ページの本文へ

NHK金沢・石川WEBノート

  1. NHK金沢
  2. 金沢・石川WEBノート
  3. 馳知事の懐刀 石川県の戦略広報監とは何者

馳知事の懐刀 石川県の戦略広報監とは何者

  • 2023年10月13日

ことし5月。石川県庁に新たなポストが誕生した。
「戦略広報監」
県の施策や魅力を発信し、災害時には効果的な情報提供にあたるという。
その座についたのは、NTT出身の中塚健也氏。
就任以来、矢継ぎ早に新たな施策を打ち出し、馳知事の懐刀として存在感を高めている。
戦略広報監は県政に何をもたらし、何を成し遂げようとしているのか。

 

石川県戦略広報監 中塚健也氏

NTT出身の「広報のプロ」

中塚健也。金沢市出身の58歳。
東京大学を卒業後、NTTに入社し広報室担当課長や総務部門部長を歴任。
子会社のNTTアド取締役も務めた。
政府の内閣広報室にも出向経験がある。
報道対応をはじめ、テレビCMや広告の制作を手がけてきた。
イベントでは、日韓が共同開催した2002年のサッカーワールドカップのスタジアム広告を手がけたほか、東京オリンピックの聖火リレーの運営にも携わった。
まさに「広報のプロ」として、そのキャリアを築いてきた。
 

すぐ行動 スピードと実行力

石川県が初めて公募で迎えた、民間出身の部長級の幹部職員。
給与はほかの部長級より高いという。
知事肝煎りで新設したということもあり「何ができるのか」といぶかる声も漏れ聞こえるなか、中塚は就任直後から独自色を出していく。
そのひとつが災害対応だ。
就任5日後、珠洲市で震度6強を観測する地震が発生した。
県は被害や支援の情報をまとめ、ホームページに時系列で更新していったが、これを見た中塚はすぐにレイアウトの変更を指示した。

「これでは情報を求める人に必要な情報が届かない」

受け手にわかりやすいよう、「被災者」、「支援したい人」などと入り口を分けた。

 

石川県のHPより

情報は届かなければ意味がない。誰に向けた情報なのかを明確に。
東日本大震災の発生当時、内閣広報室に出向していた時の経験を生かしたという。

もうひとつは、トップを生かす広報。
知名度の高い馳を押し出した取り組みを始めた。
その名も「AI石川県知事デジヒロシ」
 

 

県産の水産物をPRする「デジヒロシ」

生成AIがつくる馳のキャラクターが県政に関する情報を発信する動画だ。
職員が情報を入力すると、原稿や音声、動画の編集まですべてAIが自動で行う。
40か国語で発信し、国内外に向け圧倒的な情報量で発信力を高めるのが狙いだ。

 

「広報は“効果的”かつ“効率的”に」

NTTに身を置き、通信やデジタル技術に精通する中塚の矜持が垣間見える。
X(旧ツイッター)に投稿した「デジヒロシ」の閲覧数は、多いもので9万回にのぼる。

チャレンジのために

県庁に新しい風を吹かせている中塚。
一方で疑問に思うのは、なぜ58歳という年齢でNTTを辞めてまで県庁に来たのか。
中塚は「いくつになっても“青春”だから」と笑顔を見せた。

「青春って人生のある期間じゃなくて心のあり方。
還暦近いですが、常に気持ちは若くチャレンジし続ける。
県庁で新しい環境で新しい仕事にチャレンジすることで、自分がまだまだ成長できると実感したかったんです」

活躍の場を自治体に移し、新たなフィールドで自分の力を試したい。
これまでの経験を地元に還元したいという。
では、前例のない挑戦である戦略広報監の使命をどう考えるのか。
中塚に問うと、シンプルな答えが返ってきた

「石川県や馳知事が、どういう県にしたいのか、どう変えていきたいのか、変えていくために何をするのか。
それを1人でも多く、県民にも県民以外にも理解してもらうことです」

知事は働きぶりを評価

石川県の馳知事

中塚の働きぶりを、ポストをつくった張本人はどう見ているのか?
馳が最も評価するのは、「デジヒロシ」をはじめとした個別の施策ではなく、仕事の進め方だった。

県庁の各部局、そして自治体の広報担当者などとのコミュニケーションの取り方が抜群だと、手放しで褒める。
馳は、中塚が学生時代に取り組んだアメリカンフットボールを例に解説した。

 

いろいろな人とコミュニケーションをとって最適解を見つけ出すプロですよね。
中塚さんは、どこにどういうボールを投げたらいいのか、どういうフォーメーションを組んだらいいのかわかっている。
生煮えでもいいから、いろいろなアイデアを出し合う。パスを回して、話がつながっていく。
これまで県庁になかった文化で、中塚さんが来てから情報のパス回しが早くなった」

次々に新しいアイデアが生まれる好循環をつくり、それをすぐに実現させる機動力を強化していく。
新しい県政の実現を掲げる馳にとって、中塚はその象徴とも言える存在になろうとしている。
馳はこうも付け加えた。

 

「中塚さんは将来の知事にふさわしい人材です」

戦略広報監と報道機関

民間出身のプロが変えようとしている石川県の広報。
その手腕に注目する一方で、私は記者として注視なければならないポイントがある。
知事や県の説明責任をどう果たしていくかという点だ。

疑念を抱く出来事があった。
馳が、石川テレビが制作した映画において自分や職員の肖像権を侵害されたとして、記者会見の場で社長との議論を求めている問題。

これをきっかけに馳が定例会見を開かなくなったため、記者クラブに所属する社の一部、NHKも含めた8社が再開の申し入れ書を提出しようとした。
これに対し中塚は、申し入れ書に責任者の名前がないことを理由に受け取りを拒否。
個別にヒアリングを行うのに必要だという。

NHKなどは、ヒアリングに応じる意思があることを伝えたうえで、名前を入れる必要はないとしたが、姿勢は変わらなかった。
中塚は、議会の委員会でこの問題への対応を問われた際、報道各社とのやりとりについてはいっさい言及しなかった。

今回のように県に説明が求められる場面のほか、不祥事などマイナスの問題が起きた際、戦略広報監としてどのように対応するのか。
県民の知る権利に応えられるよう誠実な説明を尽くすのか。
しっかりとチェックしていきたい。

 

動画でもご覧いただけます。

  • 片山晏友子

    金沢放送局・記者

    片山晏友子

    2019年入局。
    大分局を経て金沢局へ。
    県政取材を担当。

ページトップに戻る