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廃線トンネルを生かせ!ブランド芋への道のり
竹村雅志 (記者)
2023年03月08日 (水)

北陸地方でらーめん店などを経営する飲食チェーン。
最近はスイーツ事業にも力を入れています。
去年11月、その従業員がサツマイモを珠洲市内のある場所に運んでいました。
その場所とは、かつて線路が通っていた「廃線トンネル」。
酒造会社が日本酒の貯蔵庫として使っている場所を借りてサツマイモを熟成させ「ブランド」として売り出すプロジェクトが動き始めています。
トンネルの中で熟成させる期間は40日間。狙いは、甘みを増やすことです。
サツマイモを貯蔵すると時間の経過とともにデンプンが糖に変わります。
糖に変わりやすくなる条件は、温度が12度、湿度が90%ほど。
この廃線トンネルの中は、まさにうってつけの環境だったのです。
そして試行錯誤を重ね、もっとも糖度が上がる期間を調べたところ、40日だということがわかりました。
こうしてブランドとして勝負できるサツマイモを誕生させたといいます。
飲食チェーンはかつてのトンネルの呼び方にちなみ、「いろは芋」と名付けることにしました。
ハチバン ブランド戦略部 安川明日香主任
廃線になったトンネルを使った貯蔵というのは今までなかったと思う。そういったSDGsの観点でほかのブランド芋との差別化を図りたい。
ブランド化に向けたこのプロジェクトに、生産者も期待を寄せています。
飲食チェーンに芋を提供している志賀町ではサツマイモの生産量が年々減少しています。
その大きな理由のひとつは、担い手の不足です。
生産者によると志賀町産のサツマイモは知名度の高いブランドのものと比べて単価が低いため、収益をあげることが難しく、新しい人材が入ってこないといいます。
もともとこの地域の土は、強い粘りけがあるため、機械を使って収穫ができないという事情もあります。
サツマイモで「稼ぐ」ためには、いかに消費者を引きつける強みを得るかが重要になっているのです。
農家 山瑞誠進さん
付加価値をつけていただければ、かなり単価も上がってくると思います。そうなれば若い人たちも参入してブランド化した芋を作ってもらえるかもしれないし、量的にも増えるしもっと有名になれるのかなと思います
この冬、廃線トンネルで誕生した「いろは芋」のキッチンカーでの販売が始まりました。
焼き芋にした糖度は45点8度。
飲食チェーンは、知名度のあるほかのサツマイモと比べても遜色のない甘さだと、手応えを感じています。
ユニークな発想で生まれたサツマイモは支持されるのか。
挑戦がはじまっています。