるたび、執行部からは、反省の弁や「再発防止」ということばが繰り返されてきました。しかしこの間、立て続けに起きた不祥事に加え、公金に関わる不正が発覚したことは、極めて異常な事態であり、組織全体でコンプライアンスに対する意識を抜本的に改める対策が急務です。
 執行部はただちに再発防止と意識改革に着手し、全役職員がみずからの問題としてコンプライアンスの遵守に努めながら、一丸となって信頼回復に取り組むよう、最大限の努力を求めます。経営委員会としても、本件を極めて深刻に受け止めており、執行部の取り組みを注視してまいります。

 (上田会長)

 ただいまのご意見を重く受け止めます。今回の事案に関しましては、ただちに再発防止策を実施し、徹底に努めます。そして不祥事の根絶に向けて、私が先頭に立って、コンプライアンス意識を組織の隅々に浸透させるとともに、綱紀粛正と信頼回復に全力を挙げてまいります。よろしくお願いいたします。

 (上田会長)
 12月1日、NHKは4Kチャンネルの「NHK BS4K」と8Kチャンネルの「NHK BS8K」を開局しました。特にBS8Kは、世界で初めての8K放送となります。この歴史的な瞬間を、私は都内のホテルで開かれたA−PAB(放送サービス高度化推進協会)の放送開始セレモニーで迎えました。「放送の新しい時代が幕を開けた」という実感とともに、放送の新しい価値をしっかりとお届けしなければならないという覚悟を新たにしました。
 NHKは1995年に、「8Kスーパーハイビジョン」の研究開発に着手し、それから20年あまりを経て2016年に4K・8Kの試験放送をスタートしました。本放送の開始に向けても、制作・送出設備の整備や制作コンテンツの蓄積などに万全を期し、大きなトラブルもなく放送を開始することができました。
 今後も4K・8K放送の普及拡大に向けて、関係団体と協力しながら、周知広報や視聴環境の整備に取り組みます。そして、東京オリンピック・パラリンピックが開かれる2020年には本格的に普及していることを目指してまいります。
 そのためには、何よりもコンテンツの充実が大切です。年末には恒例の「NHK紅白歌合戦」をBS4KとBS8Kでもお届けします。また、年明けの1月6日からは、大河ドラマでは初めての4K制作となる「いだてん 東京オリムピック噺(ばなし)」をBS4Kでも放送するなど、拡充を図ってまいります。
 放送の高度化である4K・8K放送の普及は、放送メディアの発展と放送コンテンツ市場の拡大につながります。NHKは、民間放送との放送の二元体制のもとで、その先導的な役割を果たすため、引き続き力を尽くしてまいります。

 

 (上田会長)
 “出家詐欺”報道をめぐる再発防止策の実施状況につきまして説明いたします。この問題は、4年前に放送した「クローズアップ現代 追跡“出家詐欺”」で、過剰な演出や事実の誤りが明らかになったものです。木田放送総局長より説明いたします。
 (木田専務理事)
 この問題は、2014年5月に放送した「クローズアップ現代 追跡“出家詐欺”」に匿名で出演した男性について、根拠が不十分なのに「ブローカー」と紹介したり、ふだん使っていない部屋を「活動拠点」と紹介したりするなど、過剰な演出や事実の誤りが明らかになりました。
 3年前の2015年5月に再発防止策を決定し、それ以降、実施状況を定期的に外部に公表しています。ことしが4回目で、去年8月からことし7月末までの1年間の状況をまとめました。
 再発防止策の柱は4点です。①「匿名での取材・制作のチェック」、②「複眼的試写によるチェック」、③「取材・制作の確認シートによるチェック」、④「ジャーナリストとしての再教育」です。
 まず、「匿名での取材・制作のチェック」です。ここでいう匿名とは、顔の映像を出さずに腰から下や背中からの映像を使う場合や、声の証言だけを使う場合などを指します。画面を見ても誰か分からないので、安易に多用していないか、話している内容が本当に真実なのかを、より慎重にチェックする必要があります。このため、「匿名チェックシート」を使って、本当に匿名にする必要があるのか、内容の真実性を確認したのかなどを取材前に確認しています。この1年間のシートの使用回数は、報道番組やニュースを中心に、あわせて501回にのぼりました。前回より30件増え、匿名チェックが着実に定着しつつあります。匿名インタビューを行った取材対象は、次のように多様化しています。事件、事故の被害者や目撃者などの関係者、災害の被災者、いじめの被害者、悪質商法の被害者や元社員などの関係者、LGBTの当事者などとなっています。
 「複眼的試写によるチェック」の実施状況です。これは取材・制作の直接の担当者とは別の職員や上司などが、放送前の試写に参加する取り組みです。より広い視点で、事実の誤りや誤解を与える表現をチェックします。「複眼的試写」では、部局を越えた協力体制が着実に進展しています。例えば、制作局が「がん医療」や「ネットリンチ」といった社会問題を扱う際には、専門的知見のある報道局のデスクらが試写に参加するようになりました。
 「取材・制作の確認シートによるチェック」の実施状況です。このシートには、番組の提案段階で想定されるリスクや課題、取材・制作の過程で留意したことなどを書き出すとともに、著作権に配慮しているか、演出や編集に問題はないかなどを記入します。番組制作上の「リスクの見える化」にあたります。「NHKスペシャル」などの主要な報道番組のほか、各放送局の地域情報番組でも使用が定着しています。放送現場からは、目に見える形でリスクを共有できたことで、「トラブルを未然に防ぐことができた」とか、「取材相手への配慮、客観性などを整理する習慣がついた」といった前向きな声が寄せられています。
 「ジャーナリストとしての再教育」についてです。
 この1年間に、再発防止に向けた勉強会を、本部で5回、7つの拠点局で域内の地域放送局も参加して実施しました。
 取材系3職種、記者・映像取材・映像制作については、新人、入局1年目・2年目・4年目の若手職員のほか、新たにニュースデスクや管理職になった職員に対し、放送倫理研修を実施しました。
 また、番組制作系の職員については、新人、入局1年目・3年目、新デスク、新管理職を対象に、放送倫理研修を実施しました。
 さらに、関連団体や外部プロダクションの制作者を対象にした放送倫理セミナーも実施し、NHKの番組制作に携わる人全体のリスク管理意識の向上に努めています。
 最後に課題をまとめました。
 再発防止策を打ち出してから3年あまり、いずれの対策も放送現場に着実に定着していることを確認することができました。
 その一方で、「匿名チェックシート」や「確認シート」の形骸化を懸念する声や、「リスクチェックと働き方改革をどう両立させるかが課題だ」という声も寄せられました。働き方改革との両立につきましては、「トラブルを未然に防ぎ、質の高いニュース・番組を届けることこそが働き方改革に資するのだ」という意識をしっかりと現場に植えつけていきたいと考えています。
 最後に、残念ながら先月、放送素材の誤送信という放送事業者にあってはならないミスを相次いで引き起こしてしまいました。公共放送に携わる者としての自覚が欠如していたという点では、“出家詐欺”と同じ問題をはらんでいると思います。現在、再発防止に向け、本部や拠点局で順次セミナーを開いていて、中には270人が集まった回もありました。リスク管理に特効薬はなく、地道な取り組みを繰り返すしかないと思いますが、誤送信の再発防止セミナーでも、“出家詐欺”問題を取り上げて、高い倫理観の必要性を訴えていこうと考えています。今後も再発防止策の形骸化を防ぎつつ、さまざまな機会を通じてリスク管理意識の浸透を図っていきます。

 (小林委員)

 ありがとうございます。2点目の「複眼的試写によるチェック」についてですが、もちろんすべてをチェックできるわけではないでしょうし、いろいろな視点がありますので、すべての視聴者の方が満足する番組を制作するというのは非常に難しいとは思います。しかし、少なくとも誤解を与えるような表現はしないために、「複眼的試写によるチェック」は必要に応じて、特定の業務・分野の専門家を招いて、さらに強化していただきたいと思います。

 (木田専務理事)

 この「複眼的試写」というのは、ある程度放送できるような状態になったものをいろいろな人間が見るということを放送ベースでしています。今後、さらに徹底して、企画段階、取材などで動き出す前の段階から、いろいろな立場の人間に、企画の是非、あるいはリスクについてきちんと意見を出してもらえるようなやり方を、特に報道系の番組ではやっていきたいと思います。

 (小林委員)

 よろしくお願いします。

  (森下代行)

 発生したときから現場で討論していただき、現場中心に行っていただいたということで、このチェックシートもうまく定着していったのだと思います。そういった意味では、制作現場、取材・放送現場での「見える化」というのは、ある意味で組織的には非常によい方向に来ているように思います。ところが、心配していたのは、このチェックシート、確認シートの形骸化です。ここまでうまくくると、次はどのように効率化するかという段階だと思います。特に最近の「クローズアップ現代+」は、割合早い段階でいろいろなテーマを取り上げているだけに、制作現場は非常に忙しいだろうと思います。そういう意味で、形骸化しているという意見も当然出てくるだろうとは思うのですが、これについてはどのようにこれから改善しようとされているですか。

 (木田専務理事)

 あまりにもいろいろなチェックが増えれば増えるほど、確かに効率化してはどうかという考えもあったりする のですが、その結果トラブルが起きたりすると、もっとよけいにエネルギーが必要になるようなこともあります。「リスクの見える化」というのは、番組の制作あるいは現地の取材をするときには不可欠なことですので、まずそこは、着実にクリアしてもらうようにして、現場に指導を徹底していただいて、そのうえで、あまり効果のないようなチェックが残るようなことのないように、そこは常に見直ししていく機会は考えています。

 (森下代行)

 特にマネジメント層がきめ細かくそこを見ていく必要があると思います。せっかくうまく定着しているだけに、これを形骸化させないよう、マネジメントをしっかりやっていただきたいと思います。

 (高橋委員)

 先ほどお話がありました「複眼的試写」ですが、私は常勤としてこちらにずっといまして、報道番組がどうやってつくられるのか、最初から最後まで見せていただきました。結局最後のところで、いろいろと変わっていき、「これが最後の試写です」というものを見せていただいたのですが、素人目には完璧だと思うものでした。しかし、そこには他のところのCPがお二方おいでになって、約45分の試写ですけれども、お一人50個ぐらいずつ、強烈な指摘をされました。基本的に「複眼的試写」というのは、かなり有効に機能しているという実感を受けました。これだけは一言、皆さんにご披露しておいたほうがよいと思い、お話しさせていただきました。引き続き、そういう目線で厳しいチェックを進めていただきたいと思います。

 (木田専務理事)

 今のお話を伺っていて、やはり、放送の少し手前で潰せるものは潰していくということが、とにかく放送を出している者の生命線ですので、どのジャンルについても、基本的にはそこはしっかりと徹底していきたいと考えています。

 

 

2 審議事項

 (1) 平成31年度予算編成方針(資料1)(資料2)
 (石原委員長)
 次は審議事項です。平成31年度予算編成方針について、松坂理事から説明をいただき、審議します。
 (松坂理事)
 それでは、お手元の資料についてご説明したいと思います。
 これは、11月27日の経営委員会で、NHK経営計画(2018−2020年度)の修正提案を議決いただいたことを受け、平成31年度予算編成の具体的な考え方や収支の概要等をまとめたものです。
 2ページをご覧ください。予算編成方針について、来年度予算編成の基本的な考え方をまとめたものです。
 まず、第1段落では、信頼される「情報の社会的基盤」の役割を果たすため、公共メディアの実現に向けて取り組んでいくことを説明しています。
 第2段落では、来年度に取り組む放送・サービスについて説明しています。自主自律を堅持し、放送を太い幹としつつインターネットも活用して、正確、公平・公正な情報を伝え、より安全・安心な暮らしを実現する報道に全力で取り組むとともに、多彩で魅力的なコンテンツを充実します。具体的なこととして、国際発信力のさらなる強化、地域の魅力や課題を広く発信し、地域社会へ貢献すること、4K・8Kスーパーハイビジョン放送の充実・普及を推進すること、そのほか、最新技術と連動した放送・サービスや、人にやさしい放送・サービスの拡充、情報セキュリティーの強化などを挙げています。
 第3段落では、受信料の公平負担の徹底として、受信料制度の理解促進と営業改革を推進して支払率向上を図るとともに、負担軽減策を実施しますと書いてあります。続いて、2019年10月からの消費税率引き上げに際して、受信料額の改定は行わないこととするということを入れています。
 第4段落は、NHKグループが一体となって、創造的で効率的な経営を推進することと、働き方改革を進めることなどについて説明しています。
 最後の段落では、以上の考え方に基づき、来年度予算編成にあたっては、受信料収入の確保に努めるとともに、業務全般にわたる見直しにより経費削減を徹底し、生み出した原資を重点事項に配分する予算・事業計画を策定します。
 3ページです。来年度予算の収支構造です。先日、修正議決いただきました収支計画に基づいた構造としております。
 まず、事業収入のうち、受信料ですが、負担軽減策等の視聴者還元を行いますが、受信契約件数の増加等により、平成30年度予算に対して36億円の増となる7,032億円です。これにより、平成31年度は支払率83%、衛星契約割合は53%となる計画です。
 また、事業収入全体では7,247億円で、平成30年度予算に対して79億円の増となります。この収入ですが、当然、来年秋の受信料額の据え置きも織り込んでいます。一方、事業支出ですが、4K・8Kスーパーハイビジョン番組制作の強化やインターネットサービスの推進等に取り組む一方で、業務全般にわたる見直しによる経費削減を徹底し、平成30年度に対して149億円の増となる7,277億円とします。
 以上により、事業収支差金は30億円の不足となります。この不足分は、財政安定のための繰越金で補てんいたします。これについては、また最後にご説明いたします。
 次に、4ページです。事業支出の増減の構造を図でお示ししたものです。
 図の左側、赤矢印の中にあります180億円の経費削減を行う一方、右側の青色の矢印の中にあります重点項目に取り組むということで、329億円の財源を配分するということです。
 左側の経費削減については、交渉努力や契約の見直し、マルチユースなどの番組制作費の抑制のほか、技術設備の運用経費の削減、営業地域スタッフ体制の縮小などを行います。一方、右の青い重点的に取り組む事項等として配分するのは、4K・8Kスーパーハイビジョンや報道の強化、インターネットサービス、国際放送、地域放送・サービスの充実、東京オリンピック・パラリンピック関係などです。
 事業支出全体では前年度比で149億円の増となりますが、この増となっている部分は、今月から始まりました4K・8Kスーパーハイビジョンの充実、防災や減災報道などの報道強化などです。それ以外はほぼ今年度と同規模で実施いたします。このように、全般にわたる経費の削減などで生み出した原資を重点事項に配分し、メリハリをつけた予算編成を考えています。
 次のページからは重点事項の概要についてです。
 最初に、4K・8Kスーパーハイビジョンです。来年度は放送開始2年目として、世界最高水準の視聴体験と新たな可能性を追求します。4K放送は、平日はエンターテインメント、サイエンスなどの5つの分野に分けて、ジャンル編成をいたします。週末には、機動力を生かした独自の大型コンテンツを充実します。8K放送は、圧倒的な映像と音響に加え、臨場感にあふれた大型中継、番組を編成します。予算ですが、事業費は、今年度141億円が、来年度は44億円増の186億円を予定しています。なお、その下にありますのは参考の建設費です。来年度は35億円減の167億円ということで、スーパーハイビジョン設備投資は今年度がピークで、来年度、再来年度と減ってまいります。
 次に、2つ目が報道の強化です。来年度は、参議院議員選挙や統一地方選挙など、世の中の課題や最新情報について、正確・迅速で公平・公正な報道を実施します。また、全国ロボットカメラの整備・強化を図るなど、防災・減災報道を充実いたします。平成31年度の報道取材費は、34億円増となる245億円で実施します。
 6ページです。インターネットサービスです。来年度は、インターネットの特性を生かしたニュースや気象災害情報などの放送番組、理解増進情報を提供するとともに、同時配信の強化を実施いたします。一方で、既存コンテンツの整理や見直しを行い、経営資源の計画的・効果的な配分に努めます。予算ですが、今年度予算は156億円、受信料収入に占める割合は2.2%でしたけれども、来年度予算は16億円増の172億円です。これは、受信料収入の2.5%、正確に言いますと2.45%です。インターネット実施基準に定める上限の範囲内で実施したいと考えています。
 それから、国際放送の充実です。スマートフォンでの視聴やVODの利用を意識したニュースへ刷新・強化を図るとともに、中国語のネットチャンネルや番組の多言語展開を推進いたします。日本で暮らす外国人や訪日外国人に、日本への理解を深める情報や、日本滞在時に役立つ情報も発信いたします。来年度の国際放送費の予算ですが、今年度に対して5億円増の265億円とします。
 一番下が東京オリンピック・パラリンピック関係です。競技の多面的な魅力を紹介する番組、パラリンピック関連番組など、多彩なコンテンツを開発します。また、聖火リレーを各局と連携して中継し、全世界に発信します。予算は、来年度は53億円で、今年度に対して27億円の増になっております。
 7ページの上のほうですが、地域放送・サービスの充実です。拠点局が域内の経営資源をマネジメントするブロック経営を推進し、地域の特性を生かした放送・サービスを充実します。地域に身近な情報や課題を取り上げた放送の充実や、本部による地域番組制作支援の強化などに取り組みます。来年度は、今年度に対して12億円増の、409億円の予算で実施いたします。
 その下は働き方改革の推進です。「NHKグループ 働き方改革宣言」の実現に向けた取り組みを一層推進します。具体的には、番組制作においてロケ日程の見直しなど、外部を含めた番組制作において働き方改革を行うほか、スマートフォンを活用したリモートアクセスや遠隔試写などのモバイルワーク推進に向けたインフラの整備などを行い、多様な働き方を支援いたします。来年度予算は68億円と、43億円増になっておりますが、この経費につきましては、番組のマルチユースなど、既存業務の見直しなどで経費節減を行い、それを原資として働き方改革の推進に充てるということで対応しようと思っています。
 それから、サイバーセキュリティーの確保です。東京オリンピック・パラリンピックに向けて、放送の維持・継続などのためのサイバーセキュリティーを確保いたします。重点的に取り組んできたシステム再構築等のセキュリティー強化施策については、今年度までに一定の整備を完了し、来年度からは評価を行い、さらに最適化に取り組む段階となります。また、CSIRT(情報セキュリティー問題対応チーム)によるセキュリティー体制の維持・機能強化に取り組みます。予算ですが、来年度は今年度より13億円減り、38億円ですけれども、最適化して取り組みたいと思っています。
 8ページです。契約収納活動の概要です。契約収納費は、支払率向上の取り組みを着実に進めるとともに、効率的な契約収納活動に取り組み、今年度から7億円増の636億円で実施いたします。
 下の表で内訳を示しております。一番上の地域スタッフ等の手数料・給付金は、地域スタッフ体制の見直しにより、平成30年度予算に対し11億円減の72億円となる一方で、その下に法人委託手数料というのがありますが、法人委託をさらに拡大していくことにより、5億円増の255億円とします。その下の3つ目の契約収納促進費などについては、受信契約者の増加に伴う口座振替やクレジット等の手数料の増、営業システム関連経費の増などにより、13億円増の307億円で実施します。
 その下には、地域スタッフや法人委託の状況について記しております。一番下の参考は営業経費です。これは、契約収納費に職員の人件費と減価償却費を合わせた総経費です。来年度は今年度から9億円増の770億円としています。受信料収入に対する営業経費の割合である営業経費率は、今年度と同じ10.9%となります。なお、消費税率引き上げ分を織り込んだ値下げ前の受信料で試算すると10.8%となり、0.1ポイント低減した形となります。
 9ページです。平成31年度の給与は、要員は15名増となるものの、働き方改革の推進に伴う時間外労働を抑制することなどにより、10億円の減となる1,154億円で実施いたします。その下の退職手当・厚生費は、昨年度の年金資産の運用が改善したことによる退職給付費の減などにより、今年度に対して3億円減の489億円とします。人件費の総額はマイナス13億円となります。
 それから、減価償却費です。東京オリンピック・パラリンピックの放送実施に向けたスーパーハイビジョン設備の整備などにより、減価償却資産が増えておりますことから、今年度に対して43億円増の846億円となっております。
 以上が重点事項などの状況です。
 続いて、10ページですが、既存業務の見直しとして180億円の経費削減の主なポイントを掲げております。マルチユースや一体化制作などで制作費を抑制するほか、プロモーション、広報などの費用の見直し、契約・収納業務などの見直し、働き方改革の推進による給与の削減など、業務全般における経費削減を実施します。総額は180億円です。
 次に、11ページです。上段は建設費の内容です。平成31年度予算は1,032億円とし、9億円を増額します。
 平成31年度に重点的に実施する事項ですが、スーパーハイビジョン設備は、東京オリンピック・パラリンピックに向けたスタジオや編集室、中継車等の制作設備の整備や送出設備の整備を167億円で実施いたします。
 渋谷の放送センターの建て替えについては、第Ⅰ期工事の設計を行います。
 3つ目の地域放送会館の整備が56億円から201億円と増えていますが、これは、2020年度からの運用開始を予定しております奈良、札幌、大津などの整備を行います。なお、建設費1,032億円の財源としては、減価償却費のほか、財政安定のための繰越金を一部受け入れること等により確保いたします。
 11ページの下段で、建設積立資産と財政安定のための繰越金の見込みをまとめています。
 建設積立資産は、来年度、放送センター建て替えの第Ⅰ期工事の設計に充てるため13億円を使用し、平成31年度末は1,693億円となります。
 繰越金は、30億円を事業収支差金の不足の補てんに使用するほか、スーパーハイビジョンなど減価償却費を上回る建設費に対応するため151億円を使用し、平成31年度末には879億円となる見込みです。
 最後に、12ページ、今後の予算編成スケジュールです。本日、この予算編成方針をご了承いただきますと、さらに詳細な予算編成作業を進め、次回12月25日には収支予算編成要綱として事業計画の詳細や予算科目別の内訳などをお示しして、ご審議いただく予定となっております。
 その後、年明け1月15日の経営委員会で、放送法施行規則の記載事項にのっとって作成した収支予算、事業計画及び資金計画、いわゆる予算書を審議していただきたいと考えています。

 (井伊委員)

 4K・8K放送も始まりましたが、全体としての波の整理をどうするのかということや、インターネットサービスにどのような費目が載っていくのかというところを含め、全体を設計していくことが必要だと思うのですが、そういった全体像がなかなか見えにくいと、予算編成のお話を聞いて思いました。やはり既存の業務の中で何を捨てるのか、ニーズがなくなったものをどうするのか。10ページに、既存番組の整理・見直しということが、国際放送にはありましたけれども、国際放送だけではなくて、全体として波の整理というところを今まで何度か触れていますが、必要なのではないかと思います。全体像というものをお示しいただければと思います。もう一つ、最近、ニュースで、電波利用料が値上がりするという報道を見たのですが、これは予算に影響はないのでしょうか。

 (松坂理事)

 電波利用料については、まだ上がるということは決まっておりませんので、予算には盛り込んでおりません。それが決まるということになれば、予備費でやることなどを含めて対応することになるかと考えております。
 それから、波の整理ですが、衛星波については、来年1年後をめどに考え方を示すということにしております。ただ、4ページを見ていただくと分かるのですが、来年度、スーパーハイビジョンについては、設備投資とか、番組の充実もまだ始まったばかりですので、重点項目として、かなり増要因になっているということです。また報道の強化やインターネットサービスも増えます。
 国際放送は、一部の既存番組を見直したりしていますが、来年からは中国語でネットチャンネルを開設するなど重点的に力を入れて行うところには予算を積んでおりまして、トータルとして、国際放送として強化するところには予算を積むということを考えています。

 (小林委員)

 1点確認ですが、働き方改革でリモートアクセスなどモバイルワークなどを充実させていくということですけれども、一方で、サイバーセキュリティーの費用が減ってきています。これは大丈夫という理解でよろしいでしょうか。

 (児野技師長)

 はい。単年度で見ると、ことしから来年度で減っているのですが、数年前の数億円規模から、中期的に40億円規模に増やしていて、長期的に見ると継続的に充実を図っていると考えています。

 (長谷川委員)

 国際放送についても、地域放送についても、既存番組の見直しということばがセットになっているようですが、見直しの基準といいますか、見直しというのは要するにいらないものはやめるという意味だと思うのですが、どういう基準にのっとって行うのか、何か原則のようなものはあるのでしょうか。

 (荒木理事)

 国際放送では、今回、3本、見直しを検討しています。それは「TOKYO FASHION EXPRESS」、「HAIKU MASTER」、それから「Biz Buzz Japan」です。いろいろとモニター調査などもしておりまして、ニーズに合わせて新しい番組にしたり、あるいは、「Biz Buzz Japan」のように、新たに日本の技術やビジネスについて紹介していく番組をつくって、新しいバージョンに切り替えていったりするという場合もあります。あるいはインターネットでの展開というようなことも考えて、番組の時間尺を少し短くしていくといったことで、変更していくということもあります。必ずしも廃止したままではなくて、その代わりにどういうものを出していくかというようなことを考えつつ進めているということです。

 (長谷川委員)

 ぜひ、発信力そのものを削がないような形でお願いいたします。

 (荒木理事)

 その方向で検討してまいります。

 (渡邊委員)

 11ページの財政安定のための繰越金についてです。現在1,000億円くらいあると記憶しているのですが、今回取り崩しをすることで、平成31年度末が879億円と見込んでいます。今後これには値下げが影響していくことになると思います。そうすると、この繰越金の健全化というのは、収入の1割、約700億円を見込むことになろうかと思いますが、何年か先は繰越金が安定しない状態になってしまうと思いますが、その辺はいかがでしょうか。

 (松坂理事)

 渡邊委員のおっしゃるとおり、財政安定のための繰越金については、支出の1割強の700億円ぐらいが必要だと言っております。今後それを下回る可能性はあるのですが、受信料収入の増加と効率的な事業運営によって、少しでも収支を改善していくことにより、できるだけ必要な水準を確保していきたいと思っています。

 (石原委員長)

 それでは、ただいまの議論における指摘を踏まえて、この方針を了承します。予算編成要綱案の策定に向けた検討と準備をお願いします。

 

 (2) 2019年度(平成31年度)国内放送番組編集の基本計画について(資料)
 (木田専務理事)
 それでは2019年度国内放送番組の基本計画(案)について説明します。
 基本計画案については、定款第63条第1項の規程により、平成30年12月17日に、第654回中央放送番組審議会に諮問し、答申を得た上で、あらためて来年1月15日に開催される経営委員会に議決事項として提出する予定です。本日は議決に向けて、基本計画の考え方や概要をご説明した後、審議をお願いいたします。
 編集の基本計画は、3か年経営計画に基づき、最新の社会情勢やメディア状況の変化を見据えた上で、来年度の国内放送を組み立てるための方針をまとめたものです。
 策定にあたりましては、現状のNHKの放送・サービスが抱える課題を再認識し、経営計画でお示しした「NHKが追求する『公共的価値』」を、どのように実現していけば、視聴者の皆さまの期待にしっかりと応えていけるのか、若い世代の職員も含め、議論を深めてまいりました。
 また、四半期ごとの、経営指標に対するNHKの放送への評価、中央放送番組審議会での審議、意見などを踏まえたものになっております。
 それでは、資料に沿って説明します。まず、1ページ目、「編集の基本方針」です。来年度は、東京オリンピック・パラリンピックの前年度にあたります。最初の段落では、経営計画で示した「2020年に最高水準の放送・サービスの実現を目指す」という、NHKビジョンをさらに追求する姿勢を示しました。
 12月に本放送を開始したBS4K・8K放送や、インターネットを活用したサービスを充実させるとともに、放送法で定められた公共放送の基本姿勢を堅持し、正確な情報を公平・公正に伝え、多彩で質の高い番組を追求していきます。
 次の段落では、直近の国内外の社会状況に対する認識について具体的に触れた上で、一つ一つの課題に対して、視聴者の皆さまとともにじっくりと考えていくと述べました。
 最後の段落では、NHKが追求する6つの「公共的価値」を多くの視聴者の皆さまにしっかりと届けるために、放送を太い幹としつつ、インターネットも活用して、新たな時代の“公共メディア”を目指すと宣言しました。
 続いて、2ページです。「編集の重点事項」です。全部で8つの項目があります。
 最初は、「命と暮らしを守る報道に全力を挙げ、安全で安心な暮らしに貢献」です。暮らしが自然の脅威にさらされる機会が頻発しています。大規模災害が発生した際には、全国の放送局と本部が連携して、被災地に必要な情報を発信する態勢を確保し、状況に応じて伝送路を使い分けながら、「命と暮らしを守る報道」に全力で取り組みます。
 また、東日本大震災をはじめとする全国の被災地の復興を支援し、原発事故後の対策についても継続して伝えます。
 2つ目の項目は、「世界の動向や暮らしに直結する課題を、早く、深く、わかりやすく」です。
 国際社会の動向や地球規模の環境変化、日本における少子高齢化に伴う急速な人口減少など、持続可能な社会を目指す上で、解決の糸口がつかみにくい課題が山積しています。
 不確かな情報が氾濫する中、NHKは、正確で公平・公正な情報を早く、深く、わかりやすく伝え、判断のよりどころとなる「情報の社会的基盤」の役割を果たしていきます。
 3ページです。3つ目の項目は、「幅広い世代の期待と多彩な関心に応える番組・コンテンツを開発・充実」です。
 既存の番組はインターネットなどを通じて提供するコンテンツを一層充実させるとともに、質の高い新しいコンテンツを開発し、幅広い世代、多彩な関心に応えます。番組・コンテンツが提供する「公共的価値」と、果たすべき役割を十分に意識した編成を行います。
 次は、「東京オリンピック・パラリンピックの機会を生かし、その先の時代に貢献するための挑戦を」です。
 大会を盛り上げるとともに、世界の多様な文化や価値観に触れる機会を提供するとともに、「日本と世界」、「人と人」、「いまと未来」を結ぶ、さまざまな視点から、先の時代にもつながるテーマを取り上げ、視聴者の皆さまと考えていきます。放送・サービスのイノベーションにも挑戦します。
 続いて、4ページです。5つ目は、「BS4K・8K 世界最高水準の視聴体験と新たな可能性を追求」です。BS4Kは、その機動力を生かして2Kとの一体制作を加速させ、多彩なジャンルの番組を編成します。
 BS8Kは、世界最高品質の映像と音声を生かし、これまで実績の少ない生中継にも挑戦し、地域の祭りや風物詩などを伝えます。
 6つ目は、「多様な価値を認め支え合う社会をめざした放送・サービスを充実」です。
 共生社会の実現に貢献するために、放送・サービスを充実させます。教育・福祉のジャンルをはじめ、さまざまな番組・コンテンツで、障害者が積極的に社会に参加・貢献する機会や、日本と世界の子供たちの交流などを取り上げるとともに、課題について、じっくりと考えます。
 字幕放送・解説放送・手話放送を充実させるとともに、ユニバーサル放送・ユニバーサルサービスの開発と実現に取り組みます。
 5ページ、7つ目の項目は、「全国の放送局と本部がしっかりと連携して、地域社会に貢献」です。
 全国の放送局は、地域に暮らす人の視点から、役立つ情報や関心の高いテーマなどを取り上げます。全国放送では、地域で制作した番組も活用して、自然・文化・人々の営みなどを広く発信します。
 大規模災害時や各地に共通する課題については、NHKならではの全国ネットワークを生かして、情報発信と解決に向けた対応を行います。
 8つ目は、「日本と世界の相互理解を促進する発信を、国内に向けても強化」です。世界の情勢や生活の実情など正確な情報を国内に伝えるとともに、大自然や魅力的な文化、最先端の技術を紹介します。
 日本にいる外国人が災害情報や地域の情報を得られるように、国際放送と連携した編成や外国語によるニュースの発信を行います。
 6ページには、重点項目を実施するにあたって、勘案すべき点を4つ挙げました。
 これまでの質的・量的評価の手法に加えて、個々の放送・サービスの役割などの視点を取り入れた評価体制を構築します。放送倫理やコンプライアンス意識を徹底します。
 さらに、働き方改革を推進し、業務フローの抜本的な見直しを実施します。番組のマルチユースなど、経営資源を効果的・効率的に活用します。
 7ページからは、「各波の編集方針」です。
 総合テレビジョンは、基幹波として、安全と安心を守る報道に全力をあげて取り組み、何人からも干渉されない放送の自主自律と不偏不党を貫きます。
 “公共メディア・キャンペーン”など、創造的な取り組みをスタートさせ、東京オリンピック・パラリンピックの関心にも応えながら、2020年以降を意識した、新たな放送サービスを開発します。
 「編集のポイント」は、幅広い世代、特に現役世代、それからネット世代の接触を増やすため、ターゲットを明確にした多様なラインナップの番組をバランスよく提供していくことなどを掲げました。
 続いて、8ページ、「教育テレビジョン」です。
 教育・福祉に加え、語学・教養・趣味実用など多彩な番組を揃え、幅広い世代の「知りたい」「学びたい」に応えます。
 「編集のポイント」は、インターネット・データ放送・アプリなどを活用した“参加・体験するテレビ”を提供するほか、未来を見据え、多様性を認め合い、“ともに生きる”社会の実現に貢献します。
 BS1は、“ライブ感あふれる情報チャンネル”として、スポーツ、国際、地域、ドキュメンタリーの各分野を進化させます。
 9ページです。「編集のポイント」では、“東京2020”に向けて、幅広いオリンピック・パラリンピック関連番組を編成するほか、地域の魅力や課題を取り上げる番組の充実などを図ります。
 BSプレミアムです。ほかのチャンネルにはない衛星放送ならではの個性と見応えのある番組を皆さんに提供します。編集のポイントとして、魅力ある超大型特集番組を充実させるほか、スーパーハイビジョン一体制作を推進します。
 続いて10ページです。BS4Kは、超高精細映像の入口として、先導的な役割を果たします。編集のポイントとして、週末には4Kの機動力を生かした独自の大型コンテンツを充実させ、平日は曜日ごとに5つのジャンルに分けて編成します。BS8Kは、既存のテレビと一線を画した“未知の映像体験”を提供します。編集のポイントとして、スタジアムやコンサートの特等席にいるかのような臨場感にあふれた大型中継や番組を編成します。
 11ページからは音声波です。ラジオ第1放送は、安全・安心を担う「音声基幹波」として、ニュース番組を拡充し、いざという時には、命と暮らしを守る情報をきめ細かく伝えます。ラジオ第2放送は、語学番組の充実を図るとともに、多言語ニュースゾーンを整備し、“東京2020”に向けて加速する国際化に対応します。
 12ページですが、FM放送は総合音楽波としてリスナーの期待に応えるとともに、災害などの緊急時にはライフライン放送を提供します。

 (森下代行)

 「公共メディアを目指す」というところでは、非常に注目されると思っています。それで見ると、4ページの6の8行目ですが、「また、字幕放送・解説放送・手話放送を計画に基づき充実させるとともに」の後に、「インターネットを活用して」と入れてもらったほうがいいのではないかと思います。

 (木田専務理事)

 表現は考えたいと思います。

 (森下代行)

 はい、考えてもらいたいと思います。2ページの1の災害のところや、3ページの3にも入っていますが。

 (井伊委員)

 国際放送のラジオでは17言語で放送とあります。Eテレの語学番組はとてもいいものが多いと思いますが、今度のオリンピックもありますし、アジアからも来訪客が増え、アジアに関心のある若い人たちも増えているという中で、中国語や韓国語はありますが、私が学生のころからずっと西洋偏重のラインナップになっています。東南アジアのニーズなどはかなりあると思うのですが、見直しは考えていますでしょうか。国際放送をうまく活用できないでしょうか。

 (木田専務理事)

 編成計画は来年ご報告しますが、今取り組んでいるのは、ラジオ第2放送などではインドネシア語など、いろいろな言語の時間をあえて増やしたいようです。

 (井伊委員)

 語学番組ですか。

 (木田専務理事)

 語学番組ではなくて、ニュースとして増やせないかと考えています。語学番組の枠組みに、違う言語をどの程度入れるか、特にテレビで届けるやり方について、今後の課題として検討させてください。

 (井伊委員)

 今後、アジアでもニーズがあると思います。

 (木田専務理事)

 中国語、韓国語はかなりやっているのですが。

 (井伊委員)

 何となく西洋偏重のような気がしていて、30年間変わってないような印象です。

 (木田専務理事)

 それについては検討させてください。

 (石原委員長)

 経営委員会としては本件を了承といたします。本件につきましては、中央放送番組審議会の答申を踏まえ、改めて議決事項としての提出をお願いします。

 

 (3) 2019年度(平成31年度)国際放送番組編集の基本計画について(資料)
 (荒木理事)
 2019年、平成31年度国際放送番組編集の基本計画につきまして、ご説明いたします。
 この基本計画については、定款によりまして、12月18日に開催される予定の第653回国際放送番組審議会に諮問し、答申を得たうえで、改めて来年1月15日に開催予定の経営委員会に議決事項として提出する予定です。本日は、議決に向けてこの基本計画の考え方や内容をご説明いたしますので、審議をお願いいたします。
 まず、資料の1ページ目をお開きください。ここにあります編集の基本方針から説明させていただきます。
 最初のパラグラフで、「NHKワールド JAPAN」の目指すところについて述べておりますので、この部分だけ読み上げさせていただきます。「東京オリンピック・パラリンピックを1年後に控えた2019年、天皇陛下の退位・即位や大阪でのG20サミットの開催など、日本に対する世界の関心はこれまで以上に高まります。また、訪日外国人や外国人材の増加も引き続き見込まれ、日本社会の多様化はますます進んでいきます。こうした中で24時間のテレビ英語放送の開始から10年を迎えるNHKの国際放送は、視聴者・聴取者のターゲットを明確にしながら、日本ならではの視点を生かした公共メディアとして、公平・公正で信頼できる情報を届けます。また、テレビやラジオに加えてスマートフォンやパソコンなどさまざまな端末に向けて発信し、日本とアジアを中心に、世界の“いま”を伝えます。合わせて、多言語化の一層の推進など、幅広い人々に向けたサービスを充実させていきます」としております。
 以降のパラグラフでは各波のポイントを説明しております。外国人向け国際放送「NHKワールド JAPAN」で、2019年度のテレビとインターネットの連携を一層加速させることを踏まえたうえで、「また、英語以外の初めてのライブ発信サービスとして、2019年1月に開始する『中国語ネットチャンネル』を本格的に展開します。さらに、ホームページを大幅に刷新してライブ・VOD・多言語展開を一層推進します」としてあります。
 また、ラジオ国際放送では、「ラジオ第2放送でもベトナム語・インドネシア語のニュースを新設し、国内にいる外国人へのサービスを強化します」といたしました。
 各メディアの編集につきましては次のページ以降で説明させていただきたいと思います。2ページをご覧ください。「NHKワールド JAPAN」は4つの柱を立てました。まず、「インターネットで常に最新ニュースにアクセス」です。ニュースでは前半に最新ニュースをまとめ、後半は掘り下げた情報をジャンルごとに集約して伝え、スマートフォンやパソコンで見やすいサイズに再構成することでインターネットへの配信を充実させます。また、台風や地震などの災害時には、総合テレビとの連携を強化するとともに、SNSを通じたライブ配信、多言語によるニュース発信を推進します。
 2つ目は、「2020年目前。激増する訪日・在留外国人に向けた情報発信」です。インバウンドだけでなく、外国人材の増加が見込まれる2019年。訪日・在留外国人に向けた番組のラインナップを強化します。また、「中国語ネットチャンネル」を新設し、日本の多彩なコンテンツを世界に発信します。
 3つ目です。「多言語展開とスマートフォン向けコンテンツを拡充」です。「NHKワールド JAPAN」のテレビとラジオで連携して多言語番組を制作するほか、より進んだ日本語を学習できる番組を開発します。また、スマートフォンでも視聴しやすい10分〜15分サイズの番組の放送枠を拡充いたします。
 最後に、4つ目です。「『国内・国際』連携の一層の推進」です。2020年に向けまして、スポーツをはじめ多彩な日本の魅力を発信する番組や、NHKならではのドキュメンタリー、地域放送番組の英語化を積極的に進めます。また、総合テレビやBS1で放送する日本語化番組を充実させるなど、国内放送とのマルチユースを推進します。
 続いて、3ページをご覧ください。ラジオ国際放送です。「安全・安心に役立つ情報の発信を強化」として、最新のニュースを的確に伝えるほか、防災・減災については、引き続き日本のノウハウなどを発信し、安全・安心を届けます。年々増加している訪日・在留外国人に向けても、ラジオ第2放送と連携して最新情報を届けます。
 続いて、4ページをご覧ください。インターネットでは、まず「オンラインサービスの大幅刷新」を行います。ホームページの使いやすさを向上させ、より多くの訪問者に利用してもらえるように刷新し、それぞれのターゲットに最適化したサービスを提供してまいります。
 また、「多言語コンテンツの拡充」では、VODで提供する多言語コンテンツをさらに充実するほか、中国語コンテンツの発信を強化します。17言語で提供している音声番組についても期間を大幅に拡大し、多彩なコンテンツを提供します。
 最後に、「SNSを活用したコンテンツ発信を強化」です。SNSを通じた動画やニュースの発信を強化し、台風や地震などの災害時にもSNSを活用していきます。プロモーションも行い、「NHKワールド JAPAN」の認知向上を図ります。
 5ページ目の「NHKワールド・プレミアム」につきましては、日本語のニュース、情報番組を通じて、日本と世界の“いま“を伝えます。また、2020年に向けて変わりゆく日本の姿を多様な角度から伝えてまいります。
 最後の6ページの「NHKワールドラジオ・日本」では、最新のニュースや安全・安心情報を日本語で伝えます。

 (長谷川委員)

 「中国語ネットチャンネル」を本格的に展開するということが強化の1つの目玉になっているという話を伺ったのですが、ぜひ1つお願いがあります。1ページの上に書いてあるとおり、「日本ならではの視点を生かした公共メディアとして、公平・公正で信頼できる情報」を届けた場合、いろんな形でさまざまなトラブル・妨害に出会う可能性があり得るかと思うのですが、そういう場合にも、ぜひ非常に大事な価値のもう1つ、「自主・自律」を貫いていただきたいと思います。杞憂に終わればよいと思うのですが、今からその覚悟をしっかり固めていただきたいと思います。

 (荒木理事)

 「中国語ネットチャンネル」だけでなく、「NHKワールド JAPAN」のあらゆる番組・ニュースにつきまして、国際番組基準に基づいて制作しております。その中に、「内外のニュースを迅速かつ客観的に報道するとともに、我が国の重要な政策及び国際問題に対する公的見解並びに我が国の世論の動向を正しく伝える」と書いてありますので、こうした基準に基づいて客観的な事実に基づく公平・公正なニュース、番組、情報を伝えていきたいと思っております。

 (長谷川委員)

 ぜひお願いいたします。

 (井伊委員)

 お話を伺っていて、国内にいる外国人向けというか、インバウンドにシフトしていて、少々内向きなイメージを持ったのですけれども、ぜひアジアの人たちがBBCよりもNHKを参考にするというような放送局になってほしいです。

 (荒木理事)

 アジアを代表する公共放送として、アジアを中心に世界の“いま”を伝える放送を届けていくという目標は、これまでどおりです。ただ来年度は、再来年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて増えていくインバウンド、新たに日本に来られる人たちに対して、例えば災害情報や日々のインフラとなるような情報を届けていくことについても取り組んでいこうということで、いわば来年度の重点方針として掲げています。全体の目標については、引き続き従来のとおり進めていきます。

 (石原委員長)

 それでは、経営委員会は本件を了承します。本件につきましては、国際放送番組審議会の答申を踏まえ、改めて議決事項としての提出をお願いします。

 

 

3 報告事項

 (1) NHKメディアテクノロジーとNHKアイテックの合併について(資料)
 (黄木理事)
 NHKメディアテクノロジーとNHKアイテックの合併についてご報告させていただきます。
 なお、この件につきましては、あす12日の両社の取締役会を経て外部公表いたします。
 メディアテクノロジーとアイテックの合併につきましては、去年12月に基本合意を締結し、その後、「メディアテクノロジー・アイテック統合推進委員会」を立ち上げ、具体的な検討を重ねてまいりました。あす12日の両社の取締役会を経て合併契約を締結し、2019年4月1日に新会社「NHKテクノロジーズ」としてスタートすることになります。この合併により関連団体の数は25となります。
 まず、合併の目的です。1つ目は「新たな業務への対応」です。新センターの建設やBS4K・8K放送、デジタルサービスの拡充、インターネット同時配信や放送設備も含めた情報セキュリティーなど、今後増大する業務、またこれまでの2社のドメインを越える新たな技術領域への対応など、統合新会社は多様な専門性と一貫した業務体制で放送を支える総合技術会社を目指すことになります。
 2つ目、「効率的な業務体制の構築」です。役員体制や管理部門などの重複した業務の整理などによって、効率的な業務体制を構築します。さらに、特に地域において、これまでメディアテクノロジーが担っていた番組技術と、アイテックが担っていた送受信技術の要員を相互に運用することが可能となります。これまでは中継などの緊急報道はメディアテクノロジー、中継放送所への出向やNHK共聴の障害対応などはアイテックが、それぞれの業務範囲で対応してまいりました。今回の合併により大規模災害の状況に応じて柔軟に対応できるようになり、特に要員の少ない地域放送局での効果を期待しています。
 3つ目は「技術力の継承と人材活用」です。これからの変化に対応する多様な人材の確保は極めて重要な課題です。合併により、これまで別々に行っていた採用活動が1つになり、番組制作から送受信、設備整備、情報セキュリティーなど、幅広い技術分野に対応する多様な人材が採用できると期待しています。また、本人の適性や希望を生かした異なる業務分野への異動、新たな技術領域へチャレンジできる機会も増え、本人のモチベーションの高揚、人材の活用にも資すると考えています。
 4つ目は「ガバナンスの強化」です。新会社は会社法上の大会社とし、監査役会設置会社として監査役会、大会社として会計監査人を置くこととしました。これまでもNHKグループとして、上場企業並みのガバナンス体制の構築に取り組んできましたが、今後は法令に基づき、より客観的なガバナンス体制を構築していくことになります。また、今回の統合でNHKの出資比率が69.2%、NHKグループで84.7%となりますが、段階的にNHKグループで保有する株式の比率を高め、盤石なグループ経営基盤を構築したいと考えています。
 次に、合併の形態は合併にかかる費用などを勘案し、便宜上、アイテックを存続会社とする吸収合併で行います。
 新会社の概要を3に示しております。称号は「株式会社 NHKテクノロジーズ」とします。本社所在地は現メディアテクノロジー本社ビル。資本金は6億8,000万円。従業員数は2,000人を超え、NHKグループで一番大きい会社となります。
 新会社の主な業務を4に示しています。これまでの2社が行っていた業務に加え、「配信」や「情報セキュリティー」などを明文化しました。
 最後に今後の手続きですが、冒頭でも申し上げましたとおり、あす12日の両社の取締役会を経て合併契約を締結し、来年2月の株主総会など所定の手続きを経て、2019年4月1日に合併、「NHKテクノロジーズ」となります。

 

 (2) 「平成29年度業務報告書」に付する総務大臣の意見について(資料)
 (坂本専務理事)
 平成29年度業務報告書に付する総務大臣の意見についてご報告します。
 ことし6月に、財務諸表とあわせて総務大臣に提出した29年度の業務報告書について、総務大臣の意見が付され、12月4日の閣議を経て国会に報告されました。
 この大臣意見については、協会の業務報告書はいわば各年度の事業計画に対する結果報告ですけれども、これを総務大臣が国会に報告するにあたり、その年度の業務の妥当性などについて検討し、大臣の考えを国会に対して表明するという位置づけのものです。
 内容については別紙をご覧ください。冒頭では総論として、受信料徴収の徹底や効率的な業務運営に努めた結果、予算を上回る収支差金を計上するなど、「おおむね所期の成果を収めたものと認められる」としています。そのうえで、繰越金の現状や事業収入の増加見込みに触れ、「既存業務全体の見直しや受信料額の引下げを含めた受信料の在り方について引き続き検討を行い、結論を得ることを求める」としています。
 「記」以下のところで、特記すべき具体的な事項が挙げられております。
 1の「国内放送番組の充実」では、(1)で「国民・視聴者の信頼と多様な要望に応えるための放送番組を提供すること等に努めた」とするとともに、災害発生時には訪日外国人向けにも「情報提供を行うことが期待される」としています。また(3)では、字幕・解説放送の「充実に取り組んだ」としています。さらに総務省が30年2月に策定した普及目標を踏まえ、字幕放送等の拡充に努めるよう求めることなどを記述しています。
 2は、海外情報発信に関する項目です。テレビ国際放送「NHKワールドJAPAN」については、「発信強化等の取組みを進めたものの、諸外国と比較して、依然、その認知度は高いとはいえない状況にある」として、「国際放送のより一層の充実・強化を図ることが必要」としています。
 3の4K・8Kとインターネット活用業務に関する項目では、4K・8Kについて実用放送の早期かつ円滑な普及に向けた取り組みや、医療など放送以外の分野での利活用への期待を示しています。また、インターネット活用業務については試験的提供に取り組んだことなどについて記述し、民放などの関係者の間で成果の共有や相互連携に努めること、NHKオンデマンドの今後のサービスの在り方について検討することが求められる、などとしています。
 4の経営改革の推進では、(1)で平成30年10月および11月に発生した住民インタビューなどのデータ誤送信や管理職の服務規程に反する不適切行為の事案に触れ、「ガバナンスの強化とコンプライアンスの徹底に組織を挙げて全力で取り組むことが強く求められる」としています。
 また、子会社の在り方をゼロベースで見直す抜本改革として予定されております「NHKアイテックとNHKメディアテクノロジーの経営統合にとどまらず、早急に結論を得て、その取組を着実かつ徹底的に進めることが強く求められる」としています。
 (3)では「適正な労務管理や不断の『働き方改革』に徹底して取り組むことが強く求められる」などとしています。
 このほか、受信料に関して、昨年12月の最高裁判決について触れ、公共放送の役割や受信料制度の意義を丁寧に説明することや、料額の引下げを含めた受信料の在り方についての検討を求めているほか、大規模災害に備えた公共放送の機能の強じん化、新放送センターの整備などについても項目を設けて記述をしています。

 

 (3) 2018年秋季交渉の結果について(資料)
 (松坂理事)
 労働組合「日放労」との秋季交渉については11月28日に収束しました。結果について報告いたします。
 まず「労働法制の変化(改正労働基準法の対応)」についてです。来年4月からの改正労働基準法に適切に対応し、法令を順守するとともに、健康を確保した働き方を実現する重要性については、組合も同じ認識でした。そのうえで、協会から提案した「36協定」等の見直し案に基づき、議論を行いました。議論の結果、各種協定には法改正を踏まえた新たな基準を定めることとし、加えて、休務の確保を一層強化する取り組みを行い、職員等の心身の健康確保を図ることとしました。こうした新制度の円滑な導入と運用に向けては、全職員を対象とした理解浸透施策をきめ細かく実施する予定です。
 2つ目、「安心して長期間働き続けられる環境づくり」です。職員が健康を保持しつつ、いきいきと創造性を発揮して働くことができる環境づくりに向けて、多岐にわたる議論を行いました。職員の健康に対する意識を啓発し、一層の健康増進を図るため、新たな健康管理システム、これは過去の健康診断のデータもウェブで見られるというようなものですけれども、こうしたシステムの導入や研修等の実施を推進することとしました。人間ドックの受診率向上に向けた取り組みも進めていく予定で、健康経営の推進を図っていきます。また、それぞれの職員の能力伸長やスキルアップを後押しし、組織を支える力につなげていくため、自己啓発施策の認知をより向上させて一層の活用を図ります。また、メディア環境の変化に対応していくために、自己啓発に対する職員のニーズ把握に向けた取り組みを進めていきます。
 このほか、協会を退職した後、ほかの企業などで多様な知見を獲得した元職員を再雇用する環境を整えることで、多様な経験を持った人材を確保していきます。
 それから、「モチベーション高く働くための取り組み」です。「働き方改革」を進める中で、一般職がモチベーション高く働き続けられる環境整備としまして、労基法の趣旨を踏まえ、処遇施策を見直すことで合意しました。具体的には、生産性高く働いてもらうことを前提に、基準外賃金の算定基礎となる単価を改善するとともに、健康面で負荷が大きい夜型から朝型への勤務習慣を促すことなどを狙いとして、「早朝手当」を新設するなどです。なお、これらについては、経営委員会の議決事項である「職員の給与等の支給の基準」を改定する必要があるため、後日改めてお諮りいたします。
 さらに、そのほかの協会提案です。協会から提案した、労働協約の見直しなどについては、見直しの趣旨を丁寧に説明し、組合の理解を得ましたので、円滑な運用開始に向けて準備を進めてまいります。

 

 

4 その他事項

 (1) 総務省「放送を巡る諸課題に関する検討会」について(資料1)(資料2)(資料3)
 (坂本専務理事)
 総務省の「放送を巡る諸課題に関する検討会」の第21回会合が先月30日に行われました。会合では検討会の「第二次取りまとめ」を踏まえた対応について、総務省とNHKがそれぞれ説明を行いました。
 まず、総務省の説明です。「第二次取りまとめ」では、NHKが受信料財源で行うインターネット活用業務について、「会計上の透明性確保のあり方等について、見直すことを検討すべき」とされています。これを受けまして、総務省が有識者を交えて議論を行っており、その結果をまとめたものです。この議論に際しては、NHKもヒアリングを受け、現行の会計の考え方などを説明しているところです。
 NHKが常時同時配信を実施する場合、「厳格な区分経理の導入や適切な情報開示の実施等を求めることにより、インターネット活用業務の会計上の透明性の確保を図ることが適当」として、「総務省にて所要の制度整備を行う」との説明がありました。
 具体的な措置として、「厳格な区分経理の導入」については、費用の範囲の明確化、適正かつ明確な配賦基準の設定、勘定科目の新設と会計監査人による監査の3項目が挙げられています。
 「適切な情報開示の実施」については、費用明細表の公表、業務の運用変更計画の公表、関連団体との取引に関する情報開示の3項目が挙げられています。
 また、「有識者会議の透明性の確保」として、関連資料の公表による議論の透明性の確保、競合事業者からの意見の受付に係る要件の見直しが挙げられています。
 このほかにも、「第二次取りまとめ」を踏まえて、NHKのガバナンス改革、インターネット活用業務の在り方の見直し、衛星基幹放送に係る周波数の有効利用に関し、制度整備の具体的内容を検討中としている項目の説明がありました。
 NHKのガバナンス改革に関しては、「コンプライアンスの確保」について、NHK役員のNHKに対する忠実義務の明確化、監査委員によるチェック機能の強化、NHKグループの内部統制システムの強化の3つの項目、「情報公開による透明性の確保」については、NHKグループに関する基礎的な情報の提供の義務づけ等、「NHKの業務・受信料・ガバナンスの在り方についての適切な評価・レビュー等の確保」については、中期経営計画の策定及び同計画の策定に当たってのパブコメ手続きの制度化が挙げられています。
 さらに、「インターネット活用業務のあり方の見直し」に関して、「セーフガード措置の見直し」について、実施基準の認可の要件の見直し、事後チェックの仕組み、実施計画の作成・届出の制度化の2項目、「地方向けの放送番組の配信・他の放送事業者との協力」について、地方向けの放送番組の配信に関する努力義務、他の放送事業者との適切な協力に関する努力義務の2項目が挙げられています。
 そのほか、衛星基幹放送に係る周波数の有効利用を図るための制度整備についても検討中の項目の一つとして説明がありました。
 これら総務省から説明があった事項については、検討中のものも含め、今後、総務省が具体的な制度整備を行うこととされています。
 続いて、別紙1としてお配りしている指摘事項への対応についてです。NHKの説明資料です。
 「第二次取りまとめ」の指摘事項につきましては、9月27日の第20回会合でもNHKから説明を行いましたけれども、改めて、現時点での考え方などを述べました。ポイントをご説明申し上げます。
 3ページです。「インターネット活用業務の会計上の透明性の確保」については、総務省から説明があった趣旨を踏まえ、適切に対応していくと述べたうえで、勘定科目の新設、適正かつ明確な配賦基準の設定・公表、費用明細表の作成・公表等を実施する考えを説明しています。
 4ページ、「インターネット活用業務の費用の上限と適正管理」について、適正な上限の中で抑制的な管理に努め、会計上の透明性確保の新たな考え方に従って、十分な説明を尽くしていくと述べています。
 5ページです。「インターネット活用業務の事前・事後評価」について、外部の有識者からなる「インターネット活用業務 審査評価・委員会」によって、事前・事後にチェックを受けていることを説明したうえで、委員会と協議しながら、チェックの実効性を高めていく考えであり、委員会として、具体的な検討に着手していることを述べています。
 6ページ、「常時同時配信における地域情報の提供の確保」については、前回と同じ内容です。
 7ページです。「他事業者との連携・協力等の確保」について、協調領域で相互にメリットをもたらす連携策の実施に向けた具体的な検討を進めていることを述べ、具体的には、現在、実験として実施している「radiko」経由の配信は民放との連携を深める取り組みの一つと考えており、来年度から本運用を開始する方向で検討していること、民放の公式テレビポータルサイト「TVer」については、来年度から参加できるよう具体的な調整に入っていること、放送にかかわる技術の活用についても、必要に応じ、民放との連携を検討したいと考えていることを述べています。
 8ページ、「不祥事の再発防止」に関し、11月に発生した放送用素材の誤送信の再発防止策や、不正をさせない環境の実現を目指す取り組み等について説明をしています。
 9ページ、「既存業務を含む業務全体の見直し」について、NHKが重点的に取り組んでいかなければならない業務は数多い一方、事業支出を適正な規模に整えていくことが必要であり、持続可能な業務体制の構築に取り組んでいくこと、BS4K・8Kの本放送開始を受け、視聴者保護の観点を堅持したうえで、4K放送の普及状況などを見つつ、衛星波を整理・削減する方向で、1年後をめどにその時点での考え方を示すことを述べています。
 10、11ページでは、「受信料の水準・体系の見直し」として、先般、経営委員会で議決をいただきました受信料の値下げについて説明を行いました。
 12ページです。「経営計画の適切な評価・レビュー等の確保」に関しまして、現在行っております経営計画の策定、評価・レビューについて説明し、加えて、現経営計画の修正議決をいただいたことなどを述べています。
 13ページ、「NHKグループのガバナンス等の確保」について、子会社の統合やグループ経営改革の取り組みについて説明をしました。
 NHKとして、説明した内容は以上です。
 引き続いて、意見交換では、構成員からNHKに対してインターネット活用業務のベネフィットをどう計るのか、また、取り組みのスケジュール感について等の質問がありました。総務省に対しては、区分経理における配賦の考え方や衛星基幹放送の帯域の有効利用の基準についての質問がありました。
 また、民放連から次のような発言がありました。「NHKの説明は具体性が増し、特に区分経理や外部監査の拡充の方針は、民放連の要望を踏まえて真摯に検討いただいた。より具体的に進めて経理の透明性を確保していただきたい。反面、上限として2.5%が維持されるかどうか曖昧であるのは残念だ。地域制御をしばらく行わないとしている点も不十分である。民業圧迫や肥大化を招かないことは常時同時配信を認める条件であり、2.5%の安易な引き上げは市場の競争を阻害する。民放連が取りまとめた8項目の要望事項は今後も重要なチェックポイントであり、引き続き検討会の議論や総務省の対応を注視したい。」
 これらを受けまして、検討会の多賀谷座長からは、「総務省は第二次取りまとめや、説明のあったNHKの対応を踏まえつつ、制度整備等の対応を始めていただきたい」などの発言がありました。
 この会合の最後の総務大臣のあいさつでは、NHKのインターネット活用業務のあり方やガバナンス改革について、「NHKは国民・視聴者からの受信料によって支えられていることを十分に踏まえ、本検討会で寄せられた意見等を踏まえながら、真摯にかつ速やかに取り組みを進めていただきたい。総務省としても第二次取りまとめで示された事項に基づき、NHKの取り組みを踏まえつつ、制度整備等の対応について検討・調整を進める」との発言がありました。
 会合ではこのほか、政府の「規制改革実施計画」で、NHKアーカイブの活用について、「より積極的な活用方針の方策について、関係者による検討の場を設ける」とされていることを受けて、NHKと公益財団法人放送番組センターが、それぞれ現在の取り組みについて説明を行いました。
 NHKの説明については、別紙2としてお配りしています。
 同じく政府の「規制改革実施計画」では、新たなCAS機能の今後の在り方の検討として、総務省が検討の場を設置することとされており、この検討分科会の設置について、了承されています。
 諸課題検討会については以上ですが、先週7日に自民党の「放送法の改正に関する小委員会」が開かれました。民放テレビ局とNHKのあり方について、第二次提言という形で取りまとめられました。
 NHKに関しては、常時同時配信を早急に可能にするよう、次の通常国会に放送法の改正案の提出を目指すとして、総務省に所要の作業を開始するよう求めています。また、4K・8K本放送開始から1年以内に、衛星波などの整理・削減の具体案について、結論を出すことなどを求めています。

 

 (2) 最高裁大法廷判決を受けたNHK受信料制度等検討委員会での意見交換会の報告について
(資料1)(資料2)(資料3)(資料4)
 (松原理事)
 それでは、最高裁大法廷判決を受けたNHKの受信料制度等検討委員会での意見交換会の報告について、説明をさせていただきます。
 受信料訴訟にかかる最高裁大法廷の判決は去年の12月6日でしたが、この対応について10月31日の受信料制度等検討委員会において意見交換会を行いました。資料の別添①から③によって、その概要についてご報告をいたします。
 まず別添①ですが、NHK受信料制度等検討委員会の第16回会合、議事要旨の1ページをご覧ください。
 昨年12月に出された受信料訴訟による最高裁大法廷判決は、受信料制度や受信料体系に関して多くの点を判示している内容となっております。このため、受信料制度等検討委員会において、最高裁大法廷判決への対応を検討項目として意見交換会を開催しました。
 委員の先生方とも相談して、法的な論点が含まれると考えられる5項目を検討テーマとして設定し、ご議論をいただきました。
 また、受信契約締結にあたっての理解促進のあり方に関し、現在のNHKの取り組みについて報告事項として説明を行いました。5項目の検討テーマについては、別添②の資料をもとに事務局から最高裁判決の該当箇所の説明を行い、受信規約に規定することなど、NHKとして何らかの対応をとる必要があるか否かについて、委員の先生方にご議論をいただきました。
 そのうえで、最後に座長にまとめていただく形で進めました。
 議事要旨には先生方の個々のご意見を記載していますが、各検討テーマの最後の黒丸は、先生方の意見を受けた座長のまとめになっております。
 本日の報告は各テーマにおける最高裁判決の該当箇所と、ご意見のまとめを紹介する形で進めていきます。
 まず検討テーマ(1)の「契約締結義務者」についてです。最高裁の鬼丸裁判官の補足意見は、「受信契約の締結が強制される場合には、締結義務を負う者を明文で特定していないことは問題があろう」としています。
 議論のまとめは3ページの1つ目の黒丸をご覧ください。「放送法第64条1項は契約締結義務者について『協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者』と定めている。他の公共料金では契約締結義務者の特定や限定はされていないこと、家族が多様化する中で『設置した者』という定め方よりもさらに具体的に契約締結義務者を定義することは難しいこと等から、現状では放送受信規約に特定する必要性は高くないのではないか」というまとめになっています。
 次に検討テーマ(2)「契約成立条項」についてです。最高裁判決における岡部裁判官の補足意見は、「放送受信規約第4条1項は、(中略)受信設備の設置の時からの受信料を支払う義務を負うという内容の契約が、意思表示の合致の日に成立する旨を述べていると解するべき」としています。
 まとめは4ページの1つ目の黒丸をご覧ください。
 「最高裁判決と現行規定の関係について、『最高裁の解釈による』として、放送受信規約を変更しなくてもよいと考えられる。一方で『分かりやすくなるように放送受信契約を変更してもよい』という考え方もあるが、その考え方による場合でもあって、直ちに変更すべきとまでは言えず、仮に変更する場合の文言について引き続き検討する余地がある」というまとめとなっております。
 次に、検討テーマ(3)「消滅時効」についてです。未契約者の過去分における消滅時効について、最高裁判決は、「消滅時効は、受信契約成立時から進行するものと解するのが相当」としています。またすでに契約をしている受信契約者の受信料債権については、平成26年9月25日の最高裁判決において「消滅時効期間は5年」と示されています。
 まとめは、最後の黒丸をご覧ください。
 「放送受信規約は、契約の内容について規定しているものであり、契約の内容に、民法で定められている消滅時効を規定することはなじまない」というまとめになっております。
 次に検討テーマ(4)「過去設置・現在撤去における解約」についてです。受信機を過去に設置し、その後撤去したものの解約について、最高裁判決における木内裁判官の反対意見は、「仮にすでに受信設備を廃止し、受信設備設置者に対して判決が承諾を命ずるとすれば、受信設備設置の時点からその廃止の時点までという過去の一定の期間に存在するべきであった受信契約の承諾を命ずることになる。これは過去の事実を判決が創作するに等しく、到底判決がなしうることではない」とし、小池、菅野裁判官の補足意見は、「受信設備を廃止するまでの期間についての受信契約を強制することができるとすることは十分に可能である」としています。
 まとめは5ページの2つ目の黒丸をご覧ください。
 「ごく限られた場面でしか問題にならない事項について、あえて受信規約に記載する必要はない」というまとめになっています。
 検討テーマ5、「過去設置の対応」についてです。
 未契約者が契約を締結した際に生じる過去分の債権について、最高裁の判決は、「受信契約を締結していない者について、これを締結した者と異なり、受信料債権が時効消滅する余地がないのもやむを得ないというべき」とし、木内裁判官の反対意見は「およそ時効消滅による消滅することのない債務を負担すべき理由はない」としています。
 まとめは、6ページの3つ目の黒丸です。
 「最高裁判決を前提として、なお、過去分についてのさかのぼっての請求を一定年数で区切るかどうかということは、受信設備の設置確認制度の検討状況等を踏まえ、NHKとして引き続き検討すべきではないか」というまとめになっています。
 5項目の意見交換の最後に事務局から「いただいたご意見を踏まえ、NHKとして検討いたします」と述べて、検討テーマについての議論を終えました。
 それから報告事項として、「契約の締結のあり方」に関する報告です。
 最高裁判決で、「NHKが、受信設備設置者に対し、NHKの目的、業務内容等を説明するなどして、受信契約の締結に理解が得られるように努め、これに応じて、受信契約を締結する受信設備設置者に支えられて運営されていくことが望ましい」とされたことを受けて、事務局のほうから、現在の理解促進に関する取り組みについて、別添③に沿って報告を行いました。別添③については、資料に沿って項目のみご紹介をします。
 2ページは、先ほどご紹介した最高裁大法廷判決の該当箇所です。3ページは、評釈・解説等として、ジュリスト2018年5月号の対談記事を紹介しています。4ページをご覧ください。評釈・解説等として「放送を巡る諸課題に関する検討会」における新美先生のご発言を紹介しています。5ページは、現在の規定について記載しています。6ページはNHKの経営指標として「受信料制度の理解促進」を掲げているということを紹介しています。7ページは経営14指標に関する期待度と実現度を調査していることを紹介しています。8ページは、参考として、BBCに関する世論調査を紹介しています。9ページはNHKにおける情報開示の状況を紹介しています。10ページは参考として、BBCの情報開示方針を紹介しています。11ページをご覧ください。現経営計画においても、重点方針として、「視聴者理解・公平負担の推進」を掲げていることを紹介しています。12ページから15ページは、公共放送や受信料制度等の理解促進について、放送番組、NHKオンライン、新入生・新社会人向けの周知・案内、イベント事業の取り組みを紹介しています。16ページをご覧ください。NHKの経営委員会委員が、視聴者のみなさまから直接ご意見をお聞きする機会である「視聴者のみなさまと語る会」を紹介しています。17ページをご覧ください。最後に訪問要員のご案内の内容等を紹介しています。
 以上ですが、公式意見交換会の内容については、議事要旨を12月12日にNHKオンラインの「経営情報 受信料制度等検討委員会」において公開します。

 

 

○ 説明会「地域改革 2018年度上半期報告」
 「地域改革」の2018年度上半期の進捗状況について、担当理事より説明を受け、意見交換を行った。

 

 

 以上で付議事項を終了した。

 

 

 上記のとおり確認する。

 

 平成31年1月29日    

石 原  進 

 

 

高 橋 正 美