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「NHK経営計画2018-2020年度修正(受信料値下げ)」経営委員長・会長記者会見

 

平成30年11月27日(火) 石原委員長、上田会長

 

【石原委員長】

 本日、経営委員会は、執行部からの提案どおり、受信料の値下げを前提に平成31年度予算を策定することを了承すると共に、「NHK経営計画(2018‐2020年度)」における視聴者還元の内容について、4つの負担軽減策に加え、受信料の値下げを加えるよう修正することを、全会一致で議決しました。
 受信料値下げの検討にあたっては、昨年12月の最高裁判決や営業努力により、現経営計画の収支計画を大きく上回る収入が確保できる見通しとなっていること、支出面でも4K・8K放送やインターネット活用業務など新たなメディア展開と経費の見通しに一定のめどをつけ、さまざまな経費削減を盛り込んでいること、さらに、テレビ保有率や世帯数など、社会情勢の変化を考慮した長期的な見通しも踏まえたものとなっていることなどを確認しました。その結果、今回執行部が提案した受信料の値下げは妥当なものであり、中長期的に見ても、NHKが公共放送・公共メディアとしての役割を果たしていくことができると判断しました。
 一方、「放送と通信の融合時代の公共放送と受信料制度」や、「既存業務、契約収納活動の抜本的な見直し」など、継続して議論すべき課題もあります。これらのことも踏まえ、受信料値下げの方針を認めるにあたり、お手元にお配りしている「経営委員会見解」を、経営委員会の総意としてまとめました。
 今回、受信料値下げの方針を認めましたが、執行部には、引き続き、現経営計画を着実に実行すると共に、NHKおよびNHKグループで働くひとりひとりが公共メディアに携わる人間として高い倫理観を持ち、重い社会的責任を負っていることを意識して取り組んでいただくよう、改めて強くお願いしました。
 経営委員会としても、執行部が受信料の重みを肝に銘じ、視聴者のみなさまの信頼に応えられているか、厳しく監督してまいります。

 

【上田会長】

 本日の経営委員会において、現3か年経営計画の期間中に値下げを実施することを盛り込んだ計画の修正を議決していただき、値下げを前提に来年度予算を策定することを了承していただきました。経営委員会の見解を重く受け止め、役職員一同、誠実に対応してまいります。
 私たちは、中長期の事業計画や収支の見通しなどについて、真剣に検討を重ね、受信料の値下げを実施すべきと判断しました。
 値下げを含む還元をすべて実施した場合の規模は、単年度で422億円、2018年度の受信料収入見込みの6%相当にあたります。
 公平負担の徹底に取り組んだことに加え、昨年12月の最高裁判決以降、自主的に受信契約を申し出る方が増えていることなどにより、計画を上回る収入を確保できる見通しになっています。一方で、放送センターの建て替えなど、大型の支出に対する備えに一定のめどが立ちました。
 今後、世帯数が減少に転じ、テレビ保有率も減少傾向となるなど経営環境は厳しさを増します。それを見据えつつ、放送と通信の融合が進む中でNHKが果たすべき「公共の役割」、中長期の事業計画や収支の見通しを真剣に検討した上で、収支相償の原則にのっとり、いまできる最大限の値下げを決めました。
 なお、来年度の予算・事業計画に関わる営業関連指標や収支計画は予算議決後に公表します。
 値下げの方法と時期です。トータルで、2018年度の受信料収入見込みの4.5%程度を値下げします。
 可能なところからただちに実施するため、消費税率引き上げが行われる2019年10月に受信料額を改定せず、地上契約と衛星契約を実質2%値下げします。
 そして、2020年10月から、地上契約と衛星契約を2.5%値下げします。
 いずれも、受信料の収納システムの改修対応を踏まえての実施です。
 これらを実施した場合の値下げ相当額は、「継続振込・2か月払」の場合ですと、地上の月額は59円、年間では708円、衛星の月額は102円、年間では1,224円となります。
 「値下げ相当額」という言い方をしたのは、来年実施する値下げは、受信料額を改定しないため、消費税率が2%引き上げられた場合の税込受信料額との差分を、実質的な値下げ額としているためです。
 値下げを含む還元をすべて実施した場合の規模は、値下げが年間328億円、すでに一部実施に移している4つの負担軽減策が94億円、あわせて単年度で422億円で、2018年度の受信料収入見込みの6%相当となります。
 経営計画の修正議決を受けて、受信料の値下げを盛り込んで策定する来年度予算は、経営委員会での審議・議決を経て、国会のご承認を求めることになります。
 NHKは、放送を取り巻く環境が大きく変化する中にあっても、視聴者のみなさまからの受信料を大切な財源として、公共メディアへの進化をめざします。値下げをしても、信頼される「情報の社会的基盤」の役割を、しっかり果たし、6つの公共的価値の実現に努めてまいります。
 豊かで良い放送をお届けすることはもとより、間もなく本放送が始まるBS4K・8K放送のコンテンツ強化、2019年度からの実施を希望している常時同時配信を含むインターネット活用業務の充実、情報セキュリティーの強化、災害に備えた放送機能の強化など、公共放送・公共メディアNHKに対する、視聴者のみなさまからの期待にお応えしていきたいと考えています。
 今後、経営環境が厳しさを増す中で、受信料の値下げを実施することは、平たんな道ではありません。であればこそ、私は、この時を「改革の好機」と捉えたいと思います。
 将来を見据えて、NHKグループ一体で、すでに着手している抜本的な業務改革を加速させます。新規の重点業務にあてる経営資源は、既存業務の見直しを徹底することによって生み出し、効率的・効果的で持続可能な業務体制を築きます。事業支出・事業規模については、適正な水準に抑えて管理することを基本としていきます。役職員一同が、その目的と危機感を共有して、一丸となって改革にまい進していく決意です。
 「変えられるもの」と「変えられないもの」とをしっかり見極め、「変える勇気」と「覚悟」をもって、取り組んでまいります。
 そして、すべては、視聴者のみなさまの信頼が基本です。このことを肝に銘じて、受信料の価値をさらに高められるよう、みなさまの期待に応えていきます。

 

 

【以下、質疑応答】

<値引き後の受信料額について>

Q.値引き後の受信料額はいくらになるのか。

A.(上田会長) 来年の10月に予定通り消費税が2%上がると、本来であれば2%の消費税を現行の受信料に対して、足したもので新しい受信料体系が決まる。しかし、この2%相当分はごく軽微なシステムの改修で済むことから、約束した値下げをできるだけ早期に実行したいということで、この分は据え置くこととした。したがって、2%相当分を負担すると、年間328億円のうちの135億円がこの分に相当する。その後システム改修をしっかりと行ったうえで、翌2020年10月に地上契約と衛星契約を2.5%値下げするが、これが193億円に相当する。これはフルで効いてきた時の金額なので、例えば来年10月から実行すると、正確に計算すると少し違った数字になるが、65億円というのが2%相当額の半年分ということになる。2020年度の値下げ額は、223億円を見込んでいるが、これがフルで効いてきた135億円と、それにこの2.5%追加で値下げする分の半分ぐらいになる。ただし、この数字は毎年受信料収入が上がっていくこともある程度想定して計算しているので、億単位の小さなところでは数字が合わないかもしれないが、実際にはこのような計算をしている。

A.(松坂理事)4.5%の値下げをした場合の値下げ相当額は、地上契約が月額59円、衛星契約が月額102円となるが、その場合の来年の10月に料額を改定せずに据え置く分の値下げ相当額は、地上契約が24円、衛星契約が42円となる。残りの地上契約の35円、衛星契約の60円が、2020年10月の追加の値下げ分ということになる。

 

Q. 口座・クレジット払いの方が8割を占めているが思うが、値下げ額はいくらになるのか。

A.(松坂理事) 口座・クレジット払いの場合も値下げ相当額は同額である。具体的な値下げの額になると、さまざまな支払いの形によって整理・確定していく必要があり、いろいろな割引などもあるので、あくまで現時点での目安として、(値下げ額は)地上契約は月額59円、衛星契約は月額102円ということを申し上げている。

 

 

<2年前の値下げ提案との違い>

Q.2年前の値下げ提案は継続審議としたが、今回決定した理由は。

A.(上田会長) NHKを取り巻く経営環境としては、世帯数は、国立社会保障・人口問題研究所の推計では2023年をピークに減少に転じるとみている。加えて今後、テレビ保有率も低下していくとみている。このように、経営環境が厳しさを増す状況を踏まえて、中長期的な収支の見通しを総合的に勘案した結果、経営として責任を持って最終的に判断したものが今回お示しした、値下げを含む還元の規模ということになる。還元の規模としても、2年前の時に提案した受信料値下げと比べると、およそ2倍になる。前回、平成24年に実施した、7%値下げした規模と比べても、絶対額としてはそれと近い規模となっている。また、過去の事業収支差金の規模と比較しても、今回の還元はそれを大きく上回る規模になっており、今回お示しした内容は経営として責任を持ってお示しできる現時点では最大限の規模だと考えている。値下げをしても視聴者・国民から期待されている公共放送、公共メディアとしての役割はこれまで通り、きちんと果たしていきたい。
 ここ数年、収支差金はある程度まとまった数字になっているが、100億円から200億円の規模である。平成26年に396億円と、突出している年があるが、これは保有していた不動産の売却で150億円くらい利益が出ていたためであることから、だいたい100億円から200億円規模である。その中でフルで(値下げが)効いてくると、負担軽減策を合わせて年間で420億円強の還元を行うことになり、私どもにとっては、将来的な環境の変化や厳しい環境を勘案すると、今の時点では、還元できる最大限の規模をご提示していると理解している。

A.(石原委員長) 2年くらい前に値下げの話があった。その時に、経営委員会としては、受信料値下げによって、中長期的にNHKの業務がどうなるのか、収入や経費の見通し、とりわけ放送センター建て替えや、東京オリンピック・パラリンピック、放送と通信の融合、また4K・8K放送の開始など、従来とは違う大きな必要経費が予想され、それが明らかにならない中において、受信料値下げというのは大変問題があるのではないかということで、当時は反対を申し上げた。そういった中でも、余裕があれば視聴者のみなさま方には還元しなければならないということで、4項目の負担軽減策を実行した。その4つの合計で94億円になる。最高裁の判決や、営業活動をしっかりやったこともあって、受信料収入が堅調に上がってくるようになった。今後、世帯数やテレビの保有率の減少も想定されるが、中長期的な見通しが出され、今回の値下げを判断した。422億円という額は大変大きな数字であることは間違いない。ひとりひとりに還元される金額は、1,000円ちょっとかもしれないが、NHKとして年間で422億円という金額は、大変大きな、現状ではギリギリの数字だと見ている。

 

Q. 2年前に値下げの議論があったときも同様の議論をしていた。当時、すでに1,700億円の建て替えの積み立てはできあがっているということだった。最高裁判決の後に受信料が増えたとは言え、前回とどれほど違うのか。

A.(上田会長) 前回、私は中長期的な収支の見通しをしっかり見極めた上で、足元のところでゆとりがあると言うだけで、受信料の値下げに手をつけるのはまずいとのことから、反対した。しかし、去年の最高裁判決以降、公平負担に基づき、受信料収入の支払率が約1%ずつアップしている。これが収入の面で、ある程度安定的に推移してきていることがはっきり見通せた。支出の面では、まだ常時同時配信を前提とした予算は組めないが、試験的提供でいくつかやってきたので、だいたいどれほどの費用がかかるかの見通しがついてきた。また、東京オリンピック・パラリンピックの関連経費もある程度見通しがついてきた。さらに、建て替えの費用はわかっていたが、4K・8Kも総務省から提示されたロードマップに基づいて、どの程度コンテンツを作り、どのように取り組んでいくのか、前の時点でははっきりしなかったが、今の時点ではっきりした。そうした将来的な収入・支出の中長期の見通しが付いたところで、改めて検討したところ、前回は約3%・200億円規模での議論がなされていたが、それを倍にするくらいの金額の値下げが可能となったということ。中長期的な見通しをしっかりと踏まえた上で、還元できる最大限のものを提供しようという決断にいたった。

 

 

<常時同時配信、新たな受信料制度について>

Q.受信料の値下げにより、常時同時配信に関する法改正を認めてほしいということか。また、経営委員会見解で、「新たな受信料制度の研究は継続していくべきだ」とあるが、ネットだけで見る視聴世帯から、常時同時配信を機に新たに応分の負担を取りたいということが含まれているのか。

A.(上田会長) 諸課題に関する検討会はもちろん念頭にある。しかし一方で、公平負担に取り組んだことに加えて、委員長からも話があったように、最高裁の判決が出て、自主的に受信契約を申し出る方が増えたことなどで、計画を上回る収入を確保できる見通しが立った。それから支出でも、放送センターの建て替え、4K・8K、東京オリンピック・パラリンピックなど、大きな支出が想定されることのめどがかなりついたことも大きいと思う。繰り返しになるが、還元額の422億円というのは、受信料収入がおよそ7,000億円なので、約6%に相当する。したがって、前回、平成24年に7%受信料の値下げを実施したわけだが、6%という数字は、それに匹敵するぐらいの規模だと考えている。しかも受信料収入額は増えているので、母数のほうも大きくなっている。
 二つ目の質問については、(常時同時配信は、)当面、受信契約を結んでいただいている方に対する「補完サービス」ということでスタートする。将来的には、引き続き、放送と通信の融合が進む中での受信料の全体のあり方というのは、当然検討の課題としては頭の中に入れておく必要がある。きょう、経営委員会の見解としてちょうだいしたので、しっかりと受け止めて、経営委員会ともよく相談しながら、私どもとしても対応していきたいと考えている。

 

Q.放送と通信の融合が進む中での、公共放送の役割はどうあるべきか。

A.(上田会長) 情報の社会的な基盤として、民主主義の発展や、文化の向上などに関して、しっかりした対応をしなくてはならない。原点になるのは、通信と放送の融合があっても、公共的価値を常に念頭において経営のかじ取りをする必要があるということであり、このことを肝に銘じている。今回の経営計画でも提示した6つの公共的価値を常に意識しながら、放送事業を取り巻く環境が変わる中で、いかにして提供しなくてはいけない情報、コンテンツをみなさまにお届けするか。現在の放送事業を取り巻く環境の中で、そういった役割をしっかりと果たすためには電波だけではなくて、補完的に通信も使っていく必要があると考えている。

 

 

<中長期収支見通しについて>

Q. 中長期的な見通しというのは、まさに経営計画でたてるものではないのか。去年、経営計画を作ったときには、見通しがたたなかったということか。

A.(上田会長) 経営計画では2020年までたてていたが、今回はさらにもう少し先まで見通したということ。収入面でいうと、最高裁の判決の影響は非常に大きかったと思う。経営計画をたてたときには、想定していなかった。このような判決が出たときに、実際に収入にどういう影響を与えるかということは、必ずしもわかっていなかった。このあたりは、大きなファクターになろうかと思う。

 

 

<適正な事業規模について>

Q.事業規模を適正な水準に抑えて管理することを基本としているとのことだが、7,000億円くらいがNHKの規模として適正であるという考えか。

A.(上田会長) この先、大きな支出が見込まれる4K・8K放送の開始、東京オリンピック・パラリンピックなどを乗り越えたら、5年から6年先を見据えても、今のところそれほど大きな支出は見込まれていない。ある一定の水準のレベルで、最高のサービスを提供できるようベストを尽くさないといけないわけだが、それくらいの水準が、民放も含めた日本における放送事業の二元体制や、そういう中でバランスがとれるレベルかと考え、今回の還元額の絶対的な水準を算出している。

 

Q. 値下げ額と軽減額を合わせると330億円ほどの還元になる。支出は7,000億円前後ということだが、それを適正規模と捉えているという理解か。

A.(上田会長) 中長期的な収支見通しの中で行っている。一時的には収支相償が困難になり、財政安定化のための積立金を取り崩していかないといけない。収支差金が出ても200億円、300億円ぐらいを想定しているので、中長期的には支出も抑えながら、特別な支出がなければある一定規模のところでしっかりと経営のかじ取りをしていきたい。

 

Q. 平成24年の前回の値下げのとき、支出規模は6,400億円規模だった。それから10年も経たないうちに、事業規模が7,000億円台になるということは、どう理解すれば良いか。

A.(松坂理事) ここ数年、支出の規模が増えてきている。主に、12月から本放送がはじまる4K・8K放送の番組制作のための準備が、2013年度では7.4億円だったが、今年度の予算では141億円くらいまで増えている。その他に、インターネットの活用業務の充実や、東京オリンピック・パラリンピック、ワールドカップの権料を先の分まで見越して積み立てている。国際放送についても、2013年度に158億円だったのが、今年度は260億円という予算規模になっている。そのほか、情報セキュリティーの強化など、ここ数年で言えば、必要なところに支出をつぎ込み、支出が拡大した。

 

Q. 執行部ではどうしても良いコンテンツ、良いサービス、いろいろなサービスをやりたいということで支出が増えていると思うが、経営を見る立場として、10年経たないうちに6,400億円くらいだったのが、7,000億円と、600億円も増えてしまうということについては、経営委員長として、増えすぎだと思わないか。

A.(石原委員長) 今、執行部から話があったように、最近、資金が必要な施策が多いことは間違いない。ただし経営委員会は、可能な限り無駄なコストは切る、という努力を執行部に求めている。そして、世帯数やテレビ保有率が減少する中で、近い将来、現在よりも厳しい状況になることが想定されるので、一層のコスト削減の努力が必要である。また、番組の質は維持していかなければならないが、これも無駄がないようにしていくことが必要だ。

 

 

<次期経営計画について>

Q. 2021年度以降の中期経営計画でも値下げを見込んでいくのか。

A.(石原委員長) 今のところ、その先は考えていない。

以上