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平成18年12月26日
NHKコンプライアンス委員会


NHKコンプライアンス委員会の第一次答申の公表について

NHKコンプライアンス委員会(委員長 八田進二 青山学院大学大学院教授)では、本年9月以来、経営委員会からの諮問内容である「NHKのコンプライアンス抜本対策(含む全部局業務調査)に対する評価と提言」に即して、実地ヒアリング等を含む複数回の審議を行ってきました。今般、当委員会における、中間段階での第一次答申がまとまり、経営委員会に提出いたしましたので、併せてここに、第一次答申を公表し、広く皆様のご感想ないしはご意見を求めることといたしました。当委員会は、皆様からのご意見等も踏まえつつ、今後、本諮問内容につきさらなる検討を行い、できるだけ早い段階で、第二次答申、さらには最終答申の公表を行いたいと考えています。

今般公表の第一次答申についてご意見等がありましたら、平成19年1月26日(金)17:00(必着)までに氏名又は名称、住所、所属などを付記の上、郵便、FAX、メールにより下記にお寄せください。ただし、電話によるご意見はご遠慮願います。


(お知らせ)
上記のご意見等の受付は、期日が到来したため締め切らせていただきました。皆様からお寄せいただいたご意見は、今後の答申作成のご参考にさせていただきます。ありがとうございました。

(平成19年1月26日)


NHKコンプライアンス委員会 第一次答申
平成18年12月26日

NHKコンプライアンス委員会
委員長     八田 進二
委員長職務代行 下河辺和彦
委員      秋山 をね
委員      上野 正彦

 コンプライアンス委員会は、9月26日の設置以来4回の正式会合のほか、職員等関係者との意見交換や、委員間論議を各数回行い、経営委員会からの諮問内容である「NHKのコンプライアンス抜本対策(含む全部局業務調査)に対する評価と提言」に対して、以下のとおり「第一次答申」をまとめ、本日、経営委員会に提出した。

1.現状認識と問題意識

  • NHKは設立以来、今日に至るまで、視聴者および国民に最も身近な放送局として、その社会的任務を遂行するためにさまざまな努力を重ねてきている。しかしながら、一般に、肥大化した組織に見られるように、平成16年7月に発覚した芸能番組プロデューサーによる経理不正事件を契機とする複数の不祥事等が明らかとなり、これまで築いてきた信頼を大きく失墜させることとなった。その後、全社的な視点にたっての種々の改善策を講じてきてはいるものの、いまだ十分な成果を見届けることができず、結果として、受信料の不払問題等が未解決の状態にある。新生NHKの構築に向けた改革の道のりは極めて厳しい状況にあると捉えられる。
  • 視聴者のNHKに対する批判には、経理・業務管理面での不適切な処理に対する糾弾、番組の内容等に至るNHKの日常的な業務運営や組織体質に対する疑念、さらには、受信料の支払契約に係る不公平感等に対する不満など、複数の要因によるものがあるように思われる。したがって、NHKが、NHKという事業体に対する出資者ともいうべき視聴者の信頼基盤を確かなものとするには、経理・業務の適正化(不正の撲滅)と視聴者志向の組織体質への転換を図り、「受信料の適正かつ効果的・効率的運用」を実現していくことが何よりも重要なことである。
  • コンプライアンス委員会としては、NHKの既存の仕組み、施策および体制のどこに問題が潜んでいるのか、あるいは、NHK構成員としてのすべての役員および職員の意識に緩みないしは甘えはないのか等、すべてを原点に戻して改革のための原因究明を行うとともに、実効性ある内部統制システムの構築に向けた提言を行うことを、今般の最大の課題としている。

2.評価・提言の方向性

(1)トップマネジメントのリーダーシップの強化について

  • トップマネジメントである会長以下執行部は、NHKに課されている社会的使命(ミッション)を明確に認識するとともに、リーダーシップを発揮して、NHKの現状に対しての危機意識を全役職員に示すことで、役職員一丸となった改革のための取り組みを実践することが喫緊の課題といえる。併せて、現在のNHKの仕組み、施策および体制がどのように機能しているのか、各業務部門縦割りの弊害を除き、会長および理事が自ら直接報告を受け、指示ないし指導を行うなど、組織横断的な風通しの良い経営が推進される環境を構築することが求められる。

(2)モニタリング態勢の強化について

  • モニタリング機能は、トップマネジメントの管理ないし統制機能について補佐するだけでなく、独立的視点から業務執行そのものを評価するものであり、健全かつ有効な組織環境を構築するために不可欠なものである。現時点でのNHKにおけるモニタリング態勢は、複数の不祥事等を防止できなかったことに鑑みて、十分な態勢にあるとはいえない。したがって、健全な組織の構築を目指して、機動力と会計知識等の専門性を備えたモニタリング部門の再構築が必要である。同時に、現在、監査室、コンプライアンス室、経理局(中央審査センター)など複数あるモニタリング部門の役割・責任を明確にし、相互の重複も排除し、各々の職務遂行状況を適切に評価していくことが緊急の課題である。
  • 内部論理優先の思考ないし行動を改め、視聴者と真正面から向き合い、NHKすべての関係者に自ら説明責任を果たすことが求められている。当面は、第三者機関の活用等、外部の経営監視を強化することで自律的マネジメントを確立することが求められる。
  • なお、公共放送の特殊性を考えた時、国でも政府でもない中立的機関として、経営委員会がより一層リーダーシップを発揮し、NHKへの監視・監督にあたることが極めて重要である。

(3)全部局業務調査について

  • 現状を危機的状況と認識し、本調査に踏切ったこと自体は評価に値する。但し、この調査のために投入された資源と手法に鑑みて、その効果は限定的であり、また局所的なものと解される。
  • なお、この全部局業務調査の最終結果については、当該調査報告書の内容を踏まえ、コンプライアンス委員会としての評価は、再度行うこととする。

(4)組織風土と職員意識について

  • 報道、番組、技術等部門間の縦割構造は極めて弊害が大きく、NHKの組織全体の円滑な意思疎通を遮断している側面がある。したがって、早急に、これを是正する方策を検討する必要がある。
  • NHKが公共放送として自らの編集権や創造性を重視するのは当然である。但し、これらはコンプライアンスや受信料の効果的・効率的運用といった原理・原則を遵守してはじめて享受できるものと理解することが大切である。
  • コンプライアンスマインドの醸成、視聴者志向に根ざした組織風土の育成、組織全体にわたる公平感の浸透等、この機に、全役職員に対して、一丸となって働くことのインセンティブを与えるシステムや人事面での公平な処遇システムについて全社的視点から見直していくことが求められる。

(5)コンプライアンス態勢の再構築に向けて

  • 基本的なルールおよび手続の明確化と、その公平かつ厳格な運用が重要であり、また、これらを‘見える化’し、役職員の誰もが明確に理解し、かつ実践に移すことが求められる。
  • 公共放送の価値を高める観点からは、内部統制の基本的な枠組み(通例、COSOの内部統制フレームワークと称されているもの)を導入することは有意義である。但し、それを実効性あるものとするためには、トップマネジメントの側における意識改革、必要な経営ないし組織改革および人事ないし業務の改革、さらには、規定やルールの見直し等が並行して達成されなければならない。
  • なお、NHKにおける、情報公開と説明責任をより一層強化し、NHKの行う事業の透明性をさらに高めることが期待される。

3.結び

  • 以上の中間報告を一言でまとめると、「NHKは、今こそ、公共の電波を守るとの使命感を持って、過去の悪しき慣習および慣行と決別し、最大の顧客である視聴者と真正面から向き合い、視聴者のためにいかなる価値を提供できるのかといった課題に対して、明確な回答を出すための大改革を断行すべきである」といえる。
  • 今回の報告書は、あくまでも中間的な位置づけであり、NHKの改革に向けた提言の一里塚に過ぎない。したがって、コンプライアンス委員会は、次なる第2ステップに向け今回指摘した事項のフォローアップを行いつつ、NHKのコンプライアンス対策(含む全部局業務調査)の検証と評価を進めていくものである。同時にまた、NHKの進むべき方向性や、そのために必要な施策についても、可能な限り具体的に提言していく予定である。
  • なお、コンプライアンス委員会が設置された後も、職員が摘発・逮捕されるといった社会的、倫理的に問題のある事件が発生しており、いまだ一部の職員に規律の弛緩が見られる。
  • しかしながら、コンプライアンス委員会委員が分担して行った現場での実態調査等を通じて得た感想として、極めて厳しい状況下に置かれているNHKではあるが、そこで接した、ほとんどの職員にあっては、公共放送としての社会的使命の達成に向けて、各持ち場の業務に誠心誠意務めており、新生NHKを達成する気概を忘れてはいないといった光明を見出しえたことを、コンプライアンス委員会の委員の総意として特に記しておきたい。

 

以上