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第1110回
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平成22年1月29日(金)公表

日本放送協会第1110回経営委員会議事録
(平成22年1月12・13日開催分)

第1110回 経 営 委 員 会 議 事 録

<会 議 の 名 称>

第1110回経営委員会

 

<会 議 日 時>

平成22年1月12日(火)午後 2時00分から午後5時00分まで

1月13日(水)午前10時00分から午前11時00分まで

 

<出 席 者>

〔委  員〕

  小 丸 成 洋 岩 崎 芳 史 石 島 辰太郎
    井 原 理 代   大 滝 精 一 勝 又 英 子
    桑 野 和 泉   小 林 英 明 飛 田 稔 章
    野 間 光輪子   深 谷 紘 一 安 田 喜 憲
  ◎委員長 ○委員長職務代行者(以下、「代行」という。)

 

〔役  員〕

  福 地 会 長 今 井 副会長 永 井 技師長
  金 田 専務理事 日 向 専務理事 溝 口 理 事
  八 幡 理 事 大 西 理 事 関 根 理 事
  今 井 理 事 黒 木 理 事

 

 

<場   所>
放送センター  21階役員会議室

 

<議   事>

 議事に先立ち、経営委員による経営委員会を開催。その後、小丸委員長が開会を宣言し、本日の付議事項および日程について説明。第1109回経営委員会(平成21年12月22日開催)の議事録を承認し、所要の手続きを経て、平成22年1月15日に公表することを決定。

 

付議事項

1 視聴者のみなさまと語る会(武蔵大学・金沢)報告(資料1)(資料2)

 

2 議決事項

 (1) 平成22年度国内放送番組編集の基本計画について(資料)

 (2) 平成22年度国際放送(テレビジョン・ラジオ)の放送番組編集の基 本計画について(資料)

 

3 報告事項

 (1) 平成22年度国内放送番組編成計画について(資料1)(資料2)

 (2) 平成22年度国際放送(テレビジョン・ラジオ)の放送番組編成計画について(資料1)(資料2)

 

4 議決事項

 (3) 平成22年度収支予算、事業計画及び資金計画
(資料1)(資料2)(資料3)(資料4)(資料5)(経営委員会の意見)

 

 

議事経過

 

【1月12日(火)】

(小丸委員長)
 前回の経営委員会で、22年度予算に関する経営委員の意見をまとめたものを皆さんにお配りしました。内容としては、これまでの議論の中で出された意見を基に、執行部に対して大枠での方向性を示すものにまとめております。これについてご意見がございましたらお出しいただければと思います。1番目の受信料収入の増収について全職員で対策を考えていかなければならないという点が大きなところですが、その辺りはいかがでしょうか。

 (岩崎代行)

 デジタル化は、来年度中に完ぺきにやりきっておかないと再来年スタートできないということですが、それは当然のことということでここに入っていないのでしょうか。

 (小丸委員長)

 そうです。

 (岩崎代行)

 要は構造改革をきちんとやって、収支の部分をしっかりやり、それから将来的な課題も経営委員と執行部で一緒に検討していくという内容ですね。

 (小丸委員長)

 特に年金問題はまたこれから見直しをしないとどうしようもないことになると思います。

 (石島委員)

 1番に関してです。前々から何回か発言していますが、受信料収入を上げることだけが営業であるような感覚がまん延している気がします。もう少し広い範囲の収入、歳入全体の問題だと思いますので、そこもこの文面に反映していただけないかと思います。このままでは受信料収入の現状だけとなってしまいます。これが一番大きいのはわかっていますが、それ以外の営業活動も含めて、全体を戦略的にやったほうがいいというようなニュアンスを少し含むように、例えば受信料収入を中心とする歳入の現状というような表現が入ったらいいのではないかという気がします。

 (小丸委員長)

 収入の面で、いくつかの事業がかなり頑張ってやっているのであればいいのですが。

 (井原委員)

 今、石島委員がお話しになったことはそのとおりだと思いますし、副次収入が従来型であることに問題意識を感じていますが、今回の議決にあたっての意見は、ターゲットを絞って申し上げたほうがわかりやすいのではないかと思います。石島委員がお話しになったことは、4番の中で検討していったらいいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。これまでも聞いているように、受信料収入は最高額を獲得しようとしていますし、今年度の見込みと比べて年間で100億円を超す収入にするというのはかなり大変なことではないかと感じますので、1はターゲットを定めておいたほうがいいのではないかと思います。

 (小林委員)

 石島委員と趣旨が違うのかもしれませんが、営利事業を行わないNHKにおいて「営業対策」という言葉でいいのかと思います。受信料の収納・未納の問題や支払率向上の問題のことだと思いますが、「営業対策」と書いてあって、次に「受信料の収入」と続くのは気になります。代わりになる適当な言葉があれば、その方がよいと思います。

 (小丸委員長)

 受信料を集めなければならないという意味で「営業」という言葉を使っているのだと思います。

 (井原委員)

 NHK的で「営業」と言えば、受信料収入の確保ということだと思います。

 (石島委員)

 井原委員のお話しになったことももっともなので、1番はこの表現でいいと思いますが、営業は収入だけではないような気がします。営業活動というのは、企業体の一番基本的な活動であり、NHKが社会的に認められるような活動というのも営業の枠の中に入ると思います。したがって4番にそういうことをしっかりと議論していただくという趣旨が入っているのであればいいと思います。

 (野間委員)

 グループ経営はほかと絡んできますので、3番か4番でそういう趣旨が入っていればいいと思います。

 (小丸委員長)

 受信料体系のあり方もこれから議論しなければなりません。そして、その他の収入の枠が非常に小さいので、2つ目の柱となるものが何かほしいと思いますが、それは子会社を使いながらでもやることが必要だと思います。法的にNHKができないのであれば、そういった方向性で具体的に強化していかなければならないと思います。

 (大滝委員)

 私は4番の文章はこれでいいと思いますが、今回の予算編成については反省点があります。予算編成については、10月ぐらいからスタートしていますが、それでは明らかに遅すぎますので、8月や9月から、前倒し的にやることが必要だと思います。予算編成のやり方を抜本的に見直していかないと、事実上、経営委員会は出てきた案を追認していくみたいな話からなかなか脱却できないことになりますので、その辺のところは少し考えるべきだと思います。4番はそういう意味の概念も入っていると思います。

 (岩崎代行)

 そういう趣旨からすると、4番は少し抽象的ですね。

 (井原委員)

 そうですね。今、大滝委員がお話しになったことに関しては2番も結構関係しています。トータルコストによる管理手法が適用されていくと、予算編成がおのずから早くできる可能性があると思います。

 (岩崎代行)

 2番の「23年度予算編成からできる限り」の「できる限り」を除いたほうが早まると思います。

 (勝又委員)

 1番は冒頭ですので、「受信料収入の現状」というだけではなく、事業収入の現状を共有した上で、受信料増収のために全協会を挙げて営業対策を効果的に取り組むというふうに、全体像を最初に持ってきたほうがはっきりするのではないかと思います。結果的にはその他の収入ということで、これから多角的な収入源をいろいろ検討していかなければならないというようなことが、4番の中で検討されればと思います。

 (飛田委員)

 社会背景が非常に変わってきているということをNHKとして受け止め、執行部がきちんと把握した上で、受信料体制の考え方、仕組みづくりをどうしていくのかということがこれから大きな課題になると思いますので、そのことを十分検証してもらわなければなりません。これからどういう状況で受信料の支払いをしてもらうのかという、基本的な考え方がかなり変わってくると思っています。

 (井原委員)

 4番はもう少し具体的な内容にしたらどうですか。制度論とどう執行していくのかということと一緒にしないほうがいいのではないでしょうか。

 (小丸委員長)

 4番目を少し重たくしますか。

 (井原委員)

 具体化を考えてはということです。

 (小丸委員長)

 具体化ですか。

 (井原委員)

 はい。今回の予算を議決するときに必ず執行部にやってもらいたいことがあるということでこれまで議論して、委員長を中心にまとめました。とにかく22年度について受信料収入確保を計画どおりにきちんとやってほしいというのが1番で、支出については予算の枠内で、なおかつ精査をしながら使ってほしいというのが2番です。あと3番以下は構造的な問題という整理の仕方をした気がします。したがって、制度のところが若干ぼんやりしているというところがあるとすれば、収入に関する制度が大事なので具体化したらどうでしょうか。

 (深谷委員)

 私はこの表現でいいと思っています。受信料収入は、今まで年間60億円ぐらいしか増えてこなかったのが、22年度は100億円以上増やさなければなりませんので、受信料に焦点をあて頑張ってほしいと思います。また、22年度計画の中で21年度に受信料で苦戦した中身はあまり触れていません。これらについて表に出して議論しておかないとうまく進んでいかないことだと思います。

 (小丸委員長)

 それから、もう少し前倒しで議論していかなければなりません。

 (桑野委員)

 1番に関しては、「営業対策」という表現が気になりますが、受信料収入に徹底して取り組んでいくということで、この文章でいいのではないかと思います。4番については、予算編成のことなどを含めて、もう少し具体的なことが入るべきではないかと思います。昨年は「全職員が」「全協会をあげて」のような言葉が入っていたのでしょうか。

 (岩崎代行)

 初めてですね。

 (桑野委員)

 これはとても重要なことではないでしょうか。すべての現場などでもこのように変わっていかないと、これからとても達成できないと思います。

 (石島委員)

 4番に具体的なことを盛り込むというのも1つの手かもしれませんが、3か年経営計画の遂行に関する危機感みたいなものを深刻にとらえるような表現が、文章上出るようにできないのかなと思います。このままでは、順調に支障もなく全部プロセスにのって進んでいくように見えてしまいます。3か年経営計画の現状認識に基づいてとか、経営委員会としては危機感があるということを表に出すような形に、4番を少し抽象的であっても直したらいいのではないかと思います。

 (勝又委員)

 厳しさを表すという意味ですか。

 (石島委員)

 はい。

 (大滝委員)

 頭のところには書いてあります。

 (石島委員)

 いろいろな問題を考えるということは、もちろん上に書いてあるといえば書いてありますが、結局はそういう危機感があるからということです。

 (小丸委員長)

 そういう意味で四半期ごとに報告していただくことを最後に付け加えました。この内容でいかがでしょうか。

 

 

 −異議なし−

 

 

 

 (小丸委員長)

 はい。そういうことで。しかし、これありきではありません。議論はお互いにしていかなければなりません。それから2番目のトータルコストについてですが、これは現実に始まっているのですか。

 (井原委員)

 どこまで進んでいるのかはわかりませんが、放送総局の中では進んでいます。

 (小丸委員長)

 井原委員、一度この辺の進行状況がどうなっているのか、報告してください。

 (井原委員)

 進行状況を聞いてみます。

 (小丸委員長)

 これをもちまして、終了させていただきます。また議決にあたっての経営委員会の意見につきましては、明日の全体会が始まる前に最終確認の時間を設けますので、再度ご確認をお願いしたいと思います。

 

<会長、副会長、技師長、専務理事、理事入室>

 

1 視聴者のみなさまと語る会(武蔵大学・金沢)報告(資料1)(資料2)

 (吉国事務局長)
 今日は、「視聴者のみなさまと語る会」の報告を2つまとめて行います。まず、第6回として行われた武蔵大学でのキャンパスミーティングです。資料の1ページから3ページまでに会合の概要と反響・評価を記載していますので、ご覧いただければと思います。この会合は、昨年11月12日の午後5時から午後6時50分まで、武蔵大学50周年記念ホールで行いました。出席者は、経営委員が岩崎代行、井原委員、桑野委員、小林委員、執行部が溝口理事、八幡理事、関根理事、黒木理事でした。開会のあいさつのあと、井原委員に「経営委員会の役割」と「3か年経営計画」の説明をしていただきました。そのあと、広報の「NHK2009」というNHKの業務を紹介するVTRを上映して、意見の聴取を行いました。今回は全体の議論ではなく、参加者を4つのグループに分けて、グループディスカッションを行いました。それぞれのグループに経営委員と執行部が1人ずつついて、4つのグループでそれぞれ議論を進めて、最後にそのグループの代表の学生が内容を発表しました。第1のテーマが「NHKへの接触者率について」、第2のテーマが「受信料について」、第3のテーマが「どんなNHKであってほしいか」という3つのテーマで行いました。グループディスカッション終了後に「サラリーマンNEO」のディレクターによる講演を行いました。今まで「視聴者のみなさまと語る会」を各地で行っていますが、若年層の方の参加があまりなかったので、若年層の方の意見も聞きたいという意見が経営委員会の中でも強くありました。そして、3か年経営計画で接触者率の向上を図るに当たり、接触者率の低い10代、20代の視聴者の意向を把握したいということもありましたので、初めて学生だけに対象を限定して公募しました。その結果、事前の申し込みが79人あり、当日は60人の学生に参加していただきました。
 資料の3ページから23ページまでにグループごとのディスカッションの主な内容を記載しています。学生ということで今までと違ったご意見やご指摘をいただきました。全体として、テレビを見る時間は皆少ないようでした。サークルやアルバイトなどで忙しいということや、インターネットでニュースなどの情報は検索しているのでテレビはそんなに要らないということでした。NHKに関しては、小学校の低学年ぐらいまでは親と一緒に見ていたけれども、それ以降は接触する機会が減ってしまっているというのも全体的な傾向で、NHKは硬いイメージがあっておもしろくないというようなご意見を多くいただきました。その一方で、NHKの情報の信頼度やバランスのとれた番組についての評価が高く、その結果として、「民放のようなおもしろい内容を追求しても結局中途半端に終わるだろう」という声などがあり、もっとNHKらしい番組、例えば、若者の視聴時間は結構遅いので、「もっと遅い時間にニュースを放送すれば見る」「もっとNHKらしいバラエティーをやったらどうか」など、バランスのとれた番組を充実してほしいというご意見を多くいただきました。第2のテーマの「受信料について」は、あまり具体的なご意見が出ませんでした。ここでは最初に、受信料が「高い」か「低い」かを、参加者に聞きました。全体としては「高い」という声が多くありました。しかし、議論していくと、「適当な価格ではないか」というような意見もたくさん出てきました。また、「年単位で見ると高いと思うが、月額で考えればたいしたことないので、もっとPRの仕方を考えたらどうか」というご意見もいただきました。そのほか全体に共通していたのはNHKのPR不足についてで、「今までNHKの放送でおもしろいものはないと思っていたが、たまたま見たらいい番組をやっていた。しかし、NHKを見ていないのでそれが全然伝わってこない」「家族割引で学生が半額になるということを、この会場へ来るまで知らなかった」「いろいろな形でNHKの活動や視聴者向けの情報を発信してほしい」などのご意見をいただきました。
 グループディスカッション終了後、グループのそれぞれの代表者にグループの要約を発表していただきました。その内容を23ページから26ページに記載しています。その後、NHKの出席者のまとめのあいさつを行いました。その内容を26ページから29ページに記載しています。30ページには当日会場アンケートの集計結果を記載しています。以上です。

 (井原委員)

 先ほどお話しになったことに尽きると思いますが、あえて一言申し上げるとすれば、非常にしっかりとしたご意見が多く、NHKの番組を見て、分析していると思いました。若い人たちに見てもらう番組を作るには、あれだけしっかりした考え方を持っていることにきちんと向き合うことができるような取り組みをしていかなければならないという感じがしました。言い方を変えれば、見る理由も見ない理由も極めてはっきりしていますので、それを十分に分析して、参考にして、取り組んでいただければありがたいと思います。

 (吉国事務局長)

 金沢での第7回視聴者のみなさまと語る会は、昨年11月28日の午後2時から午後4時20分まで、金沢放送局の第1スタジオで行われました。出席者は、経営委員が岩崎代行、深谷委員、野間委員、執行部は今井副会長、永井技師長、牧野金沢放送局長でした。参加者の募集をしたところ、事前に94人の申し込みがあり、67人にご参加いただきました。参加者の年齢は、20歳代が5人、30歳代が3人、40歳代が14人、50歳代が5人となっており、50歳代以下が半数の参加となっています。
 会議の形式は、まず深谷委員に「経営委員会」と「3か年経営計画」について説明いただき、その後、「NHKの放送について」「NHKの経営など全般について」意見聴取を行いました。終了後の催しは、今回は、できるだけ地域の催しにしたいという金沢放送局の意向もありましたので、地元の金沢放送局のアナウンサーとキャスターがトークショーを行いました。
 第1のテーマ「NHKの放送について」にいただいたご意見は、「地域の活性化を図るために地元の話題を出してほしい」「日本の国民に元気を与える放送にしてほしい」「皇室に関する報道を含めて、敬語の使い方や言葉遣いに気をつけてほしい」などです。第2のテーマ「NHKの経営について」は、今回は厳しい注文も含め、さまざまなご意見をいただきました。「NHKも国と同じように事業仕分けをして、もっと効率的な経営をすべき」「受信料の公平感をもっと徹底してほしい」「スクランブル化などを考えてもいいのではないか」というようなご意見をいただきました。以上のような内容で予定の時間を20分ほど超過して、中身のある議論ができたと思っております。
 今年度の「視聴者のみなさまと語る会」はあと1回残っており、最後の岡山での会合が1月23日に開かれる予定になっています。

 (岩崎代行)

 中身の濃いご質問が多く、内容が充実した会合でした。例えば、七尾市で「マクベス」のロングランをやっているというのをNHKが取り上げてくれて、ボランティアで多くの地元の人が参加して非常に盛り上がったということでした。地域を元気にするものをどんどん取り上げてやってほしいというようなご意見や、全国で頑張っている商店街を全国放送で取り上げていただければ、各地の商店街やそこで働く人たちも元気になるというようなご意見をいただきました。自分たちのことだけを言うだけではない、非常にすばらしい会でした。また、経営委員会をやっているみたいに厳しいご意見もいただきました。国が事業仕分けを行った直後だったので、NHKの予算の効率的な使い方についても具体的なご意見をいただきました。参加者の意識がとても高く、参考になるいい会でした。

 

 

2 議決事項

 (1) 平成22年度国内放送番組編集の基本計画について(資料)

 (日向専務理事)

 基本計画については、先日の経営委員会でご説明しましたが、基本的にそのときの文章、その他については変わっていません。12月21日の中央放送番組審議会に諮問して、答申をいただきました。特に今日付け加えることはありませんが、先日言い忘れたかもしれませんが、環境に配慮するということで、教育テレビとラジオ第2放送では引き続き放送時間を若干短縮します。
 採決の結果、原案どおり議決。

 

 (2) 平成22年度国際放送(テレビジョン・ラジオ)の放送番組編集の基本計画について(資料)

 (今井副会長)

 私が12月の最初の経営委員会を出張で欠席したため、日向専務理事からご報告申し上げましたが、12月の国際放送番組審議会での審議を経て、答申をいただいております。それが今日手元にある資料です。まず、外国人向けのテレビジョン国際放送についてです。アジアのニュースを世界に発信していくことについては、これまでの10か月の放送に対して非常に高い評価を受けているところであり、中東やロシアの極東を含めて18の総局・支局の力を駆使して、英語によるアジアからの情報を日本からの情報に加えて発信していくことを、さらに強化していきたいということが1点目です。そして、日本国内の地域放送局の参加も大変盛んになっており、民放の制作した番組の放送も強化していこうということで、日本の地域からの世界的な発信にも協力していくということが2点目です。3点目は、12月14日にハイビジョンによる放送を始めました。ニュース・情報の国際衛星放送としては世界で初めてということですが、今後、ハイビジョンの普及もこの放送を生かして進めてまいりたいと思っています。また、昨年10月にアメリカのホテルチャンネルへの配信が始まり、やや出おくれていたアメリカの受信環境整備がこのところ進んでいます。今月中にはサブサハラアフリカ(サハラ砂漠以南のアフリカ)にも電波が届くようにするべく、現在、交渉の最後の詰めをしているところです。すでに全世界で1億2,300万世帯に届く段階まで来ており、5年後の目標である1億5,000万世帯が視野に入ってきました。
 邦人向けには、「NHKワールドプレミアム」を1日24時間放送していますが、このうちの5時間分はスクランブルを外し、邦人向けテレビ国際放送としてどなたでも見ることができるようにしています。情報系の番組を多彩にしたり、子供向けの番組を加えたりして、在外邦人に役に立つ放送としての役割を果たしていきたいと考えています。
 ラジオ国際放送は、短波放送だけではなく、衛星ラジオや、世界各地の地元の放送局から、中波やFM波で番組を再送信するという方法を進めていきます。
 インターネットについては、7,000万ページビューを達成しており、携帯電話よりやや高度な新しい携帯端末にも展開していく準備を進めています。
 編集の基本方針としては以上のような観点で臨んでまいります。

 (深谷委員)

 日本の国際放送が海外でたくさん放送されることを、非常に誇りに思います。世界にわれわれの視点を発信したいということで予算も増やしてきましたが、他国の国際放送とのいろいろな面での比較を紹介していただけるとありがたいと思います。

 (今井副会長)

 これまで2度にわたってアメリカで調査を行いましたが、新たな調査の結果は近くまとまります。そうすると、放送開始前のところから2段階を経てどこまで進展しているのかがうかがえると思います。それから、BBC、CNNと並んでNHKがどのくらい見てもらえているのかについても、アジアの主要都市を対象に近々調査が行われることになっており、受信世帯の広がりと同時に視聴実態がわかるように努力してまいりたいと思っております。

 (深谷委員)

 お願いいたします。

 (福地会長)

 先日、アメリカでホテルに放送を配信している、ホテルチャンネルの会社の社長と配信の斡旋をしてくれた弁護士がお見えになり、非常に評価していただきました。その社長の話では、自分のところのチャンネルは37万室に配信していますが、泊まっているお客さんの10%が日本の国際放送にアクセスしているということで、非常に評価されているということでした。それから、弁護士は日本にたびたび来ているらしいのですが、自分の家では国際放送を見ているが、日本に来ると国際放送が見られないので、日本で見られるようにしてほしいということでした。これは放送法に関連する問題ですが、NHKとしては、そういった方向で動き始めているので、「ご期待ください」と言っておきました。

 (小丸委員長)

 1月7日の新聞にも、国内で国際放送が見られるように一部法律の改正をするという記事が出ていましたが、それについて何か考えていらっしゃいますか。

 (今井副会長)

 現在、総務省と協議を進めているところですが、総務省が通信と放送の総合法制の中で放送法改正の検討を始めています。その中に国内で国際放送を受信できるようにするかどうかの点を法律に盛り込むのか、あるいは法律に盛り込まなくてもできるのか、その際にどのくらいの人たちを対象にどういう方法で伝えることができるのかなどについて、これからさらに細部を詰めていくことになります。放送法の改正を伴うことになると少し時間がかかるかもしれません。できるだけ早くいろいろな方にご覧いただけるようにしたいと思います。会長が今年の年頭会見で申しましたように、NHKとしては前向きに取り組んでいきたいと考えています。

 (福地会長)

 そのホテルチャンネルの社長が言っていましたが、10%という接触率もさることながら、NHKの放送内容に質的に満足しているということでした。

 (小丸委員長)

 日本の場合は放送法上の制約があると思いますが、他国はどうでしょうか。

 (今井副会長)

 私の承知している限りでは、イギリスの「BBCワールドニュース」という世界に発信している非常に評価の高い番組がありますが、これはイギリス国内では見られないようになっています。国によって制度の違いがあると思います。

 (勝又委員)

 今その話を聞いて、大変心強く思いました。ぜひ推進していただきたいと思います。それから、アフリカのほうにもという話がありましたが、最近アフリカの方とお会いする機会がありました。実態としてテレビのセットを持っている家庭がまだまだ非常に限られており、一般的にはラジオだということですので、途上国でテレビ受信セットがないようなところにはラジオ放送を積極的に展開していただくといいのではないかと思います。

 (今井副会長)

 現在、アフリカ向けには、ラジオでスワヒリ語の放送と北アフリカにはアラビア語の放送を出していますが、マンパワーと対応能力の点から放送時間は限られたものになっています。そして、アフリカのテレビ普及が急速に進んでいるようで、中東の地域やアラビア語の地域では、昨年、放送を開始した時点で衛星にのっています。今度、サハラ砂漠以南の49か国、数百万世帯が加盟している衛星にものります。非常にチャンネルが混んでいて、なかなかチャンネルがとれないことがあり、南アフリカ共和国については、しばらく時間がかかるかもしれませんが、南アフリカと北アフリカの間の地域には、近々、電波が届くようになります。

 採決の結果、原案どおり議決。

 

 

3 報告事項

 (1)平成22年度国内放送番組編成計画について(資料1)(資料2)

 (日向専務理事)

 それでは平成22年度国内放送番組編成計画について報告します。資料に時刻表も添付していますので、それもご覧いただきながらお聞きいただければと思います。まず、全体的なことを申し上げると、時刻表でどのぐらいの割合を変えたのかという改定率は、総合テレビジョンが34%で、平成18年度以来の大幅な改定になりました。また、衛星ハイビジョンは71%です。今年度が63%でしたので、この2年大きく編成を変えています。衛星2波化による衛星第2テレビジョンとの番組の相互乗り入れや、外部制作率の向上などのさまざまな課題がありますので、それに合わせて来年度もかなり大幅に時刻表を変えることになりました。それから、1週間に1回必ず定時番組として放送する番組、毎日放送する番組をそれぞれ単位番組と言っておりますが、来年度は155番組を廃止して、108番組を新設することになりました。今年度はどちらかというと新設番組が増えていましたが、来年度は、同じような番組を統合して1つの番組にして予算を投入するとか、衛星ハイビジョンと衛星第2テレビジョンの番組の相互乗り入れ率を上げるなど、全体として単位番組数が少なくなっています。
 それでは、チャンネルごとにあらましをご説明いたします。
<総合テレビジョン>
 総合テレビジョンの基本方針は情報番組の充実・強化です。朝の時間帯ですが、現在、8時12分まで「おはよう日本」、8時15分から「朝の連続テレビ小説」、8時30分からニュースを5分間挟んで、8時35分から「生活ほっとモーニング」という時刻表になっていますが、この20年間で朝の番組の接触者率が16%下がっています。朝の時間帯でいうと、特に女性の40代が非常に大きなポイントになりますが、その世代の方々の接触が減っていること、先が見えない時代環境の中で、社会保障からライフスタイルまで、生活者の目線で提供できる情報のニーズが高まっていること、そして、生活時間その他のデータをもとにして分析した結果、これまでの視聴習慣と変わる部分もありますが、「おはよう日本」を朝の8時で終え、8時正時から「朝の連続テレビ小説」を15分放送し、8時15分から9時55分まで、生活者の目線でさまざまな情報を提供する新しい情報番組を新設します。月曜日から金曜日のその時間帯です。「生活ほっとモーニング」でも、1つのテーマを50分間伝えるという形でそういう生活情報もお伝えしていますが、日々いろいろな出来事が起きていること、私の場合はどうなのかとかという個人的な関心が非常に強いこと、そして、昨年の“約束”評価委員会でも、生活者に必要な情報をきちんと提供してほしいという意見もありましたので、そういうニーズに対する1つの答えとして、大きく情報番組の枠を広げます。朝4時半の「おはよう日本」から、10時までさまざまなレベルで情報をきちんと提供できるゾーンにしようと考えています。「朝の連続テレビ小説」の開始時間についてはいろいろな議論がありましたが、特に在宅の女性の方々は、8時で家事が大体一段落するということがわかっておりますし、今、朝の連続テレビ小説は7時30分と7時45分に衛星で放送しているため、地上波から衛星に切りかえる方もたくさんいるということもあり、冒険ではありますが、「朝の連続テレビ小説」の時間帯を15分繰り上げる選択をしました。8時から12分間のニュースがなくなりますが、8時15分からの新しい情報番組ではニュースも必要なときに出していくということで、番組、ニュースの垣根を越えた新しい情報ゾーンをつくります。そして、朝だけではなく、夜間の10時50分台にニュースと気象情報を5分間新設します。11時台は、今「きょうのニュース&スポーツ」を放送していますが、そこにビジネス&スポーツということで、特に働き盛りの方々が少し遅目にお帰りになったときに、寝る前にチェックできる時間帯に帯で、経済情報とスポーツ情報を中心に、その日に起きた主な出来事も含めて、きちんと伝える時間をつくります。そして、今、土曜日の午前中に「経済ワイドビジョンe」という番組を放送していますが、金曜日はビジネス&スポーツの拡大版ということで長時間のワイドにして、経済情報についてもきちんと伝えます。また、前に井原委員から土日の接触者の増加というお話がありましたが、総合については、土日の午前中の番組群を少し変えます。例えば、日曜日の午前中には、子どもから、もう少し高学年の人たちも見られるような番組群を並べます。土曜日の午前中には、どちらかというと気楽に見られる「小さな旅」「世界遺産への招待状」などの紀行物の番組を集めます。こういう形で、どちらかというと月〜金までの朝は情報ゾーンですが、土曜日、日曜日は少し趣を変えて、新しい視聴者の方々が参入できるような形にしています。それから、夜の8時台に「ドラマ8」という視聴者層の拡大をねらってドラマ枠をつくりましたが、ティーンズの方は少し見ていただいていますが、逆に高齢者の方々は完全にいなくなってしまいました。そういう二律背反の課題に取り組んでいます。8時という時間帯は、ティーンズ向けのドラマというのは難しいという判断をして、どちらかというともう少し幅広い世代の方々にご覧いただける、昔の「連想ゲーム」の進化したものとお考えいただくといいのかもしれませんが、「新感覚ゲーム クエスタ」という番組を新設します。一度開発番組として放送しましたが、非常に評判のよい番組でした。それから、夜の10時台はどちらかというとじっくり見ていただくゾーンであると思いますが、ここも40代ぐらいを意識して、「歴史秘話ヒストリア」とドラマの枠は残しましたが、残りの3枠の入れ替えをします。ちなみに、「プロフェッショナル」という番組は非常に評価が高い番組で、これについては後期に演出を一新した形で再登場させることを考えています。
<教育テレビジョン>
 次に、教育テレビジョンです。朝の幼児番組ですが、例えば幼稚園に出かける時間などで在宅の時間が対象年齢によって違います。対象年齢の一番低い子どもたちは割と遅くまでいますが、5歳、6歳は割と早目に幼稚園に行ってしまいますので、その時間と番組の放送時間が逆になっている時間帯を入れ替えます。それから、経営委員会でも議論いただいておりますが、小学校の中学年ぐらいまでは教育テレビジョンを見ていただいておりますが、そこから先は教育テレビジョンから離れて、ほかのテレビ局に移ってしまうという問題があります。そこで、19時台というのは在宅率の高い時間帯ですので、民放もさまざまなエンターテインメント系のバラエティー番組を放送していますが、この時間帯を強化しようということで、いくつか新しい番組を設けます。「テストの花道」というのは、要するに思考力を訓練するというコンセプトの番組です。それから、夜のもう少し遅い時間は、これまで趣味・実用系の番組ということで、「おしゃれ工房」と「趣味悠々」という番組が帯でありましたが、どうしても特定の人たちにターゲットが狭まってしまうというデメリットがありました。そこで、教育テレビも多様な視聴者層に訴えかけたいということで、例えば「グラン・ジュテ」という番組はすでに何回か放送していますが、特に30代、40代の普通の人たちがどうやって自分の仕事・キャリアを獲得していったのかという、ある種の生きがいにも通じる、それから、普通の人でもこんなことができるという、有名人ではない一般の人たちの出来事を描く番組を放送します。そして、「中高年のためのらくらくパソコン塾」という評判の高い番組など、中高年向けの番組が多くありましたが、もう少し若い方々向けの趣味番組を増やしていきたいと考えています。また、語学については、昨年始めた「リトル・チャロ」という、非常に評判のよかった番組の第2弾を放送します。クロスメディア・コンテンツという、テレビ、ラジオ、それからインターネットのそれぞれのメディアに応じたコンテンツを、1つの核になる素材から展開していく番組です。
<衛星ハイビジョン>
 衛星ハイビジョンについては、今年度から始めた「プレミアム8」が夜間の看板番組ですが、これは今、曜日別に、自然、紀行、芸術、人物もの、エンターテインメントという形でやっていますが、これをもう1年継続します。そして、外部制作会社が作った番組を積極的に放送するゾーンとして、その前後の7時台、9時台の後半に置いています。それから、衛星ハイビジョンの平日の時刻表についてはかなりすっきりしたと思います。また、特集番組になると思いますが、衛星放送の2波化に向けたプロモーションとして、興味のある人にとっては非常に満足度の高い番組を土日に集中的に編成していこうと思っています。
<衛星第1テレビジョン>
 衛星第1テレビジョンは大きく変わっていませんが、毎正時に放送しているニュースを、かつてやっておりました「50ニュース」という、正時前の10分間にニュースを放送する形にします。これは地上波も正時にニュースを放送していますので、かつてやっていたような「50ニュース」に戻します。
<衛星第2テレビジョン>
 衛星第2テレビジョンについては、先ほど、同種番組の集約ということを申し上げましたが、同じような番組はなるべく1つにして、そこにお金と人をかけるということで整理しました。例えば「熱中クラブ」「熱中時間」など、いろいろなその種の番組がありましたが、それを1つにまとめる試みをしています。時刻表も、これまでと比べてかなりシンプルになってきたと思います。また、土曜日の夜に「ザ☆スター」というエンターテインメント系の番組があります。長時間で満足度の高いものを開発するということで生まれた番組です。エンターテインメント系の充実も一緒に図っていきたいというのが衛星第2テレビジョンの方針です。
<ラジオ第1放送>
 ラジオ第1放送は、昨年度、今年度と、かなり大幅に変えました。来年度は、そういう意味で、その定着を図る年になると思います。実はラジオというのはインターネットと親和性が高く、放送に参加するという意味では非常に有効なメディアです。このところインターネットの展開も進めてきましたが、大幅にアクセス数が増えました。今年も朝の番組でポッドキャストを始め、「深夜便」でストリーミングを始めました。こういうところにはアクセスが集中して増えていますので、これからも強化していきたいと思います。インターネットに配信する番組も増やしていきたいと考えています。また、ラジオ第1放送には,水曜日の夜の9時半から、地方局が作った番組を全国放送で発信する枠があります。現在、札幌、仙台、名古屋、福岡、沖縄の放送局が、1か月に1回持ち回りで放送する形になっています。しかし、5局ありますので、1か月に1回放送できない状況でしたので、土曜日の22時台に、沖縄放送局の番組を月1回放送することにして、各局月1回は全国発信ができるようにしました。そして、細かいことですが、土日の午後4時台に「とっておきラジオ」という番組があります。ラジオ第1放送は、再放送がほとんどありません。「深夜便」など特にそうですが、日ごろ気がつかない番組のプロモーションの役割を持たせる意味で、4時台に、特に車に乗っている方々向けに、その週の評判のよかった番組を再放送するというような枠もつくっています。
<ラジオ第2放送>
 ラジオ第2放送についても大きな変化はありませんが、夜の6時台には、英語とスペイン語のニュースを放送していますが、来年度は中国語とハングルニュースを放送します。聞いている方が多い言語なので、なるべく聴取に便利な時間帯に中国語とハングルを移します。
<FM放送>
 また、FMについては、そんなに大きな変更はありませんが、団塊の世代向けの音楽番組を充実させました。また、土曜の午後に「サタデーホットリクエスト」という番組を14時から18時の長時間放送しています。この時間帯については、各地域局ではローカル番組を出したりしていますが、この長時間全部をローカルで埋めるのは非常に苦しいということがあるため、この時間帯を3つに分割して、それぞれターゲットを絞った3つの番組にしました。それによって地域局が、ローカル番組を出しやすいような形になります。
<ワンセグ独自サービス>
 ワンセグの独自サービスについては、これまでにウェブを通した調査を3回行いました。それによって、満足度、接触者率、その他が見えてまいりましたので、それに合わせていくつかの新しい番組を入れています。そして、今「ワンセグ ランチボックス」という番組をお昼に40分放送していますが、これを60分に拡大します。教育チャンネルですが、ワンセグ2という形で全く新しい独自の番組をここで放送しています。視聴者からの評判もかなりよく、お昼の時間帯のワンセグ利用で、1位が「笑っていいとも!」、2位がNHKのお昼のニュース、3位がこの「ワンセグ ランチボックス」ということで、よくご覧になっていただいています。また、土曜日に「モバイル週間ニュース」という、1週間の出来事をまとめて見ることができるようなニュース番組を、何回かに分けて発信するようにしています。
<NHKオンデマンド>
 それから、オンデマンドサービスについては、料金の一部値下げ、動画を見るための再生速度の多様化、そして、マックユーザーも視聴できるようにします。コンテンツについても、紅白歌合戦を今回初めて「見逃しサービス」に出しましたが、5万回以上のオンデマンドユーザーの視聴がありました。これまで「坂の上の雲」が約5,000回で1位でした。それを一気に超えました。強いコンテンツはオンデマンドでもご覧になられるということで、コンテンツの強化、それから見逃しの視聴期間を拡大することも検討しています。
<インターネット>
 そして、NHKオンラインという受信料で運営しているNHKのインターネットサービスですが、これについてもアクセス数は確実に伸びています。1日に1,000万ページビューになりますが、大体120%ぐらいのペースで増えています。細かいことは資料に載せていませんが、ウェブサイトのコンテンツについても、ユーザー側も非常に目が肥えてきているということもありますので、ただ番組の案内や番組のあらましが載っているというだけではなく、もう少しコンテンツの質を上げていくことが必要と考えています。強化するものと簡易なサイトに移行するものをしゅん別して、インターネット利用者を増やしていきたいと考えています。まだ接触者率の数字にまであらわれるほどにはなっていませんが、特に20代、30代については、インターネットに接触する人の数が非常に多いということもありますので、引き続き強化していきたいと思っています。
 それから、時刻表にはありませんが、「あすの日本」プロジェクトや自殺防止キャンペーン、そして、今年から「絆」というキャンペーンを始めました。今、なかなか先が見えない、難しい課題が山積している時代ですので、NHKとして、こういうものについては全局的にしっかりと取り組んでいきたいと思っています。これについてはさまざまな定時番組や「NHKスペシャル」などの特集番組を通じて、今後も積極的にさまざまな課題を取り上げていこうと思っています。以上です。

 (小林委員)

 NODの件ですが、以前もお聞きしたと思いますが、これはいまだに受信料不払い者に対しても、受信料支払い者と同じ条件で提供されていると思います。私は、NHKにとって一番大事にしなければならないのは、誠実に受信料を払い続けていてくれながら、何もNHKに難しいことを言わない人たちだと思います。また、NODで提供する番組も受信料で制作されていますので、受信料不払い者に対して、誠実な受信料支払い者と同様のサービスをNHKが提供することに、私はどうしても違和感があります。機会があれば、執行部にもその辺について検討していただきたいと思っています。

 (日向専務理事)

 来年度については、今、いろいろな施策を打っていますので、会員数も購入者数も増えていくと思います。PCで30万人ぐらいですので、今、小林委員がご指摘になったようなことは顕在化していませんが、いずれ会員数が増えていくと、当然、そういう問題は出てくると思います。それについてはいろいろ検討していきたいと思います。

 

 

 (2) 平成22年度国際放送(テレビジョン・ラジオ)の放送番組編成計画について(資料1)(資料2)

 (今井副会長)

 お手元の資料は、国際放送(テレビジョン・ラジオ)の放送番組編成計画と、放送番組時刻表が一緒になっています。編成計画を重点に、かいつまんでご説明します。
 テレビ国際放送の要は、やはりニュースになります。平日30分、1時間の半分を放送し、夜間あるいは休日は10分間の放送ですが、24時間、毎正時に放送している英語ニュースの内容をさらに充実させます。先ほど申し上げたように、アジアへの展開で、NHKの取材網を駆使した経済情報や、経済成長が著しい中国などを重点的に取材して、現地からリポートする割合を増やしていく準備を進めています。また、今年度は初めて選挙の速報をしましたが、来年度は次なる段階として、大きな災害が起きたときに緊急対応できる柔軟な編成、および取材・放送の訓練を含めて編成できるような体制を整えていきたいと考えています。そして、現在、1週間に28の番組を放送していますが、このうち国内制作の番組を国際放送の独自制作番組に切り替えて、国際放送の独自制作番組を3つ増やします。1つ目の番組は「NHKワールド トライアウト」というタイトルですが、取り上げるテーマや番組の構成、演出手法を多彩にするとともに、外部のプロダクションへの門戸開放もさらに進めていきたいと考えています。2つ目の番組は「China Wow!」という番組ですが、中国がみずから発信している国際放送ではなかなか伝えられないものに挑戦していこうというねらいです。3つ目の番組が「ASIAN VOICES PLUS」という番組ですが、これは来年度の後期からの編成になります。現在は「ASIAN VOICES」という番組を月に1回放送していますが、これを週1回にします。アジア各国の有識者、ジャーナリストによる討論、インタビューなどに力を入れて、日本とアジアからの発信につなげてまいりたいと思います。そして、国内放送番組を英語化する枠の中で、2つの番組を新設します。1つは、「猫のしっぽ カエルの手」という国内放送の新しい番組ですが、京都で暮らしているイギリス人のハーブ研究家の方の暮らしぶりをベースに、世界に日本を発信していくというものです。それから「デジスタ・ティーンズ」という番組は、これまで放送した「デジスタ」の出品者をティーンズまでに限定し、リニューアルする番組です。この番組は、平成23年度から、アジア太平洋放送連合(ABU)のイベントとして、「ABUデジスタ・ティーンズ」を始めますので、これに向けて、日本の若者たちのスキルアップを応援していくねらいです。また、日本語のテレビ放送は「NHKワールドプレミアム」として世界の邦人向けに24時間、番組配信サービスをしています。このうち5時間分はNHKがスクランブルを外して、NHKの放送として出しています。このうち、現在放送している「おはよう日本」については、時差の関係で生放送に加えて時間を置いて再放送していますが、この再放送をやめて、その時間を使って新たな情報番組と子ども向けの番組を、視聴者の要望に応えて新設します。
 ラジオ国際放送については、10の言語についてニュース枠を5分程度増やします。また、ラジオの受信の仕方が変わってきています。衛星から直接受信する放送サービスに力を入れていくとか、現地の中波あるいはFMの放送局に番組を再放送してもらうというやり方で、聴取者へのサービスをさらに拡大していこうと考えています。
 4ページに放送時間等についての数字があります。衛星を使ってラジオ放送を行うのは、18言語のうち14言語になります。
 最後の7ページにラジオ国際放送の使用言語別放送時間があります。先ほどアフリカ向けの話をしましたが、フランス語の放送も、旧仏領西アフリカを中心に伝えるということが大きな目的になっています。
 以上です。

 (安田委員)

 私、カンボジアから今帰ったところで、NHKの衛星放送を海外で体験しました。いつも感じることは、発展途上国の人は毎日毎日一生懸命生きています。そこに日本の若者向けのような、少し砕けたような番組を流されると、非常に違和感があります。日本を尊敬する国々の人は、日本はまじめな国で、きちんとしていると思っています。だから、少し砕けたような番組はもうやめてもらえないかといつも思います。日本に期待しているのは、きちんとした正しい世界をつくってもらいたいということで、日本人だったらできるのではないかとアジアの人々は思っています。日本の若者に向けたような番組はもうやめて、やっぱり日本人はまじめだなと、いい仕事しているなというようなことを印象付けるような番組をもう少し重点的に放送していただけると、私はうれしいといつも思っています。

 (今井副会長)

 1つは、邦人向けの国際放送では、3つの地域に時差を設けて、アメリカとヨーロッパからも衛星の電波を出しています。一方、外国人向けの国際放送は、1つの電波で世界中に伝えなければならないということがあります。さらに、日本とアジアの情報を世界に向けて発信するという取り組みと、日本のソフトパワーと言われるさまざまな日本の伝統的な文化や若者の文化を世界に発信して、日本にこれまで接したことのなかった若い世代にも日本に目を向けてもらいたいという、2つの目的があります。バランスについては、これからも考えながら進めてまいりたいと思います。

 (小丸委員長)

 国際放送費は予算も増えていますが、海外との契約の際のコスト削減は専門にチェックされているわけですね。

 (今井副会長)

 コストの削減という点で申し上げると、この放送のスタートに当たって、放送設備や7階の事務部門のフロアをそのまま使ってのスタジオ建設など、効率的に放送を出す仕組みを取り入れています。そして、衛星放送やケーブルテレビ、そしてIPTVといったものを通じて、世界の隅々まで、できるだけ多くの方々に届けようとしているところです。NHKが受信料や交付金でできるサービスは、NHKから世界に向けて送信するところまでです。ケーブルテレビやIPTVに乗せるのは、NHKが受信側のコストを負担することになりますのでできません。しかも、衛星はハイビジョン化も少しずつ進んでおり、だんだん込み合ってきています。したがって、交渉もかなり難しいところがあります。アメリカのメガヘルツというワシントンベースの放送局について簡単に例をお話ししますと、一度、来年度からの契約を見送る動きが先方にありました。しかし、NHKの衛星を使って、彼らのアメリカ中のネットワークへの配信を引き受けるということで、メガヘルツの全米での展開にNHKを含めてもらうことができました。さまざまな実情や変化に応じて柔軟に対応しながら、できるだけコストパフォーマンスがいいように契約を結んで、広めているところです。

 

 

4 議決事項

 (3) 平成22年度収支予算、事業計画及び資金計画
(資料1)(資料2)(資料3)(資料4)(資料5)(経営委員会の意見)

 (金田専務理事)

 それでは、資料に基づいてご説明します。今回の経営委員会で、国内放送・国際放送の基本計画及び編成計画についてご説明しました。それを、平成22年度収支予算、事業計画及び資金計画によって実施したいということで、ご審議をお願いするものであります。
 NHKは、放送法第37条の規定により、年度ごとに収支予算、事業計画及び資金計画を作成し、経営委員会の議決をいただいた後に総務大臣に提出することになっています。放送法第37条第2項では、総務大臣はこの予算に意見を付して内閣を経て国会に提出し、国会の承認を受けなければならない旨を規定しています。また、放送法に基づく放送法施行規則には、収支予算、事業計画、資金計画に記載する具体的な事項が定められています。平成22年度収支予算、事業計画及び資金計画については、これまでに11月10日に予算編成スケジュール、11月24日に予算編成方針、12月8日に予算編成要綱、12月22日に平成22年度予算編成についてなどを議論いただき、今回は、これまでの議論を踏まえて、最終的に予算書として内容をまとめました。まず、12月8日の収支予算編成要綱の変更点についてご説明します。第1の変更です。「地デジ難視対策衛星放送」の契約種別の決定に伴う衛星受信契約件数の変更です。これに伴い、衛星契約件数の増加を65万件としました。これは、地デジ難視対策衛星放送、いわゆる衛星セーフティネットの対象リストのうち、デジタル放送難視聴地区などを基準として、協会が定める要件を備えた地域並びに難視聴地域において、地デジ難視対策衛星放送を受信できる受信機を設置した者については地上契約とすることによる変更です。近々、いわゆるホワイトリストということで、この対象に衛星セーフティネットの受信機を配る対象が確定されることになっていますが、現段階の推定では、トータルで23万世帯から30万世帯という幅で予測されています。その中にどの程度の方が衛星契約をされているのか、推定になりますが、その数を5万世帯と推定しています。その世帯については、従来のご説明では、来年の7月24日のアナログ停波までは基本的に衛星契約ということで、衛星契約の料金をいただくという前提でしておりましたが、調整の結果、この方たちを受信機の設置時点で地上契約とすることにしましたので、その分については契約数を落としました。第2の変更です。政府予算案の確定に伴う国際放送交付金の調整です。12月25日に政府予算案が確定し、仮に21年度と同額としていた国際放送の交付金が9,987万8,000円の減となったために、交付金収入が減少します。これに伴い、事業収入が6,786億円、事業収支差金がマイナス61億円となります。国際放送の要請部分に係る交付金という考え方になっており、今年度は、その要請をNHKは応諾しています。編成方針や自主自律に基づく放送の構え方については変更しないという考え方で、約1億円の交付金の減すべてを事業収支差金に反映させます。以上の変更を含めたものが今回の予算書等の資料です。
 では、平成22年度収支予算、事業計画及び資金計画をもとにご説明します。まず、1ページの22年度収支予算からご覧ください。次のページから始まる予算総則は、NHKの受信料額や予算に関する決まり事を規定しています。第1条で収支予算書を、第2条で受信料額について、第3条以降は予算の使用方法を規定しています。
 7ページから10ページまでは収支予算書です。まず、7ページは一般勘定の事業収支で、先ほどの変更点を織り込んだものとなっています。事業収入は、受信料の公平負担の徹底を目指して受信料の増収を図ることなどにより、6,786億円としています。事業支出については、経営資源を放送番組の充実等に重点配分するとともに、効果的かつ効率的な業務運営を進めていきます。また、デジタル化に伴う難視聴対策など、受信環境整備として追加経費252億円を計上し、事業支出は総額6,847億円となります。この結果、事業収支差金は61億円の不足となります。
 8ページは一般勘定の資本収支です。資本支出には、地デジの視聴可能地域拡大に向けた設備整備などにより、建設費790億円を計上しています。また、事業収支差金の不足については繰越金の一部で補てんします。この記載も放送法施行規則第8条別表5、注4の(3)により、事業収支差金が不足する場合には、その補てんの方法について記載することが規定されていることによります。
 9ページには、NHKオンデマンド事業の収支に係る番組アーカイブ業務勘定、10ページには、協会の保有する施設の賃貸等による、放送法第9条第3項の収支に係る受託業務等勘定について記載しています。
 11ページの別表第2、契約種別から、13ページの別表第7、団体一括支払における割引額まで、受信料額を規定するために必要な条項を記載しています。このうち、11ページの契約種別において、地デジ難視対策衛星放送の受信者の一部を地上契約の適用対象とする旨を記載しています。
 15ページからは平成22年度事業計画です。ここに、今まで予算編成要綱などでご説明、ご議論いただいてきた予算の重点事項と金額をまとめています。放送法施行規則により5項目について記載することになっています。17ページからの計画概説、20ページからの建設計画、22ページからの事業運営計画、32、33ページの受信契約件数、そして、要員計画について記載しています。最初の計画概説には、これまで予算編成要綱等で議論いただいてきた内容の概要を記載しており、加えて、建設計画や国内放送等の業務運営の基本的な考え方を記載しています。一部順番等は異なりますが、3か年経営計画の9方針の「1.視聴者のみなさまの信頼を高めるため組織風土改革に全力をあげます。2.日本の課題、地球規模の課題に真正面から向きあいます。3.放送・通信融合時代の新サービスで公共放送の役割を果たします。4.地域を元気にするための拠点となります。5.日本を、そしてアジアを、世界に伝えます。6.円滑な完全デジタル化に向けて重点的に取り組みます。7.構造改革を推し進め効率的な体制で受信料の価値をより大きくします。8.受信料を公平に負担していただくための取り組みを強化します。9.環境経営に着実に取り組みます。」を織り込んだ内容としています。
 20ページからの2項目の建設計画では、衛星放送施設整備計画、テレビジョン放送網整備計画といった科目別に、重点事項と金額をそれぞれ記載しています。地上デジタルテレビジョン放送の視聴可能地域の拡大に向けた設備整備や太陽光発電設備など、環境経営推進のための設備整備等により、総額790億円を計上しています。
 22ページからの3項目の事業運営計画は、国内放送、国際放送などの科目別に重点事項と金額をそれぞれ記載しています。主な項目をご説明します。国内放送については地上、衛星、ラジオ放送ごとに、チャネル別に記載しています。総合テレビジョンは、1日24時間を基本とした放送時間とし、基幹的な総合波として、国民生活に不可欠なニュース・情報番組、創造的な文化・教養番組および娯楽番組等の調和ある編成を行います。教育テレビジョンは、1日21時間を基本とした放送時間とし、子供や若い世代をはじめ幅広い世代に向けた番組、福祉番組および文化・教養番組等の充実を図ります。衛星ハイビジョンは、1日21時間を基本とした放送時間とし、次の世代に残すべき一級の文化・芸術を積極的に紹介するとともに、紀行や自然等の分野ごとに大型番組等を編成します。衛星第1テレビジョンは、1日24時間を基本とした放送時間とし、ニュース・報道番組を一層充実するほか、視聴者の関心の高いスポーツ番組やドキュメンタリー番組を編成します。衛星第2テレビジョンは、1日24時間を基本とした放送時間とし、難視聴解消を目的とする放送を行うとともに、幅広い視聴者層に親しまれる番組編成を進めます。ラジオ第1放送は、1日24時間を基本とした放送時間とし、緊急時の迅速かつ的確な報道に努め、聴取者の信頼に応える柔軟な編成を行うとともに、ニュース・生活情報を中心に聴取者と双方向化を進め、多様な情報をきめ細かく提供します。ラジオ第2放送は、1日19時間を基本とした放送時間とし、語学講座番組の充実を図って聴取者の学習意欲に応えるとともに、さまざまなメディアを駆使した魅力的な学習サービスを行います。FM放送は、1日24時間を基本とした放送時間とし、優れた音質を生かした多彩な音楽番組を中心に編成します。そして、地域放送では、各地域の特性や要望に応じ、平日夕方のニュース・情報番組や夜間の視聴好適時間帯の番組を充実するとともに、地域を見つめ、地域とともに考える番組を強化し、地域からの全国発信を積極的に推進します。また、補完放送等では、データ放送、字幕放送、解説放送等について記載しています。携帯端末向けサービスのワンセグについては、デジタル総合テレビジョンおよびデジタル教育テレビジョンで実施し、同じ内容の番組を同時に放送することを基本としつつ、デジタル教育テレビジョンでは一部で独自番組の放送を実施します。26ページの国際放送については、諸外国へ日本とアジアの実情を伝え、経済・文化交流と相互理解の一層の促進に貢献するとともに、海外の日本人が必要とするニュース・情報を迅速かつ的確に伝えるため、外国人向けと邦人向けのテレビジョン国際放送およびラジオ国際放送を実施します。28ページの契約収納については、受信料の公平負担の徹底を目指し、受信料の未払者や未契約者への契約収納活動を強化するとともに、受信料制度に対する理解促進を図り、受信料収入の確保に努めます。受信対策については、地上テレビ放送の完全デジタル化に向け、デジタル難視聴対策など、国や民放等と連携した受信環境整備を進めます。ここにデジタル化の追加経費の252億円を計上しています。31ページには、信頼される公共放送のための組織風土及び業務運営の改革として、職員の採用・研修の強化や組織横断的な人事異動の拡大等により、コンプライアンスを徹底した組織風土改革に全力を挙げ、NHKグループでのリスクマネジメントの確立など、内部統制の整備を進めるとともに構造改革を徹底します。32ページの受信契約件数は、地上契約、衛星契約、特別契約の種別ごとの有料契約見込件数と受信料免除見込件数を記載しています。34ページの参考では、これらをまとめて記載しています。平成22年度初頭有料契約見込件数の総数が3,687万4,000件で、平成22年度内に35万件上乗せして、最終的に3,722万4,000件とする計画です。この35万件の内訳ですが、地上契約が30万件の減少、衛星契約が65万件の増加を見込んでいます。
 36ページは、5項目の要員計画です。業務の効率化を積極的に推進し、40人の純減を見込んでいます。その結果、予算人員は1万0,582人となります。
 次に、平成22年度資金計画では、資金計画の概要、すなわち資金の需要および調達について記載しています。放送法施行規則では、資金計画の需要として受信料等の入金および事業経費、建設経費、放送債券の償還等の出金について記載することが規定されています。平成22年度の資金計画としての入金は7,146億0,636万9,000円、出金が7,175億5,453万5,000円で、資金が不足することなく業務運営が行われる見込みです。以上が、本日そして明日でご審議いただく平成22年度収支予算、事業計画及び資金計画についてのご説明です。
 次に、参考資料について簡単にご説明します。資料−1の平成22年度収支予算と事業計画の説明資料は、予算事業計画の内容を、図などを使って対外的にわかりやすく詳細に説明するためにまとめた資料で、12月8日にご説明した予算編成要綱をベースにしたものとなります。資料−2の平成22年度収支予算と事業計画〔要約〕は、資料−1の内容を要約してまとめたもので、視聴者の皆さまに22年度収支予算と事業計画について簡単にご理解いただくために作成しております。ご審議のほど、よろしくお願い申し上げます。以上です。

 (大滝委員)

 先ほどお話がありました、地デジ難視対策衛星放送の対応で、衛星契約件数を70万件から65万件に変更するということについてです。事前に送られてきた資料には、「減収分については未収受信料回収活動の強化によって確保します」と書いてありますが、実際どのくらいの減収になるのでしょうか。そして、こういう書き方で大丈夫でしょうか。

 (金田専務理事)

 現段階では3億円と見積もっています。それで、そこにご説明したような形で対応したいと思います。

 (井原委員)

 3点ほどお尋ねします。衛星放送はこれからますます多くの方々にご覧いただき、NHKにとって大変重要な役割を果たすと思います。受信料の収入と支出の状況をあわせて見ると、件数や受信料額からいっても、衛星放送に関連するものが大幅に伸びていますが、衛星放送に関する番組経費は減少しています。これに対しては、相互乗り入れで、効果的に運営していきたいというお答えをこれまでいただきました。そのことをもう一度、確認をしたいということが1点目です。2点目は、先ほどお伺いすべきだったのかもしれませんが、地域放送の基本計画の中に、「地域固有の歴史や風土をハイビジョン映像で記録する取り組みを開始する」ということがありました。とても良いことと思いながら伺いましたが、これは予算的にはどこに反映しているのかをお伺いしたいと思います。3点目ですが、資料の中に、トータルコストに関する業務別予算の分析があります。予算を組むときに、業務別にトータルコスト的なものを作成していますが、これは、全局的にトータルコストを展開していくというコストマネジメントと関連づけられるのかどうかをお尋ねしたいと思います。これまで全体の業務別予算をトータルコスト的に予算で示しているものは、決算のときにも、状況を示していただいていますが、それが分析的に使われているとは思えません。このように予算段階でも作成しているとすれば、今後本格的に展開しようとするものとどのように関係づけようとしているのかお尋ねをしたいと思います。

 (金田専務理事)

 1点目は繰り返しになりますが、確かに今回衛星放送については25億円の予算をカットしています。いろいろな考え方があると思いますが、来年の2波化に向けて効率的な運用をしていきます。それから、構造については、最近では、「蒼穹の昴」のように、衛星で先行して放送するなど、いろいろな形で編成の中で相当工夫しているところです。したがって、現段階ではこれでいけるという判断で、今日のご審議をお願いしているということであり、ご安心くださいと申し上げたいと思います。

 (日向専務理事)

 2点目のご質問についてです。「新日本風土記」のことでしょうか。

 (井原委員)

 はい。

 (日向専務理事)

 今年度も少し予算を使いますが、厳密に言いますと、制作はしますが、次年度には放送がないので、23年度に予算化されます。そうはいっても、どこから出すのかというと、特集費というものがあります。先ほども申し上げた単位番組というのが定時番組になりますが、それ以外に特集予算というのを各チャンネルでもっています。その一部と、編成企画費の中に入ると思いますが、デジタルアーカイブス、アーカイブスセンターが所管している予算も一部使うことになります。今インターネットの書き替えやウェブサイトを作ったりしますので、番組の制作費だけではないところでお金を必要としますので、そういうところからもお金を使います。

 (井原委員)

 では、文字通り「地域固有の歴史や風土をハイビジョン映像で記録する全局的な取り組みを開始します」という全局的なところが予算にもそのままパラレルに反映するととらえればいいということですね。

 (日向専務理事)

 そうです。ただ、放送日基準になっていますので、来年度の予算ではなく、再来年度の予算に費用化されるということです。

 (井原委員)

 わかりました。

 (日向専務理事)

 地方局の予算はほとんど使わずに、主に全国放送番組費からの支出になります。

 (金田専務理事)

 最後のご質問については、前から議論は表に出しているところであります。いわゆる事業セグメントという形でのフルコストの捕捉が、経営委員会で見ていただくときに一番使うものではないかと思いますが、これについては予算ベースで制作していますし、実績ベースでも作るということで進めています。トータルコストというのは、基盤的経費など、例えば、番組・放送技術の調査研究や経営委員会や執行部の給料などの、基盤的な経費までは配賦しません。実務的に内部管理の中で事業を見るときに、ある程度の配賦をして把握した管理数値ということで理解しています。このレベルでも見る意味があります。実績捕捉まで行うのは大変難しいと思います。番組について企画原価ベースでトータルコスト的なものを進めているということです。先ほどの基本計画、編成計画のご説明は、従来大枠の放送を決めたあと、個別番組の大体の予算をつくっていくという作業を、今回は少し前倒しして、この予算を策定した段階で、トータルコストの中でそれぞれの番組のシリーズについてどのぐらいの予算でいけるかというところまで管理することが大体できた、ということをご報告したということです。トータルコストとフルコストというのは意味が違うということをご理解いただいて、経営委員にはフルコストの数字でいろいろご利用いただきたいと存じます。

 (井原委員)

 フルコストと違うところはあると思います。こういう業務別の予算を出していただいていて、これまでも拝見していましたが、トータルコスト的な管理手法の導入に取り組んでいる中で、今後の導入と連動させていただきたいということで、今の状況をお尋ねしました。

 (金田専務理事)

 番組レベルでトータルコストと実績原価を捕捉するのは大変にコストがかかると思います。標準原価計算は、NHKの業態には合わないと思います。直価原価でやった場合もコストがかかりますが、比較ベースでいろいろ考えることには意味があります。実績が捕捉できない企画原価のトータルコストというのは、少なくとも経営判断に使用するには限度があるということも認識しなければならないと思います。

 (井原委員)

 そのコストはどれぐらいかかると判断しているのでしょうか。例えば、ITシステムも同じですが、ある程度かけるところにはかけて、結果的に削減するというようなコストマネジメントがうまくいくというようなことがあり得るのではないかと思っていますが、金田専務理事はかけるだけのものではないとお考えなのでしょうか。

 (金田専務理事)

 これは非常に高コストだと思います。一方で、標準原価というものは、番組一つ一つの部品表というようなものが成立しないので、なかなか難しいですが、大切な見方だと思っていますので、議論はさせていただきたいと思います。それと、先ほどの日向専務理事がお答えした部分ですが、デジタルアーカイブスの中に映像版県別百科辞典ということで予算を少し積んでいます。それで、先ほどの日向専務理事のご説明のすべてではありませんが、そういうところにも大きな予算をつけているということでご理解いただきたいと思います。

 (小林委員)

 22年度の予算の審議を通じて一番明らかになった問題、つまりNHKにとって一番重大な問題は、3年後の10%の還元について黄色信号が出たということだと思います。10%の還元というのは、いわばNHKの公約であり、経営委員会と執行部がその責任を負うべきことで、もし実現できなければ責任をとらなければならなくなる可能性が出てくるような、それほど大きな問題だと思います。しかも、その実行には条件がついていて、支出をカットして実行するということではなく、収入を増加して行う、つまり、支出をカットして番組低下などを招く可能性がない形で実行するということが、いわば公約だったと思います。そういう意味で、収入確保が非常に大切になりますが、この問題は公共放送としての根幹である受信料制度と密接に結びつく問題だと思います。そのために受信料制度の問題と絡めて、あらゆる対策をとらなければならない事態になっているというのが今の現状だと思います。そこで2つの方法があると思います。1つは事業所割引または免除の拡大ということが正しかったのかという点の再検討をしていただくということです。もう1つは、立法的な対応を早急に考えるべきだと思います。立法というのは国会で行うわけで、NHKが行うわけではないということで、議論が避けられる傾向にあるかと思いますが、この立法の対象者、当事者はNHKだけであり、そのNHKがどういう受信料制度が最も合理的で効率的であるのかということを最も知り得る立場にあるわけです。そのNHKがそれについての意見を出して、その方向の立法化を国会等にお願いするということは許されることであるし、また、望ましいことでもあると思います。立法には時間がかかりますので、それを早急に行う必要があると思います。これは執行部だけではなく、経営委員会の責任でもありますから、ぜひその点を委員長にお願いしたいと思います。私はその土壌が今はあると思います。一昨年議決した10%還元という宣言が、立法化をお願いする条件をNHKが出したというふうに考えるべきだと思います。前回の経営委員会でもお話ししましたが、10%還元という意味を考えてみると、支出についてはシーリングをかけて抑制して、受信料制度の改革または収納率の向上によって、収入が増加した分は視聴者に還元するとうたったわけです。つまり立法化してもらって、受信料制度が合理的になり、公平な負担が実現して収益が増加した分を視聴者に還元するということを宣言しているわけです。立法化の成果、利益は視聴者が受けるわけです。こういうことをNHKが宣言したことを踏まえて、ぜひ合理性、効率的な受信料制度の立法をお願いするということが今、NHKに早急に求められていることだと思います。ぜひ小丸委員長にもその辺の議論を進めるようにお願いしたいと思います。

 (小丸委員長)

 今、小林委員がお話しになったことはわれわれも考えていかなければならない問題だと思います。平成21年度予算の受信料の6,490億8,000万円は、非常に厳しい経済状況を反映して、予算達成は難しい状況です。このような状況において、平成22年度予算の受信料収入はこれまで最高の6,550億8,000万円となっています。3か年経営計画の平成22年度の目標の6,640億円を下回った予算ですので、これは何としても達成しなければなりません。NHKの全職員がこの現状を認識して危機感を持っていただき、協会を挙げて増収対策に当たっていかなければならないと思います。むしろ予算を超える受信料収入を確保するぐらいの気持ちでいかなければなりません。大西理事が来られる前の体制で決めたこういった割引制度が本当によかったのかどうかということに戻るわけですが、今、小林委員がお話しになったことも一つあろうかと思います。それから、支出についてですが、経営計画の方針7にある構造改革を確実に実施して、抜本的な見直しをしていかないとなかなか前に進まないのではないかと思います。22年度の重点課題としていただいて、執行部の皆さんが担当部署にこだわらないで、垣根を越えた活発な活動をしていただかなければならないと思います。重要なことは、とにかく受信料収入をどうやって上げるのかということです。当然いい番組を作らなければならないと思います。その基本的な問題は執行部の皆さん方、また、経営委員も一緒になって考えていかなければならないと思っています。その辺のところは会長を中心に積極的な組織改革をしていただき、進めていただきたいと思います。

 (岩崎代行)

 3か年経営計画では、支出は6,500億円から6,600億円というところでのキャップシーリングをかけていて、22年度の予算はそれに準じているわけですが、収入が減っている中で支出が史上最大となっています。支出の中には地デジ追加経費が入っていますので、これを除けば21年度予算より減にはなっていますが、収入との見合いにおいて、できる限りいろいろな努力をしていただきたいと思います。コスト削減できる余地のあるものがあると思いますので、大いに努力をしていただきたいと思います。

 (石島委員)

 基本的に数字ベースで今お示しいただいているものは、22年度に関してはこういうことになるのかなという気はしております。今日も申し上げましたが、収入を上げていく中に、単に金額の数字を上げていくという問題があると思いますが、NHKのプレゼンスを高めていくというような種類の収入というのも考えなければならないのではないかと思います。それには、営業のようなものの考え方に少しパラダイムシフトをしていただきたいと思います。もちろん22年度にすぐ間に合うというわけではありませんが、もし10%還元が厳しい現状があるのであれば、そのパラダイムシフトを早く実現して対応していかなければならないと思います。その中には、収入の多様化と、もう1つは、単にお金がいくら集まるのかということですが、これは予算の問題なので最重要といえば最重要ですが、例えば、地方局の充実なども基本的にはそういうことを目指していると思います。要はNHKのプレゼンスを高めることが必要で、そういう部分の収入も、それを収入と言っていいかどうかわかりませんが、そういうものを総合的に考えた活動を展開していただいて、NHKが今後とっていくさまざまな方策について、受信料を払う国民から受け入れられるような環境を作っていくことに努力していく必要があるのではないかと思いますので、ぜひこの機会にお願いをしておきたいと思います。

 (福地会長)

 受信料収入を確保するということは、経営委員会の皆さんから指摘されるまでもなく、当然執行部がやらなければならない一番大きな課題です。免除世帯の問題や業界取りまとめの問題は、早くから検討されていた問題で、そのときの討議はよくわかりませんが、私は方向としては間違っていなかったという感じがします。今、業界取りまとめはいいとこ取りされている感じです。それが本当に効果を持ってくると、方向としては間違っていなかったということになります。免除の問題は、率直に言ってだれも読めなかったと思います。国が読めなかったのですから、ここまで生活保護世帯が増えるなんて、しかも20歳代の生活保護世帯が増えるなんていうことはとても想像できませんでした。私は受信料の根源は、契約率だと思っています。本来であれば契約率掛ける単価で算出できますが、契約率からの引き算が多いという問題があります。あるレベルまでは徹底して受信料を確保していかなければならないと思います。そのためにいろいろなことをやっています。どこの企業の営業も一緒で、本当に泥臭い積み重ねの中でこういった目標は達成できます。だから、前に皆さんに申し上げましたが、12月14日に出勤の途中で、今ごろビール会社だったら何をやっているかなと考えました。お得意先を、会長はじめ社長も皆、年末年始の対策で走り回っているなと思いました。そこで、年末まで残りあと実質10日間で何とかならないのかということで、プッシュ10キャンペーンという、12月上旬の営業数値の10%増しを12月下旬でやろうというキャンペーンに取り組んでもらいました。12月上旬の支払率、収納額、滞納の回収などのいろいろな数字をトータルで110%にすることが目標で、結果112%できました。年頭のあいさつのときに営業をほめました。年末に12%増やしたことが全体の数字にどれだけ影響するのかというと、それは大して影響しませんが、考えたことをまず全部やってみることが今は大事ではないかと思っています。そういった積み重ねの中でできてくるようになります。今、実は一番悪い面が出ているような感じがしています。国の経済もそうではないのでしょうか。本来であればもう少し上がっていいところが、何をやっても悪いところばかり出ているような感じがします。営業もそうです。私が今、一番重視しているのは、支払率の向上です。ベースとなる契約が広がらないことにはどうしようもないと思います。まずこれをやることが大事ではないでしょうか。また、NHKが商売できるのが一番いいのですが、そのための法改正の問題があります。今日も関連団体の会議がありました。関連団体の社長・理事長が全部集まり、私がそこで「景気が悪いときほど経営の差が出てくる」と言いました。経済の数字がいいときには、経営の差は出ません。悪いときほど差が出ます。業界が10%減っても、一番減るところは100%減ってつぶれてしまいます。いいところは逆に増えるところだってあります。平均して10%減ることになります。そういった中で、業界から退場する中に入らないように、今こそ経営力を発揮するときではないかということを、今日トップに話をしました。そういった中で、何が貢献できるのか。今まで、NHKの技術は優れていながら、あまりお金になっていませんが、いろんな面で一番お金にできると思います。超高感度カメラにしても、ハイビジョンとかそういったものはもちろんそうです。それから、今、国の政策等もあって、コンテンツ立国と言っている中で、NHKのコンテンツが海外で売れるようになってきました。昨年の11月、バンコクに行ったときにも日本の番組が好評だということを、アジア総局長が言っていました。そういったところでお金ができないのかと思っています。番組自体もそうですが、DVDなどの二次展開がもっとできないのかと思います。番組がよくなると、付随してよくなります。NHK出版については、若者の活字離れがありましたが、「篤姫」のときにはドラマストーリーが8版までいって、34万5,000部しか売れませんでしたが、「龍馬伝」は、年末の放送が始まるまでに3版までしか出ていないのに40万部売れています。前編と後編とありますから50万部、100万部になるかどうかわかりませんが、不可能ではありません。100万部も売れれば、それはものすごくプラスになります。要するにコンテンツがよくなると、本が売れるとか、いろいろなものに付随してきますので、まずは接触者率80%が目標です。最終的にはコンテンツがいいということがすべてに影響してきます。また、受信料収入の一番の課題は、衛星契約1,400万件のうち推計で約380万件がまだアナログの受信機しか持っていないということで、今年中にどこまでデジタル化できるかが課題です。デジタル化を進める中で1番大事なことは、衛星放送を好きになってもらうことだと思います。ついでに見ておくということであれば、もう契約しないということになってくると思います。受信料を含めた総収入をいかに上げるのかということはわれわれの課題だと思います。くどいようですが、それにもまして700億円の還元というのがいかに大きいのかということは、改めて申し上げておきたいと思います。

 (小丸委員長)

 先ほど大西理事から「任しておけ」という心強い言葉をいただきました。日向専務理事にお聞きしたいのですが、9ページの番組アーカイブス業務勘定のところで、2月からオンデマンドの料金を1,470円から945円に下げるということですが、予算は結構厳しい数字だと思います。随分落としているわけですが、まさに今、福地会長がお話しになったような、負けるような事業に将来はという思いでやられていると思いますが、その辺りはどうでしょうか。

 (日向専務理事)

 秋以降からいろいろな対策をして、売り上げベースでは1割弱ぐらいずつしか増えていませんが、一桁上に上がらなければならない課題です。秋以降やった施策を含めて、来年度4月から全部そろって始めます。個人的には、3月に売り上げ5000万円と目標に書いていたりはしますが、そこまで何とかして持っていきたいとは思っています。4月以降は少しそのパターンが変わるようなことを期待しないと、事業モデルとしてもなかなか難しいと思います。オンデマンドについては、来年度は大丈夫かなとは思っています。紅白が配信できたのは、権利者の団体の方々にご理解ご協力いただからです。普通は、出演者全部の許諾を得なければならない大変な作業になりますが、それが3週間ぐらいでできました。経費的にも改善が見られていると思います。簡単な目標ではないという自覚はしていますが、来年度はそれに近づけるぐらいの結果を出したいと思っています。ビジネスとして成り立つかどうかということについては、今は区分経理で収支が合えばいいという考え方ですので、そこで利益を得るという話ではありません。その辺については次の段階になると思いますが、少なくとも借金を返さなければならないというのが最大の課題です。

 (小丸委員長)

 広報費にしても、21年と同じぐらいの限られた枠の中でやるというのは大変だと思います。もう少し何かてこ入れして、将来1つの柱になるようなものを作っていただきたいと思います。

 (日向専務理事)

 オリンピックを前にして、2月1日付で値下げをします。そうすると3本分の値段で見放題になります。これがどのぐらいの売り上げにつながるのかを見て、次のステップを考えたいと思っています。

 (小丸委員長)

 また月次でできれば報告していただきたいと思います。

 (井原委員)

 せっかくなので、少し細かいところですが、気になることをもう少しお尋ねします。予算全体から見て、増減幅が大きいものについて確認させてください。1つは調査研究費が10%強落ちています。これについては特に技術関係を落とすという話ですが、NHKにとって将来の技術の進歩発達のために必要な調査研究は大切だと思いますので、これだけ減額して大丈夫なのかということをご確認したいのが1点です。特に放送に関するNHKの技術は世界にも誇れるものだと思いますので、いつも大切にしていただきたいと思っておりますので、そこを確認させていただきたいと思います。もう1つは、受信対策費はデジタル関係がありますので、当然上がっています。ここの数字を拾ってみると、受信サービス活動全体が上がるのは当然ですが、物件費と人件費の関係が大きく動いています。ほかの業務別予算は、物件費と人件費の割合があまり変わらないのはある意味では当然かもしれませんが、これについては全体が上がるのと同時に、物件費の割合が上がり、人件費が逆に下がるという状況になっています。この状況についてご説明いただければありがたいと思います。

 (永井技師長)

 調査研究費については、概要版の資料の34ページにあるように、技術関係分が84億円から72.7億円と、11.2億円減っています。これには、21年度の調査研究費には、デジタル関係の調査費を含んでいたものが、22年度はそれが終了したためです。全体のバランスの中で少し縮小したところはありますが、基本的にはそれほど落としていないという認識です。

 (井原委員)

 受信サービス活動について、21年度と22年度で、数字がどのぐらい動くのかと思って念のために見ました。全体が上がるのは、当然今の対応からそうなりますが、あわせてその割合も変わっているので、これは何かサービス活動の内容が変わるのかなと思ったので、お尋ねしました。

 (金田専務理事)

 私からお答えします。基本的に追加経費152億円には職員、人件費は含まれていません。

 (井原委員)

 では、物件費のほうに入っていると考えればいいのですね。

 (金田専務理事)

 そうです。

 (桑野委員)

 広報のことについてお尋ねしたいのですが、今日報告がありました武蔵大学の会合で、NHKのこと、特に受信料制度のことを知らない若い方がこんなにいるということを実感しました。私自身もそうであったと思います。そういう中で、収支予算と事業計画の説明資料の33ページに書かれている、若い世代に対する公共放送の理解促進の活動の充実や多様な媒体を活用した広報の展開ということで、力を入れていただくのはわかりますが、一方で、予算を7億円以上増額するというのは、新コールセンターの開設に伴うことであって、こういう広報活動に関しては、予算は減であるということでよろしいのでしょうか。

 (金田専務理事)

 この内訳の中でコールセンター関係のところが大きいものですから、ご指摘のような入り繰りになっています。一方で、地デジ関係のところでは、広報は強化する予算を組んでいますので、実際に実行レベルでは、強い広報対策を打てるのではないかと考えています。

 (桑野委員)

 同時に、若い世代に対しての広報を徹底してやっていただくということが大切だと思います。受信料の問題なども今からすぐではないにしろ、1、2年後には必ずその人たちが受信料を払う形になるわけですから、事前に広報していくことの重要性はあると思いますので、ぜひお力を入れていただきたいと思います。

 (金田専務理事)

 特に若い方には、広告というのはなかなか信頼していただけません。そういう意味で言うと、番組の中で公共放送というものを議論いただくとか、直接いろんな対話をするようなことについての機会を増やすとか、その辺については少し新しい考え方を入れていきたいと考えています。

 (桑野委員)

 受信料の基本的なことが伝わることの重要性があると思います。どちらかというと、NHKを身近に感じていただくようなことは、すでに番組を含めてやっていると思いますが、学生に直に伝わるような媒体なども必要ではないかと思います。

 (今井副会長)

 1番の問題は、NHKのテレビを見てくださっている大半の方は受信料制度に対する基本的な理解がありますが、テレビに接する機会の少ない方たちほど受信料についての理解が少ないという状況です。こういった方たちへのアプローチは放送の中でやるだけではだめで、接触者率を高める努力をしなければならないということで、昨年の10月にインターネットを使って、放送と印刷媒体を使わないで若者にアプローチをする初めての試みをしました。インターネットをうまく使うと成果が上がるという結果がでました。問題はコストが大変かかることで、この先さらにコスト効率のいい放送と印刷媒体以外のもので若い人たちにアプローチしていくことをさらに進めていきたいと考えています。それから、公共放送への理解促進については、現在、経営企画と営業を中心にやっています。視聴者への取り組みを進めていますが、わかりやすい制度の説明もその中に盛り込んだりして積極的に取り組んでいきたいと思います。NHKが不祥事を起こして、NHKの経営に対する信頼が大きく揺らいだときには、NHKというのはこういう組織ですというキャンペーンを16年度、17年度、18年度にかけて行いましたが、今後はそういった形で、デジタル化の中での新しい取り組みも考えていかなければならないと思います。

 (福地会長)

 今、副会長がご報告した中で、この前の放送文化研究所の調査でもそうですが、今の若者は、テレビの視聴時間が1日平均で2時間程度あります。塾に行ったり、試験勉強したり、遊ぶ時間もある中で2時間接触しているというのは、私は多いと思いますが、問題はNHKへの接触です。若者の4割ぐらいがNHKに接触しています。今の若者の未接触者に対してどうアプローチするのかという試験的な試みを広報が行ったわけです。インターネットを使ってNHKにこういった番組がありますと伝えると、そのあとNHKの番組を見ています。NHKの番組を見た後では興味を引いています。今の若者がNHKにこういう番組があるということを知らないのもかなりあって、最初から見ないということもあると思います。放送文化研究所の調査でなく、ほかの調査の資料で、今の若者が一番見ているテレビ番組はバラエティーが圧倒的に多いということでした。そういう中で、NHKの番組に接触してもらういろいろな試みをもう少しやってみようということを、今日、広報局長に言いました。まずは見ないのではなく、見るチャンスを知らないというところが大きいのではないかという感じがします。

 (安田委員)

 いろいろなところで講演していますが、講演して一番反応がないのは若者です。私の講演が悪いというのもあると思いますが、昔は大学の授業を聞いていて、学生が寝るということはありませんでしたが、今は授業中に寝ます。これは日本の大きな問題で、NHKもこういう問題を考えなければならないと思います。日本の未来を考えるときには、今の若者を根本的に立て直すことを考えることが必要です。カンボジアで授業をしていると、目をきらきら輝かせて聞いています。その反応と同じように彼らはテレビも見ています。日本の国際放送を見ています。それはそこから何かを吸収したいということです。バラエティーではありません。生きる糧をもらいたいと思って、発展途上国の人はNHKの国際放送を見ているわけです。日本に期待しています。そういうところにバラエティー番組を流されると、はっきり言って日本人でも腹が立ってきます。日本は、いつの間にか文明が成熟しているので、今の日本の若者の接触者率を増やさなければならないとか言っていますが、私は、今の若者に徴兵制はだめとしても、徴農制とか、徴林制とか漁村に行けとか、そういう法律で、テレビの番組も何時から何時まできちんと見るということにすればいいと思います。この番組を見なければ会社に就職させないとか、抜本的に政策を変えないと、日本は本当に大変なところへ行くのではないかと思います。したがって、そういう面でNHKの役割は非常に大きいので、許される範囲を超えるものもあると思いますが、もっときつい方策をとらなければならないところまで来ているのではないか思います。

 (野間委員)

 1つ皆さんにご紹介させていただきたいことがあります。近畿の和歌山放送局が「和歌山カレンダー」というカレンダーを作って、関係の皆さんにお配りしました。以前から広報を通じて視聴者の皆さんに幅広くNHKを伝えていってほしいと申し上げておりましたが、このカレンダーは、和歌山県に住むいろいろな方から公募で写真を集め、視聴者が選んで12か月の写真をカレンダーにしたものです。私もいただきましたが、和歌山の持つ美しい日本が見事に映し出されていて、掛けているだけで本当に気持ちがいいカレンダーでした。その審査の様子や皆さんから集めたいろいろな資料をインターネットで公開して、和歌山局に対する和歌山の人たちの関心をたくさん集められ、大いに盛り上がったと伺っています。京都の方が見られて、京都でもこういうカレンダーを作ってくれればいいのにねと言っていました。カレンダーは1年中目の届くところに掛けていますので、そこにNHKのことが書かれていて、とても親しみをもてると思います。また、1月には、こういう番組が見られるという案内、2月はその写真に合った地域の放送が発信できるようなことがあればいいのにという話題にもなりました。先ほどからのお話の中で、営業はもちろん、受信料の契約を勧めるのが目的ですが、そのためには幅広く皆さまに興味を持っていただくということを、積極的に考えていただきたいと思います。地域の局長がそういうことをされて、しかも非常に安価で、それで1年中掛けていただいて、和歌山を知っていただいて、皆さんが進んでNHKに協力されて、それをまたインターネットで発信して、このカレンダーは、時間とともに地域に密着したNHKに貢献してくれることと思います。経営2目標の達成に寄与する取り組みだと思います。そういう局長がいるということで頼もしいと思いました。ぜひそういう面でも幅広い活動をお願いします。

 (大西理事)

 私も和歌山放送局に行って、その取り組みを実際に目で見てきました。和歌山の四季をアマチュアの方、プロの方もいらっしゃるみたいですが、公募で写真を集めて、視聴者が参加して審査して、カレンダーを見たら和歌山放送局の連絡先が書かれていたりして、非常にいい取り組みだと思っています。全国の放送局の中には、非常に安い価格で、独自にカレンダーを作っているところもたくさんあります。和歌山の局長は写真が大好きで、SLの写真などの展覧会をJRとNHKでしたことからいろいろな話がスタートしているようです。来年度の視聴者サービス活動でも、いろいろな局の取り組みを含めて視聴者に支えられる営業を目指しています。

 (野間委員)

 そういう試みが生まれてきたというのは前向きなことだと思います。何もカレンダーだけではなく、地域から自由な発想が出てくることはいい方向だと思いました。

 (大西理事)

 野間委員がお話しになっていた「視聴者サービス報告書」もさらに充実させたいと考えています。大学生向けのフリーペーパーを作るとか、インターネット、放送などを含めて新しく大学生活を始める方をNHKはどう支えていくのかというようなこともさらに強化をしていきたいと思います。どういう使い方が一番よく伝わるのか、いろいろとトライしていきたいと思います。委員の関係の大学もたくさんあると思いますので、ぜひそのときは訪ねていきますので無料でいろいろなものを配っていただきたいと思います。

 (勝又委員)

 バラエティーやお笑い番組を見て「ワハハ、ワハハ」と笑っている若い人の何人かに、なぜそんな番組がいいのかということを聞いたら、若い人は若い人なりにストレスを感じていて、何しろ頭を空っぽにしたいということでした。難しいことも何も考えないで、ただ笑って発散したいだけだから、テレビを見るのであれば、それしか求めないということでした。それがすべてではもちろんないと思いますが、若い人がテレビに何を求めているのかというのは、制作の現場の方が日々考えていて、いろいろと試行錯誤されていると思います。まじめな番組も大切ですが、そういうテレビを通じてストレスが発散できるようなもので、良質なものができないのかと思います。

 (安田委員)

 私は反対です。ほかの国々の子どもたちにとっては、テレビを見られる時間があるだけでもありがたいわけです。日本人がテレビを見て発散したいというのは、言語道断です。根本的に日本を変えないと本当に危ないと思います。テレビを見てストレス発散するというのは、ふざけています。そういう社会にしてしまったわれわれの責任でもあります。だから、これから根本的に日本の国家のあり方、若者教育のあり方、大学の教育のあり方について考えなければならないと思います。大学だって単位を落とさないんですから。今、大学の経営側でも落とせとみんな言っていますが、100%落第だと言っても落としません。そんな社会を作ったのはわれわれの責任です。若者の教育については、石島委員が大学の学長をされているのでよくわかると思います。

 (石島委員)

 社会の豊かさというのは、そう見える人たちもその存在を許しているところがあるわけです。全部否定するというのは現実的でないと思います。ただ、若い人は、われわれが考えるよりももっとプラグマティシャン(実利主義者)ですので、テレビを見るときにも何が得られるのかということで、ストレスの発散があるのかもしれないし、知識だったり、自分の生きざまだったり、世界観みたいなものを得ることを求めているのかもしれません。そういう多様なものが求められているからといって、ストレス発散だから何でもいいから品を落としてもいいというわけではなく、それは一定の品位を高めるしかありません。大学の話が出ましたが、単位を落としてはならないという大学は存在しないと思います。私も30%以上の学生を落としたことがありますが、格別、大学で問題になったわけではありません。大学の評価というのは、大学の種類や大学のクオリティによって変わってくるので、一概にある方向性だけを見つめると、少なくとも事業的には失敗すると思いますので、安田委員には申し訳ないのですが、一言だけ申し上げておきます。

 (安田委員)

 プラグマティック(実利的)だということですから、学生や若者は自分なりに価値があると判断しなければ見ません。だから、これを見たら受験に役立つ、これを見たら就職に役立つというようなイメージの番組作りをしていくことが必要だと思います。NHKのある番組を見ていなかったら就職もできないよというような。

 (石島委員)

 もう少し広い意味でのプラグマティズム(実利主義)もあるわけです。

 (野間委員)

 先ほどからのご発言ですが、それはやはり幼児教育に問題があるのではないでしょうか。若者がテレビ離れをしているということがいつも課題になっていますが、若者がテレビ離れをしてどうして悪いのかと思います。10代の若者は、テレビを見るよりも日本の古典や中国、西洋の古典を読むなど、本をしっかり読んで、自分自身の人生における基礎をつくる、蓄えをする時期ではないかと思います。古典というのはその時代の人たちが何に悩み苦しんで、それをどういうふうに克服してきたのか、また、克服し損ねて失敗をしたかということが書かれている、人生の教科書です。古典をしっかりと読むような中学、高校、大学時代へと社会がその環境をつくっていくべきだと思います。そのためのNHKの役割は、幼児や小学生の時代にそういう基礎をつけるような番組を充分な予算を付けてつくるべきであり、番組で人を育てることが必要ではないかと思います。古典を読むことによって文化的な土壌ができた若者は公共放送の必要性に対してもきちんとした考えを持つようになるでしょうし、その上である程度の年になって時間ができたときにはNHKに関心を持って見るようになると思います。若者はテレビを見なくていいなんていうことは言いにくいことですが、そういう考えの流れにもっていってほしいと思います。

 (小林委員)

 私は民放と公共放送たるNHKは違うべきだと思っています。おもしろいだけの、その場で消えていってしまうような番組をNHKは作るべきではないと思います。楽しい面があってもいいとは思いますが、それでも何か心に残るとか、何か得るものがあるとか、そういう番組でなければ公共放送としてNHKが放送する意味はないと思います。接触者率をある程度は気にするべきかもしれませんが、私はあまりこだわる必要はないと思います。これにこだわったために、先ほど言ったようなNHKが作るべきではない番組を作って放送するということは、将来を含めて、NHKにダメージを与えるのではないかと思います。つまり良質な番組、公共放送たるNHKにふさわしい番組を作って、その結果として接触者率が上がる、こういうスタンスが必要だと思っています。

 (安田委員)

 忘れてはいけないことは、若者の心は変わりやすく、無責任だということです。ですから、きちんとわれわれが、どういう方針を与えて、未来に対してどういう放送をしていくのかという、確たる意識があれば、若者もそれにおのずからついてきます。そういう若者の意見にふらふらされるようでは、執行部の意味がありません。われわれがきちんと、確たる未来に、どんな日本をつくらなければならないか、どんな若者を育てなければならないかということをはっきり持っていれば、若者は必ずそれについてきます。

 (福地会長)

 今年1月4日の会長あいさつは、1時間10分やりました。その中で、視聴率はねらわなくていいが、接触者率は上げなければならないと言いました。2、3日後にアマチュアスポーツの皆さんと会いますので、昨年何種目放送したのかと聞いたら、47種目ということでした。それは幅広くやっています。視聴率だけを考えるなら、サッカーやラグビーや野球だけをやっていればいいのですが、ラクロスなど、私は見たことがないようなスポーツまでやっています。それがNHKしかできない放送をやるということです。NHKの番組は、コンセプトがはっきりしているし、何かを教えてくれ、何かを考えさせてくれます。また、制作者の意図がはっきり見えます。モニターの人たちが、いつも出す評価の高いところがそこです。紅白でも、最初から視聴率は気にするなと言っています。40%を超えましたが、よかったのは、「歌の力、無限大」というコンセプトを貫いたからだと思います。お客様は3,000人ですが、舞台裏に入っている歌手とバックコーラスやスタッフは3,500人で、お客様より多いです。そして、舞台は例年に比べて極めて質素です。舞台のつくりにお金をかけずに、歌にお金をかけたからいいと、それがNHKの歌謡番組の姿だということを、年頭あいさつでほめました。そういったことを貫いていけばいいと思います。先ほど、野間委員が、NHKを見なくてもいいから古典を読んでほしいというお話がありましたが、古典も読まないです。要するに活字離れということです。月刊誌の社長と食事することがありまして、自分のところの雑誌が30代の若者に手ごたえが出てきたということでした。社長が言うには、NHKの大河ドラマの「龍馬伝」や「坂の上の雲」もそうですが、あの世代は全部20代だということです。黒船でペリーが来たときは、坂本龍馬が21歳、福沢諭吉も21歳、吉田松陰も24、25歳で、西郷隆盛かだれかが31歳で一番年上です。20代の若者が、あの日本をつくったということです。この月刊誌は、大きな雑誌ではありませんが、新しい日本は若者にしかできないということで、私は責任を持ってやっているということでした。それで、手ごたえが出てきたという話でした。どのような手ごたえかはまだ聞いていませんが、私はやり方によっては道がないわけではないと思いました。社長の話をもう一遍聞いてみたいと思います。いずれにしても、NHKだから、NHKでしか、NHKらしいという番組と報道をということで、心してこれからもやっていきます。

 (小丸委員長)

 今日、日向専務理事から、教育番組のことなど、いろいろな話が出ました。私も以前にお話ししましたが、BBCの元会長のグレッグ・ダイク氏がお辞めになられる前に、教育番組に対しての熱意がすごかったということです。小さいときからBBCを愛する、まさにNHKの今の姿です。子どもたちが、将来成長するにあたっての教育構想について、何かありませんか。

 (日向専務理事)

 お答えになるかどうかわかりませんが、教育テレビでは、例えば、「にほんごであそぼ」「ピタゴラスイッチ」などのヒット作もいくつかあります。そういう番組は、コンセプトがはっきりしています。また、古典を読むような高齢者向けの番組もやりますし、昨年放送した、大人向けの「私の1冊、日本の100冊」で、活字文化に対する支援も行っています。ただ、世の中の動きというか、時代の環境の中で、例えば、放送局というのはどういう役割を持つのかということがあります。それから、視聴者の方々は多様ですから、1色に染めるということはやってはいけないと思います。教育番組についても、たくさんは量産できませんが、毎年新しい番組を開発して育て、長生きしている番組も結構あります。そういうものを、1つでも増やしていくということだと思います。「中学生日記」という番組がありますが、昔のようにはなかなか見てくれないということがあります。中学校以降の子どもたちに注目を浴びるような番組が今できていないという現状がありますので、そこのところで、何かを開発しなければならないということだと思います。幼児から中学校の低学年ぐらいまでは割と健闘していると思います。そういうある種のノウハウも手に入れています。ところが、中学校に入った以降の子どもたちに対して、その辺のところが、まだわれわれもよくわかっていません。勝又委員のお話しになったことは本当だと思います。今の子どもは非常に疲れていますので、それは安田委員がお話しになったようなことではないと思います。主体的にやっているのかどうかは別として、いろんなことをやらされていて、昔と比べるときついと思います。そういうことで、NHKの硬い番組を見ないというのは、正直なところ、多くの人たちがそう思っていると思います。しかし、それにおもねるわけにはいきません。その中で、どこに位置取りして作っていくのか、非常に難しいところがあります。繰り返しになりますが、ティーンズ向けの、昔でいうと少年ドラマとかでいくつか話題になったようなものとか、みんながそれを見ていたというようなステータスのある番組を作っていないということが、1つの課題だと思っています。どうやって、そういうノウハウを手にするのかが、課題だと思います。

 (井原委員)

 少し番組のことに関して考えていただきたいことがあります。衛星についてですが、多分、最初は、衛星放送志向の方が契約してくださったのが、だんだんと衛星契約が広がってくると、一般化してくるのではないかと思います。契約者が広がりますと、衛星放送の特徴は一体何なのかということが問われる状況になってくると思います。「衛星放送らしさ」や「衛星放送ならでは」は、一般的には文化芸術波だというふうに言われますが、衛星放送ならではの文化芸術と、NHKの、あるいは教育テレビの文化芸術と、どこが違うのかということが、問われるようになるし、それに応えていかなければいけないのではないかと思います。今までは、衛星放送として、どこかコンセプトがあって、それに応えていたのですが、そういうものをさらにきちんと位置づけていかなければならないと思いますので、来年度はそういうことを踏まえながら出していただきたいと思います。次なる戦略を、新しい映像技術や演出方法、ダイナミックな編成に挑戦するような、新しいテレビ文化創造の先導的な役割を果たしたいと、資料にも書かれていますが、衛星放送のあり方は、多分、衛星放送のあり方にとどまらないと思ったので、そういうことも22年度は模索しながら執行していただきたいと思います。

 (小林委員)

 地上契約と衛星契約の関係について発言します。番組の内容を地上、衛星にまたがって変えることになると、地上契約、衛星契約を別としている今の受信料体系の検討もしなければならないと思います。これは、先ほど言った立法的な対応の1つだと思いますので、経営委員会で議論するべきだと思います。

 (勝又委員)

 少し話が戻ってしまいますが、NHKの番組で、若者に共感を呼ぶ、非常によい番組と思っているものがあります。それは、アンジェラ・アキさんの「手紙〜拝啓 十五の君へ〜」です。各中学校を訪問して、その訪問した中学校の生徒たちは、自分の人生についてその時点で考えるという番組ですが、そういう若い人たちが素直に共感をもてるキャラクターが必要だと思います。今、ある若い書道家の方が、各中学校を回って一緒に書道をしている番組も何回か見ましたが、若い人たちにNHKの番組の中で、人とともに歌や何かの活動を通じて人生を考えさせるという、ドラマなどを客観的にみるのではない、現実の生身の自分たちが考えるところがよいと思います。

 (安田委員)

 これは自分のことで言いにくかったのですが、NHKの番組が世界でどれだけ貢献しているのかという、一例をご紹介したいと思います。今、カンボジアで発掘調査をしておりまして、そこの村は盗掘で大変でした。彼らは遺跡を保存するという概念がないので、私たちが入ったところには、盗掘だらけでした。それを止めるにはどうしたらいいのかというので、NHKに番組を作ってほしいとお願いして、京都放送局で作ってもらいました。45分の番組ですが、ローカルでしか流していないので、皆さんは見られたことがないと思います。私が主役ですが、非常に感動的に作ってくれました。それを、カンボジア語に吹きかえて、その村で発掘が終わったあと、毎回見せました。3年連続してやりました。最初300人ぐらいでしたが、今は1,000人ぐらいがそれを見に行きます。そして、今では盗掘する人は1人もいなくなりました。盗掘する限り、文化財の破壊で、君たちの歴史、自分の足元を破壊するということをメインストーリーにしてもらって、番組を作りました。それは今、カンボジアで非常に有名なNHKの番組の1つとなっています。番組を作るということは、もちろん日本の若者を助けるということになりますが、海外でも、そういう意識を変えるという面で、大変大きな役割をしています。自分のことで言いにくかったのですが、つい言ってしまいました。

 (桑野委員)

 若い人の話が出ていますが、若い人と話して言えるのは、「おかあさんといっしょ」だけは、だれもが見ているということです。そういう意味では、教育テレビの重要性を実感しました。今回ありがたかったのは、今の子どもたちに合わせて時間編成を変えるということで、より子どもたちが見やすい環境になり、より近づいていけるのではないかと思います。そして、今年の地域の発信とサービスもということで、子どもたちが地域とつながっていくということもうれしいことです。また、若い人たちではないのですが、40、50代に向けて時間編成を変えるということもありました。そういう意味で、いろいろな挑戦をしていただくことが、両輪でできるのではないかと思いました。

 (小丸委員長)

 今日の平成22年度収支予算、事業計画及び資金計画の審議はここまでとしますが、明日も引き続き審議に入らせていただきたいと思います。これをもちまして、今日の全体会議を終わります。

 

【1月13日(水)】

 (小丸委員長)

 これより「経営委員のみの経営委員会」を行います。昨日、“経営委員会の意見”として、おおむね皆さん方の了解をいただきましたが、この内容でよろしいでしょうか。

−異議なし−

 (小丸委員長)

 ありがとうございます。なお、“経営委員会の意見”に補足することがあれば、全体会議でおのおのの立場で皆さんからご意見を言っていただきたいと思います。全体会議の最後に、私のほうからこの“経営委員会の意見”を述べさせていただき、議決させていただきたいと思います。

 

<会長、副会長、技師長、専務理事、理事入室>

 

4 議決事項

 (3) 平成22年度収支予算、事業計画及び資金計画

 (小丸委員長)

 これより昨日に引き続いて、第1110回経営委員会全体会議を行います。それでは、平成22年度収支予算、事業計画及び資金計画について、引き続き審議を行います。大西理事、現状の受信料の状況をお聞かせください。

 (大西理事)

 今ちょうど集計中のため、12月末の結果はまだ出ていません。訪問集金をやめて要員の一層のパワーシフトをして1年が経ち、それを早く安定期に入れるべく、支払率あるいは収納向上に向けて今取り組んでいるところです。収納は11月末と同じような状況で、10項目の追加施策については、徐々に成果が出てきているという状況だと思います。本日以降、額についても確定しますので、後日またご報告したいと思っています。

 (小丸委員長)

 10項目の追加施策の進ちょく状況ですが、下期はどういう状況ですか。

 (大西理事)

 主に、債権回収を中核に据えて、契約の開発等を含めて、文書対策、あるいは補完要員のシフトを行っています。要員についてはほぼ100%整って、それぞれの地域の中で活動を展開しています。11月末の段階では、成果が着実に出てきていると理解していただければと思います。それから、年度末に向けて、さらに未収者に対する督促も行っていますし、2月も行います。それをさらに押し上げるような形で、コールセンターを通じて「ご請求書が行きましたけれども、お振り込みのほうをよろしくお願いします」という後押しもしながら進めていきます。3月には移動期に入りますので、この移動期をどうフォローするのかというのが、NHKにとって大変大きな対応になりますので、万全の対策で臨んでいこうとさまざまな準備を進めています。

 (岩崎代行)

 まさに来年度がデジタル化の勝負だと思いますが、都心部におけるビル陰の問題がまだ十分に解決されていません。地デジの受信調査など、デジタル化に関しての進ちょく状況と、来年勝負というところでの見込みについて、お聞かせください。

 (永井技師長)

 国の事業仕分けの中で、デジタル化に対する予算も対象になりました。仕分けの時点では、デジサポの行っている業務に対しても、一部削減の指示がありました。最終的には、来年度の総務省の概算要求約900億円のうち、約30億円が削減となり、870億円程度に落ち着くだろうと聞いています。12月1日の「デジタルの日」には、総理大臣と内藤副大臣がご出席されました。来年7月に向けて、国はデジタル化にしっかり取り組んでいます。受信環境のデジタル化ですが、全体的には今75%ぐらいの世帯で環境が整っています。これは、地デジ受信機を用意すれば受信できる世帯が75%程度まで進んだということです。その中で、個別住宅のデジタル化は90%を超えていますし、集合住宅でも70%を超えています。しかし、都市部のビル陰等々をはじめとした受信障害対策共聴施設のデジタル化は、まだまだ遅れています。このため、NHKとして何かできることはないかということで、1月から3月の年度末に向けて、全部で約5万の受信対策共聴施設について、一度、全部点検することを考えています。この方策に向けて、東京周辺の一部エリアで先行調査をやったところ、われわれが把握していなかった受信障害対策共聴施設の30%程度で、すでにデジタル化が完了していることがわかりました。この調査を全部の施設で実施し、まだデジタル化が済んでいない施設がどの程度ぐらいあるのかを、しっかりとあぶり出して、国のデジサポ等々に対策を集中的に打ってもらおうと考えています。受信調査は、元来、NHKの業務ですので、それを先行してしっかりと取り組んでいます。国でも、障害対策共聴について、今まで、1戸当たりのデジタル化経費が3万5,000円を超える世帯に対して、経費補助をすることになっていましたが、この3万5,000円の条件をはずす施策も決定されています。こうした施策で、遅れている部分も進んでいくことを期待しています。来年の7月までこうした対策をやっていきますが、今年が本当に正念場になると思っています。残る時間がなくなってきましたので、新たに必要なことについては、適宜施策を要望するなどして、われわれも必死に取り組まなければならないと考えています。

 (井原委員)

 ずっと予算の審議をさせていただいてまいりまして、今回の予算の数字そのものについては折々に確認させていただき、私なりに納得してまいりました。ただ、これまでも予算のことを考えながら、予算というのは事業計画と表裏一体の関係で基本的にはなければならなくて、組織の諸活動を計画して、統制し、あるいは管理するために、利用できる管理ツールであるべきだという思いがどうしてもぬぐえません。NHKの予算というものの持つ枠組みは十分承知しつつ、その枠の中でもなお効果的な管理ツールとなるような、そんな工夫をお願いしたいと思います。それからもう1つは、予算そのものの執行はもちろん効果的にやっていただかなければならないのですが、現在のNHKをめぐるさまざまな意味での厳しさを考えて、予算の執行を粛々とやるということに決してとどまることなく、それを越えて「制度のあり方」、例えば“受信料体系のあり方”も“副次収入のあり方”も、制度であるとか枠組みであるとか、そのあり方も同時にご検討いただきたいというのが、ずっと議論をしながら思ってきたところです。恐らく経営委員会も一緒に考えなければならない側面は多々あるとは思いますが、執行部においてもぜひ、そのようなことに留意していただきたいと思います。例えば、昨日、「NODについては今の枠組みの中で一生懸命工夫をしており、これをビジネスモデルとしてやるためには、もう1つステップが必要である」というようなお話でした。そうだとすれば、そういうステップもあわせて考えていただきたいと思います。

 (大滝委員)

 今の井原委員の意見とほとんど同じですが、今回、予算の組み方やつくり方をやっていく時期が、いつも10月頃になってからステップ・バイ・ステップで進めています。この時期自体が少し遅いのではないかと思います。というのは、形式的に予算を組むということだけならいいのかもしれませんが、今、NHKが直面している課題を見ると、受信料収入はもちろん、それ以外にも人事の問題とか、グループ経営の問題とか、トータルコストの問題とかというものがあり、それらは、事前に準備しながらやっていく、時間的な余裕も必要ではないかと思います。これは執行部の皆さんだけではなく、経営委員の側でも8月とか9月ぐらいからいろいろな準備をしながら、勉強会なども含めてやっていますが、なかなか予算の編成に合わせてぴたっとリンクするという体制にはなっていないのではないかと思います。もっと実態に深く切り込むような形の予算編成のあり方というものを、少し抜本的に考えていったらいいのではないかというふうに感じました。これは1年間でできることではないので、これからの予算編成のあり方ということについては、何度かトライアル・アンド・エラーをやらないといけないと思いますが、ぜひそういうことも視野に入れて、一緒にやっていくということを、もっと強化していく必要があると感じていますので、よろしくお願いしたいと思います。

 (小林委員)

 今、大滝委員がお話しになった、経営委員会のほうでも検討すべき問題があるのではないかというところに大いに賛成します。予算をつくる上では、やはりNHKが抱える諸問題について考えなければならないことが多くあって、それは経営委員会で積極的に検討するということを経営委員会自身が言っていれば、それを執行部に反映していただけます。そして、それに基づいて予算もすぐにできるという点もあると思います。今お話があったように、経営委員会は勉強会と称するものをこれまで多く行ってきたのですが、経営委員は勉強するために受信料の中から報酬をもらっているわけではありません。勉強したものはそれをNHKにお返しする、NHKのために何らかの問題点を検証・検討して、何らかのいいものをつくり出すお手伝いをするということをしなければ意味がないと思います。そういう点において、これまでの経営委員会は十分ではなかったというふうに私は思っています。今後、諸問題について執行部だけではなく経営委員会のほうでも積極的に検討して、成果を出すべきだと思います。私は、予算についてはこれまでいろいろ意見を申し上げてきています。結論としても今回の予算には賛成したいと思います。ただし、先ほどの問題とも絡みますが、少なくとも昨日私がお話しした問題点については、予算の議決後速やかに経営委員会、執行部で検討していただきたいということを切実に感じております。

 (石島委員)

 私も今までの意見に大体賛成で、その辺についてはよろしくお願いしたいのですが、1つ質問させていただきたいと思います。それは、来年度の経済見通しをどのように考えているのかということです。今年、受信料の支払免除の条件を満たす世帯数を予測できなかったという話は何度も伺っているのですが、では、来年度についてはそういうことに関して、つまり国の経済状況がどう動いていくのかというような見通しがあると思いますので、そこをお聞かせ願いたいと思います。それからもう1つは、そういう経済予測みたいなことをどこで、どんな組織でやっているのかです。例えば、ある種のシンクタンクから情報を集めるとか、そういうことを継続的に検討していかなければ、公共放送として世の中の動きに対応できないのではないかと思います。もし、その辺について不足しているという状況であれば、今後、早急にその辺の充実をしなければならないと思います。

 (金田専務理事)

 放送文化研究所という組織がありますが、そこでは“経済調査”というところまで視野に入れていません。本体のほうにも調査部あるいは経済調査というようなところはありません。結局、経営企画、経理あるいは営業のほうで、いろいろなシンクタンク等が公表する経済予測から、前提とする数字を作っています。今のところ、昨年の11月に各シンクタンクが発表した経済予測は、実質経済成長率で今年よりも改善するという見通しになっています。われわれとしては、それをどのように解釈するのかということです。そのところでは、この過去5年間の景況や、平成16年度以降の不祥事が絡む収納の落ちという別の軸も合わせた上で、今回の見通しを作っています。特に色濃く関係するのは、収納の“減”の部分です。要するに、計画どおり達成するところは割と読めるのですが、景況に影響されて“生活保護世帯”の拡大に伴う“減”というところが影響します。ただ、今年は景況の判断あるいは各シンクタンクが出している数字を見れば、「去年の状況よりは少しは改善するのではないか」という前提に立っています。

 (福地会長)

 景気の見通しですが、NHKの場合には、景気変動を予算に織り込まなければならない要素は、極めて小さいわけです。例えば、借金もあまりないので、金利の影響もほとんど受けません。だから、むしろあるとすれば、受信料の未収や免除世帯が増えるという問題です。その前に、受信料の額が決まっていて、それから受信料の支払率の目標が決まっているということで、しかも3か年経営計画ということもありますので、実際に一般的な景気の動向は読みますが、そういう予算に反映させるということまではあまり必要ないと思います。民間のほうは金利の影響、為替の影響が大きいですが、NHKの場合にはそういった要素があまり大きくありません。

 (石島委員)

 今、会長がよくお話しになるような特殊な要因がNHKにあるということはよくわかります。しかし、広い意味でのマーケティングとして、社会情勢がどういうふうに移っていくのかということは、基本の知識として持つことが必要だと思います。細かい為替変動とかそういうものまでというわけではありませんが、NHKの中の組織から上がってくるさまざまな経済状況があって、それはマクロ経済だけで見通せないようなミクロの部分もあると思います。それこそ営業活動の中から上がってくるものもあるでしょうし、そういったものをまとめて、受信料対策といったものに反映させるということは、NHKのようなレベルの高い組織であれば、必ずあると思います。ぜひ、その辺もやっていただけるといいかなと思います。

 (八幡理事)

 今の経済指標ですが、基本的には経理局予算部のほうで、シンクタンクや国の各種経済指標の精査を行い、予算要求をとるときには人件費の伸び率や物価上昇率、為替など全て指示を出しています。特に、NHKの場合は調達で契約部分がありますから、全て指標をきちんと決めた上で予算要求を出しています。ある程度世の中の状況を反映させながら、それをベースにして、どちらかというと厳しいほうに指標を置くような形で予算を作っている、と考えていただければと思います。

 (金田専務理事)

 前提で押さえている数値がありますので、今持っているものをお配りするようにします。ただ、本当に収納とか予算で使うのはミクロの数字なので、モデル開発したりするだけの余裕はないと思います。実質的に、今のようなやり方でマクロの数字を押さえることで、十分ではないかという感触を持っています。それから、個別にはむしろそういう数字を見ながら番組のほうでどういうことでお役に立てるのかということは、相当押さえて考えなければならないところがあるのではないかと思っています。いずれにしても根拠がありますので、押さえた数字についてはお届けします。

 (深谷委員)

 予算を立案して承認していくということは、執行部と経営委員会との共同責任だと思っています。6,847億円のうち国内放送費が2,848億円と最大ですが、この最大の国内放送費のところに、双方がもっと深く突っ込んで議論できるようにならなければならないという意味で、希望を申し上げたいと思います。「トータルコストを代表番組に導入する」というのも1つかと思いますが、ジャンル別番組制作費でニュース・報道、スポーツ、ドラマ、教養、教育などと分けてありますが、そのジャンル別に結構性格が違っています。報道であれば、突発的に大事件や事故が起きれば何が何でも放送しなければならないため、結構支出が振れるジャンルではないでしょうか。逆に、あるジャンルにおいては非常に支出が安定していて、きちんと支出が読めるものもあります。予算編成に対して、支出が振れる部分と振れない部分がいろいろあるのではないかと思います。いわゆる制作費用とか、そういうものの投入のしやすさの度合いというものは、ジャンルごとに違うのでないか、また、ジャンルの中でも支出予測の正確さは違ってくるのではないかと思います。まずはその部分を、自分達もわかるようになっていきたいと思います。もう1つは、ニュース・報道が20.6%、スポーツは13.8%という、各編成比率があります。多分その編成比率は時代とともに少しずつ変えていくことが必要だと思います。一部の視聴者からは「バラエティーなどはやめてしまえ」とか、いろいろなご意見も出ていますが、そういう比率の正しさについても、腐心して予算を承認するべきだと思います。ぜひこの2つについて、今後もっと深い議論ができるように、各ジャンル別の支出の振れ幅とか、そういうような資料をご提示いただけないかと思っています。

 (金田専務理事)

 そういう方向で努力したいと思います。フルコストベースのデータではないということですが、経営判断として非常に有用な資料だと思います。番組レベルまで落ちると、いろいろと難しいことが出てきますが、ジャンルについては経営委員会で議論していただくような内容だと私も思っています。そういう意味では、いろいろと議論をしていただく資料については、お示ししたいと思います。一度、2年ぐらい前に番組の予算管理について経営委員の一部の方にご説明する機会がありました。その時に、実態も大分ご説明しましたし、その難しさというところもご説明したつもりでしたが、毎年1回ぐらいはそういう機会も持って、ご説明できるようにしたいと思います。昨日、「直価も標準原価計算も非常に難しい」ということを申し上げましたが、そういう実態を聞いていただけるといろいろな形で理解いただけるのではないかと思っています。もう1つは、経営委員会の方で議論をしていただくには、事業別というのかチャンネル別というのか、いわゆる普通の会社で言う“セグメント情報”のようなものについて、正しい数字を持つということが出発点だと思います。今、公開している衛星放送の数字が正しいのかどうかというと、実態数字、フルコストの数字ではないということです。今のところ累積で272億円の黒字ということになっていますが、最初の5年間の無料放送のところを入れなくても、その数字はミスリーディングな数字になっているということです。限界費用で額を決めているためにそういうことが起こる。あるいは普及のためにそういうことをしたということで、そこからもう1回考え方を変えるような時期に来ているということで言うと、事業別の実態の数字を、経営委員の方にもきちんとご理解いただくという作業が必要かと思っています。

 (野間委員)

 先ほど大滝委員から「予算検討をもっと早い時点で」というお話がありましたけれども、多分、執行部としては早くからご検討されているとは思いますが、経営委員にはある程度整理されたところで出てきますので、時期が遅くなってしまうのだと思います。NHKの予算というのは、複雑で、例えば地域局に関しての予算にしても、いろいろなところに入っていて、とても難しいと思います。昨年度、勉強会を何度かやっていただきまして、その成果は経営委員会の中でも上がってきていると思います。例えば競争入札についても、目からウロコのようなところがありました。ただ、この予算の金額について、どこまで経営委員会が踏み込んでいけばよいのかというのは、非常に悩ましいというか、難しいところがあると思います。昨年から常勤の井原委員もおられますので、どういう関係でどういうふうに切り込んでいくのか、どうすれば経営委員として責任ある予算の精査をしていけるのかというところを、もう一度、経営委員会でも検討する必要があるのではないかと思います。正確な予算の積み上げにどうかかわれるのかというところが非常に悩ましいと思います。それから、21年度の執行状況についても、経営委員会の中では時間がなかったりして、お伺いできなかった部分もあったと思います。その辺も今後検討していけたらと思っています。

 (大滝委員)

 今の野間委員のお話に、私も同感です。先ほど金田専務理事がお話しになったように、私も経営学を勉強していますが、やはりNHKの予算に出てくる数字は、普通の企業の経営の数字とずいぶん違います。ましてや、私たちのように非常勤の経営委員にとっては、パッと数字を見せられても、これが何を意味しているのかということは、普通の企業の財務諸表や財務データを見て読み取るのとは全然違うところがあって、戸惑うことが多いのです。ようやく私も2年ぐらいになってきて、少しずつわかってはきていますが、それでも予算の細かいところにどんどん踏み込んでいって、現場でこれはどうなっているのかというような対応はなかなかできません。これは私の能力が不足しているのかもしれませんが、私にとっては限界ではないかと思っています。ただ、先ほど金田専務理事もお話しになったように、NHKの中で行われている事業なり番組なりの実態というものを、もう少し把握することができるような基礎的なデータとか、データの加工みたいなものが必要です。先ほどセグメントの話もありましたが、そういうものがきちんと出てくれば細かいところはともかくとして、全体像をこれまでよりもより正確につかむことは、まだまだ可能ではないかという気がしています。ただ、これはこれまでのNHKの予算編成の仕組みであり、今すぐにそれを1年間で変えることは難しいかもしれません。しかし、会長も金田専務理事も、もともと企業のご出身ですし、そういうことは多分よくおわかりになっていると思いますので、ぜひそういうことも踏まえて少しずつ予算編成のあり方とか、管理会計のようなものを入れていって、できるだけわかりやすくシンプルに全体像が見えるという方向を目指してほしいと思います。そういう方向でいろいろな改革をしていくということを、ぜひお願いしたいと思います。

 (井原委員)

 実は私の専門は相対的には会計に近く、かつ常勤としては1年弱仕事をしておりますが、NHKの会計の全体像をつかむには、まだまだ努めなければならないものがあります。その大きな問題は2つあると思っています。1つは、予算主義ということです。いわゆる企業会計の制度そのものではありませんので、通常の企業会計の制度に慣れている人間は、なかなか難しいということです。もう1つは、基本的に財務会計的な数字で会計数値を出していただいていますが、企業の実態をわかるためには管理会計の手法というか技法が必要です。部分的には入ってきていたのかもしれませんが、管理会計的なものはまだほとんど入っていないのではないかと思います。あえて言うのであれば、NHKにふさわしい、NHK的管理会計のようなものを、これからしっかりと構築していかなければならないと思います。それがないことが、実態が分からないもう1つの原因ではないかという気がしています。ですから、企業会計基準あるいは企業会計原則にできるだけのっとってとは言いながら、最終的にはそれにのっとりきれない枠組みであるということ、そして、企業の組織や事業を計画し、コントロールし、マネジメントするための会計のあり方が、未完成という問題を感じています。その両方について、経営委員会は経営委員会なりの考え方で議論をしていかなければならないと思っています。

 (勝又委員)

 私自身は昨年3月から経営委員になりまして、いまだにこの数字の仕組みとかそういうものを十分に理解することができないわけですが、1つは経営委員会としてどこまで見るべきかということがあると思います。例えば、国内放送のジャンル別経費を説明しているページがあり、それはそれでわかりやすいのですが、この予算の積み上げが本当に適切なのかどうかというのを、はたして経営委員が判断するだけの材料を持っているのかと言えば、それは内部にいない限りはなかなかわからないと思います。それこそNHKの中のガバナンスの仕組みとして、担当理事・担当責任者がきっちりと説明できる予算の積み上げをして、必要なときに経営委員が納得のいく説明を受けられるのかどうかということが、ポイントではないかと思っています。もう1つは、経営委員が「経営計画」あるいは「予算」の中で、一体何を考えなければならないのかということです。大きなNHKの今後の方針とか、そういう中でどこをどう改革していくのか。それによって経営計画とか予算の編成のしかたを大きく変えていくべき時がくるのではないかという気がしています。それをただ執行部のほうから上げてくれ上げてくれと待っているだけではなく、経営委員会としてもこの点を抜本的に見直す議論を始めるべきではないかと思っております。

 (岩崎代行)

 先ほどの企業会計的な話とも関係しますが、来年度から連結決算が導入されるということです。当然、連結決算は管理会計、企業会計をベースとしたものになると思います。したがって、NHK本体がそのことをベースとしたまとめ方をしない限り、何の連結かわからなくなります。しかし、子会社は全部株式会社で民間企業と同じですから、そういう意味で来年度から企業会計的な観点をかなり強めた形で見ざるを得ないと思います。今のNHKの予算そのものは本体だけかもしれませんが、ものの考え方として連結として子会社を含めたトータルとしていかに強じんなものになるのかという、そういう考え方が入ってこないと、結果としてあまり意味がありません。将来的なあり方も含めて、NHKの子会社を含めた全体像が見えるような形で、次に生かしていく必要があると思います。

 (桑野委員)

 私も経営委員になって1年ですが、どこまで経営として見ていくのかといったときに、経営委員会の中でどこまで話をしていくのかを考えていく必要性があるのではないかと思っています。ただ、この1年間、本当に判断できるのかと言われたときに、その自信がない私もありますし、勉強会などでもさまざまな説明もいただきましたが、それが自分の判断材料になるのかも含めて、経営委員会の中でやはり考えていく必要性があるのではないかと思いました。

 (飛田委員)

 計画には賛成いたします。ただ、受信料を今後どうやって増やしていくのかを重点的に、集中的な形でやっていただきたいと思います。

 (勝又委員)

 受信料収入の件で、21年度の見込みが6,445億円で、予算は6,490億円です。そうすると約45億円まだ足りません。さらに22年度60億円ぐらい上積みするとなると、約100億円の受信料をこれから増やしていかなければなりません。そうするとその100億円を達成する可能性がどのくらいあるのかということです。1月の時点でも45億円足りなくて、これから3か月でそこを埋めるということはなかなか難しいでしょう。どう考えれば、来年度6,550億円を達成できるのでしょうか。

 (金田専務理事)

 21年度45億円の下ぶれの見込みを踏まえて、それを来期キャリーオーバーして105億円ということで、増収を図るということを今考えています。必達だと思っています。

 (大西理事)

 ベースは3か年経営計画で3年後には75%にするということです。この中で、先ほどの事業計画に書いてある総数の増加、衛星の増加、未収削減を確実にやれば、6,550億円は達成します。もう1つ営業に課せられていることは、経費を掛けないでやるということがあります。ですから、さらに効率的な仕事をしていくという中で言えば、相当努力が必要だということで、今回の予算も含めて、改革をさらに進めていくことをベースにやっています。支払率が大きく落ちて一時期は70%を割るという状態から、3年後には75%、5年後には78%という目標を立てて、そこに向かって来年度は3か年経営計画の2年目です。スタートする前にできるのかと言われて、「できません」と言えればいいのですが、そうもいきません。受信料収入が事業計画のベースになっていますから、支払率を上げていくということです。先ほど経費の話もありましたが、免除の状況も今の公的扶助を受けている世帯については大きく変化しないだろうということで、経営計画にさまざまな数値を盛り込んでいます。

 (小丸委員長)

 会長にご質問したいのですが、平成21年度の最終四半期はあと実質2か月半ですが、今年度の受信料収入の目標達成が非常に厳しい状態です。それから、16年7月に不祥事が起きて、その翌年度の受信料収入が6,024億円となり、何とか今、ここまで来たわけですが、NHK全体として少し慣れが生じてきているのではないか。ある面で言えば、少し引き締めをやっていかなければならないと思います。受信料のいろいろな制度の見直し等があって、思うように収入が上がらないということならば、支出の面においてもう一歩踏み込んで改善・改革をしていかなければならないのではないか。特に人事制度、年金も関根理事がずいぶん努力されて、いろいろ改革されました。しかしながら、年金では確定給付がまだ60%残っているわけです。本来ならばこんなに積立不足があるならば、一般の企業であればもう解散に持っていきます。しかし、実質の赤字がずっと続いているわけではないので、そのあたりの改革をもっと早めにやっていかなければならないと思います。21年度はあと少し残っていますが、点数にしたら会長は何点ぐらい付けますか。

 (福地会長)

 マスコミからも「改革は登山だったら何合目か。点数は何点ですか」とよく聞かれますが、私は点数をつける立場ではなく、点数をつけるのは経営委員会の皆さんと視聴者の皆さまだと思います。目標に向かってやっていくだけです。それから、改革については「満点」というのはないと思います。お客様満足も改革も、エンドレスの課題があります。ゴールのない駅伝競争だと思っています。私の会長就任からこの3年間の一番大きなミッションは、「組織風土の改革」と、もう1つは「3か年経営計画を立てる」ことです。今、その1年が終わったところです。その中で、経営委員会からの宿題になっています「3か年経営計画が終わった後、700億円をどうして稼ぎ出すか」ということがあり、それは私にとっては一番大きな課題です。私の任期はそのときまでありませんが、そういったガバナンスが進む“目覚まし時計”を作っていくのが、私の仕事だとかねがね言っています。「受信料の10%還元」は受信料収入の増だけで賄うことは不可能です。一時的にはできます。今のところは支払率を上げていくことによって、受信料収入が増えていく可能性はあります。しかし、2015年からは対象となる世帯数が減少に向かいます。そういう中では、おそらく10年も経ったら減少しているのではないかと思います。そのときに、その後も受信料の10%カットを続けていけるのかというと、3年か4年は無理をすれば貯金もあるので可能です。しかしその後に、受信料収入の増でこれを補っていくことは絶対に無理であり、根本的に法制度の変更まで入れて考えていかなければならないだろうと思います。また、経営委員会の意見の中で、組織、人事制度にふれられていますが、3か年経営計画の初年度として、私は人事の改革に一番軸足を突っ込んでやってきたつもりです。年金改革はもちろんそうですが、関連団体とのことも絡んできます。私がNHKに入って最初に気になったのは、関連団体との連結決算が、まだ年間の決算でしかできていないことでした。聞いてみると、システム自体が違うからということで、それでも年間の決算は何とかできる範囲でやっていますが、関連団体のトップから「何とかシステムを合わせてほしい」という痛切な声がありました。これは多額の経費がかかるから、優先順位からするとあとになりますが、今できる範囲内で半期の連結決算にも取り組んでいきたいと思います。今の時代、半期の連結決算をしていないグループなんてありませんから、それは言われるまでもなく当たり前のことです。それと年金の問題がありましたが、両方とも何とかできるようになってきました。しかし、関連団体との問題で一番大きいのは人事の問題です。57歳になった人を転籍させていますが、これを変えようということです。全て止めてしまうと関連団体も人材が育っていかないから、向こうが求めてこちらも出していいという人材については、転籍させていきます。これから先、本体の人が少なくなっていくときに、57歳でどんどん出していったら本体は大丈夫だろうか。本体に必要な人材は、本体に置いておいたらいいのではないかということで、本来であれば去年転籍の年齢だった人でも、そのまま置いておくことにしました。それから、評価制度については公平な評価をするということで、実際に取り組んでいます。キャリアの複線化は、これは人材育成のほうですが、幅広い人材を育成するために、同じ分野の中で仕事の幅を広げるということに取り組んできています。採用の問題も変えてきました。東京ばかりで採用する必要はないし、今、地域の時代と言っているので、地域採用を増やしていけばいいと思います。事実、地域からの採用も増やしてきました。そういった中で人事の問題については、少なくとも初年度としての問題については手をつけてきたつもりです。年金改革の問題ですが、一応の時期は突破できたと思っています。これから先の課題はありますが、少なくとも3か年経営計画の中でやらなければならない部分については、そのレベルのことはできてきたと自覚しています。点数をつけるのはご勘弁をお願いします。点数は皆さんのほうから評価の形でついておりますから、私は自覚しておりますが、そういった段階です。

 (小丸委員長)

 会長の思い、経営のスタンスについては、今のお話を聞いて大体の感覚は受け止めました。各理事の方も会長に協力していただいて、垣根を越えた改革をやっていただきたいと思います。それでは、22年度予算についての議決に当たって経営委員会の意見を取りまとめましたので、ここで述べさせていただきます。「急激な経済状況の変化等により、受信料収入が3か年経営計画で想定した水準を下回っており、速やかに効果的な施策を打たないと経営計画で策定した収支構造の実現が困難になると認識している。そのため3か年経営計画の2年目にあたる平成22年度については、以下の点に留意して、着実に業務を遂行し、その状況を四半期ごとに報告するよう求める。1.営業対策を効果的、機動的に展開するとともに、受信料収入の現状を全職員で共有し、全協会をあげて増収対策に取り組むこと。経済状況の変化等が受信料収入に与える影響については、常に検証・分析を行い、即時に営業対策に反映させること。2.支出にあたっては、執行段階でさらに精査するとともに、市場実勢価格を反映させるべく競争契約を一層推進すること。また、そのための推進体制の整備を行うこと。放送部門で開始したトータルコストによる管理手法を他部門にも展開するとともに、23年度予算編成からできる限り反映させること。3.将来にわたって安定的な収支構造を構築するため、3か年経営計画に掲げた構造改革の各項目の検討を早め、実施すること。特に組織・人事制度の抜本的な改革やグループ経営の最適化に向けては、関係部門が連携して検討する体制を整えること。また、年金制度については、今後も景気動向を注視しつつ、定期的な点検・見直しを行うこと。4.3か年経営計画の遂行および将来的な経営課題について、経営委員会と執行部との間で早期に議論・検討を開始すること。」以上4点を要望したいと思います。それでは皆さん、議決したいと思いますがいかがでしょうか。

−異議なし−

 

 (小丸委員長)

 この件については議決されました。次に、井原委員から報告があります。

 (井原委員)

 昨年4月14日開催の第1092回経営委員会で、4月1日から常勤の経営委員兼監査委員を務めるようになりましたことに関し、外部の兼務について、常勤の委員として業務に支障のない範囲で参加することをお認めいただきました。この度、私の地元である高松市自治推進審議会委員を合わせてお認めいただきますようお願い申しあげます。なお、本審議会は、高松市自治基本条例に基づき、検証のため設置されるもので、原則として年1回、最初の委員会は平成23年3月開催予定と聞いています。また、先にお認めいただいている6件のうち、1件は来月終わることになっています。

 (小丸委員長)

 よろしくお願いします。

 

 

 以上で付議事項を終了した。

 

 上記のとおり確認する。

 

 平成22年1月26日    

小 丸 成 洋

井 原 理 代